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機関車先生

2004年、「機関車先生」製作委員会、加藤正人+及川章太郎脚本、廣木隆一監督作品。

この作品は比較的最近の作品ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので御注意下さい。コメントはページ下です。
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離島である葉名島の小学校長、佐古周一郎(堺正章)は、昔、この学校の卒業生であり、その後、島を出て北海道に移った吉岡フミ子(寺島しのぶ)の母親から届いた手紙を読んでいた。

剣道の事故で、声を失った息子の誠吾が、そちらの学校の代用教員として採用してもらえて嬉しいと言うお礼の内容だった。

狂死を続ける事に自信を失ってた息子が、自分が生まれ育った島で、立ち直るきっかけをつかんでくれれば…と結んであった。

その吉岡誠吾(坂口憲二)が、一人漁船に乗って葉名島にやって来る。

その様子を、丘から双眼鏡で覗いていた西本修平は、大きな先生が来たと網元の息子、美作満に双眼鏡を見せる。

その横にいた丘野洋子は、昨日観た夢の話をしている。

修平と満は、学校に偵察に言ってみる事にする。

校長室にやって来た誠吾は、佐古から挨拶を受け、その度に深々とおじぎを返していたが、一言も喋らない。

その様子を、外から覗き見していた修平は、校長に見つかったので逃げ去り、駄菓子屋に集合していた他の子らに、新しい先生は口を聞かんと報告する。

口を聞かん先生?…だったら、機関車先生だと、すぐにあだ名が決まってしまう。

誠吾は、下宿先となる阿部産婦人科のよねバア(倍賞美津子)の家に校長に連れて来られるが、校長が声をかけても誰も出て来ない。

一緒に付いて来ていた修平が、よねバア!と大声で叫んで、ようやく当人が出て来る始末。

新しい先生が、阿部先生の所に泊まると知った女の子たちは、気軽に行きやすいので嬉しがるが、修平は、阿部先生は、酒を飲むとトラになるから怖いと生意気な事を言う。

その夜、佐古を交えての阿部家の夕食時、よねは、誠吾の父親になる吉岡達也と佐古校長は同級生で、佐古も誠吾の母親のフミ子が初恋の相手だったとばらしてしまう。

4月7日、はじめて教壇に立った誠吾は、黒板に、「ぼくは、はなすことができません。でも、みんなといっしょにべんきょうします。」と書くと、思わず、ミホ子が「機関車先生」と呼び掛ける。

付き添っていた佐古は、それを聞き、失礼じゃないかと叱るが、教室の後ろに飾られた機関車の写真を見た誠吾は、「機関車先生です。ありがとう」と黒板に書く。

今度は、生徒たちの自己紹介となり、歌が大好きで、蛇が嫌いと言う井口タエ子、読書やテレビが大好きと言う美作満、野球が大好きで、父親は葉名島一の漁師だと自慢する西本修平、絵を描くのが大好きと言う丘野洋子らが名乗るが、教室内に飾られていたその洋子が描いたファンタジックな絵を見た誠吾が、「ぼくは、このえがすきです」と黒板に書いてくれたので、洋子はいっぺんに先生の事が好きになる。

学校が終わった修平は、漁から帰って来た父親の船を出迎えに行く。

一方、花を摘んで、機関車先生の所へ向っていた洋子は、坂道で転んでしまい、下駄の鼻緒が切れてしまうが、たまたまそれを見かけた居酒屋「どら」の女将で、洋子の叔母に当るよし恵(大塚寧々)が、鼻緒を直してくれる。

