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闇を横切れ

1959年、大映東京、菊島隆三脚本、増村保造脚本+監督。

この作品はミステリですので、後半、種明かしがありますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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10年間、保守王国が続いている玄海市の市長選挙に、革新党の候補者落合正英(松本克平)が立ち、選挙迄後2週間に迫った。

アルバイト学生3人は、その選挙カーの上から、交替で、落合の名前を連呼しながら街を走り回っていたが、その中の男女二人(森矢雄二、三宅川和子)が、保守王国のこの街で、革新候補が勝てるかどうかで言い争いになる。

そんな中、当の落合正英は、連れ込みホテル「ワシントンホテル」の一室で、女性と会っていた。

その女性が、選挙に有利な情報を持っていると言って来たのだ。

その「ワシントンホテル」へ、近所の警官がやって来る。

駆け落ちした男女が来ているので、心中の恐れがあるとの連絡があったと言うのだ。

対応に出て来たホテルの支配人(中田勉)は、警官が、酒好きで知られる片山(大山健二)であると気づき、今、2組みしか客はいないが、40代の男と20代女性の組み合わせはいないと教える。

そこへ女中(半谷光子)が来て、休憩で2階の12号室に一組いると伝える。

念の為、彼女がその二人を確認しに行くが、帰りが遅いので、自分で階段を登っていた片山巡査は、途中で、ソフト帽の男(守田学)に、煙草の火を求められる。

逆行で見えなかったその男の顔が、巡査がすってやったマッチの光で少し見えるが、その男のアゴには目立つ傷があった。

その男をすれ違った片山は、上から降りて来る女中のただならぬ顔色を見る。
彼女は「死んでます!」と部屋を指差す。

何度もノックしても応答がないので、合鍵で開けてみたら…と、女中が指差す部屋の中には、ベッドの上に倒れた男女の姿があった。

死んだ女の顔を確認した片山は、その女がストリッパーのアキコだと知る。

一方、気絶していた男の傷のある顔を持ち上げると、部屋の外から観ていた女中が「革新党の落合候補だ」と叫ぶ。

さっそく、警察に事件発生が通達される。時刻は、深夜20時55分。

タイトル。

「ワシントンホテル」では、県警の生田係長(高松英郎)が、泊り客から事情聴取している。

二人の警官に抱えられながら、殺人容疑者としてホテルの前でパトカーに乗せられようとしていた落合正英に、いきなり野次馬の中から飛び出してつかみ掛かって来たのは、殺されたアキコの情夫で、トランペット吹きの掛川(杉田康)だった。

彼は、警官に制止されて、パトカーが走り出すと、側の壁に貼ってあった、落合候補の選挙ポスターを破り捨てるのだった。

交番に戻って来た片山巡査は、タバコを吸おうとして取り出すが、空なのを知りちょっとがっかりするが、そこにすかさずタバコの箱を差し出す手があった。

西部新聞の若手記者石塚(川口浩)だった。

あれこれ事件の詳細を聞き出そうとする石塚を無視し、調書を書こうとする片山の手は震えていた。

巡査勤務30年のこのベテランは、アル中のようだった。

そんな片山は、石塚からタバコに火を付けられた瞬間、顔に傷のある男の事を思い出し、急いで生田係長に電話で連絡しはじめる。石塚がそれを聞いていた事は言う間でもない。

警察の取り調べ室に連れて来られた落合は、選挙に有利になる情報を提供すると女から連絡を受け、人に見つかると殺されると言うので、連れ込みホテルで会う事にしたが、話を聞き出す前に、いきなり侵入して来た何者かに殴られたと供述していた。

