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恋の大冒険

1970年、オールスタッフプロ+テアトルプロ、山田宏一+渡辺武信脚本、羽仁進脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

東京へ向う夜汽車の中には、集団就職の女の子たちが乗っていた。

今野陽子(今陽子)もその一人。彼女は車窓の外を眺めながら、独り歌を口ずさんでいた。

上野駅へ到着。

彼女たちが働く事になる「迷竹(マエタケ)ラーメン」から迎えの早口男(土居まさる)が来ていた。

憧れの東京にやって来て、上野公園で踊る女の子たち。

陽子は、カバの絵が付いているシャツを着た男の子が、アヒルを抱えて泣いているのを発見する。

訳を聞くと、あのおじさんにつねられたと言う。

そのおじさんとは、ヒゲをはやした「迷竹ラーメン」の社長(前田武彦)だった。

早口男が説明するには、社長の御先祖が、カバを見に行って咬まれて以来、カバが大嫌いになったので、彼の前でカバと言う言葉は禁句なんだそうだ。

カズアキと言うその子供は、迷子になったのだと言うので、陽子は一緒に家を探してやる。

東京の町では、セールス競争に勝ち抜く為、ランニング姿でサラリーマン(エンディ山口)が走っている。

工事人に道を訪ねた子供は、穴掘り仕事に夢中なおじさん(ジョージ浜野)に土をかぶせられる。

背広姿の男(ルイス高野)が、路上で急に着替え出したと思ったら、靴磨きに変身。

ラーメン工場に着いた女の子たちは、オートメーションの機械の前で踊り始める。

その曲に重なるように、社長も歌を歌っている。

仕事が終わり、休日が明日になった陽子は、憧れの東京タワーに登りたちと一人でかけて行くが、満員電車の中で、集団スリに遭遇。

あろう事か、側にいた陽子自身が、そのスリと間違われ、駅に降りた上客たちから追求されてしまう。

しかし、一人の青年が本当のスリたちを捕らえ、駆け付けた警官(パンチョ加賀美)に渡す。

お陰で、陽子の疑いは無事晴れるが、その時、彼女は、助けてくれたハンサムな青年に一目惚れをしてしまうのだった。

その夜、女子寮に帰って来た陽子は、窓から部屋に入ると、今日、東京タワーの上から望遠鏡を覗いていたら、ここの迷竹社長を見つけたと話し出す。

社長は、ファッションモデルの由紀かおり(由紀さおり)の大ファンらしく、ビルの屋上に貼られた巨大ポスターの、彼女が写っている部分を剥ぎ取っていたと言うのである。

その後、やって来た警官が、三億円強奪犯人のポスターを貼って行く。

社長の悪口で盛り上がっていた所、舎監が早く寝るように注意しに来たので、彼女たちは一斉に布団に駆け込む。

その頃、盗んで来た由紀かおりのポスターが貼られた社長室では、迷竹社長が、額縁の裏にあるスイッチを押して、部屋の中を模様替えしていた。

そこは、たくさんのモニターが並ぶ、怪しげな指令室だった。

早口男と小男(小林正男)が、モニターの調節をしている。

まだ、女子寮の女の子たちが寝付いていないと言うので、迷竹社長は、テレビ番組を見始めるが、「夜のヒットスタジオ」の芳村真理が出て来たので、これは面白くないからとチャンネルを変える。

そんな迷竹社長、ラーメンが食いたいと言うので、小男がラーメンを持って来ると、その中にコンピューターのICチップが入っていた。

そのICチップを、機械に取り付けると、ようやくコンピューターが正常に働きだし、女子寮の女の子たちも全員熟睡したと言う。

さっそく、迷竹社長は、催眠テープを女の子たちに聞かせるよう、子分二人に命ずる。

女子寮の中に秘密のスピーカーが備え付けられていたのだ。

女の子たちは、社長に忠誠を尽くすような文句を頭に吹き込まれ、やがて、夢遊病者のように、部屋の中をふらつきはじめるが、何故か、陽子だけはまったく催眠テープが聞かないようで、すやすやと眠り続けている。

同じ頃、自然丈博士(左卜全)と、動物園の獣医獅子野(大矢茂)は、カバのザブ吉を不眠症に陥れている怪電波の出所を探し出そうと苦心していた。

ある日、外で撮影をしていた由紀かおりの元へやって来た迷竹社長、迷惑がるマネージャーも気にせず、かおりに花束と、フランス語を練習中だと言う彼女の為にと、睡眠学習用のフランス語のテープを渡す。