その時、洋子は、どうして大人はお化粧するの?と、よし恵の化粧に興味津々の模様。

そして、新しい先生は、自分にとって銀色の王子様やと嬉しそうに報告する。

数日後、誠吾の弾くオルガンに合わせ、生徒たちが童謡を歌っていると、ミツルが大好きな「月光仮面」の歌を歌い出したので、誠吾もそれに合わせてやる。

そうした授業の様子を、外から窓越しに眺めていた老人がいた。

それに気づいた佐古校長が、御紹介しましょうと声をかけるが、老人は去って行く。

後から、誠吾に説明した所によると、学校に来たのは、フミ子の父親、つまり、誠吾の祖父に当る児玉兵右衛門(笑福亭松之助)だそうである。

子供達が海岸にスケッチに出かけた時、一緒に付き添った佐古校長は、誠吾に、祖父と誠吾の両親の関わり合いに付いて教える。

江田島の海軍兵学校出身の吉岡達也が、フミ子の相手として島にやって来た時は、祖父も大喜びだったそうだ。

ところが、ある晩、そんな祖父と達也が、満州事変に関して大論争になってしまい、米英と戦えば、必ず負けると言う達也の意見に激怒した祖父が、二度と島に来るなと追い返してしまったそうなのである。

結局、その夏、フミ子は達也と共に島を離れ、二度と戻って来る事はなかったと言う。

その時、沖合いから戻って来た小舟に乗った男に、佐古が、誠吾を紹介すると、相手は驚いたような顔で誠吾を見つめた。

あの男は、フミ子と達也が島を出る時、二人を船に乗せて行った、兵右衛門の下で働いていた作造だと佐古が誠吾に告げる。

何時の日か、戦争のない時代になった時、一番必要になるのは教員だと、かねがね口にしていた達也だったが、戦争で帰らぬ人となる。

ある日、網元の美作重太郎 (伊武雅刀)が、口がきけない男に教師等勤まるかと、学校に抗議に来る。

佐古は、誠吾の授業を見て行ってくれと誘うが、美作は帰ってしまう。

その夜、よね婆は、若い頃のフミ子の写真を誠吾に見せてやる。

よし江がやっている「どら」では、美作とその子分が、貸した金を返さないと、船を取り上げるぞと、修平の父親である西本に絡んでいた。

西本は、何としても金は返すので、船だけは取り上げないでくれと頭を下げて帰って行く。

そこへ誠吾を連れて来れて来たよね婆が、洋子の叔母であるよし江に紹介していると、美作の子分が「バチがあたったんだ」と誠吾に絡んで来る。

どうやら、誠吾は、島を捨てて行ったフミ子の子だから、そのバチがあたって口がきけなくなったと言いたいらしい。

後日、学校での授業参観の日、美作も他の父母と共に授業を見ている。

そんな中、手話で挨拶をした誠吾は、スライドを見せ始める。

それは、「くすのきとイブン」と言うお話で、とある島で、誰も話し相手がいなかったイブンと言う少年は、動物や鳥や木と話す事が出来た。

ある時、島で一番大きな楠を、船に使う木材にしようと切りに来た漁師がいたが、楠はイブンに、やがて、自分は島にとって必要になるから切らせないでくれと頼み、イブンはそれを漁師に伝えて、切るのを止めさせる。

やがて、津波がやって来るので、島民たち全部を自分に縛り付けてくれと楠が言い出したので、イブンは、それを島民たちに伝え、全員、身体を楠に縛り付け、その結果、津波が来ても、助かる事が出来た。

