TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

死に花

2004年、「死に花」製作委員会、太田蘭三原作、小林弘利脚本、犬童一心脚本+監督作品。

この作品は比較的最近の作であり、なおかつ、どんでん返し要素がありますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので御注意下さい。コメントはページ下です。

************************************************************

多摩市黒川にある、入居一時金9000万〜2億、月々25万経費が必要な高級有料ホーム「らくらく長寿園」の中では、何事も計画好きな源田金蔵(藤岡琢也)80才は、意識がしっかりしている内に、自分の葬式を全部自分で演出するつもりだと、同じホーム仲間に打ち明け、すでに棺桶もオーダーメイドで作ったと披露していた。

中に入ってみているのは、元映画プロデューサーの菊島真(山崎努)80才、それを廻りで観ているのは、庄司勝平(谷啓)、穴池好夫(青島幸男)、伊能幸太郎(宇津井健)ら。

源田は、死んだら海に沈めてもらう予定の、九谷焼の骨壷も皆に披露する。

この「ハートフルケアライフ らくらく長寿園」に新人ヘルパーとしてやって来たのが井上和子(星野真里)。

ちょうど、園内では、99才を迎える青木六三郎(森繁久彌)の白寿のお祝パーティが開かれていた。

「白寿」の意味が分からない和子は、先輩ヘルパーから、「百」から「一」を引いた文字が「白」だから、それが99才を意味すると教えてもらうが、今一つピンとこない。

そんな井上を興味深げに眺めているのは、会に出席した穴池、しかし、良い女などと話し掛けられた伊能の方は、まだ子供じゃないかと呆れるだけ。

男性ヘルパーの月村(鳥羽潤)も、新人和子を紹介されていた。

若い頃は、世界を放浪していたと言う庄司は、カリフォルニアワインを飲んで、これはチリ産だねなどととんちんかんな鑑定眼を披露しているが、すでに孫が86人もいると言う。

遠山貞子(加藤治子)は、仲良しの明日香鈴子(松原千恵子)を手招きする。

そんな中、和子に近づき、水をもらおうとした穴池は、ふらついたように装いながら、急に彼女に抱きつくと、その尻を触って去る。

月岡の説明によると、 穴池と言う老人、札付きの好き者で、千人斬りを生涯の目標に決めているので、本当かどうか、すでに園内の女性の3分の1は、その毒牙にかかっていると噂されている程らしい。

ようやく、その日の主賓、青木が車椅子で現れ、司会を勤める長寿園理事長から挨拶を促されると、懸命に机に手をつき、立ち上がろうとするが、なかなか立てない。

それを見守る、入園者たちは、皆、小さな声で「頑張れ!」と、応援する。

ようやく立ち上がった青木だったが、挨拶の言葉が何も出て来ない。

又しても、皆が応援する中、ただ独り、やはり車椅子姿で短気な赤星周次郎(小林亜星)が、妻静江(吉村実子)の横で「ちゃんと挨拶せい!」と怒鳴る。

そんな青木を観ながら源田は、家族全員亡くしたらしいと、青木の情報を周囲に教える。

女性の年輩等が、園内でエアロビしている様子を観た和子は、老人って、居眠りと日向ぼっこばかりしているのかと思ったと、月岡に感想を洩らす。

その言葉が聞こえたのか、退屈が一番辛いんだと言いながら、筋トレをしている菊島の姿を観た和子は、思わず、タイプだと口走ったので、さっそく月岡がそれを当人に教えに行く。

それ以来、月岡に付きっきりで、一緒に水泳等していた和子は、ジャグジーに二人きりで入っている、源田と貞子の姿を観てうらやましがる。

日課になっている釣りに出かけた穴池は、和子を954番目に決めた等と脳天気な発言。

しかし、源田は、最近、調子が悪いので、毎晩、棺桶の中で寝ていると気の弱い事言いはじめる。

そこへ、貞子と鈴子が見物に来る。

どうした訳か、いつも当たりのない源田の竿に魚がかかり、仲間たちが応援してようやく確保。

それを観ていた貞子も、今、すごく興奮していると、鈴子に洩らすのだった。

そんな源田が亡くなる。

長寿園には、「メモリアルアーティスト社」なる車が乗り付け、その代表の黒井順一(ミッキー・カーチス)が、理事長に名刺を渡すと、何もかも承知していると言いながら、ずかずかと源田の葬式の場に入って行く。

