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真夜中まで

2001年、東北新社+電通+日本出版販売+IMAGICA、長谷川隆脚本、和田誠脚本+監督作品。

この作品はサスペンスであり、ストーリー的に意外性が用意されていますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので御注意下さい。コメントはページ下です。


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都会の夜、とあるビルの駐車場に集結した三台の車から、二人づつ男が出て来て、互いの鞄を交換しあう。

その横のビルの中にあるバー「COTTON TAIL」では、ジャズトランペット奏者守山紘二(真田広之)クインテット(佐山雅弘、道下和彦、小井政都志、井上功一)の演奏会が開かれていた。

「Round Midnight」を吹き終わった守山は、客からのリクエスト用紙を読み上げるが、平凡だと無視したり、「月の砂漠」をリクエストした女性客(大竹しのぶ)に、ここはジャズバーだから考えてよねと冷たい返事をして、勝手に新しい曲を吹きはじめる。

その冷たい態度に、店のマスター(斉藤晴彦)は、陰からダメ出しをするし、当の女性客は怒って帰ろうとして、連れの男(高橋克実)になだめられる始末。

「So what(それがどうした)」を吹き終えた守山は、もうちょっと客に優しくしろと忠告するマスターの言葉を受け流して、次の12時のステージまで屋上で新曲の練習をして来るとバーを出て行く。

ただ、今夜、G・P・サリヴァンが来店する予定だから、共演できるかも知れないし、気に入られればニューヨークに連れて行ってもらえるかも知れないと言うマスターの言葉には素直だった。

何せ、守山がジャズを始めたのは、ブラスバンド部にいた高校生時代、G・Pの曲に出会ったのがきっかけだったくらい、憧れの人物だったからだ。

その頃、駐車場では、大葉(國村隼)、南部(岸部一徳)と言う二人組に、田崎の店の会計士、佐久間(春田純一)と言う男が、危ない橋を渡るのは女ばかりで、オーナーは楽をしていると詰め寄っていた。

南部がいきなり懐から拳銃を取り出して佐久間の額に突き付けると、驚いて後ろに逃げようとした佐久間は、大葉が出したナイフで刺されて倒れる。

まさか、大葉が本当に刺すとは思っていなかった南部が佐久間に近づくと、虫の息の中で、取引の証拠があると洩らして佐久間は息絶えてしまう。

それを目撃していた女の悲鳴が上がり、大葉と南部は驚いて、その女を追い掛けはじめる。

その頃、練習を終えた守山は、バーに戻ろうと、屋上の入口扉を開けようとするが、何故か開かなくなっている。

閉め出されてしまったと気づいた守山は仕方なく、トランペットを持ったまま、ビルの外の雨樋を伝って下に降りて行く。

そのビルの下で、女を捕まえた大葉と南部は、その女が、田崎の店のホステスである事に気づき、佐久間が何を掴んでいたと、ナイフを突き付けた所を、ちょうど下まで降りて来た守山に観られてしまう。

次の瞬間、怯んだ二人の隙を突いて、自分の背後に廻り込んだ女を助けるような形になっった守山は、成りゆき上、彼女を連れて、その場を逃げ出す事になる。

大通りに出た守山は、警官の姿を見かけ声をかけようとするが、何故か連れの女がダメだと、片言の日本語で止める。どうやら中国人のようだ。

「マーダーを観たが、説明難しい」と必死に説明するリンダと名乗る女を観て、何か訳ありだとは気づいた守山だったが、追って来た南部が急に発砲して来たので、逃げ続けるしかなかった。

花屋に紛れ込み、店をメチャメチャにした二人と、それを追う南部らに気づいた警官が追って来るが、二人は、道路脇の植え込みの陰に隠れて身を隠す。

追い付いた警官に、立ち止まった南部は、警察手帳を出してみせる。

南部と大葉は警視庁四課の刑事だったのだ。

警官は、彼らが追っていた守山と女を犯罪者と判断し、一緒に付近を探しはじめる。

植え込みの陰に隠れていた二人を、オープンカーから降り立っていた二人(唐沢寿明、戸田菜穂)が見つけからかう。

守山とリンダは、南部や警官に気づかれそうだったので、その二人が停めていたオープンカーに飛び乗ると、二人を残したまま勝手に運転して立ち去る。

車の中でリンダは、店にいた外国人女性たちに、オーナーがあれこれ危ないものを運ばせていた事、刑事も仲間で、オーナーから金をもらっていた事、自分は、警察に行ったら、国に送り返させられる事等を説明して来るが、かかわり合いになりたくない守山は、適当に聞き流していた。

