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太陽の王子 ホルスの大冒険

1968年、東映、深沢一夫脚本、高畑勲演出作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

岩場から鴉の群れが飛び立つ。

やがて、何匹もの銀色の狼に取り囲まれた少年ホルス(声-大方斐紗子)が、柄の部分にロープが付いた斧で、狼たちと戦いはじめる。

岩を落としたり、ロープの先の斧を振り回して、狼を追い払おうとするが、その時突如、地面の下から巨大な手が出現し、やがて、岩で出来た巨人が起き上がりながら「うるさいぞ、こわっぱども」と怒鳴る。

どうやら、昼寝の最中だったらしい。

狼たちは退散し、独り残されたホルスが銀色の狼に襲われたので…と弁解すると、巨人はグルンワルドの手下共か…と、銀色の狼の正体を知っている様子。

その巨人、右肩が痛いようなので訳を聞くと、棘が刺さっているだけだと言う。

自分が取ってやろうと、岩の巨人の肩まで登ったホルスは、その棘の正体が、一本の錆び付いた剣である事に気付く。

巨人モ−グ(声-横内正)が言うには、それは「太陽の剣」と呼ばれるものらしく、とてもホルスなどに抜ける代物ではないらしい。

しかし、ホルスが渾身の力を込めて引き上げると、その太陽の剣は抜けてしまう。

それを見たモーグは感心し、その剣を鍛え直す事ができるかな?と問いかける。

できるさ!とホルスが答えると、無理だ、お前さん一人の力では。だがもし、その剣を鍛え直して使いこなせるようになったら、俺は再びお前さんの元に頭を下げに来るだろう。その時、お前さんは、太陽の王子と呼ばれるはずだとモ−グは言い放つ。

タイトル

錆びた太陽の剣を持って、花畑の斜面を滑り落ち、そのまま川に墜落したホルスの元に、友達の小熊コロ(声-浅井ゆかり)が駆け付けて来て、父さんが死にそうだと伝える。

慌てて、住まいである廃船の中に駆け込んだホルスは、ベッドで寝込んでいた年老いた父親(声-横森久)の側に駆け寄る。

父親は、話しておきたい事があると前置きし、自分はずっと北の村で住んでいたと話しはじめる。

ある日、ふいにその村に悪魔が現れ、村人の心はバラバラになり村は滅んだ。

自分は、赤ん坊だったお前を助けたい一心で村を離れたのだが、今となってはそれは間違いだったと気付いた。

仲間の所へ行け!勇気を持って力を合わせれば、何も恐れる事はないんだと言い残し、自分の斧をホルスに渡すと息絶える。

父の死体を廃船諸共荼毘に伏したホルスは、コロを連れて船に乗り込み、人間の住む所、仲間のいると言う村を探して海に乗り出る。

やがて、海面に矢が刺さった木の枝が流れて来たのに気付き、人間の住む場所が近くだと気付く。

霧深い浜辺に降り立ったホルスとコロ。

コロは、クジラの影のようなものを霧の奥に認め、好奇心から近づいてみるが、それは砂山の見間違いだった事が分かる。

突如、その砂山から鴉の群れが飛び立ち、中でも、巨大な鴉がコロに襲いかかろうとしたので、ホルスが助けに入るが、コロは流砂に飲み込まれそうになるし、ホルスは大鴉に捕えられてしまう。

大鴉に持ち上げられたホルスが投げた斧に捕まろうとして、何とかコロは地上に出るが、斧に捕まる事は出来ず、そのままホルスは大ガラスに連れ去られてしまう。

そのホルスは、地上のコロに、村に行くんだ!と叫んで空の彼方に消え去る。

大ガラスは、雪が積もる山の頂きにホルスを落とす。

斜面から崖下に滑り落ちそうになったホルスは、斧を斜面に向けて投げあげ、引っ掛かったので、柄に付いたロープを手繰って、何とか崖ッぷちまで這い上がるが、斧は斜面に刺さっていたのではなく、一人の無気味な男の手に握られていた事が分かる。

