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エノケンの孫悟空

日米開戦直前の1940年、エノケン版の「孫悟空」、監督は山本嘉次郎です。

前編、後編の二部構成で、前編は三蔵法師が天竺への旅に出かけ、その途中、山に閉じ込められていた孫悟空(エノケン)、美女に付きまとっていた猪八戒(岸井明)、流砂河に住む砂悟浄をお供とする…というお馴染みのエピソードを描いていますが、登場人物達は全て歌を歌いながら芝居をする…つまり、全編オペレッタ形式になっています。

前編の見せ場は、大きく分けて2箇所。
まず「奇怪(きっかい)国」の大王(高勢実乗)に誘拐された八戒を、ゼロ戦風の飛行機に乗って救助に行く孫悟空の活躍と、アラビア風の煩悩国の女王(三益愛子)にさらわれた三蔵を救出するエピソード。

全体的にレビューを観るような感じで、大勢の女性(日劇のダンシングチーム)があちこちのシーンで踊りまくっています。悟空も各シーンごとに衣装を変えていたり、エノケン一座の座長芝居風でもありますね。

高勢実乗は、当時人気のあったコメディアンで、「あのね〜おっさん、わしゃ、かなわんよ〜」という、独特のイントネーションの流行語を生んだ人物。
当然、この作品中でも連発しています。

煩悩国で、八戒が恋に落ちる歌の上手い美少女は李香蘭(山口淑子)、完璧なアイドル顔です。(戦後の「白婦人の妖恋」でもお馴染みですね)

後編は、一行が「お伽の国」の夢を見るシーンから始まります。
ここは、完全にグリム童話というか、そのものずばり、ディズニーのパクリ世界です。
おおきな茸が何人もの妖精に変身し「星に願いを」を替え歌で歌い出しますし、「ハイホ−、ハイホ−」も登場!(前編部分では、八戒が「狼なんか恐くない」を歌っていますし…)
袖珍という不思議な少女(3〜4歳?)が現れ、この世界を案内します。
大きな書物を脇にかかえ、博士帽に眼鏡(後半は丸いサングラス!)をかけた、一見「博士」風なこの少女、演じているのは中村メイコ、今とほとんど同じ顔です。(汗)

未来国の金角、銀角の兄弟妖怪に魔法をかけられ、白犬(「ネバー・エンディング・ストーリー」のファルコンそっくり!)に変身させられている王女(高峰秀子)を救うため、一行は未来国へ…。

テレビジョン、Z光線、ロボット、オペラガス(吸うと、急にオペラを歌い出す)、頭脳交換機など、未来風の発明品が溢れる不思議の国で、孫悟空たちは大暴れ!!

頭脳交換機にかけられ、旅の目的を忘れさせられた悟空たちの前に、また袖珍が現れ、「SPINACH(ほうれん草)」と書かれた缶詰めを食べさせると、急に元気になったりするサービスシーンも…。(笑)
当然、ポパイのテーマソングがバックに流れます。

戦前はまだ、国際著作権の連盟に日本は加入していませんでしたから、何でもありだったんですね〜。

後編部分は、かなり「学芸会」風になっています。