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奴の拳銃は地獄だぜ

1958年、東映東京、比佐芳武脚本、松田定次監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

雨の海上、夜の闇の中に停泊した汽船から、灯の合図が送られる。

それに対し、接近していた小舟の方からも合図が送られる。 弥太こと相原弥太郎(山形勲)が乗った船で、合図を送っていたのは、その子分の木川(植村謙二郎)だった。

汽船に乗った年増女が合図をすると、一斉に荷物が海上に落とされて行く。

それを拾う為、接近していた小舟は、見知らぬもう一隻の小舟が急速に荷物が浮いた海域に接近している事を知る。

その船に乗っているのが、ライバルの海坊主の仙三こと井上仙三(新藤英太郎)と、その舎弟の安藤留吉(江原真二郎)と知ると、荷物を横取りする気だと気づき、弥太は現場に船を急がせるが、相手がライフルを撃って来たので、弛んでいる隙に、大半の荷物を奪われてしまう。

神奈川県警本部。

田村警部(高倉健)と捜査一課長(宇佐美淳)は、二子島の漁師が海で拾ったと言う荷物が運び込まれて来たのを興味深く眺めていた。

その場で梱包を解き、開けてみると、中から出て来たのは、麻薬と拳銃だった。

最近、その海域を通った船と言えば、香港から来たファンタジー号しかないと言うので、田村はその船を怪しみだす。

さらに田村は、荷物に印してあった「5」という数字に目をつけ、少なくとも「1」〜「4」まであったはずの荷物は、すでに陸揚げされたはずと推測するのだった。

その頃、仙三と留吉は、新興商事のブローカー生田(成瀬昌彦)に、海でせしめた4つの荷物を売り捌き、その代金を受取っていた。

キャバレー「オリオン」とバー「ミモザ」は、裏口で繋がった同列の店だった。

その「ミモザ」に、香港に出張していた「オリオン」のマダム小島マリ(三浦光子)が帰って来る。

彼女こそ、あの船から荷物を海に投げ落とす合図をしていた女だった。

そのマリに、待っていた弥太が、ドジを踏んで、海坊主の仙三に荷物を奪われたと報告する。

その弥太、ふと気づくと、客席に独り、見慣れぬ客が酔いつぶれているのを見つけ怪しむ。

バーテンの大脇(柳谷寛)が言うには、北海道から来た男らしいと言う。

「オリオン」の方に戻って来たマリを迎えたのは、支配人の雨宮(柳永二郎)だった。

そこへ常連客の都筑(山村聡)という紳士が、馴染みのホステスみどり(星美智子)目当てにやって来る。

「ミモザ」では、弥太に、子分たちが、海坊主の仙三は、生田と商売したらしいとの報告が入り、彼らのねぐらを襲おうかと相談しあっていた。

その仙三と留吉は、大胆にも、弥太の縄張りである「オリオン」と「ミモザ」に現れる。

留吉の方は、都筑が踊っていたみどりをかってに奪うと、あっけに取られる都筑の前で、堂々とみどりと踊り出す。

仙三の方は、「ミモザ」にいた弥太に、気安げに声をかけると、そこに集まっていた弥太の子分たち全員に酒をおごると言い出す。

弥太は、そんな仙三に煮え湯を飲まされた事はおくびにも出さず、誘われるがまま、一緒にカード勝負を受けて立つ事にする。

その後、「ミモザ」にやって来た留吉は、仙三の姿が見えないので警戒するが、バーテンに教えられ、隣室に飛び込んでみると、そこで弥太とカード勝負をしている所だった。

その勝負にも勝ったらしく、仙三は機嫌良く金を受取ると、留吉を従え帰る事にする。

表面上は平静を装っていた弥太だったが、その直後、子分たちにその後をつけるように指示する。

後を付けられている事に気づいた仙三は、留吉に注意を促すと、そのままそ知らぬ振りをして歩き続けるが、寂しい場所に来たところで、弥太の子分たちから銃撃を受け倒れる。

密輸ルートの張り込みをしている最中で、その現場に駆け付けて来た坪内刑事も、巻き込まれて撃たれてしまう。

「オリオン」では、ドラマー(南廣)が陽気に演奏をしていた。

「ミモザ」では、戻って来た子分たちが、弥太に、留吉には逃げられたと報告していたが、まだ、先ほどのノ酔客がテーブルに臥せったままだったので、警戒した弥太は、子分たちに、その男を店から追い出すように促す。