しかし、その手の甲にはみみず張れが出来ており、その皮膚の一部が、死んだアキコの爪の間から出て来たのはどう説明する?と生田は追求する。

さらに、落合には、若い頃から酒乱の気があるそうだがと聞く生田に、落合はウィスキー2杯飲んだだけだと弁解する。

この事件の結果、炭鉱夫と漁師の街であるこの地方都市で、東京から出て来た落合の当選など、もはや消えたに等しいと、保守党陣営はバー「エリート」で怪気炎を上げていた。

一緒に喜んでいた現職の市長(浜村純)は、地元を牛耳っている大物広瀬(滝沢修)の姿を発見し、すぐさま挨拶に出向く。

広瀬と同席していたのは、この地方に進出を狙っている中央の有力紙「東都日報」の 岡田支局長(伊沢一郎)だった。

そんな席に乱入して来たのが、地元紙「西部新聞」を一人で西日本一の有力紙にしたと噂される敏腕の高沢編集局長(山村聡)。

高沢は、ライバルの岡田たちに嫌味の一つも言って、意気揚々と口笛を吹きながら帰社して来る。

社会部では、今回の殺人事件で大車輪の忙しさの真っ最中。

すでに殺されたアキコの経歴を調べだしていたが、高沢は、事実だけを書くように部下たちを叱咤激励する。

そこへ戻って来た石塚が、日頃から尊敬し、目標としていた高沢の元へやって来ると、片山巡査がアゴに傷のある怪しい男を目撃していたと得意げに報告する。

高沢は、そんな石塚が可愛くて仕方なさそうに、お前なら俺の二代目になれるかも知れないが、日頃から柄の悪さを売り物にするなと、石塚の胸ポケットのハンカチを綺麗に畳んで納め直してやるのだった。

その後、石塚は、警察の生田係長に、アゴに傷のある男の事を聞きに行くが、その連絡なら、片山巡査がすぐに見間違いだったと訂正して来たと言うではないか。

驚いて、交番に向うと、若い警官に変わっており、片山なら休暇中だと言う。

その足で片山の自宅へ行ってみると、片山の女房(滝花久子)が、マッサージ師を呼んで身体を揉んでもらっている最中だった。

片山の事を聞くと、旅行に出かけており、行き先は知らないと言う。

石塚は、今度、片山巡査のこれまでの仕事振りを新聞に紹介しようと思っているので写真がないかと聞くと、そんな事ならいくらでもあると、女房は写真を奥へ取りに行く。

その隙に、石塚は、今迄、女房が横になっていた枕を持ち上げると、その下に隠してあった電報を見つける。

そして、目の不自由なマッサージ師が何も見えていないのを知って、そのまま帰ってしまったので、写真を持って戻ってきた女房は、きょとんとしてしまう。

電報に記してあった大谷温泉にやって来た石塚は、温泉に来た客たちを、遠くから盗み撮りしているDP屋の主人(飛田喜佐夫)に、西屋と言う旅館の場所を尋ねる。

その主人は、そうした写真を撮るのが趣味で、その内、写真コンクールに出してみたいなどと言い訳する。

西屋の一室で、酒を飲んでコタツの中で寝ていた片山を見つけた石塚は、起こして、幾多係長の差し金でここへ来たのだろうと追求する。

しかし、片山は何も言おうとしない。

下手な事を言うと恩給がなくなると言うので、それなら、うちの社が、その恩給代わりを出してやろうかと切り出すが、やはり片山は何も言いそうにない。

何に怯えている?と聞きながら、片山が布団の下に隠していた拳銃を取り出してみせるが、片山は、殺し屋が怖いんだと、はじめて本音を喋る。

彼がここに来ている事を知っているのは女房だけだと言うので、石塚は、今夜、迎えに来ると約束して、その場は一旦引き上げる事にする。

社に戻って来た石塚は、片山を保護しようと思うと高沢に報告する。

それを聞いた高沢は、念のため、二三人仲間を連れて迎えに行き、うちの旅館に泊めさせるよう指示を出す。

アキコと同居していた踊子仲間の鳥居元美(叶順子)をアパートに訪ねた石塚は、事件当夜のアキコの様子に付いて聞き出そうとするが、彼女も何も口を割ろうとしなかった。

しかし、その時たまたまかかって来た電話に出た元美が、何かに怯えている様子を石塚は見逃さなかった。

「エリート」では、市長が高沢に、うちの娘が音楽の勉強でフランスに渡る前に、地元でコンサートを開きたいらしいので、その後援を西部新聞でやってくれないかと相談していた。