場内に来ていたホームの連中は、何事かと驚くが、実は、生前の源田がmあらかじめ、自分で計画しておいたものだと言う。

それを聞いた一同は納得する。

まずは宴会。

そして、次は、故人自らが挨拶すると言うので、出席者たちが怪訝そうにしていると、棺桶の後ろに置かれたビデオモニターが競り上がり、その中に、生前の源田が映し出され、挨拶を始める。

彼は、学生時代ジャズをやっていたと言いながら、その時の仲間だと紹介すると、ちゃんと場内に、本物の友人たちが控えている。

そして、モニターの中の源田の挨拶をきっかけに、そのバンドメンバーたちがジャズを演奏しはじめ、天井にあらかじめ用意されていたミラーボールが廻りはじめると、全員で、ダンスパーティと言う趣向になる。

源田の趣向に感心した菊島は、独り椅子に座って呆然としる様子だった貞子に踊りを誘いに行く。

穴池や、庄司、伊能らも、この粋な趣向に大満悦。ジルバやチャチャチャ、チャールストン等を踊っていた往年の青春時代を思い出すのだった。

やがて、音楽が終わると、モニターの中の源田が「ちょうど、寿命となりました。皆さん、ごきげんよう…」と言い残して、モニターは消える。

長寿園内にある焼き場に、源田の棺桶はおさめられ、出席者たちは控え室で焼き上がりを待っていたが、棺桶を出しに言った職員が泡を喰って、課長を呼びに来たので、異変を察した他の仲間たちも様子を見に行くと、焼き上がった棺桶の中には、二人分の骨が抱き合うようにあった。

睡眠薬を大量に飲んで、自ら棺桶の中に入ったと思われる貞子の心中であった事が分かる。

菊島は、形見分けとして、源田から日記をもらったと鈴子に話していた。

菊島は、その後、サクランボ銀行に新しく口座を作りたいとやって来て、監視ビデオの位置や、ガードマンの交替時間等をそれとなく観察していた。

穴池は、風呂場で会った菊島に、葬儀の後は女を口説くチャンスだ等と、またお色気話。

ところが、翌日、鈴子と一緒に朝食をとっていた菊島は、鈴子にこれからどう生きたいか質問する。

それを、側のテーブルで聞いていた穴池は、庄司や伊能らに、菊さんが未来の事を語りはじめたとおどける。

鈴子は、もう一花も二花も咲かせなければならないのではないかと答え、一緒に温泉へ旅でも出ませんかと菊島を誘う。

それを聞いていた穴池は目を丸くする。

温泉旅行へ出かけた菊島と鈴子は、バスの後部座席でキスをかわしていた。

しかし、着いたホテルで一鈴子を抱こうとした菊島だったが、身体が言う事を聞かない。

翌朝、帰りのタクシーに乗り込んだ鈴子に、菊島は、源田から託されたと言うノートを預けて一人で先に帰すのだった。

長寿園の自室に戻って来た菊島は、穴池、伊能、庄司などが全員揃っており、銀行強盗計画を楽しそうに話し合っている姿を観て愕然とする。

特に、伊能は、昔、サクランボ銀行に勤めていたが、上役の責任をかぶせられ退職した恨みがあると、一番張り切っている。

鈴子だけに読ませるつもりが、全員に読ませてしまったようだ。

鈴子に訳を尋ねると、面白そうだからと言うだけ。

狙うサクランボ銀行の近くのオープンカフェに下見に出かけた男たちは、その銀行が地下室がない事、ウォータージェットと言う音のしない最新切断装置を大阪の倒産した会社から手に入れ使う等、源田のノートに記してあった事を確認しあう。

それでも、2000〜4000万、付属品だけでも4、500万はすると言う、その費用はどうするのかと心配があったが、菊田が昔、暖めていた映画企画用に溜めていたが、組むつもりだった監督も役者も先に逝ってしまったので無用になった金があるので、全額負担すると言う。