しかし、その男に近づいた子分たちは、テーブルに伏せているはずの男の両脇から、拳銃が2丁、自分達の方に向けられているのに気づき立ち止まる。

次の瞬間、その男の銃が火を吹き、子分たちは慌てて店の奥に逃げ込んでしまう。

ムクリと起き上がったその男、何でえ、向かっ腹を立てたのは、俺のハジキか…などと、とぼけた事を言いながら、バーテンに酒代と、店に飾ってあった絵画にも、拳銃で穴を開けた弁償代を払いたいと言い出す。

しかし、すっかり怯えたバーテンは、絵画の方は遠慮するのだった。

そんな男の銃の度胸と腕前に興味を持った弥太が名前を聞くと、男はりゃんこの政吉(片岡千恵蔵)だと答える。

弥太は、その政吉が宿無しと見るや、裏に部屋が開いているが、客人にならないかと誘ってみる。

後日、殉職した坪内刑事の家では、二人暮しだった妹のさと子(中原ひとみ)が寂しい喪主を勤めていたが、そこに田代警部からの使いが来る。

殺された海坊主は新品の拳銃とヤクを持っており、これは、先日、二子島で見つかった密輸品に絡んだ事件ではないかと書かれた新聞を読んでいた政吉は、その事を「ミモザ」で一緒に飲んでいた弥太にあれこれ問いかけようとするが、弥太は、その話題を嫌っているようで、酒がまずくなると相手にしない。

それでも、気にせず、殺された坪内と言う刑事の事等を政吉がくどく話そうとするので、弥太は無理に酒を飲み、苦しいときに飲む酒もあるのだと忌み不明な事を呟く。

そこに「オリオン」のマダムが来たので、その美貌に見愡れたと言う政吉に、あの女にはヒモが付いている。この俺だ…と、弥太は釘を刺すが、政吉が言う事を聞きそうにもないのを見て取ると、互いに笑いあうのだった。

田代刑事の家にやって来たさと子は、「オリオン」と「ミモザ」の関係や、マダムとその愛人きさぐれの弥太の事等を聞かされると共に、その「オリオン」で今、踊子を募集しているので、それに応募して、潜入捜査の手伝いをしてくれないかと持ちかけられる。

「オリオン」では、歌手(ペギー葉山)が歌っていたが、マダムマリは、又香港に行く事になるかも知れないと、支配人の雨宮に打ち明けていた。

その雨宮は、今日採用した踊子の履歴書を見せる。

店では「アケミ」と呼ばせる事にしたと言う荒木とみ子と言う娘の写真を見たマリは、その美貌に目をとめるのだった。

みどりの事を尋ねると、今日は休みだと言う。

それを聞いたマリは、それでは、都筑は今日、店に来ないだろうと予言する。

その言葉通り、続きは、みどりを連れてドライブをしていた。

その頃、生田の店にやって来て、彼を縛り上げていた弥太は、他の子分たちを帰らせた後、辰三郎(清村耕二)だけを一人残すと、コップに水を汲ませると、彼に派手なレコードをかけさせ、その間に、コップの水に薬を入れ、それを強引に幾多の口に流し込んで殺害する。