その夜も、ラーメン工場では、早口男と小男が、秘かに、催眠用のテープを製造していた。

そんな工場にやって来たのは、女子寮から忘れ物をしたと言う女の子に付き添って来た陽子。

怪しげに点滅する室内の様子を窓から見て、女の子は逃げてしまうが、陽子は平気で中に侵入、中にいた迷竹社長とぶつかってしまう。

慌てた迷竹社長、テープの秘密を知られたと、早口男と小男が陽子に陽子を追い掛けさせるが、陽子は二人をまいて、何とか工場から逃げ出すのだった。

翌日、以前、上野で迷子だったカズアキとその友達たちが、皆、動物の絵の付いたシャツ姿で踊っている所に遭遇した陽子は、獅子野さんに紹介してあげると動物園に連れて行かれるが、そこで出会った獅子野なる青年が、満員電車で、彼女をスリの疑いから晴らしてくれたあの青年だった事が分かり、嬉しいやら照れるやら。

職を失った事を知った獅子野は、動物園で働かせてくれと頼む彼女に、ここは予算がないのでと断わるが、君は歌が歌えるかと尋ねて来る。

カバガールの仕事があるのだと、紹介状を渡された陽子は、大喜びで、その職場に向う。

電車の中で、目の前の席に座っていた学生(松山省二)に、カバーガールって何ですか?と聞いた陽子は、雑誌の表紙等に使われる写真のモデルだと教えられ、有頂天になる。

東京タワーの中にあるテレビ撮影準備中のスタジオにやって来た陽子は、セットの中で浮き浮きした気分のままタップをはじめ、やがて、カバーガールとしての夢見る世界を歌いはじめる。

しかし、その歌は、小さな女の子と男の子コンビがやって来たので中断する。

彼らは「ちびっこカウボーイ」と言う歌をリハーサルで歌いはじめる。

ディレクターらしき男に、自分は、獅子野さんからの紹介で、カバーガールとしてここへ来たと説明した陽子だったが、相手は意味が分からない様子。

アシスタントが獅子野とは、動物園の獣医だと助け舟を出して来たのを聞いたディレクターは、ようやく事情が分かったらしく、陽子を録音スタジオの方へ向わせる。

そこでは、動物アニメのアテレコが行われていた。

改めて、アテレコ役者のメンバー(熊倉一雄、山田康雄)に紹介された陽子は、いきなり、カバのアニメの吹替えをやらされる事になる。

最初は、要領が分からず、戸惑いながらはじめた彼女だったが、次第に要領を覚えて来て、スムースに歌えるようになる。

翌日、仕事の報告をかね、獅子野に会いに行った陽子は、風邪をひいた象のデカコに乗せてもらったりする。

カバのザブ吉に、昨日歌ったアニメの歌を聞かせると、何故か、ザブ吉は気持ち良さそうにぐっすり眠り込んでしまう。

その後、獅子野とソフトクリームを食べながら、ブランコに乗った陽子は、自然丈先生の家に連れて行ってもらえる。

小さな自然丈博士の家の中では、娘のナオミ(相良直美)が、父親の為に大好物のとろろを用意していた。

アニメの仕事の事を聞いたナオミは、あの歌は気に入ったと言う。

何と、あのカバのアニメの原作者は、このナオミだったのだ。

そのナオミが、屋根の上に上がって歌を歌いはじめ、自然丈博士が、日課の体操をはじめたので、二人は帰る事にするが、その際、博士が獅子野に、かおりとの事をまだ忘れられないのかと尋ねているのを聞いた陽子はショックを受けてしまう。

どうやら、かおりとは、憧れの獅子野の恋人らしい。

彼女の心のように曇った空から雨が落ちて来た中、獅子野は、自分のジャンパーを彼女にかけて一緒に駅まで送ってくれた。

その時、帰って行く獅子野が落とした定期入れを拾った陽子は、その中に納めてあった獅子野とかおりらしき女性のツーショット写真を見つける。

アパートへ戻った獅子野は、かおりとの想い出の写真を二つに引き裂いていた。

そして、かつて、楽しく、港をデートした時の事等を思い出していた。

その想い出話をぐしょ濡れになりながら窓の外で聞いていた陽子は、彼女の存在に気が付いた獅子野に、定期入れを届けに来たと告げ、上がらせてもらう。

そんなに仲が良かった彼女が急に態度が変わったのには何か理由があるに違いないと、おせっかいにも、最近、彼女の態度に変わった事はなかったかと聞いた陽子に、獅子野は、フランス語の催眠テープを聞いているようだと答える。