銀色の狼を従えたその男こそ、悪魔のグルンワルド(声-平幹二朗)だった。

グルンワルドは、ホルスが見所がありそうな奴だから、俺の弟にしてやると言う。

崖っぷちで何とかロープを持って身体を支えていたホルスだったが、誰が貴様なんかの言いなりになるかと拒絶する。

グルンワルドは、お前の命は、今俺の手の中にあるのだ。そんな貴様が、俺を拒めるのかとあざ笑う。

しかし、ホルスは怯まず、必ずやっつけてやると叫ぶと、グルンワルドは、容赦なく斧を持った手を離し、ホルスは崖下に墜落して行く。

グルンワルドは、この地上は俺のものだと笑いながら、銀狼たち共に姿を消す。

村の子供フレップ(声-掘絢子)は、森で遊んでいる時、氷のかけらに乗って川を流れて来るホルスを発見し、すぐさま村に知らせに走る。

ホルスは、鍛冶屋のガンコ爺さん(声-東野英治郎)の家のベッドで目覚める。

ホルスは、爺さんが鍛えている銛を見て、自分が持っている剣も鍛えられるんでしょうと聞く。

そこへフレップの母親チャハル(声-杉山徳子)が、ホルスのための食事を運んで来て、夫モラスを始めとした村の男衆が、全員、川下のお化けかますを退治に出かけたと教えるが、その直後、そのモラスが大かますにやられて死体となって運ばれて来る。

泣け叫び父親の死体にすがりつくフレップの姿に、同行した村の男たちも悲しみに暮れながらも、仇は取ってやると息巻くが、チャハルは止めて!命を粗末にしないでくれと猛り立つ村人を制止する。