「ミモザ」では、姿が見えない弥太の事を、政吉がバーテンに聞いていた。

「オリオン」には田代刑事が直に客を装って乗り込んで来るが、怪んだマリが、直接応対する事にする。

そこに突然割り込んで来たのが、何時の間に現れたのか、政吉だった。

どうやら、マリにちょっかいを出す客と思ったらしい。

田代は、詫びるマリを後に、そそくさと店を出る事にする。

この騒ぎを知り、政吉を「ミモザ」に連れ帰った弥太は、そのフーテン振りに呆れるが、そこに花売り娘が伝言を持ってやって来る。

それは、留吉からの呼び出し状だった。

店を一人で出た弥太は、留吉と会うと、相手の言う通りジャックナイフで決闘をする事に応じるが、一瞬の隙をつかれ、腹を刺されてしまう。

すぐさま留吉の背中を刺し、相手を倒した弥太だったが、腹に傷を追ったまま「ミモザ」に戻ると、驚いて迎えた政吉や子分たちに、隣室のベッドに運ばれる。

弥太はマダムマリを呼んで来させると、この政吉を俺の後釜にしてやってくれと頼むと、二代目になったその政吉から、末期の酒を飲まされ、そのまま息絶えてしまう。

警察では、発見された生田の変死体が、一番倉庫横で見つかった留吉の死体と繋がりがあるのではないかと推測していた。

マリは、とある屋敷に来るまでやって来る。

そこで待っていたのは都筑だった。

実は彼こそが、密輸団の大ボスだったのだ。

マリは、弥太が死んだ事を報告すると共に、都筑から、その弥太はお前が好きだったそうだなと言われると、自分を捨て、みどりをこの屋敷に連れて来ている事を皮肉るのだった。

マリと都筑は、これまで愛と犯罪面両方で共犯関係だったのだ。都筑もそれは認めていた。

そうした二人の会話を、部屋の外から、泊まっていたみどりが盗み聞いていた。

都筑は、北では、麻薬売人北村も捕まったそうだから、先日やって来た田村も「マリオン」と「ミモザ」を調査しているに違いなく、ダンサー等の身元をしっかり調べるようマリに命じる。