守山は、途中で車を停め、バーに戻ろうとするが、熱狂的なファン(柴田理恵、弘中麻紀、竹内晶子)に見つかり、迫ってくられそうになったので、リンダが運転席に移り立ち去りかけた車を追い掛け、飛び乗ってしまう。

そして、もう少し付き合うけど、11時半にはおさらばすると、リンダに言い渡す守山。

その頃、キャバレー「ファントム・レディズ」のオーナー田崎(笹野高史)は、警察署に戻った南部から、すでに佐久間の死体が発見され、捜査会議が始まるとの電話を受けていた。

苛立った田崎は、戸塚(柄本明)と大男の蒲谷(高野拳磁)、二人の子分に佐久間のヤサを探って、証拠品を見つけて来いと命ずる。

車でリンダが乗り付けたのは、佐久間が最近引っ越して来たばかりだと言うアパート「カツミ荘」、一緒に付いて降りた守山は、彼女が持っていた鍵ですんなり佐久間の部屋を開けたのを観て、二人の間柄を理解するのだった。

部屋の中には何もなく、守山がこんなものしかないと振ったゴミ袋の中から落ちた小さな紙にリンダは注目する。

それは、「75000円 犬山商会」と書かれた領収書だった。

75000円も出して買ったようなものは部屋には見当たらない。

取りあえず、何を買ったか、その店に行ってみようと部屋を出たところで、下から階段を登って来た蒲谷らに出会ってしまった為、二人は屋上に逃げる。

取りあえず、屋上の出口にバリケードを作り、時間稼ぎをした守山だったが、逃げ場がない。

リンダは、隣のビルへ飛び移ろうと言うが、そんな事は不可能と判断した守山は、自分のベルトを抜くと、隣のビルとの間にかかったアンテナ線に巻き付けて、リンダに自分にしがみつかせると、その線を滑って隣のビルの踊り場に移動する。

その際、テレビアンテナが傾いてしまった為、ビル内の一室で深夜放送を観ていた男(三谷幸喜)は、画面が急に乱れて移らなくなってしまったので困惑する。

無事、隣のビルに逃げおおせた二人に、屋上にようやくたどり着いた戸塚が「ちょっと待て!話がある!」と呼び掛けるが、もちろん二人が聞くはずもなく、そのまま逃げてしまう。

「深夜営業 犬山商会」と書かれた店を探し当てた守山とリンダが店の中に入ってみると、女主人らしき人物(もたいまさこ)がテレビを観ながら、まだ営業していないと愛想のない言葉。

どうやら、深夜営業と言うのは、深夜から始めると言う意味らしい。

無愛想な相手から話を聞き出す為、店のショーケースにあったマウスピースを一つ購入した守山は、領収書を見せて何を売ったか聞き出そうとするが、女主人は、これは亭主が売ったもので、自分には分からないと言うし、その主人とも連絡が取れないとの返事。

仕方がないので、店の名刺の裏に、自分のケイタイの番号をかき込み、連絡が付いたら電話して欲しいと頼んだリンダと共に、守山も店を出る事にする。

手がかりを失ったと思った守山だったが、リンダはもう一ケ所探す所があると言う。

その頃、警察では、車を乗り逃げされた女の子とその仲間が、犯人のモンタージュ写真作りに協力させられていた。

リンダがやって来た所が、彼女が働いている「ファントム・レディズ」だったのを知った守山は、さすがに危険すぎるから自分はもう帰ると言い出し、その場を立ち去りかけるが、リンダが無謀にも、一人で建物の非常階段を登って行く姿を目撃する。

地下鉄構内通路に入って帰りかけた守山は、ホームレスの段ボールハウスに蹴躓いてしまい、その中の奇妙な住人(名古屋章)から文句を言われる。

佐久間の部屋に忍び込んだリンダは、部屋の中がすでに荒されているのに気づくが、何とか証拠を見つけようと書類の山に手をかけかけるが、その手を押さえたのは、何と、戻って来た守山だった。