それを聞いた陽子は、迷竹ラーメン工場で怪しいテープを製造していた事、そこの女子寮で、女の子たちが皆、催眠術にかかったようなおかしな顔になっていた事を打ち明ける。

翌日、その迷竹社長が、由紀かおりと出会っていた喫茶店に一人乗り込んで来た陽子は、かおりに、獅子野との事を聞いてみるが、何故かかおりは、全く獅子野の事など覚えていない様子だった。

その日も、迷竹ラーメン工場では、迷竹社長が催眠テープの新作録音を続けていた。

そして、小男に、いつものように新しいテープをかおりに届けた時には、証拠が残らないように、必ず古いテープを回収して来るように命ずる。

その頃、陽子は獅子野に、かおりに会いに行ったが、まるで催眠術にかかっているようだったと報告していた。

それを聞いた獅子野は、怪電波の発信源らしいと判明した迷竹ラーメンには、前にも抗議に行ったが、問答無用で追い返されたので、今度、公聴会を開いてもらう事になったと打ち明ける。

獅子野や陽子、カズアキら子供らが聞く中、調査委員の田田羅(多々良純)を前に始まった公聴会では、巻留変名博士(藤村有弘)なる人物が、歌いながら、公害の疑い等ないと、自然丈博士の理論を否定し始める。

自然丈先生も、必死に自ら導き出した理論を公式化して黒板に書いて行くが、結局、両者の意見を聞いていた田田羅委員は、公害等なかったと結論付けてしまう。

これには、獅子野や子供達は納得行かず、会場に乱入して、阻止しようとした警官をくすぐりはじめる。

かおりとの結婚が間近に迫った迷竹社長は、結婚式用のタキシードを新調していたが、早口男が、これまで付き合って来た女の後始末をしなければまずいのではと進言していた。

手切れ金を渡せと言う迷竹社長に、女たちは誰も、ラーメン1000個じゃ承知しないと早口男は伝える。

自然丈博士は、陽子にテープを取って来れないかと持ちかけていた。

かおりの家に、覆面をして忍び込む空想をした陽子だったが、迷竹ラーメン工場の方からだと言われる。

陽子は、獅子野のためだったら何でもやると意気込む。

かおりの方も、ブティックでウエディングドレスの注文をしていた。

そんなかおりの元へやって来た獅子野だったが、彼の顔を見ても、かおりは全く思い出せない様子。

そんなかおりに近づいて来た小男は、又新たな花束とテープを渡して帰る。

陰で待ち伏せしていた陽子は、その小男の後を付けはじめる。

小男の方も、陽子が付けて来ている事は気づいており、工場に帰りつくや否や、指令室の潜望鏡を降ろし、早口男と共に工場に侵入した陽子の様子を探りはじめる。

しかし、陽子を罠にかけようと落し穴に落とすが、落ちて来たのは小男の頭上。

二人の子分が怯んだ隙に、陽子はテープを奪って逃げ出す。

自然丈博士の家にやって来た陽子は、跡形もなく壊れた家の中で、黒焦げになった博士を解放しているナオミの姿を見つける。

実験に夢中になり、大爆発を起こしてしまったのだと言う。

結婚指輪用のダイヤ選びをしていた迷竹社長は、どうせ相手は、自分の言いなりなんだから、5000円の模造品で良いと、大きなイミテーションダイヤを購入するが、そこに、捨てた女たちが乱入して来たので、ホウホウの態で町を逃げはじめる。

その迷竹社長に、小男がテープを盗まれたと報告しに来るが、何時の間にか、追い掛けて来る人数が増えてしまい、町は大混乱。

そんな迷竹社長の本性をかおりに見せようと、彼女を連れて来るが、ビルの屋上に追い込まれた迷竹社長の姿を見たかおりは、幻滅するどころか、そんな迷竹社長に帰って同情する始末。