部屋を出たマリは、二階に逃げ戻ったみどりの姿をちらりと見かけ、嫉妬心を噛み締めるのだった。

マリは、「ミモザ」に戻って来ると、飲んでいた政吉に後で話があるので来てくれと声をかけ、裏口を通じ「オリオン」に向う。

その頃、都筑が支配人の雨宮に電話を入れ、新しく雇ったダンサーたちの身元の洗い直しを命じていた。

マリは、やって来た政吉に、みどりと言う女を消してくれと依頼する。

一方、自宅アパートに帰って来たみどりは、同じアパートに越して来たと言う荒木とみ子と名乗るとみ子から挨拶を受け、同じ店で働いていると教えられる。

政吉は、オリオンに来たみどりを呼出すと、後で話があると切り出す。

その話を、部屋の外から、さと子が盗み聞いていた。

店がはねたみどりは、約束通り裏通りで待っていた政吉とタクシーに乗り込む。

それを、さと子も、タクシーで追い掛ける。

人気のない倉庫街でタクシーを降りたみどりと政吉を、さと子も同じように降りて追う。

みどりは、こんな真似をしたら、都筑がただでは置かないよと脅すが、政吉はあっさり二丁拳銃を取り出すと、逃げるみどりの後から発砲し、みどりは橋から海に転落する。

その直後、その現場を見ていたさと子に気づいた政吉は、「一発地獄」と呼ばれたと言う二丁拳銃を、そのさと子にも向けて来るのだった。

そうした中、県警本部の田代刑事は、一挙に事件が解決しそうだと洩らしていた。

店に戻って来た政吉は、マリを仕留めたと報告していた。だが、ちょうど落ちた海が引き潮だった為、死体は上がらないかも知れないとも。

そのマリは、雨宮から、店にはスパイがいるので箱根の屋敷で仲間の緊急会議を開きたいと、都筑から言って来たと聞かされる。

雨宮は、政吉にアケミと言うダンサーを屋敷に連れて来るよう命じる。

政吉はさと子を呼出すと、着替えて付いて来るよう促すが、その会話をマリが部屋の外から聞いていた。

政吉はさと子を伴い、裏で待っていた車に乗り込む。

その様子を、近くにいたクズ拾いの男がさり気なく観察していた。

車が出発すると、その後に落ちていた書き付けを拾ったそのクズ拾いは公衆電話に駆け込む。

彼は変装した刑事だったのだ。

箱根の屋敷では、都筑が、ファンタジー号が警察の手入れを受けたとの部下から聞かされていた。

そこへ連れて来られたさと子は、都筑から、興信所の捜査によって、荒木とみ子なる人物は別人だった事が分かった、お前の本当の正体を表せと迫られる。

とみ子は、自分こそ本当の荒木とみ子だと言い張るが、椅子に縛られ、拷問を加えそうになる。

すると、それを止めた政吉が、俺が口を割らせてやると言い出し、二丁拳銃を取り出すと、壁際に座らせたとみ子目掛けて、股潜りの発砲等、弄ぶように撃ちまくる。

弾は一発も当らなかったが、とみ子は気絶してしまう。

そのとみ子は二階に運び込まれるが、政吉は、都筑から銃を向けられている事に気づく。

都筑は冷静に、政吉がこれまで一度も人を殺していない事を指摘し、その正体を疑っていた事を明かす。

部屋には、死んだはずのみどりが入って来る。

みどりは、自分からわざと海に飛び込んだのだと説明する。

神戸で手入れを受けたファンタジー号の船内に、弥太の死体を積んでいた事を知っていたのはお前だけだと、都筑は迫る。

政吉は、時が来たと感じ、自分の正体を明かす。

彼こそ、北海道で市村を逮捕した、麻薬係の捜査官、江藤政吉だったのだ。

次の瞬間、壮絶な銃撃戦が始まり、その隙を縫って、マリはバッグの中の銃を取り出すと、みどりを撃とうとする。

二階に駆け上がった政吉は、部屋に閉じ込められていたさと子に声をかける。

さと子の気絶も芝居だったのだ。

そこへ、田代たちを乗せた警察隊が乗り込んで来る。

そのサイレンの音に怯んだ続きの拳銃を、政吉は撃ち落とすのだった。

部屋になだれ込んで来た田代は、さと子を通じ情報を知らせてくれた政吉と対面する。

翌日、飛行場から北海道へ帰る政吉を、田代とさと子が見送っていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

御大片岡千恵蔵を主役にした現代アクション。

アクションとは言っても、当の御大は、すでにでっぷり太って、とてもアクション等できそうにもない身体なので、彼はほとんど動かず、その剣銃の腕前だけがスゴイと言う設定になっている為、今観ると「多羅尾伴内」にも似た、かなりユーモラスな作品になっている。

小太りの御大が、片足を上げた股の下から拳銃を発射するに至っては、カッコ良いと言うより、正直マヌケに見えてしまう。

ただし、革ジャンにソフト帽と言うその出で立ちは、どことなく「インディ・ジョーンズ」を連想しないでもない。

新藤英太郎や山形勲などが、単なる冷血漢の悪役と言うのではなく、人間味を持ったキャラクターとして描かれているのも好ましい。

高倉健が、後年の「ブラック・レイン」などを連想させる、実直そうな刑事役をやっているのも珍しい。

ストーリー的には、典型的な昔の通俗アクションと言う感じで、大きなひねりがある訳でもなく「多羅尾伴内」ほど荒唐無稽と言う訳でもなく、ちょっと地味な印象かも知れない。

「ひねり」と言えば、最初の方で、仲間同士であるはずのマリと都筑と雨宮らが、内々で話しているときも他人同士を装っているのが良く分からない。

構成的には、映画を観ている観客に対して「トリック」を仕掛けているつもりなのだろうが、劇中の彼らに「映画の観客」などと言う発想は本来ないはずなのに…と思ったりもする。