二人が、証拠を探そうとし始めた途端、隣のオーナーベやの灯が灯り、田崎と南部と大葉が入って来たので、二人は慌てて机の陰に身を隠す。

田崎は、証拠の帳簿の写しはあっさり見つけたと、刑事二人に見せつけながら、何も殺し等やる必要はなかったのだと文句を言っていた。

しかし、南部は、そんな分かりやすい証拠だけのはずがない。佐久間は死ぬ前「ばっちり…」と言ったが、その言葉が気にかかると言い出す。

そんな中、逃げ出そうとしたリンダが、机の上に積み上げてあった書類の束をうっかり落として音を立ててしまったので、隣の部屋の三人に気づかれてしまう。

守山とリンダは、店の中に逃げ込み、ちょうどマジックを披露していた手品師(小松政夫) の舞台に、裏側から上がって、ショーをぶち壊してしまう。

そこへ、拳銃を手にした刑事二人が乱入して来たので、客席は大パニック。

守山とリンダに言われるままに調理室に入り込み、ダストシュートの中に滑り込む。

追い付いた蒲谷は、身体が大き過ぎてダストシュートに入れない。

外に出たリンダは、以前もポリスの手入れがあった時、ここから店を抜け出した事があると説明する。

ちょうど、近くの屋台のラーメンを食べ終わった運転手(六平直政)がトラックに運転席に戻ったのを見かけた二人は、急いでその荷台に飛び乗るが、ちょうど外に出て来た蒲谷に見つかり、走り出したトラックに追い付かれそうになったので、二人で何とか、荷台に手をかけた蒲谷の手を殴りつけ振り落とす事に成功する。

一方、戸塚は、一人で車に乗り追跡を開始していた。

後ろから運転手に呼び掛け、車を停めてもらおうとした守山だったが、運転手はカセットに夢中で何も聞こえない様子、さらにトラックが、八戸など東北方面の高速に乗ってしまったのに気づき、もはや時間までにステージに戻る事が不可能と分かり絶望してしまう。

のんきに北へ行ってみたい等と喜んでいたリンダだったが、守山が今夜大切なステージがあり、そこで尊敬する人物と会うチャンスだった事を聞かされると、自分に付き合わせてしまった事を謝罪する。

諦めた守山は、そんな彼女に、先程購入したマウスピーズをプレゼントする。自分用のはちゃんと持っていたからだ。

その使い方を教えた守山に、リンダは急に「月の砂漠」を日本語で歌い出す。

佐久間から教わった曲で、一番好きな曲なのだと言う。

何時しか、守山はトランペットに自分のマウスピースを付けると、その歌声に合わせ演奏しはじめていた。

その演奏に気づいたのは、カセットの調子が悪くなっていた運転手。

トラックを停めると、荷台の二人を見つけ怒鳴り付ける。

その頃、「COTTON TAIL」では、クインテットのメンバーたちが、戻って来ない守山が屋上にいない事に気づき、心配しはじめていた。

トラックの運転手は、大のジャズファンだったようで、守山とリンダを運転席に乗せて東京に逆戻りしてくれていた。

すっかり上機嫌になり、ラジオを付け、ジャズを聞き出した運転手だったが、その途中で臨時ニュースが始まる。

逃走中の男女二人の事を話出した放送をごまかそうと、意味のない事を声高に話しはじめる守山とリンダ。

守山のモンタージュ写真は、テレビでも放送されており、それを観た犬山商会の女主人は、すぐさま亭主に電話し、夕べ75000円で売った商品を聞き出すと共に、パスポートを用意しておくように伝えた後、リンダに連絡を取ろうと名刺の番号にかけるが、表の「ファントム・レディズ」の店番号の方にかけてしまったので、出て来た蒲谷に、うっかり、売った商品はビデオだったと話し掛けてしまう。

相手の様子から、すぐに間違いに気づき、名刺の裏に書かれたケイタイの方にかけ直し、トラックのリンダに、佐久間に売った商品は、赤外線付きビデオカメラと、8時間連続で撮影できるバッテリーだったと教えた女主人は、逃走用にパスポートも用意してあると商売っけを見せるが、電話を替わって聞いていた守山は無視して切ってしまう。

そうした二人の様子をそれとなく観察していた運転手は、警察の検問に近づいている事を教え、二人とも悪者じゃなさそうだからと、手前で降ろしてくれる。

急遽恋人同士を装い、近づいて来たパトカーをやり過ごそうとした二人だったが、一旦通り過ぎたパトカーが二人を怪んだのか、バックして戻って来る。

証拠が見つかると、自分達の身の破滅になる事を知っている大葉と南部は、覆面パトカーの中で待機していたが、犯人発見の警察無線をキャッチ、幸いにも近かったその現場に急行する。

公園に逃げ込んだリンダは、今なら、まだステージに間に合うから、一人で逃げてくれと、言われた守山だったが、追って来た警官に見つかったので、そのまま自分が警官二人に組み付き、リンダを逃す。

その格闘現場に、駆け付けた南部と大葉は、警官たちに身分を明かし、何か言いかけた守山の腹を蹴り上げた後、自分達の車に乗せその場を立ち去る。

その頃、店内のビデオチャックをしていた田崎は、鎌谷がさっき、間違い電話だと言って切った電話の事を何気なく聞き、その意味を悟る。

その田崎から、電話でビデオの事を教わった南部は、人気のない暗がりに車を停め、大葉と守山を降ろすと、後始末を任せ、自分はビデオカメラナイフを取りに、ビデオで撮られていたに違いない取引現場の駐車場に車を向わせる。

