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夢は夜ひらく

1967年、日活、才賀明+中野顕彰脚本、野口晴康監督。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

東京から横浜へ走る一台の赤いスポーツカー。

そのスポーツカーを降り、横浜の図書館に入って行った女性が「マリは?」と係員に尋ねると、早退だと言われる。

その頃、波止場で、幼馴染みのマリ(園まり)から、白い電気シャーバーをプレゼントされ喜んでいる片桐(渡哲也)がいた。

仕事場に向った片桐と別れたマリの元にスポーツカーが近づいて停まる。

車から、兄貴にふられた帰りねと毒舌を吐いたのは、片桐の妹でマネージャーをしている陽子(山本陽子)。

彼女は、エミが大変と言い、マリを車に乗せると、エミが歌っていた「クラブQ」に向う。

その「クラブQ」の支配人室では、東北訛りが強いボーカルを中心とした5人のバンドマンたち(ドリフターズ)が、露骨に迷惑がる支配人の井川(杉江弘)に珍妙な演奏を聞かせて仕事にありつこうとしていたが、追い返されてしまう。

そこに駆け付けて来たのが、マリを連れた陽子。

陽子が紹介してこのクラブで歌っていたエミが、横浜に飽きたと言い残し、昨日から突然エスケープしてしまったと言うのだ。

責任を感じた陽子は、学生時代、歌手志望で、エミよりも歌が巧かったマリを今夜から使ってくれと言い出す。

突然の話に、マリは面喰らうが、成りゆきで、そのままバンドの練習につきあわされる事になる。

その「何でもないわ」の歌唱力を気に入った井川は、すぐに陽子と契約の話になり、その夜から、マリはそのクラブで歌う事になる。

初仕事を終え、控え室に帰って来たマリは、そこに見知らぬ青年が潜んでいる事に気づき、身を竦める。

そこへ、廊下から、この部屋が怪しいと別の男たちの声が聞こえて来たので、見知らぬ青年は、いきなりマリを掴むと、強引にキスをする。

その時、ドアを開け、中を覗き込んだ工藤元(名古屋章)は、マリとキスしている青年を恋人同士と思い込み、謝罪してドアを閉める。

その直後、マリは、青年の頬をビンタシて、出て行ってと怒鳴る。

控え室を出て行った青年は、やって来た陽子から身を隠す。

翌日、図書館で働いていたマリを、昨日の青年が訪ねて来る。

クラブでの副業の事は周囲に知られたくないマリは、知らん振りをするが、相手は、兄の事で話があると言う。

そのマリと青年との会話を、図書館内で盗み聞きしている中年男の姿があった。

ヒルサイドに連れ立って来た岬克也(高橋英樹)と名乗る青年は、マリの兄矢沢と一緒に、神戸三ノ宮でキャバレーをやっていた弟分だと言う。

その矢沢が、妹の為に足を洗う決意をし、急遽、店を畳み、財産を四等分すると言い出した後、亡くなったので、その矢沢の兄貴の取り分1000万円をマリに受取ってもらいたいのだと言う。

しかし、兄が家を出た後、やつれて亡くなった母親の事を考えると、兄を許せないし、そんな兄の金等受取りたくないとマリは拒絶する。

そこへ、現れたのが片桐だった。

借りた本と一緒に、先日のプレゼントのお礼を持って来たのだった。

岬は、片桐の姿を見ると気さくに挨拶をして席を立ち、今夜又とマリに声をかけ去って行く。

その岬に近づいて来て、金はどこにあるんだと凄んで来たのが、神戸でキャバレーを一緒にやっていた工藤元と竜次(平田大三郎)兄弟だった。

しかし、そこに、先程、図書館から岬を付けて来ていた三輪田(見明凡太郎)も近づいて来る。

彼は、矢沢を殺したのは岬ではないかと疑っており、神戸から追跡して来た刑事だった。

三輪田は岬に、何時でも側に付いていると宣言する。

その頃、「クラブQ」の支配人室では、先日のバンドマン5人組が、又売り込みをしていたが、体良く追っ払われたので、すごすごと建物の外に出て、その場に座り込んでしまう。

