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パプリカ

2006年、筒井康隆原作、水上清資脚本、今敏脚本+監督作品。

この作品は最近の作品ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので御注意下さい。コメントはページ下です。

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サーカス劇場の中、誰やらを張込んでいるらしき数名の男たちが互いに確認をしあう。

そのリーダー格の男に突如スポットライトが浴びせられ、劇場中央に置かれた檻の中に入ってくれと呼び掛けられる。

手品の手伝いをさせられるらしい。

仕方なく檻に入った男だったが、突如、周囲の人間が檻に向って突進して来る。

しかも、その全員が(男も女も)、檻の中の男の顔になっていた。

突如、空中ブランコの少女に助け出された男は、ターザンや列車の中の活劇、屋外パーティの席での騒ぎ等のイメージを抜けた後、ホテルの中の廊下で、一人の男が射殺される現場に居合わせている事に気づく。

その向こうには、その犯人が逃げようとしているので追おうとすると、急に廊下や床が歪みだし進めなくなってしまう。

続きはどうなる!?

男、警視庁の粉川警部(声-大塚明夫)は、ホテルの一室のベッドの上で目覚める。

側には、可愛い少女が付き添っており、頭に装着したDCミニと言う不思議な装置を取って説明する。

完成すると、覚醒状態でも夢の世界へ入る事ができる大変な発明品なのだと説明してくれる。

粉川は、その少女が、夢に中で自分を助けてくれた少女だと気づく。

粉川は、殺人事件の被害者の不安神経症にかかっているのだった。

ホテルの部屋から帰る少女は、粉川に「24日 21:00 パプリカ」と書かれた名刺を渡す。

自宅マンションに帰って来たサイコ・セラピスト千葉敦子(声-林原めぐみ)は、エレベーターの中につかえてもがいている、巨漢の同僚、時田浩作(声-古谷徹)を発見、何とか、エレベーターの中から引き出してやると、DCミニが盗まれたと言う。

どうやら内部の者の仕業のようだが、理事長に知られる前に何とかしないといけないと知らせに来たのだった。

発明者である時田が言うには、DCミニはアクセス制御しておらず、他のサイコ・セラピーマシンに侵入できるのだそうだ。

精神医療総合研究所の所長室では、研究所長の島(声-堀勝之祐)に、理事長の乾(声-江守徹)が、DCミニは作るべきではなかったと苦言を呈していた。

その時、突如、島が意味不明の言葉を叫びはじめる。

そして、廊下に走り出すと、窓ガラスを突き破り、外に飛び出してしまう。

幸い木の上に落ちたので命は助かったが、入院した島所長をモニターしてみた敦子は、所長の頭の中が完全に他人の夢を植え付けられている事を知る。

犯人も又、所長と同じ夢を観続ける事になる。

夢の中に登場し、しゃべる人形の顔が、同じ研究所に勤める氷室啓(声-阪口大助)だったので、現実に戻った敦子は、時田と共に氷室の自宅マンションに向う。

時田の助手をやっていた氷室は、時田に嫉妬していた気配があった。

二人は、不在と思われる氷室の部屋に無断で入ってみる。

中は、人形のコレクションでうめつくされていた。

パプリカの幻影が、現実の敦子に危険を知らせるが、敦子は相手にしない。

地下室に降りて行った敦子は、光の中に入り込むと、そこに遊園地のようだった。

人形たちが、列車に乗っている。

敦子は、その公園への柵を乗り越えようとして、時田に身体を掴まれる。

気が付くと、マンションのベランダから身を乗り出そうとしていたのだった。

アナキラヒシ免疫干渉で、敦子の頭脳が氷室に侵入されたのだと、レストランで時田が解説する。

敦子は、夢探偵パプリカになって、島所長の夢の中に入り込む事にする。

夢の中の氷室を追うが、氷室は逃げまくる。

パプリカは荒療治を試みる。

島所長は何とか正気を取り戻す。

2年前、抑鬱症を直した時と同じ方法だった。

敦子は、理事長がPCミニの製造を中止するはずだと推測する。

粉川が島所長に電話して来る。

名刺に記された日時を再確認する粉川は、パソコンモニターの中のホテルへ入って行く。

バーから繋がったカウンセリングルームで再び出あったパプリカに、粉川は島所長とは大学時代の友達だと打ち明ける。

前回の夢の中には「ターザン」や「ロシアより愛を込めて」「ローマの休日」風のシーンが多かったので、映画が好きなのかと聞かれると、粉川は映画は興味ないときっぱり言い切る。