嵐が去った後、イブンの姿は消えていた…と言う話だった。

誠吾は黒板に「このはなしのいみがわかりますか」と書く。

生徒たちは、イブンは死んだのかどうかで意見が別れるが、聞いていた父母の中には、この話を知っている者がいた。

昔から、葉名島に伝えられていた話だったのだ。

そんな中、美作は「不吉な話しよる」と言い捨てると、子分と一緒にさっさと帰ってしまう。

その日、誠吾は、葉名島に昔からある大きな楠の樹皮に手を置いて、何事かを聞くかのような姿勢でジッとしていた。

シュウヘイは、漁から帰って来た父親とキャッチボールをしながら、将来は野球選手になりたいと夢を語ると、長嶋みたいになれと励まされる。

ある日、剣道を教えていた佐古が、誠吾に、この学校の卒業生で、今、広島の中学に通っている淳三という少年を紹介する。

淳三は、誠吾に、剣道の名手だそうですねと聞いて来るが、それを聞いていた修平たちは、にわかに信じられない。

そこへ、佐古の娘で、欅学園と言う身体にハンデを持った子供らが通う学校で教えている美重子(佐藤匡美)が、手作りの給食を持って来る。

その美重子は、帰り際、手話で誠吾に、母亡き後、再婚しない父親の事が心配で結婚できないと冗談めかして教える。

ある日、東シナ海で発生した台風で、西本と淳三の父が乗った船が遭難したと言う報告が漁協に入る。

修平が駆け付けて来ると、母親が号泣し始める。

やがて亡くなった西本と淳三の父の葬式が行われるが、焼香する為、母親に手を引かれ、仏前に進みでた修平は、親父は死んでなんかいない、葬式等するな!皆が探してくれないなら、俺が一人で探しに行く!と出席者たちに怒鳴りはじめる。

それを聞いていた漁師仲間は、そうしたいんだったら、早く一人前の漁師になれと諭す。

修平は、突堤に走って行き、それを追って来た誠吾に、むしゃぶりつくのだった。

その後、淳三が、借金を返す為、働きに出る事になったと、佐古と誠吾に挨拶に来る。

佐古は、自分の古い竹刀を吉岡先生が張り直してくれたものだと言って、竹刀を淳三に贈る。

誠吾は、淳三に向い、山の形を描き、それを真ん中で切る真似をしてみせる。

難関に立ち向かって行けと言う意味だと、佐古が解説する。

ある日、満が修平に大変だと呼びに来る。

二人が駆け付けてみると、美作の子分が、誠吾に因縁を付けている所だった。

しかし、誠吾は相手が手を出して来ても、無抵抗なままだった。

それを見ていた修平は、先生は弱虫だ!父ちゃんだったら、捻り潰していたとなじる。

誠吾が、子分に痛めつけられるだけで何の抵抗もしなかった、剣道の達人のはずなのにおかしいと言う噂は、たちまち学校の子供達に広がり、その話声は、佐古校長の耳にまで届いていた。

図工の時間、誠吾は、自前で購入した絵の具を生徒たちに配り、本土の小学校でコンクールがあるので、自分の好きなものを絵に描くように勧める。

しかし、独り修平は、そんなもので買収されないし、描きたい者等何もないと抵抗する。

すると、誠吾は、黒板に「幸正丸」と書く。それは、修平の父が乗っていた船の名だった。

そして、誠吾は、自分の胸に手を置く。

修平の心の中に、幸正丸はあるはずだと言う事だった。

それでも、修平は、機関車は腰抜けだと叫ぶ!

