TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

シムソンズ

2006年、「シムソンズ」製作委員会、大野敏哉脚本、佐藤祐市監督作品。

この作品は最近の作品ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので御注意下さい。コメントはページ下です。

************************************************************

北海道常呂町の商店街のはしっこにある洋服店で母親(森下愛子)と二人暮しの高校生、伊藤和子(加藤ローサ)は、毎日、何の変化もない自分の生活に飽き飽きしていた。

オホーツク海とサロマ海に面した常呂町の名産と言えば、ホタテとたまねぎくらい。

母親の前向きな性格だけを受け継いだ彼女には、テストで0点をとっても気にしないくらいのあけっぴろげさはあったが、このままでは、地元の信金か農協で勤め、幼馴染みと結婚、子沢山で一生の〜んびり…と言う、決まりきった未来が待っているだけ。

そんな妄想に耽りながらチャリで帰宅途中の彼女、いきなりモップを投げ付けられて現実に戻る。

掃除をサボって迷惑したと言う同級生の尾中美希(藤井美菜)が投付けて、チャリで去って行ったのだ。

そのモップを観て、和子は、もう一つの常呂町の名物を思い出す。

カーリングである。

とにかく、体育の授業でもあるし、町内会でもやるという程で、身近過ぎて忘れているくらい。

冬になると、さらにな〜んにもなくなる。

「caffee しゃべりたい」で、クラスメイトの林田史江(星井七瀬)と落ち合い、マスター(高田延彦)お薦めの「流氷ソーダ」を前に、そんなグチ話をしていた和子は、配達に来た眼鏡の同級生の夢も希望もない姿を見かけ、さらに暗い気持ちになる。

そんな和子の唯一のアイドルと言えば、地元が生んだカーリング五輪選手加賀真人(田中圭)!

店内に貼ってあった真人様のポスターにうっとりするカズコを観たマスター、真人なら、今、ホールで練習していると言ってしまったものだから、和子と史江は代金も払わず、店を飛び出して行ってしまう。

「常呂町カーリングホール」の見物席にやって来た和子は、お目当ての真人様が練習している姿を発見、舞い上がるが、連れて来られた史江の方は良い迷惑。

やがて和子、憧れの真人様に寄り添うように練習している尾中美希の姿を観て、驚くと共に強い嫉妬心を覚える。

その尾中美希、他の女子メンバーと巧くいっていない様子で、独り怒っている。

帰りかける真人様と玄関口で会えるかも知れないと下に急いだ和子は、慌てて転んでしまうが、付いて行けないと言う顔の史江は、塾があるからと一人でさっさと帰ってしまう。

一人になった和子は、何気なく「加賀真人サイン入りブラシ」がもらえる女子カーリングメンバー募集のポスターを見かけ、俄然興味を持つが、「協会に登録している人だけ」と加えられている条件を読んで絶望。

そんな和子に誰かがぶつかって来たので、倒れて相手を見ると、何と、憧れの真人様本人ではないか!

真人様は、和子に常呂高校?と聞いて来たので、思わず、後輩ですと返事してしまうが、続けて、経験者?と聞かれたので、つい頷いてしまったので、チーム作ってみない?と誘われてしまう。

嬉しい反面、ピンチの和子は、強引に仲間二人を集める事になり、次の日の授業中、いつものように史江に頼み込む。

そんな常呂町にふらりとやって来たのは、以前、人口5000人のこの町から誕生したオリンピック選手を取材して注目されて以来、たびたび、何もないこの町に何かを求めて訪れていた北海道文化テレビディレクター高松(松重豊)と、付き合わされたカメラマンの渡辺(山本浩司)だった。

その二人に遭遇した和子は、ますますメンバー集めに必死になるが候補者が見当たらない。

そんな和子と史江が「caffee しゃべりたい」から出て来た所に話し掛けて来たのが、いつも配達して来る眼鏡の高校生小野菜摘(高橋真唯)だった。

一瞬、はじめて口を聞いて来た菜摘に反応できなかった和子らだったが、やがて、彼女の家を訪れて仲間に入ってもらう事にする。

彼女の家は畜産農家で、彼女は毎日、牛舎の掃除でモップを使い慣れているようだった…から。

早速メンバー二人を家に招いた和子は、おやつを用意してくれた母親にキラキラした事がある…と、何だか浮き浮きした態度を見せながら自室に向うと、「カーリング講座」と言うビデオを三人で見始める。