その姿を見た獅子野は、がっかりしてしまい、自然丈先生の家に行ってしまう。

そこへやって来たのは、ロングヘヤーになった陽子、これから変装して迷竹社長の結婚式に潜入すると言う。

632名もの来客の中、始まった結婚式では、田田羅が挨拶に立つと、客たちが話も聞かず、一斉にラーメンをすすり出していた。

その頃、動物園のカバ、ザブ吉は、檻を抜け出し町に出ていく。

結婚式で、迷竹社長の本性をばらそうとした陽子だったが、早口男に止められてしまう。

やがて、そんな結婚式場にザブ吉が現れ、ガラス窓を壊し中に侵入して来る。

カバが大嫌いな迷竹社長だったが、その大嫌いなカバのザブ吉に飲み込まれそうになる。

早口男と小男が、慌ててコショウを大量に振りまいたので、飲み込まれかけていた迷竹社長は、ザブ吉のくしゃみと共に口から飛び出る。

会場に駆け付けた獅子野は、ザブ吉の乱入で跳ね飛ばされ、床に倒れていたかおりを助け起こす。

すると、気づいたかおりは、獅子野の事を思い出すのだった。

後日、吹替えの仕事を首になったと、獅子野のアパートに報告に行った陽子は、すっかり元に戻ったかおりが遊びに来ている事を知る。

近く、貧しい獣医の妻になる為、今から倹約生活に慣れなけりゃと言いながら、焼き芋を買って来たかおりの姿を見た陽子は、はっきり自分の失恋を悟り、故郷に帰る事にする。

動物園に戻ったザブ吉に別れを告げ、列車に乗って東京を後にしたかおりは、上京して来た時のように、独り歌を歌いはじめるが、窓の外を見ると、アニメのカバ君が追って来るではないか。

何とか、そのカバ君に追い付くように、列車から祈っていた陽子だったが、カバ君は、列車の後を追って線路の途中まで追い掛けて来るが、とうとう立ち止まってしまう。

画面には「終」の文字が出るが、カバ君は、その文字を食べてしまう。

すると、列車から降りて来た陽子が近づいて来て、カバ君と一緒に踊り始める。

やがて、東京で仲良くなった子供達や女の子たちが駆け寄って来て、皆で一斉に踊り出すのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ピンキーとキラーズのピンキーこと、今陽子主演のミュージカルファンタジー。

当時、19才くらいだったピンキーだが、画面上ではかなり幼く見える。

「君も出世ができる」(1964)の興行的不振以来、日本のミュージカル映画は衰退した…と、一般的には言われているようだが、本作は、なかなかはじけた面白い作品に仕上がっている。

ファンタジーと言うか、ナンセンス要素が中心なので、「君も出世ができる」に比べると、かなり子供っぽく見える内容になっているが、当時の世相を風刺する要素なども交えてあり、逆に破天荒な楽しさに満ちあふれた、大人のお遊び映画とも言える。

懐かしい顔ぶれのオンパレードだが、ピンキーが憧れる獅子野役を演じているのは、「二代目若大将」こと大矢茂。

多々良純や左卜全まで歌っている中、メインの彼が全く歌わない所を見ると、相当、歌が苦手だったと見える。

彼主演の「若大将」シリーズがなかったのも、その辺に原因が有るのかも知れない。

往年の山田真二を思わせる、長身で甘いマスクの好青年である。

劇中で登場するアニメは、和田誠さんのキャラクターを虫プロが動かしている。

その声優を勤めている男女二人づつのアテレコ役者たち、熊倉一雄はタイトルに名前が出て来るが、後の三人は「テアトルエコー」と、タイトルの最後の方に出て来るメンバーだろう。

痩せたもう一人の青年の声は、あきらかに、若き日のクリント・イーストウッド。

もちろん「ルパン三世」こと山田康雄さんである。

映画に、役者として登場しているのは珍しい。

そのアニメのカバ君と、今陽子が踊る最後のシーンは、「トムとジェリー」のジェリーとジーン・ケリーが踊るシーンで有名な「錨を上げて」(1945)を意識したものではないだろうか。

他にも、灘本唯人氏や山下勇三氏ら、当時の人気イラストレーターたちの手になる絵を背景セットにした踊りのシーン等もあり、時代を感じさせる。

劇中で大活躍するカバのザブ吉は、もちろん作り物だが、今観ても、ちょっと観、本物と勘違いしそうな程、良く出来ていると感心させられる。

劇中で、迷竹こと前田武彦が「夜のヒットスタジオ」の芳村真理を観て、これはつまらないと貶しているのは、自分が彼女とコンビで司会者だったため。

当時、「コンピューター占い」で、ゲスト歌手たちの恋人を選んで話題になっていた頃だと思う。

寝ている時、テープを聞いて覚える睡眠学習など、当時流行りだったものを取り入れたアイデアが、今となってはレトロと言うか、懐かしい。

「TVジョッキー」の土居まさるや「世界は二人のために」の相良直美の姿等、今観ると、懐かしいと言うより愕然とさせられるくらい。