そこへ、石塚が高沢に元美の事を報告しに来ると、高沢から景気付けにハイボールを一杯おごってもらい、その足で片山の待つ西屋へ向う事にする。

ところが、西屋の前にはパトカーが来ており、そこで出会った生田係長は、石塚の顔を見るなり、片山なら、こめかみを撃って死んだと言うではないか。

その時、担架に乗せられ運び出されて行く片山の左の額の銃痕を観た石塚は、自殺ではない事を確信する。

その事を石塚から知らされた高沢は、社会部長やデスクと協議の末、自殺に疑問ありと言う形で報道する事にする。 

翌日、自宅アパートにいた石塚に、広瀬運輸の社長が呼んでいるので10時に来いと使いが来る。

浜吉2丁目のバス停で待っていた石塚を見つけた、馴染みの玄海タクシーの運転手山野(潮万太郎)が、彼をタクシーで送ってやると言う。

その山野、昔、自分の娘が病気になった時、飛行機で薬を届けるよう手配してくれた石塚の事を恩人と思っているのだった。

広瀬運輸に行くと言うと、気を付けた方が良いと忠告してくれたので、石塚は思いきって、アゴに傷のある男の情報がないか、仲間に聞いてくれないかと山野に頼む。

その頃、広瀬は、社長室で議員に賄賂を渡していた。

石塚がやって来たのを見ると、今度、アオキ大サーカスを地元に招聘し、炭坑失業者たちの子供を大勢招待する事にしたので、その紹介記事を子供向きに楽しく書いてくれないかと、資料写真等を提示して依頼して来る。

用事はそれだけかと疑って聞くと、若いに任せて、筆先を滑らせないように…と、脅しともとれる言葉を付け加えた広瀬に、石塚は「僕は馬車馬、走り出したら止まらないんだ」と言い捨て、さっさと帰ってしまう。

その後、鳥居元美に会いにアパートへ行った石塚は、アキコの遺体を引取りに大学病院に行ったと聞かされ、そちらに廻る。

解剖がすんだ遺体安置所で元美と出会えた石塚だったが、一緒に来ていた掛川が、何も言わない内に元美を連れ帰ってしまう。

独り取り残されてしまった石塚だったが、そこにやって来た掃除のおばさんが、殺された女は妊娠していたと思いもかけない事を教えてくれたので、すぐに解剖を担当した水上博士(春本富士夫)に事情を聞きに行くと、最初は否定していた彼も、妊娠5ケ月だったが、生田係長に、犯罪には関係ないので発表しないようにと口止めされた事実を話す。

帰りかけた石塚に、水上博士は、この事は書かないでくれ、私の地位が危なくなると哀願するのだった。

市長選まで、後5日。

もはや、落合の当選は絶望状況になって落ち込んでいた革新党の選挙事務所に来た石塚は、事務局長(杉森麟)に、そもそもアキコが持ちかけて来た情報とは何だったのかと問いただす。

その頃、西部新聞社では、いよいよ東都新聞が、販売店の総取り締まり役を勤める広瀬と手を組みそうだとの情報が飛び交っていたが、そこに戻って来た石塚が、選挙事務所で得た証言を披露する。

市の中心地にあった米軍キャンプ地を、市が都市計画や道路拡張を目的に安く買い上げた事があったが、そのキャンプ地跡を今回、民間に払い下げられる事になり、一部買収された市会議員たちは広瀬に安く売る事に同意しているのだと言う。