村長(声-三島雅男)も、モラスは間違っていたと呟く。

チャハルは、皆で知恵を出し合ったら?命を賭ける時は一人ではなく全部でと意見するのだった。

そんな様子を背後から見ていたホルスは、銛を手に取ると独り村を抜け出て、その川下へ向ってみる。

仕返しに行く気配を見せない村人の所にやって来たガンコ爺さんは、そうか、こんなものは役に立たんと言うのかと叫んで、担いで来た銛の束を地面に叩き付ける。

彼は、村人たちが腰抜けに見えたのだった。

川下に近づいたホルスは、岩場から飛び出した一羽の鴉に驚くが、その鴉は、川面からさした無気味な光に当ると墜落する。

下を覗き込んだホルスは、川の中で緩やかに泳いでいる巨大なかますを発見する。

その背中には、三本の銛が突き刺さったままだった。

ホルスは、持って来た銛を投げ、お化けかますの片目に突き刺す。

かますは、その一撃で死んだかに見え川面に横たわるが、次の瞬間、狂ったように暴れだし、ロープを握っていたホルス諸共、水のそこに沈んで行く。

さらに、浮かび上がったかと思うと、浅瀬に乗り上げ、ホルスを追って来るが、その崖の上の部分が崩落し、大かますは岩の下敷きになって動かなくなる。

ホルスが崩落した崖の上を見上げると、そこには一匹の銀色の狼の姿があった。

村に戻って、大かますを退治したとの話をホルスから聞いたフレップは、嘘だと泣き出す。

自分が大きくなって、父親の仇を討つんだと言うのだ。

だが、ガンコ爺さんは、やったかと感心する。

そこへ、村長の息子ポトムが走って来て、魚が登って来たと報告する。

川に見に行くと、確かに魚の大軍が川を登って来ていた。

村は、時ならぬ魚の到来に大喜びになる。

そんな村にやって来たのが、小熊のコロ。

村びとが捕って、干してあった魚を見つけると、空腹のあまり、それにむしゃぶりつくが、そんな現場を発見したフレップたち子供に追い掛けられてしまう。

その頃は、逃げる途中、ホルスとぶつかり、互いに久々の再会を喜びあうのだった。

その頃、氷の宮殿の中で、銀狼から、子分であった大かますをホルスに倒されたと報告されたグルンワルドは、油断は出来んと気を引き締め、銀狼にホルスを倒すように命ずる。

ガンコ爺さんの家で手伝いをしていたポトムは、ホルスが見たと言う銀狼の話を聞き、悪魔が狙っているんだと怯える。

そこへやって来たチャハルは、夫の服だったと持っていた服を、ホルスに着せてやるのだった。

表では、バグパイプの音が響き、大かますを倒してくれたホルスを讃える宴が始まっていた。

そんな様子を見ていた僧侶のドラ−ゴは、村長に、ホルスが英雄気取りになっている。これには何か巧い仕掛けがあり、私たちはだまされているのかも知れないと陰口を叩く。

しかし、村人たちは、久々の大漁に大喜びになり、踊り始めるのだった。

そこへ、グルンワルドの手下、銀狼の群れが襲いかかって来る。

村人たちは、村長の庫を壊して、その木材で急ごしらえの柵を作りはじめる。

村人たちと銀狼の群れとの壮絶な戦いが始まる。

ホルスは、ボスらしき銀狼の後を追っている内に、森の花畑の所で見失ってしまう。

やがて、霧が出て来て、その向こうから美しい歌が聞こえて来る。

その歌の方へ向うと、見知らぬ廃村があり、そこに浮かんでいた廃船の先端に一人の少女が座って、竪琴をつま弾きながら唄っているのを発見する。

ホルスが自分は東の村に住んでいるのだが、君はこの村に住んでいるのかと聞くと、少女は首をふり、自分はどこにも住めないのだと不思議な事を言う。

彼女の村は悪魔に滅ぼされてしまい、彼女には悪魔の呪がかけられているのだと言う。

でも淋しくないと言うその少女は、ヒルダ(声-市原悦子)と名乗ると、リスのチロ(声-小原乃梨子)と白い梟のトト(声-横森久)を友達だと言ってホルスに紹介する。

そして、陽気に唄い出すヒルダだったが、その姿を見つめていたホルスは、本当は君も淋しいんだね、僕が淋しかったようにと呟く。

すると、それを聞いたヒルダは、私たち同じね。双子だったのよと笑う。

ホルスが、そんなヒルダに、自分の村に来てその歌を聞かせてくれと誘うと、ヒルダは嬉しそうに、思いきり唄いたいと承知するのだった。

しかし、ヒルダを連れて還って来たホルスの勝手な判断を村長は怒り、ドラ−ゴも同意する。

ヒルダが唄いはじめると、村中の人間がそれに聞き惚れた。

外敵から村を守る穴堀りをしていたポトムの所に、丸太を担いで来たボルド(声-横内正)は、その丸太を放り投げると、バカバカしいのでもう止めたと言い出す。

手伝っていた村人たちが、皆ヒルダの歌を聞きに行ってしまい、誰一人働き手がいなくなってしまったからだ。

そんなヒルダの様子を窓から見ていたドラ−ゴは、あの娘を利用してやろうと呟くが、それを近くで聞いていたトトは、自分で自分を滅ぼすために…とほくそ笑む。

いつものようにガンコ爺さんの所に手伝いに来たポトムは、誰も村の事なんか考えていないと愚痴るが、それを聞いていたガンコ爺さんは、そう言うお前さんだって、ヒルダに負けているのではないかと問いかける。

揺りいすでくつろいでいたヒルダの元にやってきたホルスは、森で見た銀狼の話をし、太陽の剣を鍛えてやっつけてやると意気込みながら、ガンコ爺さんの家に帰る。

トトが、その窓から監視する中、ホルスとポトム、ガンコ爺さんの三人で剣を鍛えている所に、ふらりとやってきたヒルダは、好奇心から剣に触ろうとするが、その途端、急に気分が悪くなったように尻込む。

その後、一人になって休んでいたヒルダの元にやってきたチロは、身体を心配して、大丈夫?と聞くが、ヒルダは、ええと答えた後、でも何故?と口走るのだった。

そこにやってきたホルスが、あの剣は、僕らでは無理だった…と、がっかりしたように告げると、勝てはしないわとヒルダは冷たく言い放つ。

その様子を、トトは、氷の宮殿にいるグルンワルドに報告しに行っていた。

グルンワルドは、一気にホルスを追い落とすのだと告げる。

村では、ヒルダに近づいたドラ−ゴが、手を貸してくれんかと話し掛けていた。

村長は年を取り過ぎたし、ポトムはまだ若すぎる。結局、私が統率しなければならなくなるが、村人をあんたの歌で服従させてくれんかと言うのである。

すると意外な事に、ヒルダは嬉しそうに、それを承知するのだった。

そんなヒルダは、幼女のマウニ(声- 水垣洋子)から、とっても良いものを見せてあげるととある家の中に連れて行かれる。

そこには、ルサン(声-津坂匡章)との結婚式直前のピリア(声-赤沢亜沙子)が、婚礼衣装に身をまとって立っていた。

チャハルから、あんたも一針刺してお上げと、針を渡されたヒルダだったが、ヒルダの将来のお婿さんはホルスかい?と、その場にいた娘たちが冷やかすと、凍り付いたようにピリアを見つめるだけで動こうともしなかったヒルダは、思わず力を入れて手に持たされた針を握ったので、手のひらを傷つけてしまう。