それを教室の脇で聞いていた佐古は、自分の教え子たちが大勢戦争で死んだ…と話しはじめる。

満、どうして戦争は起きるのか?と聞くが、誰も答えられない。

今度は修平に、石を投げられたらどうする?と問いかける。

すると、修平は、投げ返すと答える。

又投げ返されたらどうすると聞くと、又投げ返すと言う。

何故そうするのかと問うと、憎いからやと答える修平に、それが戦争の始まりやと佐古は教える。

人間の心の中から、戦争は始まる。大きくなったら、我慢ができる人間になって欲しいと佐古は言い聞かすのだった。

しかし、弱虫になりとうないわ!と修平は、教室を飛び出して行く。

生後が探していると、修平は講堂で、独り竹刀を振り回していた。

修平は、誠吾に竹刀を突き付けて来るが、ゆっくり自分の竹刀を持って来た誠吾は、あっという間に、修平の竹刀を弾き飛ばしてしまう。

本土の小学校に、コンクールの結果を見に出かけた吉岡と生徒たちは、全員の絵が一回廊下に貼り出されておりすぐに、その中に、修平が描いた「幸正丸」の絵も見つける。

だが、洋子の絵だけがない。

心配した全員が、二階に登ってみると、そこに「おめでとう」と書かれた文字と共に、入選作として、空を飛ぶ機関車を描いた洋子の絵が貼り出されていた。

その後、子供達の間に、精霊流しが終わると、先生がいなくなると言う噂が流れる。

教育委員会から連絡があったのだと言う。

子供達は、すぐさま網元の美作が告げ口したのではないかと噂するが、満は否定する。

よね婆の所に相談に行った女の子たちは、按摩をさせられながら、先生を島に残すには、嫁を探して島で暮すようにすれば良いと教えられる。

なんなら、自分が嫁さんになってあげても良いと言い出したよね婆は、まんざら冗談でもなさそう。

洋子は、よし江の所に出向き、自分にお化粧をして欲しいとねだる。

口紅を付けてもらった洋子は、自分はおばちゃんも機関車先生も好きだから、結婚してくれへんと突然言い出す。

面喰らったよし江は、先生は自分にとって高嶺の花やと笑う。

しかし、洋子には、高嶺の花と言う意味は分からなかった。

「どら」のおばちゃんはダメだったと報告しあう子供達。

すると、修平が、美重子がいると言い出す。

何時の間にか、修平は、機関車の味方になると言うようになっていた。

浜辺に佇んでいた誠吾の元に美重子がやって来る。

どうやら、二人とも、子供たちに騙されてここで落ち合わされたと気づく。

美重子は、生徒たちは先生の事が好きだから、こんな事をしたのだと打ち明け、うちの生徒たちは、ずっと重いものを背負わされているが懸命に生きている。先生は、話せないからこそ、私より優しくする事ができるのだと話かける。

誠吾は、自分はこの島を最後に教師を辞めるつもりだったが、前の学校に戻ってもう一度やり直そうと思うと決意を手話で聞かせる。

それを知った美重子は、北海道で立派な先生になって下さいと握手を求めて来る。

精霊流しの夜がやって来た。

修平は、自分の父親の名前を書いた精霊と一緒に持って来た、「吉岡たつや」と書いた精霊を、先生も子供の頃、父親が戦死した事を校長から聞いたと言いながら誠吾に手渡す。

二人一緒に精霊を海に流しながら、修平は、人が死んだらどこに行くのかと聞いて来る。

誠吾は、海の向こうを指差した手を空に向け、「星になるのか?」と言う修平に向い、その手を自分の胸に持って行く。

胸の中にいると言いたいのだが、修平はよう分からんのう…と呟く。

ある日、佐古校長は、美作の家を訪れ、誠吾を、剣道の代表選手にしてくれと頼んでいたが、他所もんを代表にはできんと一喝され、すごすごと帰る事になる。

その時、本土から瀬戸内新聞の記者が取材できたと、子分が美作の元に案内して来る。

新聞記者は、誠吾が試合に出るそうだが、学生時代全国大会で優勝した面打ちの吉岡を出して来るとなると、常連のたくみから優勝旗が葉名島に渡って来るかも知れないと一方的に話して来る。

それを聞いた美作は、慌てて玄関を飛び出すと、帰りかけていた佐古校長を飛びとめるのだった。

しかし、剣道大会への出場を勝手に申告していたのは佐古の独断であり、後にそれを知らされた誠吾は頭を下げる。

出ないと言う意思表示だった。

やはり、剣道で声を失った事が尾を引いているのか。

佐古は、差し出がましい事をして、君を傷つけてしまったのなら、お詫びしますと頭を下げ返す。

その噂を聞いた修平も、親のない子でも強いんだと言う所を見せる為、試合に出てくれと懇願するが、誠吾の態度は変わらなかった。

他の子供達は、やはり、機関車は腰抜けだった、憶病者だったと揶揄する。

下宿先のよね婆も、子供達は先生の事が好きなのだから、期待を裏切らんでくれと頼む。

すると、ようやく決意したのか、誠吾は正座して、よね婆に頭を下げる。

やがて、海岸をランニングする誠吾の姿があった。

本土での第18回瀬戸内剣道大会、佐古と子供達、よね婆、美作や淳三も見に来ていた。

試合は予想通り、優勝常連のたくみと誠吾が勝ち進んで行き、決勝戦は、両者の対決色が濃厚になって行く。

そんな様子を見て取ったよね婆は、心配する美作に近づくと、誠吾に勝たせる方法があると耳打ちする。

それに飛びついた美作だったが、よね婆は交換条件として淳三の借金をチャラにしろと言い出す。

その後、よね婆が、誠吾に耳打ちしたのは、先生の嫁になってやっても良いと言う冗談だけだった。

決勝戦は、やはり広島たくみだった。

相手は、誠吾が突きで声を失った事を知っているのか、執拗に、突きで攻めて来る。

誠吾は、やはえい、突きを怖がっているようで、逃げているうちに右手を痛めてしまい、このままでは時間切れになってしまう。

淳三は、どうして先生は、小手や胴を攻めないのかと、そうすれば簡単に一本取れそうなのにと、佐古に問いかけるが、佐古は、先生は、自分らしい勝ち方で決着を付けたいのだろうと教える。

