1966年、東宝、松山善三脚本、成瀬巳喜男監督作品。
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パチンコ屋の床に落ちた玉を拾い集めた子供、武が、一人の青年の台に入れてやる。
それに気づいた青年弘二は、甥っこである武を連れて姉が勤める中華料理店「楓林」へ引っ張っていく。
弟弘二から、武がパチンコ屋にいたと聞かされた姉伴内国子(高峰秀子)は、又、幼稚園で何かあったねとタケシを叱る。
5才になる武は、洗浄作業中、事故死した夫が遺してくれた唯一の宝物だった。
そんな武を可愛がる国子の姿を観ていた「楓林」の中国人女将(出雲八重子)と店員(浦山珠美)は、本当に子供は可愛いものだと目を細める。
レース場で、新型バイクの試験走行を視察していた山野モーターズの柿沼専務(小沢栄太郎)は、その仕上がり振りに大満足だった。
研究員の黒金(土屋嘉男)や、他の重役陣と共に、この八ヶ月間の苦労を互いにねぎらいあう。
これで、ライバル会社極東も愕然とするだろうし、アメリカのインターナショナル・モーターズとも提携の可能性が出て来たと、重役(十朱久雄)も満足げ。
専務の部下の川島(加東大介)が、新型バイクの名は「ジェミニ・ブルースター」にしたらどうかと提案する。
久々に休養を取ろうと考えた柿沼は、家にいる妻の絹子(司葉子)を呼出すが、電話に出たお手伝いのふみ江(賀原夏子)が、奥様はバザーの打合せのため学習院へ出かけていると言うので、近々、箱根に息子の健一を連れて旅行に行くので伝えておくようにと伝言する。
その頃、その絹子は、若き愛人の小笠原進(中山仁)と喫茶店で逢い引きしていた。
小笠原は、この不倫関係を清算しようと、ニューヨークに赴任して3年間会えなくなると持ち出し、相手の返事を待つ。
しかし、子供がいる絹子には、小笠原と逃げる事は出来なかった。
そこへ、ふみ江から電話があり、夫から電話があった事を教えられた絹枝は、1時間以内に戻るとと伝え、自ら運転するスポーツカーに小笠原を乗せ店を出る事にする。
その途中、車の中でキスをしながら、夫との仲を清算しろと迫る小笠原に対し、男は年を取ると貫禄が出るが、女は10年もすれば醜くなるだけなので、あなたは見向きもしなくなるはずと、簡単に決断できない心情を訴える絹子。
そんな話で、注意が散漫になっていた彼女は、他の子供達の後を追って道路脇の土手を登って来た武が車の前に走り出て来たのを見つけ、慌ててハンドルをきるが、もう遅かった。
ブレーキをかけ、後ろを振り返った彼女は、倒れた武が、立ち上がろうと少し動いているのを観て、大丈夫よと言いながら、そのまま走り去ってしまう。
その走り過ぎる車を観ていた主婦兼松久子(浦辺粂子)や、他の子供達が、倒れている武の側に近づいて行く。
何故逃げたんだと聞く小笠原に、あなたが一緒にいたからだと答える絹子は、その後、小笠原を降ろし、何喰わぬ顔で自宅に帰って来るが、運転席を降りて、車のフェンダーに目をやると、そこに血痕が付着しているのを観て愕然とする。
書斎で、バイクのポスター作りをしていた柿沼の元にやって来た絹子は、子供を轢いてしまったらしいと打ち明ける。
一方、血相を変えた弘二が「楓林」の姉に、武の事故を知らせに行く。
その頃、柿沼家では、呼出された運転手の菅井(佐田豊)が、妻の代わりに自首してくれと柿沼から懇願されていた。新製品の発売間近な今、モーター会社関係者が交通事故を起こした事が世間に知られたら大変な事になるのでと説得するが、13年間、無事故を誇って来た模範運転手だった菅井はにわかに返事が出来ない。
それを観て絶望した絹子は泣き出す。
やがて、菅井は、来年定年を迎える自分を一生会社で雇ってくれると約束してくれるかとの交換条件を出しながら、苦しい胸の内を吐露しはじめる。
昭和12年、26で結婚した彼は、翌年兵隊に徴用され、その後満州からシベリアへ送られ、何だかんだで12年間も兵隊生活を送らざるを得ず、復員して来た時にはもう40才、現在三人いる子供の一番上でさえ小学4年だと言う。
その泣き言を聞いた柿沼は、一旦諦めかけるが、保障を前提に、菅井は身替わり自首を承諾する。
武の遺体が安置された病院に駆け付けた姉を迎えたのは、発見者の主婦だった。
事故現場で現場検証を観ていた弘二は、パトカーに乗せられて連れて来られた菅井が、自首して来たひき逃げ犯だと聞き、思わず殴り掛かり、警官たちに制止される。