ナイフを取り出して来た大葉から、逃げ出した守山は、工事現場に逃げ込むが、そこで待ち受けていた戸塚と挟み撃ちの形になってしまう。

しかし、戸塚は意外な行動を取る。

追って来た大葉を蹴り上げて倒してしまったのだ。

戸塚は、三ヶ月張込んでいた公安の戦友捜査官だたと、あっけに取られる守山に警察手帳を見せる。

次の瞬間、大葉が起き上がり、戸塚と取っ組み合いになったので、守山は、リンダと南部が向った取引現場の駐車場に走る。

その頃、先に駐車場に到着していたリンダは、車の下等を探していたが、やがて、天井近くに取り付けてあったビデオカメラを発見する。

戸塚は、何とか大葉を叩きのめし、警察に、公衆電話で通報していた。

「COTTON TAIL」では、他のメンバーだけで演奏を始める。

リンダは近づいて来た車に気づく。南部だった。

一方、守山も駐車場に近づいていたが、そこに蒲谷の車が突っ込んで来て、守山を轢こうとする。

車を降りて来た蒲谷と格闘になった守山だが、体格が違い過ぎ相手にならない。

しかし、油断した蒲谷にお見舞いした守山のパンチは効いて、蒲谷は倒れる。

守山のパンチの中には、マウスピースが握りしめられていた。

リンダは南部を逃れ屋上に追い込まれていた。

大きなネオンサインとビルの端の間に逃げ込んだリンダだったが、もう逃げ場はなく、近づいて来た南部は、リンダが手にしたビデオカメラを寄越せと迫る。

奪われまいと、ビルの上からビデオを落とそうと手を伸ばしたリンダだったが、証拠がバラバラになってしまうぞと南部に説得され、結局捕まってしまう。

しかし、次の瞬間、ネオン塔の下から南部の身体にしがみついて来たのは守山だった。

リンダにトランペットを預けた守山と南部の格闘が続く中、ビルの下に近づいて来た数台のパトカーと、そこから降り立った戸塚に気づいたリンダは、何とかこの場所を向こうに教えようと考え、手にしたトランペットを吹いてみるが、何も鳴らない。

マウスピースの事を思い出したリンダは、バッグの中から、トラックの中でもらったマウスピースを取り付け夢中で吹くと、やがて、何とか音が出るようになる。

その音に気づく戸塚。

しかし、格闘は、南部の方が優勢で、とうとう、取り出した拳銃を守山に突き付けていた。

次に瞬間、銃声が響き、銃を落としたのは南部の方だった。

戸塚が登って来て、いち早く発砲したのだ。

守山は、ビデオを渡すと共に、リンダを強制送還しないようにしてくれないかと戸塚と掛け合うが、戸塚は部署違いだからと困った様子。

その時、他のビルの屋上時計で、0時14分である事を知ったリンダは、守山にトランペットを渡して教える。

それを受取った守山は、マウスピースを外すと、又リンダに渡して去る。

クインテットの演奏が続いていた中、突如、客席から、トランペットを吹きながら守山が戻って来る。

演奏しながら、もう、G・Pは帰ってしまったと聞かされた守山だったが、チャンスは又あるだろう時にしない。

その曲が終わった守山は、まだ待っていてくれていたリクエストの女の帽子を借りると、それをトランペットにかぶせ、「月の砂漠」を演奏しはじめる。

その曲が流れる中、戸塚のパトカーの後部座席に乗せられたリンダは、後ろを見つめながら遠ざかっていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

イラストレーターで映画監督でもある和田誠さんの作品。

いかにも映画マニアの和田さんらしく、この作品も、どこかで観たような定番巻き込まれ型サスペンス設定ながら、音楽とスリルとユーモアが詰まった小粋な都会派作品になっている。

劇中の時間経過と上映時間が、ちょうど連動するような仕掛けにもなっている所もミソ。

デジタル処理で、複雑なカラーフィルターのように夜景の照明等を独特の色調に染め上げた画面も美しい。

脇役陣も渋い人ばかりだし、次々と登場する意外なゲストも楽しいし、話の展開もそつがなく、それなりに抵抗なく楽しめる内容になっているが、全体的には「通好み」と言うか、好きな人にはたまらないが、しろうとにはちょっと渋すぎる地味な世界かも知れない。

良くある設定だけに、何となく後半の展開が読めてしまうような所もあり、その分かりやすさを、監督の趣味と見るか、平凡と感じるかで、作品の評価も変わって来ると思う。

個人的には、わざとありふれたストーリーにしてみたかった、作者の好みと解釈した。