誠吾はその後も押され気味のまま終盤を迎え、このままでは判定負けになってしまうと、修平たちは焦る。

そんな中、淳三は誠吾に、山の形を手でかたどり、それを真っ二つにするジェスチャーを示してみせる。

佐古校長は、勝手も負けても、先生の最後の姿を目を離さず全て見ているんですと言い聞かせる。

誠吾は、左手一本で竹刀を握りしめ、迫って来る相手の面に一本を決めて優勝する。

その姿を窓の外から見ている祖父の姿があった。

島に帰り、「どら」での祝勝会、誠吾に頭を下げる美作の子分の姿があった。

ゆね婆が、自分が取り上げた子だから、これまでの事許してやってくれと頼む。

佐古は、今、兵右衛門さんからもらったと言って、一升瓶を持って来たので、すぐに外に飛び出した誠吾は、帰りかけた兵右衛門から、立派な試合だった。今度来る時は、母親と一緒に来たら良いと言われ、又、頭を下げるのだった。

駄菓子屋の前に集まった子供達は、今日、作造の船で先生が帰ると噂していた。

満の父親が追い出したと修平が言うと、満は、そんな事はない、親父は、いつまでも島にいて欲しいと言っていたと反論する。

しかし、修平は、おれたちに何の相談もなく出て行くとは許せないと憤っている。

その頃、誠吾は、誰もいない教室で机や壁の絵を見ていた。

最後に、後ろの壁にかかった機関車の写真を見ると、教壇の前に立ち、頭を下げる。

そこへ、佐古が迎えに来る。

駄菓子屋の前に集まって動こうとしない子供達の所へやって来たゆね婆は、先生はお前たちの親のようなもの、離れても、子供の顔を忘れるはずがないと言い聞かす。

それを聞いた子供たちは、見送りに行くと言い出し、我勝ちに学校へと走り出す。

船を動かす作造に、誠吾のたっての希望だといい、30年前と同じコースで帰ってくれと頼んだ佐古は、船に乗り込んだ誠吾に向い、何時の間に覚えたのか、手話で、フミ子さんによろしくと伝える。

学校にやって来た子供達は、黒板いっぱいに書かれた誠吾の別れの言葉を読み、大楠のところへ行けば、まだ間に合うかも知れないと全員走り出す。

大楠の所にやって来た子供達の予想通り、作造の船に乗った誠吾の姿が見えて来る。

泣きながら、先生に呼び掛ける子供たちの姿に気づいたのか、作造は船を停め、誠吾は、手話で「ありがとう」と伝える。

それを読み取った子供たちも、独り独り、手話で「ありがとう」と返すのだった。

それを見た誠吾は、又、静かに頭を下げる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

伊集院静原作の映画化で、どこかしら「二十四の瞳」を連想させる、瀬戸内の離島での、子供達と先生との心の交流を描く感動物語になっている。

アニメ版(1997)に継ぐ二度目の映画化である。

ここでは、子供達に、戦争の愚かさを繰り替えさせないメッセージ、親を失っても強く生きるメッセージなどが込められていると同時に、怪我をして自信を失った誠吾の方の成長物語にもなっている。

主役を演じる坂口憲二も好ましいが、誠実な校長役を演じている堺正章や、言葉少ない兵右衛門を演じている笑福亭松之助、よね婆を演じている倍賞美津子などが印象に残る。

しかし、何と言っても、この映画の主人公は子供達だろう。

やはり、最後の別れのシーンには泣かされてしまう。

派手さはないが、清清しい気持ちにさせられる一本。


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