広瀬は、その場所にパチンコ屋など遊興施設を作る予定なのだとも。

その報告を聞いた高沢は、側にいたデスクや社会部長と協議の末、その場でこの事を記事にしてみる事を決意する。

そこに、タクシー運転手の山野が石塚に会いに来て、5日前、アゴに傷のある男を駅から乗せて、広瀬の家に送ったと言う運転手が見つかったと知らせる。

それで、広瀬への疑いは決定的になる。

アキコの通夜をやっていたアパートへ、百合の花束持参でやって来た石塚は、そこで飲んでいた掛川と元美に会い、アキコは事件当夜、アゴに傷のある男に連れ出されたのだろうと問いつめる。

しかし、広瀬の子分である掛川は、そんな話を信用しようとしない。

一方、市長と会っていた警察署長(見明凡太朗)に面会した石塚は、市長から、ある事ない事書きやがってと攻撃的な態度で迎えられるが、生田係長や市会議員の多くは広瀬から買収されており、片山巡査も殺されたのだと署長に伝える。

それを聞いた署長は驚くが、別室にその署長を連れ込んだ市長は、お前を署長に選んだのは自分である事を忘れるなと忠告して帰って行く。

部屋に戻ってきた署長に、いつかあなたも首を締められる事になると、石塚は警告するが、署長はそんな自分の立場を十分に自覚しているようだった。

ちょうど、片山巡査の妻を呼出して何事か話していた生田係長は、署長に呼ばれて出て行くが、その部屋に来た石塚が妻に事情を聞くと、生田から、恩給を出す代わりに、休暇を取った時の片山巡査は、精神的に異常だったと証言するよう強要されたのだと言う。

もう恩給等いらない、自分はまだ52だから働けると言いながら、妻は取り調べ室を出て行く。

新聞社に戻って来た石塚は、写真部の連中が、読者から送られて来た膨大な人間の顔写真を「人間動物園」と題した記事にでもしようとセレクトしている最中だったが、通り過ぎた石塚の耳に「アゴに傷のある男」と言う言葉が聞こえたので、反射的に、その写真をつかみ取る。

投稿して来た石田写真店に電話で確認すると、その男の写真は二日前に撮影したばかりだと言う。

応募写真ではトリミングしたが、そのネガには、背景の宿屋も写っていると言う。

高沢は、すぐに、その写真を元美に見せて、事件当夜、アキコを連れて行った男かどうか首実験して来いと言われる。

「悪魔の島」上映中の映画館から出て来た元美は、石塚が呼出した喫茶店にやって来ると、いきなりアゴに傷のある男の写真を見せられるが、一瞬動揺したものの、何も答えようとはしなかった。

そんな元美に、いつしか言い寄っていた石塚に、元美は両親が死んでしまった自分の境遇等を話していた。

警察署長は、石塚が提供したその写真から、すぐに、それが前科5犯の森次郎であると名前を割り出す。

署長は、県警の仲谷警部に連絡を取るよう命ずると、石塚に、生田係長は休職処分にした。悪いのは買収した方だ。自分は骨の髄まで警官なんだと呟く。

そこへ、仲谷警部は、大谷温泉で写真屋が殺されたので、そちらに向ってそうだとの連絡が入り、それを聞いた石塚はやられた!と直感し、自分も大谷温泉に急行するのだった。

遊園地の観覧車の中に、以前、西屋の場所を尋ねたあのDP屋の死体が横たわっていた。

写真店でネガを探すが、見つからなかった。

その夜、東都の岡田支局長に会っていた高沢に会う為、「エリート」にやって来た石塚は、何故、広瀬側に写真屋の事が知られたのか分からない、写真は元美に見せただけだから、身近な所にスパイがいるとしか考えられないと悔しがる。