そしてヒルダは、何になるの、こんな着物なんて!火を付けてしまえば、ただの灰よ!と叫ぶ。

そんなヒルダに、太陽の刺繍が入った花嫁の被りものをマウニがかぶせてやると、刺繍なんて出来なくても、私には他にできる事がたくさんあるわ!と叫び、外に飛び出して行く。

ヒルダが飛び出した扉にも、太陽の紋章が描かれていた。

その夜は、村中の人間が集まり、ルサンとピリアの結婚式の宴を楽しんでいた。

その頃、森で銀狼を探していたホルスとコロは、遅くなったので、これから村に帰っても婚礼の時間に間に合いそうもないと残念がっていた。

次の瞬間、銀狼の姿を見つけたホルスは、森の中に向って斧を投げ付けるが、それを探しに行ったコロは、斧が消えていると報告する。

そのホルスの斧は、いつの間にか、村の外の草原に立つヒルダの手に渡っていた。

ヒルダは、その斧を、自らの胸に下がったペンダントに付けて祈ると、野ネズミの大軍が草むらから出現し、洪水のように、婚礼で沸く村に流れて行く。

村では、突如出現した野ネズミの襲来に大パニックになる。

屋根に登ってネズミを避けようとしたルサンの手からピリアの手が離れ、彼女は屋根から、野ネズミの流れに落ちそうになる。

ピリアの結婚の被りものが、無惨な姿で野ネズミの大軍が通り過ぎた道に落ちているのをマウニが発見する。

謝りながらルサンが倒れていたピリアに近づくと、彼女は私を抱いて、私たちの新しい家に連れて行ってと呟く。

ルサンは、言う通り、彼女を優しく抱きかかえるのだった。

そこへ、何も知らずに帰ってきたのがホルスとコロだった。

森で又銀狼を見たと言うホルスに、あろう事か、ヒルダは、変ね…と答える。

いつも銀狼を見たと言うのはあなただけ。大かますを一人で退治したと言うけど、それを見た人は誰もいないと言うヒルダの言葉に、ドラ−ゴも同調する。

巧くやってくれたと喜ぶドラ−ゴの側に、ヒルダは、ホルスの斧を投げ付ける。

その斧の持主に気付いたドラ−ゴは感謝するが、投げ渡したヒルダの方は、悲しそうに沈み込むのだった。

そんなヒルダに、また幼女のマウニがまとわり付き、子供達と遊ぼうとねだる。

コロに乗ったフレップが、笛を吹きながら走って行くのを見た子供達は、一斉にその後を追いはじめる。

花畑にやってきたマウニは、ヒルダに花飾りの作り方を教えるが、ヒルダが上の空で全く作ろうともしないのでがっかりする。

マウニに唄ってとせがまれるヒルダだったが、歌えないと謝る。

しかし、当のマウニは、いつの間にか、ヒルダのひざの上で眠りに落ちていた。

そこへトトが舞い降りてきて、あの村や、この娘を深い眠りに落としてやろうと囁くが、ヒルダは思わず、マウニだけは渡さないとかばう。

しかし、トトは、もう一人、ヒルダが誕生するだけさとあざ笑う。

それを聞いていたチロは、ヒルダにもうこんな事は止めようと説得しはじめる。

人間は何時か死ぬが、ヒルダ様は、グルンワルド様がくれた命の珠が守ってくれると言うと、ヒルダは、いいえ、違うわ!でも私は悪魔。人間と戦うのがヒルダの定めなのと答えるのだった。