ビデオでは、進行役と石上保(夏八木勲)と言うベテランが解説をしていたが、菜摘は渋いガミさんこと石上の姿に夢中になり、他の二人を呆れさせる。

デリバリー、スウィーピング、スキップなど、一夜漬けの知識を詰め込む三人。

チーム名は、和子が外国のアニメからヒントを得「simsons」と名付けるが、良く分からない他の二人も何となく賛成する。

かくして、一応体裁が整い、次の日リンクに出向いた三人だったが、何故か、尾中美希もやって来る。

後は、コーチの真人様の到来待ちと、張り切って鏡を覗いていた和子だったが、そこに写ったのは冴えないオッさんの姿。

まさかと思っていると、近づいて来たそのオッさんが、真人からコーチを頼まれた大宮平太(大泉洋)で、真人様はとっくに東京に帰ったと言うではないか。

すっかり当てが外れ、帰りかけた和子だったが、真人様がその内試合を観に来ると言うので踏み止まる事にする。

そのリンクに取材に来ていた高松は、何気なく覗いて観たリンクの中の女の子に見覚えがあった。

大宮は、真人が、野中の為にチームを作りたいと言う意向である事を伝える。

和子たちの事を、一応の経験者だと思っていた大宮は、その動きを観て、彼女たちが全くの初心者だと言う事を知る。

帰りがけ、シムソンズのメンバーに、高松が接触し、密着取材をしたいと申込んで来たので、翌日、すっかり舞い上がった和子は、アイドルのような濃いメイクをして来る。

さらに驚いた事は、菜摘がいつもしているダサイ眼鏡を外して来ているではないか!

しかし、和子にとって何よりもショックだったのは、大宮から、チーム名がアニメの「シンプソンズ」のつもりだったら、「P」が抜けているだろうと指摘された事だった。

その日は、強剛「エンジェルス」との練習試合の日だった。

開き直った和子は、そのまま「simsons」で通す事にする。

大宮は、かつてチーム仲間だった相手コーチの田辺幸彦(丸山智己)に挨拶するが、シムソンズには楽しくやらせると言う事場を聞いた幸彦は、相変わらず甘いな、お前は…と吐き捨てる。

その試合も、高松と渡辺が取材に来ていたが、シムソンズの力では全く試合にならず、1点も取れないままあっさりコールド負け。

ホームから指示を出していたスキップ役の美希を不機嫌にさせただけだったが、その美希を知っているらしい相手チームのメンバーから、どこでも一緒だよと冷たい言葉を投げられ、他のメンバーたちを無視して一人で帰ってしまう。

その美希に近づいた高松は、彼女の記事を集めた昔の取材帳を見せる。彼女は、彼女、有望な選手として、将来を嘱望されていた人物だったのだ。

しかし、渡辺は、こんなチームを追跡してもものにならないとさじを投げかけていた。

あまりにふがいない結果に、菜摘と史江は早くも辞めると言い出し、和子を困惑させる。

帰り際、お前にコーチなんかする資格があるのかと嫌味を言って来た幸彦に、代表選手3年やればコーチができるだろうと答える大宮。

そんな大宮に「常呂の恥だ」と吐き捨てるように言い残し、幸彦は帰って行く。

和子はその夜、ご飯の上に乗せたイカリングが「0点」に見えて不機嫌になる。

史江は、両親から、大学受験の為、しっかり勉強するよう言い聞かせられていた。

菜摘は、たまねぎ剥きの単調な仕事に戻っていた。

翌日、二人を呼出した和子は、とにかく1点取るまで頑張ろう、このままでは10年後、何にもない自分しか想像できなくなると説得する。

その言葉に同調したのは菜摘だった。彼女にもブルーな未来像しか見えなかったのだ。

彼女は、持参して来た「第18回北海道大会」のポスターを二人に見せる。

ホタテ漁の船に戻っていた大宮は、堤防から手を振っている三人の高校生たちの姿を見つける。

船を降り、真人からは試合までという約束だったし、その試合も勝てなかったので、真人に招待してもらうはずだった六本木での合コンも夢と消えたのでもうやらないと、冗談とも本気とも付かない事を言う大宮に対し、和子たちは、自分達が合コンをセッティングするからとまで言い出す。