犯行に必要な衣装類や機材置き場として用意された倉庫内には、何故か大量のビールと冷蔵庫も用意されていた。

いぶかしげな菊島に、穴池が、何かと言えばビールで乾杯となり、必要だろう?と御陽気な返事。

異能等は、図書館で銀行強盗関連の図書を一挙に大量に借りようとし、係員から「銀行強盗でもするのか?」と冗談を言われ、あせっていた。

穴を掘りはじめる位置をき決める為、測量の振りをして現場にやって来た一行は、とんでもない事態に気づいて慌てる。

何と、正にその場所に、ホームレスが小屋を作っていたのだ。

呆然としてしまった彼らだったが、伊能が、金で立ち退かせるか、仲間に入れるかのどちらかだと言い出し、さっさと交渉に一人で乗り込んで行く。

そのホームレス先山六兵衛(長門勇)は、川から流れて来るゴミ等を拾っていた。

何を釣っているのかと言いながら近づいて来た伊能に、桃が流れて来るのを待っているのだととぼけた事を言う。桃太郎の事らしかった。

話は早かった。

あっさり、先山も仲間に入ったのだ。

その礼として彼が要求したのは、桃の缶詰めだけ。

それでも、そのビニールハウスの中から穴堀を始める事が出来たので、周囲からのカモフラージュにもなった。

最初に、ウォータージェットを構えたのは穴池だったが、水圧の反動に耐えきれず、ひっくり返ってしまう。

水流が身体に当ると、穴が開いてしまう所だった。

所詮、しろうとが簡単に扱えるような代物ではなかったのだ。

しかし、それを観ていた先山が、ノズルを構える。

何でも、昔。水道屋に勤めていたので、地面に穴を掘るのは好きなんだと言うではないか。

その後も、ホームでは、鈴子と何とか思いを遂げようとしていた菊島は、バイアグラを飲もうかどうか迷っていたが、鈴子は、自然の成りゆきに任せましょうといたわる。

長寿園の中では、普通の生活を装っていなければならず、菊島も、数を逆に数える「認知症防止訓練」などを他の入居者たちに混じって教わっていた。

ある日、先山のビニールハウス内で、おんぼろテレビを観ていた一行は、サクランボ銀行がC.Uグループと統合し、C.Uホールディング内のC.U.S銀行に名称を変更するというニュースを観ていた。

伊能はそのニュース映像に登場した新副頭取の顔を観て驚愕していた。

彼が責任を押し付けられて退職させられた原因となった男なんだそうだ。

その男が、今や、副頭取とは…と悔しがっていた伊能だったが、突然、ある事に気づき慌てて一同をサクランボ銀行へ連れて行く。

そこには、「10月31日(金) 営業最終日」の貼り紙が!

合併によって、狙っていた銀行は、後一ヶ月で閉鎖になってしまうのだ。

とにかく作業を急ごうと言う事になり、全員、大車輪で作業を続行しはじめるが、その疲れは、ホームに帰って来てから如実に現れ、皆食堂で食事も満足に食べない内にその場で眠りこける始末。

ある日、カレシのバイクでデート中、喧嘩別れして見知らぬ道路で降りた和子は、弁当を買ってどこかに向っている穴池の姿を発見、不審に感じ後を付けて行くと、テントハウス内の穴を発見する。