高沢は、そんな石塚に、今夜は飲んで全部忘れろと言い、その夜徹底的に飲んだ石塚をアパートまで送ってやるのだった。

その後、高沢は、料亭「花月」で待っていた広瀬に会いに行く。

広瀬が、お前を東京から呼んだのは俺だと恩を売って来たので、高沢は、あんたの社会的名声を作ってやったのは俺だと言い返す。

石塚が得た情報を広瀬に教えていたスパイとは、高沢本人だったのだ。

高沢は、東都の進出を止めさせる事と、石塚に手を出さない事を条件に、今回の事件を記事にしない事を約束して帰る。

ある日、市長選は楽勝だと、のんびりゴルフを楽しんでいた市長だったが、そこに、警察がキャンプ地払い下げに付いて動いているらしいとの連絡が入る。

西部新聞の社会部では、徹底した取材の結果、この市で広瀬の息がかかっていない会社がほとんどない事、子分だけでも1000人は下らない事などを調べ上げていたが、市を完全に牛耳っている広瀬を追い込む決定的証拠がなかった。

そんな熱心な様子を観ていた石塚は、この中にスパイはいないと直感する。

高沢は、石塚や部下たちに、憶測では一行も書けんと、残念そうに言う。

市会議員を呼出して事情聴取した警察署長の元に、広瀬の御雇い弁護士が抗議にやって来る。

正義感に燃えた署長だったが、ヤクザの本場のようなこの地で、広瀬を切り込むのは困難に思えた。

石塚の元に、元美から電話が入り、今夜10時楽屋裏に来てくれ話があると言って来る。

喜んだ石塚は、その元美が踊っている舞台も観た後、約束通り楽屋裏で待ち受けるが、そこへやって来たのは、元美だけではなく、掛川やチンピラたちも混じっていた。

罠だったのだ。

チンピラたちは、石塚の頭からウィスキーをかけた上で、ボコボコに殴り出す。

石塚は、地反吐を、相手の一張羅に吐きかけたり抵抗を示すが、多勢に無勢、気が付いた時は自宅アパートに寝かされていた。

そんな彼の元に一人でやって来た元美は、掛川に脅されてやった事だったと謝り、何もかも話すから、ここに泊めてくれと言い出す。

どうせ今まで、何も良い事なかったんだから、今夜だけでも、ここにいさせてくれと告白して来る。

最初は警戒していた石塚だったが、彼女の態度が本心らしいと気づくと、いたければ、いつまででもいて良い。自分もいてもらいたいと打ち明け、二人ははじめて抱き合うのだった。

元美は、事件前日、広瀬がアキコに、落合をホテルに連れ込むよう命じていた事、そのアキコから預かったと言いながら、キャンプ地払い下げに関し買収された市会議員の名前が書かれた手帳を石塚に見せる。

ついに、決定的な証拠を手に入れた石塚は、翌朝意気揚々と高沢の自宅へ出かけて行く。

その後留守番をしていた元美の部屋に、チンピラが独りやって来る。

石塚から手帳を見せられた高沢は、ちょっと部屋をあけるが、その時、夕べ負った手の傷を洗おうと、洗面所に出た石塚は、広瀬に電話している高沢の声を聞いてしまう。

電話を切った高沢の前に出た石塚は、あなたがスパイだったんですねと詰め寄り、自分はもうこんな会社で働けないと出て行ってしまう。

高沢の自宅からの帰り道、ふと、手を拭こうと、胸ポケットのハンカチに目をやった石塚は、高沢からいつも直されていた事を思い出し、むしゃくしゃして、そのハンカチを川に投げ込んでしまう。

自宅に帰って来た石塚は、元美がいなくなった事に気づく。

急いで、高沢の家に電話して、今度は元美を殺すのかと迫るが、高沢は本当に知らないようだった。

パチンコ屋を探し、以前、ストリップ小屋で痛めつけられたチンピラを見つけだした石塚は、掛川の居場所を強引に聞き出す。

仲間たちと花札に興じていた掛川の部屋にやって来た石塚は、二人きりで話したいと人払いをさせる。

掛川と向かい合った石塚は、アキコはお前の子供を妊娠していたので、本人はあの夜、落合に会いにホテルへ等行きたくなどなかったのだと打ち明ける。

会いに行かせたのは広瀬で、力づくで連れて行ったのは殺し屋だとも教える。

嘘だと思うなら、元美に聞いてみろとけしかけると、掛川は、年上の舎弟(伊達正)が麻薬をうって元美を眠らせていたアパートに行くと、妊娠の事実を元美に聞き出し、子供が出来たら金がいるからと、アキコが貯金までしていたと打ち明けた元美を自分の一存で逃してやる。