しかし、大宮は、金も必要だと言う。

カーリングの練習をするには、リンクも借りねばならず、何に付けても金が必要で、スポンサーが付いているエンジェルスには生涯勝てないと言うのだ。

和子は、それでも、自分達で何とか金を作ると言ってしまう。

その後、和子は、一人で自転車で帰っていた美希の荷台から、モップを盗んで逃げる。

そして、追って来た美希と共に、菜摘の家でたまねぎ剥きを全員でやりはじめる。

和子の作戦は、オニオンスープを作って、駅前広場で販売する事だった。

作戦は適中し、オニオンスープは飛ぶように売れてしまう。

その姿を偶然見かけたのが、又しても、町を訪れていた高松と渡辺で、すぐに、彼女たちの様子を写す為、ビデオカメラを廻しはじめる。

しかし、そこへ近づいて来た警官が、営業許可は取っているのかと聞いて来たので、和子がその警官を交番に連れて行った間に、他のメンバーが急いで撤収作業をしてしまう。

彼女たちが働いて溜めた、わずかばかりの金を渡しに行った大宮は、渋々、コーチを引き受けてくれる。

オニオンスープを販売する様子を写した取材ニュースはテレビ放映され、和子の母親や大宮、幸彦らも目にしていた。

翌日、和子らと合流した大宮は、一粒種の謙太郎を紹介した後、彼女たちに購入した新しい道具一式を見せ、軽トラックの助手席に美希、他のメンバーを荷台にのせると、用意していたリンクに連れて行く。

そのリンクで働けと命じた大宮は、美希には笑え、司令塔のスキップが孤立しているとチーム全体をダメにすると忠告する。

そこへやって来たのは石神保だった。

そのリンクは、彼のリンクだったのだ。

石神は、そのリンクだけでなく、あらゆるリンクのアイスメイクの仕事をしていると大宮は紹介する。

しかし菜摘は、憧れの「ガミさん」に会えたので、すっかり舞い上がってしまう。

やがて、その石神に「カーリングに一番大切なものは?」と質問した菜摘だったが、その答えは、大上の弟子である大宮が教えてくれると言われる。

海辺にやってきた4人のメンバーは、各々の足を結び、二人三脚を始めようとしていた。

大宮が言った大切な事とは「チームワーク」だったからだ。

取りあえず、「SIMSONS」のチーム名を掘った流木の所まで走ってみようとしたメンバーたちだったが、一歩も前に進まないままこけてしまう。

しかし、それからと言うもの、和子たちは、学校でもカーリングに役立つ練習に明け暮れる。

菜摘の家の牛舎で、スィープの練習、浜辺での二人三脚も徐々に前に進みはじめる。

ある日、彼女たちは、大宮の運転する軽トラックに乗って帰りながら、初雪が振る頃までに1点とれれば良いな〜…と話すようになっていた。

さらに和子は、憧れの真人様と並んでストーンを投げ、二人のストーン同士が、ほんの一瞬くっついたら最高等と、乙女チックな夢を語り、荷台にいた他の二人を呆れさせていた。

毎回、助手席に乗せてもらい優遇されていた美希に、たまには席を交代してくれと声をかけても、美希は無言で降りて行ってしまう。

そんな美希を追い掛けた和子は、もう少し皆と仲良くした方が良いのじゃないかと忠告するが、美希は、自分はただ勝ちたいだけで、カーリングも何となく続けているだけだと、冷たく返事する。

しかし、和子は、嘘は止めよう、カーリングは楽しいじゃんと言葉を続けるが、美希は無言で去ってしまい、そこへ軽トラで近づいて来た大宮が、あいつにはもう行く所がないんだ、お前らだけ信じてやれと言って帰る。

シムソンズの次の試合相手は小学生チームだった。

これなら1点くらい取れるだろうと甘く観たメンバーたちだったが、試合を始めてみると、意外にも手強くて、シムソンズは又しても1点も取れないまま試合が進んで行く。

最後、ストーンを投げる役になった美希は、スキップ役の名摘が指示にもたついている間に、全く無視して投げ、相手のストーンを二つ飛ばし、念願だった1点を奪い取って、かろうじて引き分けになる。

しかし、喜ぶ和子たちに対し、美希は、北海道大会なんて出るだけ無駄だと捨て台詞を吐き、史江には、カーリングには向いてないと言い放つ。

そんな美希に近づいて来た大宮は、今のライン出てたんじゃないかと聞くが、反則でも1点は1点でしょうと美希は開き直る。

その後も、チームをバカにし続ける美希の姿に切れた和子は、思わずビンタをしてしまう。

史江は帰ると言い出す。子供の頃からいつも、和子から無理矢理付き合わされてばかりだったけど、そんな和子の強引な所を、皆鬱陶しいと思っているはずだと。

そこへ、史江の父親が車で迎えに来て連れて行ってしまう。

その様子を遠目に観ていた渡辺は、もうお終いだなとため息を付く。

和子は、美希に厳しかった大宮に文句を言うが、反則は反則だと大宮は言うだけ。

ある日、リンクで、歴代の代表チームの戦歴を示した赤色の優勝フラッグの展示を観ていた和子は、一つだけ準優勝の青色になっているフラッグに気づく。

コーチの大宮が出ていた試合だ。

そこをたまたま通りかかったエンジェルスの幸彦が、あいつは勝つ事を知らない奴だと吐き捨てるように言う。

気になった和子は、石神に大宮の過去を聞きに行く。

代表選手時代、北海道大会の決勝戦、最終エンドのストーンを投げる事になった大宮は、ショットは完璧、見事に点数をはじき出し、優勝が決まったと他のメンバーが喜んだ次の瞬間、ラインを出たと自己申告し、その結果、優勝を逃してしまったのだと言う。