先山は眠っており、他には誰もいない。

穴の中に入って行った和子は、そこに土に埋もれた男の足を発見する。

穴池だと直感した和子は、急いで土から引っぱり出すと、息の止まった穴池に人工呼吸を始める。

途中で気がついた穴池が、マウストゥマウスの最中の和子の口の中に舌を入れて来たので、驚いた和子は飛び退く。

その頃、機材置き場の倉庫で二人きりだった菊島に、鈴子は、映画作りって楽しかったんでしょうねと話し掛けていた。

ああ…と返事しながら、昔を思い出していた菊島は、久々に身体が熱くなって来て、身体の一部が元気になるのを感じ、鈴子の手を引き寄せていた。

穴池から銀行強盗をすると聞かされた和子は、老人のパワーに驚愕する。

翌日、ホームで食事をしていた穴池らは、菊島と鈴子の様子を観て、二人がようやく結ばれた事を感じ取っていた。

ある日、その日当番だった菊島が一人で穴を掘っていると、穴の側面の一部が崩れ、そこに思わぬ空洞を発見する。

中を覗いてみると、白骨遺体と女の子の人形があった。

子供も含んだ三体の白骨と、不鮮明な家族写真も見つかり、戦時中、防空壕で生き埋めになった家族のものだと言う事が分かる。

それを観た伊能は、今は、不鮮明な写真を修復できる事を教える。

その後、又一人で穴を掘っていた菊島の為に弁当を作って来た和子は、戦争中何をしていたのかと聞くと、菊島は、集団疎開で埼玉の方に行っていたと答える。

10才で無理矢理大人にさせられ、人間が怖くなったと呟く菊島。

その菊島、ある日、ガードマンに扮し見張り役をかっていた庄司から、ブーツの靴紐が解けていると指摘され、それを結ぼうとしゃがむが、その結び方が分からなくなっている事に気づく。

銀行内にいたガードマンは、銀行内の鉢植えが倒れている事に気づき、それを立てようと、懐中電灯を棚の上に置いてしゃがみこむが、何時の間にか、その懐中電灯が震動で落ちて来た事に気づき、不思議がっていた。

穴は、とうとう、サクランボ銀行の床下のコンクリート面にまで達していたのだ。

全員、弁当持参で集まり、すっかり遠足気分。

気がついてみると、メンバーが7人に増えている事に呆れる菊島。

菊島、庄司、穴池、伊能、先山、鈴子、そして和子が、今や、自然にメンバーに加わっていたのだ。

ちょうど月のように見える丸いコンクリート面に、穴池がマジックで「和子 LOVE」と落書きする。

いよいよ、明日は、銀行内に侵入と言う日になり、皆浮き浮きした気分でホームに帰って来るが、何だか生暖かい空気に、菊島は、台風がそれてこちらに向って来たのではないかと気になる。

川が増水すれば、そのすぐ横に開けている穴に水が侵入してしまう。

菊島は、怪訝そうな皆に訳を話し、自分一人で穴に蓋をして来ると言い残し去って行く。

現場に戻って来た菊島だったが、増水している川面を眺めながら数を逆に数えはじめる。

全く言えなくなっていた。

雨が強まる中、ホームに戻って来ていた他のメンバーたちは、戻って来ない菊島を気にし始める。

しかし、彼ら全員がホームを抜け出せば、事務長に気づかれてしまう。

和子は、自分が、事務長を酔い潰しておくと言って、他のメンバーたちを外に出してやる。

酒を持って、事務長室にやって来た和子だったが、部屋の中では、すでに他の先輩ヘルパーとすかり酔いつぶれている事務長の姿を発見し、ほっとするやら、呆れるやら。

現場にやって来た一行は、川べりでぼんやり立っている菊島と、その横に付き添っていた先山の姿を見る。

菊島は、自分がここに何をしに来たのか思い出せないのだった。

つまり、蓋をしていない事を悟った全員は慌てて、穴の部分を覗くが、そこはもう増水した川に飲み込まれていた。

今までの苦労は全て水泡に帰したのだ。

「すみませんでした!」と、皆の前で土下座する菊島。

自分で自分が許せないと、地面を叩いて悔しがる菊島の姿に、一同、返す言葉もない。

菊島が、地面を叩いていた瞬間、地面が揺れる。

地震か?と皆が廻りを見渡した時、サンランボビルが傾いている事に気づく。

彼らが、土をごっそり取った穴に、一挙に大量の水が入り込んだ為、それが自然のウォータージェットになり、地面を陥没させたのだ。

急いで、サクランボ銀行の様子を見に行った彼らは、傾いたビルの反対側が底を見せ始めている事に気づく。

さらに、中のトイレにガードマンが閉じ込められている姿も発見、今がチャンスと、全員、その銀行の周囲に目隠し用のカバーを張り巡らせると、深夜の突貫工事を始める。

そんな中、庄司が、急に胸を押さえて倒れる。

心臓発作だと気づき、何とか蘇生させようと、穴池が人工呼吸をしようとするが、その事、さらにビルが傾き、その震動で目覚めた庄司は、今、源田と会って来た、皆を手伝わなくてどうすると叱られたと言う。

穴池は、泥だらけで作業を続けながら、満州から引き上げて来た時は、もう死んだ方がましだと思った事も何度もあったが、こんなヘトヘトになる面白い事があったんだ、あの時の自分にそう教えてやりたいと満足げに話す。