しかし、バーを出た粉川は、そこが映画街になっているのに驚く。

精神医療総合研究所では、意味不明な事を叫ぶ新たな被害者が研究員の中から男女二人出ていた。

理事長はサイコ・セラピーマシンの中止を敦子に告げる。

一人で部品を作っていた時田が着ているTシャツに描かれたロボットの絵を観た敦子は、氷室の地下室で観た幻影の場所が「ロボットドリームランド」だった事を悟る。

一人で、その「ロボットドリームランド」に向った敦子は、以前の夢と同じように、柵を乗り越えようとするが、その瞬間、上から氷室が落ちて来て地上に叩き付けられる。

一方、研究所を抜け出した男女二人の患者のせいで、街では交通事故が発生する。

粉川は、時田に尋問するが、そこへ敦子が戻って来る。

時田は、友達の夢を一緒に観るののはごめんだと言う言葉に、粉川も同意する。

所詮、夢の攻撃等、立証しようがないからだ。

研究所から島所長に送られて帰る途中、大学時代を懐かしんでいた粉川は、突然、動悸が始まる。

DCミニはあと2つ、氷室の中にしかない。

敦子は、それを知りながら、何もしようとしない時田を叱りつける。

敦子は、所長からの粉川の所在を聞かれ、再び、夢探偵パプリカとして粉川の夢の中に侵入する。

再び、サーカスの舞台、檻の中に入れられた粉川は、檻の下から脱出、エレベーターに乗り込むと、パプリカ扮したエレベーターガールが「14階、冒険売り場です」と案内する。