その大宮の態度を、他の仲間たちは許さなかった。

大宮にとって、仲間たちとは、カーリングだけの付き合いじゃなく、ずっと付き合いたかったのだ。だから、嘘はつきたくなかった…。

石神にとって、大宮の事は誇りに思うと聞かされた和子は、その足で菜摘に会いに行く。

そして、勝たなきゃ意味ないと伝えるが、返事はない。

美希にも声をかけ、このままでは誰も美希の事を信じないし、ずっと独りだよと説得する。

しかし、何も答えない美希は、建物の陰で涙していた。

史江の家に出向いた菜摘だったが、受験勉強中だからと母親に拒絶される。

帰りかけた菜摘は、外から、二階の勉強部屋にいる史江に、自分をチームに誘ってくれてありがとうと声をかける。

私は変わった。私の事を見つけてくれてありがとう…と。

勉強部屋のカーテンを締切り、その声を無視しようとしていた史江だったが、やはりそんな彼女も泣いていた。

買い物から帰って来て、福引きで沖縄旅行が当ったとのんきに喜んでいる母親に、自分ってずうずうしいかな〜…と問いかける和子。

そう言う所はあるかもね…と、返す母親は、うちは元々電気屋だったのだと意外な過去を語り出す。

亡くなった主人(宇梶剛士)が大のカーリング好きで、商店街でチームを作る事になった時、自分がユニフォームを作ると言い出し、それを自分が作らされたのが、洋服屋に変わったきっかけだったのだと言う。

でも、そう言うバカな人って必要じゃんと、母親から言われた和子は気持ちが晴れ、久々に「simsons」の名を刻んだ流木がある浜辺に出かけると、海に向って大声を出してみる。