寝ているマウニを残しヒルダが立ち去った後、トトは、余計な事を言ったチロを懲らしめようと追い掛けはじめる。

ヒルダは、淋しそうに歌を唄いはじめていたが、ふとその歌を止めた時、どうした止めたの?とホルスが近づいて来る。

やっぱり淋しいんだね?と言うと、ヒルダは怒ったように、さっさと行ってとホルスを遠ざけようとする。

その頑な姿を見たホルスは、話してしまうんだ、苦しい事を!とヒルダに迫る。

するとヒルダは、今に私の手であなたを殺すのよと叫ぶのだった。

その頃、ドラ−ゴは、ホルスの斧を村長の頭に投げて気絶させていた。

頭に怪我をした村長は、落ちていた斧から、犯人はホルスであり、この世に悪魔がいるとしたら、それはお前だ!と村人たちの前で帰ってきたホルスを断罪する。

しかし、それを聞いていたガンコ爺さんは、斧を投げるだけだったら本人でなくても誰でもできるとホルスをかばい、ホルスも、自分は今までずっとヒルダと一緒だったから、そんな事ができるはずがないと弁解しながら、ヒルダに同意を求めようとする。

ところが、ヒルダは何も答えようとしない。

それを見たドラ−ゴは、ヒルダはお前と一緒ではなかったと言っているぞとあざ笑うのだった。

村人の中にいたポトムは、犯人はヒルダだと叫ぶが、すぐにホルスが否定する。

そんなホルスは、ヒルダに銀狼が襲いかかるような幻影を見たので、思わず斧を投げ付けるが、それはヒルダが持っていた竪琴を砕いて、ヒルダは倒れる。

それを見たドラ−ゴは、それ見た事かとけしかけるし、コロはホルスをかばおうと、村人に飛びかかろうとする。

それを制止したホルスの頭に、誰かが小石をぶつける。

やがて、余所ものは出て行けとの罵声が始まり、次々と石がホルス目掛けて投げられはじめたので、たまらなくなったホルスは、地面に突き刺さっていた斧を掴むと、村から飛び出して行く。