そこに通りかかったのが、工藤兄弟で、バンドマンたちが仕事にあぶれたと言っているのを聞くと、お前たちの仕事、世話してやろうかと言い出す。

その夜、「クラブQ」で、マリが「夢は夜ひらく」を歌っていると、又、岬がやって来て、彼女が歌い終わると、テーブル席に呼ばれる。

彼女の態度が頑な事を知った岬は、金の代わりに兄貴の形見のペンダントを受取ってくれ、自分は明後日、矢沢の兄貴に誘われていたブラジルに出発するので時間がないと言う。

しかし、マリは、貧しくても兄と一緒に暮したかったと受取るのを拒絶して、テーブルを離れてしまう。

控え室に戻る途中、彼女に近づいて来た三輪田は、自分は神戸から来た者だと警察手帳を示した後、兄は殺されたのだと教えるが、もう兄の事は良いと、マリは話を聞こうとしない。

着替え終わって、ホールで二曲目を歌いはじめたマリは、テーブル席に岬の姿がいない事に気づく。

岬は、ベランダから海を眺めていた。

その岬に近づいて来たマリは、刑事に追われているのねと話し掛けた後。夕べの控え室での事が哀しいのと打ち明けるが、岬は、君が矢沢マリさんと知っていたら、あんな事はしなかったと謝罪するのだった。

そんな素直な岬の人柄に安心したのか、マリは彼とフロアで踊る事にする。

その様子を遠くから監視していたのは、あのバンドマンたち。

カトちゃん(加藤茶)が、目撃したシーンを、ジェスチャーで、さらに離れた所にいる仲間(荒井注)に伝達し、同じように別の仲間(仲本工事、高木ブー)伝言ゲームの要領で伝えて行くが、リーダー(いかりや長介)の元に来た時には、今二人で寝ていると言う珍妙な内容になってしまい、雇った工藤兄弟に呆れられていた。

ホールで踊っていたマリに、次の準備にかかるよう声をかけて来たのは陽子だった。

そんな陽子に、歌手志望の煙草売りのチヨコ(奥村チヨ)が、一度、私の歌を聞いてくれと頼んでいた。

ホールを出た陽子はマリに、刑事に追われているような男と付き合っては行けないと釘を刺す。

翌日、ヨットを作っている兄の元にやって来た陽子は、一昨日から「クラブQ」で歌っているマリが、妙な男を好きになりそうだと報告に来る。

マリちゃんを取られても良いのかと心配する妹に、片桐は鷹揚に笑うだけだった。

ホテルに宿泊していた岬の元に、工藤から電話が入り、三輪田が隣のヘヤに泊まっていると教えた後、お前の腕を買うので、一緒に神戸に帰ろうと誘い掛けるが、岬はきっぱり断わる。

その直後、今の電話は何だったと三輪田が無遠慮に入って来たので、岬はとぼけて食事に出る事にする。

マリが、独り住まいのアパートで、趣味の日本人形を作っていると、そこに工藤兄弟が乗り込んで来て、矢沢を殺したのは岬であり、ブラジルに逃げる為の金と仮契約書を盗んで行ったの、自分達があいつに自首をすすめるから、ホテルの地下駐車場まで連れて来て欲しいと伝える。