すると、そこに菜摘が来ているではないか。

何故か、史江も来ており、昔から大切に取っていた、自分達の生まれた年の五円玉を投げてみて、表が出たらやる、裏なら辞めると言い出す。

それを受取った和子が大きく空中に投げ出すと、落ちた五円玉を見失ってしまう。

波打ち際の中でそれを見つけたのは、やはり来て、離れた所から様子を観ていた美希だった。

和子も同じ所を覗くと、五円玉は裏を向いていた。

どっちだったのかと尋ねる史江に、美希は表だったと言いながら、五円玉を拾い上げる。

大喜びする史江や菜摘を他所に、思わず「嘘つき」と囁いてしまった和子に、美希は始めて笑顔を見せる。

4人はその足で大宮の自宅に行き、うちらも絶対嘘付かないと宣言する。

それを聞いていた息子の謙太郎もにっこり笑ったのを観た大宮は、明日朝6時、浜辺集合と、メンバーたちに言い渡して帰す。

いよいよ北海道大会当日がやって来る。

和子の母親は、自らチーム名を縫い付けて来たユニフォームをメンバー全員に手渡す。

高松と渡辺も取材に訪れていた。

メンバーたちと共に円陣を組んだ大宮は、ラインの向こうに何が見えると問いかける。

のんきに食べ物の事を言う他のメンバーと違い、美希は「未来!」と答える。

大宮は頷き、今よりすげえ未来があるから頑張れと励ます。

第1回戦、対戦相手はファルコンズ。

シムソンズは始めて1点を取り、それをきっかけに順調に試合を運び、3対2で勝ち進む。

第2回戦、対戦相手はフラワーズ。

菜摘は、家族が応援席に来ている事に気づき恥ずかしがるが、3対1で快勝。

第3回戦、対戦相手はバニーズ。

7対5で、ついにシムソンズは、日を改めての決勝戦に進出する。

それを観ていた高松は、俺は信じていたと呟く。

帰り際、明日宜しくな、楽しくやろうと声をかけた大宮に対し、 決勝での対戦相手となったエンジェルスコーチ幸彦は、だから甘いんだよと吐き捨てて去って行く。

その夜、「caffee しゃべりたい」に集まり、取りあえず、決勝進出を祝って盛り上がっていたメンバーたちと大宮だったが、その大宮に電話が入る。

やがて、高松もやって来て、大宮の事を心配する。

2年舞えに改正されたルールにより、正式なライセンスを持たない大宮は、コーチとして、明日の決勝戦に出れないと言うのだった。

長らく現場から離れていた大宮は、そうした事情に気づいていなかったのだが、誰もが気づきにくい点だけに、内情に詳しい人間が協会に申告したとしか考えられない。

諦めてその場を去る大宮に、やって来た石神は客席から見守ってやれと言葉をかけるが、自分はカーリングを捨てた人間です。あいつらに恥をかかせてしまって…と暗い表情。

それを観た石神は、お前は常呂の恥なんかじゃない、誇りだ、胸を張れ!と励ますのだった。

帰りがけ、和子は、リンクで練習をしている真人を見かける。

一緒に練習しはじめた和子は、かねてより念願だった二人一緒にストーンを投げる許可を得る。

夢通りにストーンが触れあう事はなかったが、胸が熱くなった和子に、自分は来週、カナダに留学に行くと真人は告げる。

さらに、美希も一緒に連れて行くと聞かされた和子はショックを受け、リンクを後にするが、そこで美希と出会ってしまう。

中にいるよ、美希の大事な人と告げ、帰りかけた和子の前に、史江と菜摘がやって来て、その時、初雪が舞いはじめた事に気づく。

翌日、女子決勝戦。

着替え室に集合したメンバーたちの中、美希は、今日のスキップは、皆の事が良く分かっている和子がやってくれと頼む。

そして、コーチがいない4人は昨日と同じように円陣を組み目を閉じると、言葉を考えていた和子だったが、ようやく口を開くと、皆とここにいれてすごく嬉しい。大事なのは今だから楽しもう、絶対後悔しない今にしようと言い切る。

何とかなるっしょと、史江と菜摘も同調する。

石神らが客席から見守る中、大宮の姿はなかった。

エンジェルスとの試合は、やはり、実力の差が出てしまい、前半戦6対1でハーフタイムを迎える。

その時、和子たちは、謙太郎が「がんばれ シムソンズ」と書いた画用紙をガラスに押し付けている大宮と謙太郎の姿を発見する。

美希は、このチームでオリンピックに行きたいとメンバーたちに訴える。

後半戦、調子を取り戻したシムソンズは点数を稼ぎ、6対6にまで追い上げる。

ストーンを投げる史江は、客席に来ている父親の姿を見つけるが、決めれば、何か変わると自らに言い聞かす。

菜摘も、失敗しても、自分達が何とかすると励ましてくれる。

結果、ストーンは絶妙のコースに走り、いよいよ、シムソンズは最後の一投げを残すのみとなる。

それを投げるのは和子。

現在、エンジェルスとの得点差は1点。

シムソンズは集まり検討を始める。

狙いやすいコースに投げれば、1点は取れるが、それでは同点延長になってしまい、その後は後攻になったエンジェルスが有利になると考えているのだった。

もう一つの賭けは、相手のストーンをはじき出し、2点を取るレイブヒットを狙う事。

しかし、そのコースで確実に成功させるのは難しい。

和子は、最終のスキップ役を勤める美希の判断に全てをゆだねる事にする。

美希の指示は、レイブヒットを狙うコース指示だった。

和子が投げたストーンは、狙い通りコースを進むが…。

結果は失敗、10対8で、シムソンズは敗れてしまう。

がっくり氷上に崩れるメンバーたちに、和子は立つように促す。そして笑おうと。

その姿に、勝ったエンジェルス側からも拍手が始まり、会場中から惜しみない拍手が巻き起こる。

会場から帰る幸彦に、おめでとうと声をかけた大宮に、思わず立ち止まった幸彦は、今度一度飲もうと言い残す。

その後、シムソンズは日本代表選手となり、ソルトレイクオリンピックに出場する…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

実話を元にしたと言う事だが、スポコンマンガの実写化と言われても納得してしまうくらい、定番通りに展開する青春映画。

定番通りと言う事は「凡庸」「陳腐」になる可能性も大きい訳だが、奇跡的にもこの作品は瑞々しい娯楽作品に仕上がっている。

外国のように美しい風景、平凡だが、つい応援したくなる可愛い少女キャラクタータイプのヒロインたち、嫌味がないストーリー…。

とにかく、観ていて気持ちがすがすがしくなる内容である。

シムソンズのユニフォームや、エンディングロールのグラフィック等にもかわいらしさが横溢。

近年、この手の青春スポコンものの中では、もっとも成功した作品ではないだろうか。

個人的には、一番好きな作品である。

加藤ローサ演ずるキャラクターを観ているだけでも元気になれる事請け合い。