その後ろ姿を見ながら、ヒルダが嘲る。

森の中に逃げ込んだホルスの前に、又してもヒルダが出現し、どこへ行くの?と尋ねる。

その前に、どうして私と戦おうとしないの?あなたが助けたヒルダと…と、ヒルダはホルスに詰め寄る。

そこへ現れたトトは、君が好きなヒルダとは、グルンワルドの妹なのだと、ホルスに教える。

教えてあげる、私の本当の姿を…と言いながら、ヒルダは髪止めをほどき、後頭部に隠していたナイフを取り出す。

すると、ホルスの周辺の崖が次々と崩れ、ホルスは、蒼い湖のようなものの崖っぷちに立っている状態となる。

ホルスは必死に、君なら人間に戻れる。君はだまされているんだとヒルダを説得しようとするが、トトが飛びかかってきて邪魔をする。

ヒルダがナイフを振り降ろすと、ホルスは崖から墜落して行く。

ヒルダはその途端、がっくり力が抜けたように落ち込む。

それを見ていたチロは、ひどいよ!ホルスを殺そうとするなんて!とヒルダを責める。

そしてチロは、さようなら、もう僕は戻らないよ。人間の村に行くんだと言い残し、ヒルダの前から去って行くのだった。

ヒルダと共に氷の宮殿に戻ったトトは、グルンワルドに、ホルスは迷いの森に落ちたので、もう二度と出られないと報告する。

しかし、ヒルダは、戻って来るわ。ホルスは生き返ってきます。何人ものホルスになって…。人間はやがて、ホルスを信じるようになります、と言い放つ。

そんなヒルダに、グルンワルドはとどめを刺せと命じるが、ヒルダは嫌です!私は北に戻って、氷の下で暮しますと拒絶する。

すると、グルンワルドは、お前の最後を教えてやろうと告げる。

すると、ヒルダの目の前に、太陽の剣を持ったホルスと、それに従う村人たちが攻めてきて、彼女に斬り掛かる幻影が現れる。

怯んだヒルダに、ホルスを殺すのだ、お前自身のために…と、グルンワルドは命ずる。

その頃、ホルスは、迷いの森の中を彷徨っていた。

ホルスは、現れたヒルダの幻影に向って、嘘だったのかと問いかける。

村では、空に現れた巨大な影を発見していた。

それはグルンワルドの姿だった。

その姿の下にあった山は、山頂から急に白く姿を変えはじめる。

雪だ!と村人たちが叫ぶ。

銀狼たちは、いくつもの風の姿になって村を襲撃しはじめ、村は吹雪に襲われて行く。

ガンコ爺さんは、どうしようかと戸惑っていた。

ホルスは、まだ迷いの森を彷徨っていた。

余所ものは出て行け!と言う村人の声が聞こえる。

お行き!お前の仲間の元へと言う父親の声も聞こえる。

あなたは私の弟ね。私たち双子よと言うヒルダの声も聞こえて来る。

来るな〜!とホルスが叫んでも、グルンワルドと一緒に、操り人形のようになったヒルダの幻影が近づいて来る。

村は雪に覆われていた。

ガンコ爺さんは、村を守れ!戦うんだと叫んでいる。

ポトムは、その声に答え、銛を手に取ろうとする。

ガンコ爺さんは、やろうと言うものがあれば、うちに集まってくれと村人に叫びかける。

迷いの森では、ヒルダは皆を弱虫にする…と言う言葉がホルスに降り掛かっていた。

ヒルダの幻影がいくつにも分かれ、ヒルダはバラバラ…と声が響く。

その言葉を聞いたホルスは、何かが分かりかけたような気がした。

出口が見えたホルスは、みんなで剣を鍛えるんだ!と呼び掛ける。

そんなホルスの前に出現したヒルダに、一緒に行こう村へ。僕は間違ってなかった。君の中のもう一つのヒルダを追い出せると気付いたんだとホルスは叫ぶ。

それでもなお襲いかかろうとするヒルダに、そのヒルダを追い出すんだ!と叱りつけるホルス。

その言葉に、思わず持っていたナイフを取り落としてしまうヒルダ。

その姿を見たホルスは、もう分かったね、君はもう人間なんだとホルスは告げる。

しかし、ヒルダは、さようならホルス、兄は村にいるわ、フレップとマウニを助けてあげて…と告げて消える。

村では、巨大なマンモスに乗って村に襲いかかってきたグルンワルドに怯え、大勢の村びとが逃げ出そうとしていた。

その時、幼女のマウニが呟く。「逃げたらどうなるの?」

その言葉を聞いて、村人たちの足が止まる。

そこにガンコ爺さんが言葉を続ける。「そうだ!逃げても、悪魔はどこでも追って来るぞ。どこまでもだ。戦え!」…と。

村びとの一部が、背中に瓶を背負い、中に入った油を撒いて火を放つと、その大きな炎にマンモスが怯む。

それを見たガンコ爺さんが叫ぶ。「悪魔だって不死身じゃない!」

そこに、ホルスがやって来て「太陽の剣だ!」と村人たちに呼び掛ける。

その状況を見て、ドラ−ゴは逃げ出すと、その後を銀狼の風が追って襲う。

ホルスは続ける。「皆の力を合わせてあの剣を鍛えれば、一番強い力になる!」…と。

その頃、フレップを背負ったまま、吹雪に閉じ込められていたコロは、凍り付いてしまう。