15階「サスペンス」、16階「ロマンチック」…そして、17階「特設会場」と言われ、開いた扉の向こうには、ホテルの廊下で撃たれる被害者の姿が再び現れる。

そこで又、廊下はぐにゃりと歪んでしまう。

その映像を観て、アンコールをするのは、映画館の客席に座ったパプリカだった。

スクリーンの中で撃たれた被害者の顔も粉川ならば、逃げかけて振り向いた犯人の顔も粉川だった。

時田は、氷室にDC-ミニを装着、すると時田はロボットになり、茶運び人形の姿になった氷室に、お前、氷室じゃないな?と追求する。

映画館の中では、粉川が、本当は映画が好きなのだと告白していた。

パプリカは、映画館の中に乱入してきたキャラクターたちの中に時田が変身したロボットの姿もあるのを観て、時田と氷室の夢が、粉川の夢の中に混入している事に気づく。

パプリカは、研究所に戻り、意識そのものが連れ去られたみたいだと判断する。

所長は、いよいよパプリカの出動だねと言い、パプリカは氷室の夢の中へ。

孫悟空に変身したパプリカは、夢の中の世界を飛び回ってみるが、氷室の姿は見つけられなかった。

やがて、道路の画像が壊れている部分を見つけ、その中の入ってみる。

妖精の姿に変身したパプリカが、研究員の小山内の像や理事長の顔を発見したところで、樹の枝に襲われたので、覚醒させてくれと叫ぶ。

現実に戻った敦子は、氷室の意識は空洞で、夢は次々に増殖していると報告する。

誇大妄想の主は乾理事長で、彼も氷室と一緒だったのだ。

理事長は夢を支配するつもりなのだ。

足が不自由で、車椅子に乗っていたはずの理事長に会った敦子は、彼の足が木の根になっているのに気づく。

これも夢の中だと気づく敦子。

研究員の小山内が、オイディプスに変身する。

パプリカは、人魚や人形に変身して行き、最後は、又、孫悟空に変身するが、蝶の大軍に襲われ、地上に落下してしまう。

パプリカを、標本のように机に縛り付けた小山内は、氷室のアイドルだった君と、身体で取引をしないかと、ピンで脅しながら持ちかけて来る。

小山内は、DC-ミニを付けなくても、夢を見る事ができるようだ。

しかし、パプリカは、あなたが時田にかなう訳がないでしょうとバカにし、逆上した小山内にビンタされる。

その頃、粉川は夢の中のバーで酔っていた。

「17:00」の時刻を観ていた粉川は、 学生時代は自主映画の8mmを作っていたのだと呟く。

友人と二人で、刑事ものを作っていたが、それが未完成のまま相手に押し付け、その友人は映画の学校に入ったが、その後亡くなってしまった…と。

その友人の声が、続きはどうなるんだ?と、呼び掛けて来る。

バーの外に出ると、そこは映画街だった。

その一つの劇場に入ってみた粉川は、標本にされているパプリカの映像を観る。

小山内は、パプリカの身体の中に手を差し込むと、その手を卑猥に動かし、皮を剥ぐようにパプリカの姿をめくってしまう。

中から出て来たのは、千葉敦子だった。

一方、小山内の身体の中から、乾理事長の姿も出て来る。

それを観ていた粉川は、何とかスクリーンの中に入り込もうとする。

小山内は、大量の青い蝶の群れに変身する。

所長が、お前の夢の中に逃げろと、粉川にアドバイスする。

粉川は、列車サスペンスシーンから又、例のホテルで被害者が撃たれた廊下へ移動。

犯人役になっていた小山内は、トラウマでも食らえ!と嘲るが、粉川は、今度は完成させてやると言いながら発砲する。

「THE END」

敦子が覚醒する。

粉川に撃たれた小山内は、絨毯に沈んだので、乾理事長を追う事にする。

その直後、研究棟に、巨大人形が出現する。

町に移動しはじめた巨大人形で、町中はパニック状態になる。

そんな中、夢の中にいたバーテンが、夢の後始末に行きましょうと粉川を誘って来る。

夢と現実が混じりあっているのだ。

巨大人形に襲われかけた所長を、パプリカが救い出す。

しかし、敦子は、パプリカに先走らないように注意する。

敦子は、時田ロボットに飲み込まれる。

一方、ベニスに大きな穴を見つけたパプリカ。

それを観ていた、バーテンと粉川が、あっちの世界と繋がったと驚いていた。

バーテンたちは、町に張られていた横断幕で、進行していた時田ロボットの目をふさいでしまう。

すると、巨大な敦子が出現する。

時田ロボットは、何でも飲み込んじゃうんだと言う。

パプリカは、敦子が夢を観ていると言う。

裸の理事長は、巨大に変身する。

パプリカは、時田ロボットの中に入り込む。

突然、赤ん坊が出現。

私の夢を飲み込むのは誰だ!と叫ぶ巨大理事長。

女の子に変身した巨大敦子は、巨大理事長を飲み込んでしまう。

すると、時田ロボットも消える。

ベッドの中で目覚めた時田の横には、敦子がいた。

研究所を去る粉川は、振られちゃったなと呟くが、亡くなった友人の影が、おれたちの映画を地でいったんだよと答える。

夢の中のバー入った粉川は、怪我をしたバーテンから、メッセージが届いていると渡される。

それには、「例の犯人が捕まったそうね。おめでとう。敦子の苗字が、時田に変わりました。『夢見る子供達』って映画が面白かったのでお薦めします。」…と書かれていた。

粉川は、夢の中の映画街に足を向けていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

筒井康隆原作のアニメ映画化。

もともと、「千年女優」を観た筒井氏が、こんな事ができるんだったら「パプリカ」もアニメ化できるのではないかと、監督に打診して来たのがきっかけで作られた作品らしい。

そのせいか、黄金期の映画全盛時代を生き抜いて来た一人の映画女優の半生を追いながら、数々の邦画のイメージをコラージュしたかのような「千年女優」に似た、映画オマージュ風雰囲気の作品になっている。

ストーリーは、何となく分かるような分からないような…といった感じで、どちらかと言えば、めくるめくイメージの洪水に身を委ねて、何も考えず感じて楽しむ種類の映画だと思う。

そういう事もあり、抜群のデッサン力やイメージの豊穣さなど、華麗なテクニック面には感心するが、心を揺さぶるような感動はない。

意外と、イメージが常識の範囲内におさまっているような感じで、とてつもないイメージを観たと言う衝撃感もない。

特に、男性キャラが、皆、エラが張った、同じようなタイプの顔ばかり出て来るので、見分けにくかったりする点も気になった。

ものすごい力作である事は疑いようもないが、若干、才能の無駄使いのように思えなくもない。

とにかく、イメージの情報量だけは膨大なので、小さなモニター等よりも、できるだけ大きなスクリーンで観る事をお薦めしたい。