工藤兄弟が帰って行くのとすれ違いにやって来た片桐は、久々に外で食事でもしようとマリを誘い出す。

食後、布施明ショーをやっている喫茶店に立ち寄った二人。

片桐は、昔、矢沢とマリと、陽子らと良く遊んでいたなと、想い出話を始める。

すると、急用を思い出したと、マリが一人で店を出てしまう。

岬の泊まっているホテルにやって来たマリは、彼の部屋に来ると、本当にブラジルで農園をやるのかと聞いてみる。

すると、岬は素直に、矢沢が買っていたものだと、その契約書を出して見せる。

矢沢の意思を自分が継ぐつもりだと言う岬を、マリは、今地下駐車場で待っている陽子と一緒にドライブに出かけないかと誘い出す。

その二人の様子を、廊下でうかがっていたのは、ホテルマンに変装していたバンドボーイたち。

二人がエレベーターに向おうとすると、隣室から三輪田も出て来るが、ちょうど電話がかかって来たので、又部屋に戻ってしまう。

その電話は、神戸県警からのもので、工藤の女が口を割り、矢沢殺しの犯人は工藤だったと言う知らせだった。

地下に降りて来た二人を待っていた工藤兄弟は、拳銃を手にしていた。

岬は、その場からマリを逃す。

非常口から脱出したマリは、三輪田の部屋に救援を頼みに行く。

一緒に地下に戻ったマリは、右手に怪我をした岬を発見する。

事情を聞いて来た三輪田に、岬は、工藤兄弟たちにキーを盗まれたと答える。

先程、矢沢殺しの犯人が工藤たちだった事が分かったと教えた三輪田に、岬は、キーはシーサイドボウリング場のロッカーのものだと教える。

三輪田はマリに、岬を独りにするんじゃないと言い残し、工藤らを追う。

ボウリング場のロッカールームを開けた工藤は、その中に入れてあったバッグの中には、衣類の他には何も入っていない事に気づく。

そこに、警察のパトカーがやって来たので、工藤兄弟は逃げ出してしまう。

部屋に戻り、傷の手当てをしながら、工藤らの言いなりになって騙した事を詫びたマリだったが、岬は、兄貴の金を受取ってくれと再度頭を下げる。

マリが、救急箱を返しに部屋を出た後、岬に、又、工藤から電話があり、今、外からその部屋をライフルで狙っているので、窓から金を投げ下ろせと指示して来る。

岬は、工藤に自首をすすめるが、妹に迷惑かけたくなかったら言う通りにしろと、工藤は迫る。

岬は、金はホテルにはないと説明し、今夜12時に…と、待合せ場所を伝える。

そこへ、片桐がやって来る。

片桐は、自分は、マリと、その兄の矢沢健一とは幼馴染みで、今では、マリの親が親代わりだと自己紹介する。

岬は、自分は、彼女に渡したいものがあるだけで、せめて形見のペンダントさえもらってもらえたら…と説明する。

今夜だけしかチャンスがないので、彼女の頑な気持ちを懐柔する為、3時間だけ自分に彼女を貸してもらえないかと真摯に頼む岬。

その態度を見た片桐は、彼を信用し、部屋に戻って来たマリに、岬とデートしてくれと頼む。

マリを連れ港にやって来た岬は、自分は子供の頃施設で暮していたが、そんな自分を可愛がってくれたのが矢沢の兄貴だっので、その兄貴の意思を何とか自分が継ぎたいだけだと必死に説得する。

マリは、徐々に、その岬の言葉を信じはじめる。

その頃、バンドマンたちは、さすがに自分達がやっていた事がヤバい事に気づき、工藤兄弟に断わりに誰がいくかジャンケンをしていた。

結局、行く事になったのはカトちゃん。

しかし、そこへ彼らの近くにパトカーが走って来たので、全員びびってしまう。

その後、おずおずと工藤兄弟の元へやって来た彼らは、竜次から銃を見せられ腰を抜かす。

一方、陽子の元へは、マリから今夜休ませてくれと言う電話がかかって来たので、又エスケープかと頭を抱えたあげく、その代理として、何時か声をかけて来た、タバコ売りのチヨコに歌わせる事にする。

その直後、支配人室に飛び込んで来たバンドマンたちは、マリが大変な事になっていると告げに来るが、彼女がどこにいるのかは分からないと言う。

陽子は車を飛ばし、馴染みのボウリング場へ出向いてみるが、そこにいた遊び仲間たちから、マリなら、ちょっと前「ブルームーン」で見かけたが、横浜ドリームランドへ行くと言っていたとの情報を得る。