そこに出現したヒルダは、フレップの首に自らの赤いマフラーを巻くが、銀狼の風が邪魔をする。

しかし、ヒルダは自らの胸に下がった命の珠を外すと、コロの首にかけてやる。

すると、氷は解け、フレップを背負ったコロは目覚め、そのまま空中へ飛んで行く。

コロは、ヒルダに気付き呼び掛けるが、そのヒルダは氷原に佇んだまま、狼の風たちに何度も衝突され、やがて倒れてしまう。

村では、男たち全員が鍛えた太陽の剣がついに完成する。

グルンワルドは、マンモスに乗って近づくが、火矢を放つ村人の勢いに驚く。

太陽の剣を手にしたホルスは、そのマンモスの身体によじ登り、右の牙の先端に飛び移ったグルンワルドごと牙を斬り落とす。

そこへ、いつかの約束通り、巨人モ−グが近づいて来て、良くやった!見事な剣だぞ!とホルスを誉める。

そこへコロに乗ったフレップが帰って来て、これを使えば空を飛べるんだ。ヒルダがくれたんだ!と命の珠をホルスに渡す。

モ−グは、マンモスは引き受けたと言い、マンモスの身体を押して、崖から突き落としてしまう。

下に墜落したマンモスは、雪の塊になって粉砕してしまう。

命の珠を首に下げたホルスは、狼風の一匹に乗ると、飛び去ったグルンワルドを追跡する。

その後を、モ−グも村人たちも急いで追い、村人たちは、グルンワルドの根城である氷の宮殿に攻め込む。

飛行するグルンワルドの背後に近づいたホルスは、剣で相手のマントを斬り、グルンワルドは、宮殿の床に落下する。

回廊状態になった部分に村人たちが居並び、次々と松明を下のグルンワルド目掛けて投げ落とす。

そこへ突如、まばゆい光が差し込む。

モ−グが、氷の宮殿の壁を砕き、巨大な穴を開けたのだった。

銛を翳せ!の言葉に、村人たちが一斉に応え、手にした銛をかかげる。

すると、その無数の銛に、太陽光が反射し、それがグルンワルドの身体を包む。

敵が怯んだのに気付いたホルスは、太陽の剣をふりかざすと、氷の宮殿は崩れはじめる。

地上に降りたホルスは、いつの間にか、命の珠が消えている事に気付く。

そのホルスに近づいたチロは、ヒルダは?死んじゃったの?と聞き、泣き出す。

雪が消え、小鳥が唄う春の状態になった草原にヒルダは倒れていたが、やがて目覚める。

どうして?命の珠をなくした私が…と、呟くヒルダ。

いつしかヒルダは、再建中の村に向っていた。

その姿を発見したホルスやマウニ、チロ、ピリアたちがヒルダに近づいて来て、無事を喜びあう。

ホルスはヒルダの手を取り、「行こう!」と呼び掛ける。

ヒルダは、そんなホルスや村の子供達と共に、手を上げて招く、モ−グの所へ駆けて行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

日本のディズニースタジオを目指して作られた、東映動画(現アニメ)の初期の頃の悩みは、企画力不足にあった。

東洋的な素材などを中心に、幾つか長編を作ってはいたが、今一つ突き抜けたアイデアがなく、特に現場で育ちつつあった若き才能たちにとっては、そうした、上からのお仕着せ企画は、反発の対象でしかなく、鬱屈した日々を過ごしていた部分があったらしい。

そうした中、現場の言い分が通り、自分たちのオリジナル企画が実現する事になる。それが、この作品だった。

当時の中堅&若手スタッフたち(高畑勲・宮崎駿・小田部羊一・森康二・大塚康生ら、そうそうたるメンバー!)の意気込みが、大変な物であったであろう事は、疑いない。

アイヌ民話と、北欧民話をベースに作られたストーリー自体も目新しかったし、何より、劇中、重要な役回りを演じる事になる、美少女ヒルダ(声、市原悦子!)の、陰影のある性格描写は、それまでの、お子さま向けアニメキャラクターにはなかった奥行きがあり、現在に続く、日本のアニメの深化の原点だったとも言えよう。

冒頭の、狼の群れとホルスの戦いに始まり、大かますとの湖での戦い、頭が森になっている、岩の巨人「モーグ」の出現や、氷のマンモスやヒルダの兄、悪魔グルンワルド(声、平幹二郎!)の造型の面白さ、又、感情表現によって、画面の色彩設計を変化させる演出など、魅力に溢れた創意工夫が随所に見られ、飽きる事のない秀作に仕上がっている。

ホルスを中核として、村の民衆たちが一致団結し、人間の心の弱さに忍び込む悪魔と対決する…と言うテーマや、民衆たちの労働讃歌のような要素は、その後の宮崎アニメなどにも、色濃く反映されて行く事になる。

ただし、これら、高畑らスタッフが試みた、先進的な実験映像が、当時の観客たち全てに、きちんと理解できたかどうかは疑問が残る所で、「ウルトラセブン」や「ゲゲゲの鬼太郎」「魔法使いサリー」などのTV作品と併映の形で公開されながら、成績は芳しい物ではなかった。

しかし、今、宮崎アニメや高畑アニメ、否、日本のアニメ全体を語る時、この作品の存在を忘れてはならない事だけは確かな事だと思える。