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馬鹿が戦車でやって来る

1964年、松竹大船、團伊久磨原作+音楽、山田洋次脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

これ、タイトルからして、藤城清治さんの(?)影絵が使われており、「この物語はファンタジーですよ…」という雰囲気が最初からはっきり暗示されています。

サラリーマンの部長と部下らしき二人の男、松村達雄と谷啓が船の上で釣りをしています。
収穫がないので、船主(東野英次郎)が「タンク根」にでも移動しようか…と2人に持ちかけます。
「タンク根って何?」という谷の問いに、東野がゆっくりと由来を話し始めます。

「日永村」というのんびりした村に新しい駐在が赴任してきて、村を初めて見回る所から、村の様子が徐々に説明されていきます。

最初に訪れた椿という家こそ、頭が弱い弟、兵六(犬塚弘)と、耳の遠い母親(飯田蝶子)と共に、どん底に近い暮らしている、この作品の主役、貧しい小作人サブ(ハナ肇)の住まいでした。

わらぶきの納屋からは、金属製の煙突状のものが斜め横に突き出ています。
その村には、昼日中から四六時中いちゃついている団子屋とか、ろくに働きもしないような連中ばかりが集まっています。(常田富士男が絶品!)

サブとは、長年、田んぼの境界線争いをしている元地主で村一番の有力者、頑固ものの橘仁右衛門(花沢徳衛)の家には、可憐な一人娘の紀子(岩下志麻)が病気で臥せっていました。

村祭りが近い頃、その紀子が、ようやく外を歩けるくらい元気を取り戻し、サブの家に訪ねてきます。
もともと、知恵おくれの兵六とは小さい頃から仲良しだった上、因業な父親の所行をかねてから苦にしていたので、サブにわびると共に、自分の快気祝いに来てくれと誘うのでした。

すっかり気を良くしたサブは、前日散髪に出かけ、当日は一張羅の背広でめかしこんで、立花家に上がり込みます。

しかし、貧しいサブは常日頃から村八分状態である事もあり、村人達はその様子を笑い、立花家でも、突然の場違いな訪問者に戸惑い、やがては紀子の面前で罵倒し追い出してしまいます。

怒り狂ったサブは酒を飲んであばれまわり、とうとう警察に連れていかれる始末。
その隙に、腹黒い村会議員の一之条(?)が、母親を言い包め、田畑の権利を奪い取ってしまうのでした。

帰ってきたサブは、しばらく納屋にこもったまま姿を見せなくなります。
村人らが彼の存在を半ば忘れかけ始めた頃、エンジンの轟音と共に、サブの家の納屋が動き始めるのでした…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

話が非常にシンプルですね。
後半は、タイトル通り、元少年戦車兵だったサブが乗り込んだ小型戦車が村中を走りまくり大暴れ!!
松竹映画にしては珍しく、アクションの面白さがあります。

しかし、山田監督、ただのドタバタでは終わりません。

戦車騒ぎで村中がパニック状態の中、兵六だけはいつも通り火の見やぐらに登って空飛ぶ鳥のまねをしていたのですが、過って落下、命を落としてしまいます。

ここからが素晴らしい!

弟の死を知ったサブは…。

一見クサそうな展開が予想されるのですが、この頃の山田監督は、胸に迫る詩情溢れるラストを用意してくれています。
単なる「寓話風のきれいごと」になっていない所も感心させられます。