兄の片桐へも知らせてくれと言い残し、陽子は、夜のドリームランドへ向う。

そのドリームランドでは、岬がマリに、君には楽しい想い出をもらったと打ち明けていた。

しかし、マリは、あなたと会わなければ良かった。あなたは私に哀しい想い出を残して行ってしまうのねと、寂しがる。

そんな彼女に、優しく口づけをした岬は、噴水の前でペンダントをかけてやる。

今度は、素直に受取るマリ。

場内に閉園を知らせるアナウンスが流れる中、表門の所で待っていてくれ、すぐに戻って来るからと言い残し去って行く岬。

言われた通り、表門で待つマリだったが、岬はタクシーを呼び止め、別の出口から港に向っていた。

マリの前にやって来たのは陽子だったが、入口が閉まる様子を見たマリは、岬を捜しに又ドリームランドの中に駆け込んで行く。

そこへ、タクシーに乗った片桐も駆け付けて来る。

何度も岬の名前を呼ぶマリだったが、ドリームランド内の照明は次々に消えて行く。

港にやって来た岬は、待っていた工藤兄弟に、約束通り金包みを渡す。

しかし、受取った工藤たちは、お前の分の1000万も寄越せと銃を突き付けて来る。

思わず、興奮して発砲する竜次を、兄がなだめる。

岬は落ち着いた態度で、自分の分は石にしてマリに渡したと言う。

マリが受取ったペンダントは、1000万の宝石だったのだ。

その直後、岬も銃を取り出し、港に銃声が響く。

そこへ駆け付けて来た三輪田が、これ以上、マリさんを哀しませるなと岬を制止する。

工藤兄弟は、警官らによって逮捕される。

ドリームランドでは、マリが、あの人は必ず戻って来る、約束を破るような人じゃないと訴えていたが、片桐は、もうあの男は来ないかも知れないと言い聞かす。

渡したいものを全部渡したので、あの男は真直ぐ船に乗るだろうと言うのだ。

翌朝、マリ、陽子、片桐の三人は港に駆け付けるが、そこには三輪田が待っており、夕べ、ヤクザ同士の撃ち合いがあり、岬が死んだとマリに告げる。

その死際に伝言があり、心残りがある、それはあなたとの約束を果たせなかった事だ。どこかで必ず、あなたの幸せを見守っていると言うものだった。

その言葉を聞き泣くマリを、しっかり抱きとめる片桐。

そんなマリの様子を、隠れて様子を見ていた岬を乗せた船は、静かに港を遠ざかって行く。

その夜、マリは、クラブで「夢は夜ひらく」を歌うのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

スパーク三人娘(中尾ミエ、伊東ゆかり、園まり)の一人、園まり主演の歌謡映画。

実に他愛無い内容と言ってしまえばそれだけで、あくまでも、園まり、奥村チヨ、布施明の歌、そして、ドリフターズのドタバタを見る為に、通俗ドラマをあてがっているだけの作品である。

それでも、若々しい高橋英樹や、坊や坊やした渡哲也、そして山本陽子らの瑞々しさは魅力。

山本陽子は、同年公開された、同じ野口監督の「大巨獣ガッパ」でもヒロインを勤めており、この年だけで12本も出ている超売れっ子時代。

後半、港をデートするシーンが、全てシャがかかっているのが、古臭いながら何ともムーディ。

ちなみに、本作のタイトルにもなっている「夢は夜ひらく」は、何人かがカバーしており、ヒッキーの母親、藤圭子もその一人、彼女も「ずべ公番長 夢は夜ひらく」(東映 1970)に出演している。

余談だが、この作品には、タイアップ商品が二つ出て来る。

一つは、渡哲也と高橋英樹が劇中で使用している白い電気シェーバー、もう一つは、加藤茶が支配人にプレゼントする、煙草の携帯灰皿のような装置である。

当時、映画を作る為、資金集めが大変だった事がうかがわれる。