明け方近く、永大橋交番に一本の電話が入る。

サクランボ銀行が倒れると言う通報だった。

最初は、倒産の比喩かと思い戸惑っていた警官だったが、話の内容を聞く内に慌てて現場に駆け付けると、本当に、サクランボ銀行のビルが、川に崩れ落ちる瞬間だった。

その様子を、対岸の橋の上を走り抜けていた車に乗った菊島らは満足げに眺めていた。

テレビのワイドショーで、キャスター(大和田獏)が、17億3000万が強奪されたと言うニュースを伝えていた。

現場のコンクリートには「和子 LOVE」と書かれた落書きが見つかったので、犯人は若年層の可能性があるとも。

ホームでは、防空壕から見つかった写真を修正したものを鈴子が菊島に見せていた。

菊島は、ホームの庭で、独り腰掛けていた青木の元に近づくと、集成した写真と、防空壕から見つかった遺品を見せ、家族を見つけたと報告する。

その写真には、若き日の青木とその家族の顔がハッキリと映し出されていた。

青木から、家族を防空壕で失った話を聞かされていた生前の源田は、その防空壕を掘り出す為に、銀行強盗計画を立てたのだった。

最初から、防空壕掘りが目的と書いては、誰も参加者がいないだろうと考えての作戦だった事に、今全員気づいていた。

銀行から強奪して来た金は全部、先山のビニールハウスの中に無造作に積み上げられていた。

その日も、川に出てみた先山は、「スーパー ももや」なる看板が流れて来るのを見ていた。

その後、金の使い道を考える為、一緒に川べりに散歩に来ていたメンバーだったが、亡くなった考古学者だった夫が、武田信玄の埋蔵金の手がかりの石を見つけていたと告白し、それを探す元手にしたらどうかと提案する鈴子のアイデアに、全員、大いに乗り気になる。

「やろう!やろう!もっと遊ぼう!」と叫び出した菊島は、川に近づいて行くと、石を投げはじめ、「じゅんぞう君、こっちに来いよ!」と叫ぶ。

疎開中、菊島が友達だった元夫の名前だと、和子が告白する。

菊島は、もはや完全に子供の心に戻っていたのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

太田蘭三原作小説の映画化だが、ミステリサスペンスと言うよりは、年輩者応援ファンタジーを解釈した方が良く、話の展開にリアリィティはほとんどない。

原作の方も、ハードカバーながら、内容は中編程度のもので、ち密な犯罪ものと言った雰囲気ではない。

映画版では、そのシンプルな話に若者の和子等を絡め、後半の展開も、映画風に少しアレンジしてある。

しかし、如何せん、超ベテランばかりのこの話では、会話中心で、アクションがないのは仕方ないとして、見せ場らしい見せ場もほとんどなく、サスペンスもなきに等しい。

実際に犯行が始まる後半はともかくも、特に前半の展開はかなり緩やかで、若い人には退屈に感じられるのではないかと思う。

それでも、長門勇の飄々としたとぼけた演技や、高橋昌也の認知症ぶりにはベテランの味わいを感じる。

小林亜星の妻を演じている吉村実子の姿も懐かしい。

森繁久彌の最後のシーンには思わず目頭が熱くなるが、良く考えると、若い頃の森繁の写真を見て、良く今の森繁を想像できたものだと、妙な感心をする。

観客は、役者としての森繁の姿を良く知っているので、若い頃の写真を見てすぐ気がつくが、劇中の青木なる人物は一般人と言う設定のはずで、60年以上前の写真を見た菊島らが今の姿に気づくのは不自然。

そう言う風に、ツッコミ型の見方をしてしまうと不自然な所だらけなのだが、あくまでもファンタジーとして解釈すべきだろう。

クライマックスのCG特撮のチープさも、そうした事を考えての、意図的な演出かも知れない。

すでに、出演者の内、藤岡琢也と青島幸男両氏は、他界されている事も感慨深い。

この作品での青島幸男は、主人公を演じている山崎努に次いで目立っている役である。

清純派だった松原千恵子のベッドシーンと言うのも、ちょっと珍しい。

懐かしいメンバーたちの老いた姿を観るのは、懐かしいと言うより、正直、辛いものがある。

年輩者向けの企画と言うのは、なかなか難しいものだと感じた作品だった。