石塚が元美をタクシーに乗せていると、掛川は、アキコの墓参りに行くと言いながら遠ざかって行く。

石塚は、意識の薄れている元美を後部座席に抱きしめながら、どこか遠い所へ行こうと呟いていた。

その頃、西部新聞社では、社長に呼出された高沢が、広瀬から、若い記者を野放しにしているのが気に喰わんと言われ、市内の半分の販売店を東都に取られたので、記事の事、何とかならんかと相談されていた。

石塚と元美は、海辺に来ていた。

高沢は、社長ら重役連中に、やりましょう!自分はこれまで勝負に負けた事ないと請け負う。

小さな飲み屋で、元美と酒を飲んでいた石塚は、店に夕刊が配達して来たのを見ると、帰ろうと言い出す。

彼も根っからのブンヤなのだった。

高沢は、社内の記者たち全員を集め、自分が広瀬と手を組んでいたと告白しはじめる。

自分が東京から本社に呼ばれた時、ここはオンボロ三流紙だった。

その社を一流にするには金も必要だったが、どこの銀行も相手にしてくれなかった。

優秀な人材も集めなくてはならなかったし、機械設備の改善も必要だった。

高沢の目の前にいたデスク等も、他社から高い給料を条件に引っ抜いた人材だった。

そうした諸問題を解決する為には、広瀬の販売店を使用し、拡大するしかなかった。

つまり、新聞可愛さのあまり、悪と手を組んでしまったのだと告白し終える。

そこに帰って来た石塚が、この男がスパイで、人を二人も殺した男だとかぶせる。

そんな石塚の様子を頼もしそうに迎えた高沢は、お前が調べた事を全て書け!と命ずる。

そして、その場で広瀬に電話をかけさせると、皆の前で、明日からこの街が変わる。選挙では落合が勝つ。仲良く心中しましょうやと高沢は、愉快そうに自ら広瀬に話し掛ける。

そして、前に石塚から預かったアキコの手帳を返すと、とうとうお前も二代目になったな、世の中の不正にもっと怒れ!と嬉しそうに言うと、部屋を後にしようとするが、その際、高沢の胸ポケットのハンカチを、石塚は直してやるのだった。

得意の口笛を拭きながら、無人の商店街を帰って行く途中、高沢は、アゴに傷のある男からタバコの日を要求され、その直後、ピストルで腹部を撃たれ倒れる。

その殺し屋が去って行く後ろから近づいて来た掛川は、ナイフで殺し屋を刺す。

振り返った殺し屋が放った銃弾に掛川も倒れる。

締め切り間際で騒然とした西部新聞社会部のデスクに電話が入り、今、高沢が射殺されたとの知らせが届く。

一同騒然となり、皆動揺したように部屋を出ようとするが、それを「新聞遅れたら、局長が泣くぞ!」と押しとどめたのは石塚だった。

それを聞いたデスクも、やれ!と仕事の続行を命ずる。

締め切りまで後5分、石塚は必死に鉛筆を動かし続けていた。

 

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ヤクザに牛耳られていたとある地方都市で起きた市長選立候補者の逮捕。

この事件に不審を感じた若き新聞記者が少しづつ、事件の真相に迫っていく過程を描いたサスペンス。

川口浩の瑞々しい演技が好ましい。

この若者に慕われる敏腕局長に山村聡。こちらも、酒好きで豪放磊落なキャラクターを良く演じている。

こうした、悪に支配された地方都市と言うのは、戦後、日本各地に実在したようで、ドキュメンタリータッチの「ペン偽らず 暴力の街」(1950)などもあるが、本作は、同じ社会派テーマながら、やや娯楽映画風の作りになっている。

ストリッパー役の娘と若き記者との恋物語も、硬くなりがちな展開に彩りを添えている。