翌朝、寝室で悪夢から目覚めの悪い起き方をした絹子に、小笠原から電話が入る。
ベッドの上で電話を取ると、菅井と言う運転手が自首したと新聞で観たが、どうなっているのかと問いつめる。
適当にごまかして、ここに電話をしてもらっては困ると切った絹子は、下におり自分も新聞を読もうとするが、すみ江は、新聞は全て柿沼が会社に持って行ったと言う。
会社でその新聞記事を読んでいた柿本の元に、被害者家族との交渉に今西弁護士(清水元)を派遣した事、母親が病院で卒倒した際、コンクリートの床で頭を強打したので、3針縫う怪我をして入院した事、その弟と言うのがヤクザみたいな相手なので、交渉が手間取りそうだ等と言う事が、川島から報告される。
今西弁護士から提示された100万と言う示談金に難色を示していたのが弘二、相手が、山野モーターズの専務だと知っての脅しだったが、弁護士の方も慣れたもので、6才未満の子供の死亡の場合、50万くらいが相場なのだがと言い返す。
その後、柿沼から贈られたと言う果物駕篭を持って、入院中の国子を見舞った弘二は、金をいくらふんだくろうかと相談するが、姉は金の事等どうでも良いと興味なさげ。
取調中の菅井は、何故ひき逃げしたかとの質問に、衝突後、振り返ってみたら、立ち上がって歩いていたので、大した事なかったと思ったと答えていた。
結局、120万の示談金でまとまったと自宅で報告の電話を受けた柿沼は、被害者はうちの健一と同じ5才だった、もう車には乗るなと、絹子に釘を刺す。
裁判では、菅井に対し、3万円の罰金、執行猶予3年の軽い判決が下り、傍聴席で聞いていた母親は愕然とする。
自宅アパートの箪笥の上に置いた武の遺骨の前で、ぼんやり過去を連想する国子。
彼女は元売春婦だったが、自分達の事を「パンパン」呼ばわりしたと仲間たちが川に放り込んだ兵隊を助けた事が縁になり、その男(小川安三)と結婚し、生まれてくる子供に夢を馳せていた幸せな頃の事を思い出していた。
その頃は、自分のような者にも幸せを与えてくれる神様って、本当にいるんだと純粋に信じていた彼女だった。
そこへ、国子の様子を心配してやって来た弘二が、自分達は子供時分から日が当らない境遇なんだとぼやくのを聞いた国子は、神様なんかいないと吐き捨てるのだった。
その後、ヤケになり、大衆食堂で泥酔し「松ノ木小唄」などを男たちと熱唱していた国子は、連れ帰ろうとしていた弘二を邪険に扱っていたが、偶然店に入って来た事件の目撃者の主婦兼松久子とその連れと再会し、酒をおごると言い出し、強引に同席させる。
注文したお銚子を自分でテーブルに運びかけ、バランスを崩して倒れてしまった国子は、弘二に助け起こされ泣き出すが、その荒んだ様子を観ていた久子は「やっぱり、女の運転は良くないね〜…」と呟き、その言葉を聞いた姉弟は凍り付いてしまう。
さっそく、警察にその事を知らせに行った二人だったが、すでに示談も裁判も済んだ案件に、警察が興味を示すはずもない。
対応した巡査(柳谷寛)に、その上司(田島義文)は、被害者の母親と言うのは、えてしてそう言う妄想を抱く者なので相手にしないように忠告する。
警官から事情聴取を受けた久子も、細かく追求されるうちに答えが怪しくなるが、運転手が、白と黒のストライプのマフラーをしていたとだけは覚えていた。
一方、自宅で倒れたと呼ばれた絹子の主治医は、帰宅時心配するふみ江に、どこも悪くないのだが…と首を傾げてみせる。
その柿沼の自宅前にやって来て様子をうかがっていた国子は、外出する健一の姿をしっかり目撃する。
寝ていた絹子は、又しても、小笠原から電話を受け、自首しろと言う相手の言葉に苛立っていた。
その後も、巡査に何度も再調査を掛け合っていた国子だったが、もう君の事件はすんだんだと拒絶されるし兼松久子からも、これ以上警察や裁判所に呼出されるのはごめんと拒絶の姿勢、菅井は自分がやったの一点張りでらちがあかない。
自宅の窓から、子供達が遊ぶ姿を眺めていた国子は、やって来た弘二に、柿沼家の様子を調べた所、あの家で車を運転する女と言えば、柿沼の妻しかいない。彼女に自分と同じ苦しみを与える為、自分があの家に入り込み、仕返しをしてやる、自分がやらなければ誰がやるんだと言い出す。
弟の心配を他所に、国子は杉山キヨと名前を変え、柿沼家も利用している「みどり家政婦会」と言う所に所属し、チャンスを待つ。
ある日、柿本の屋敷から指定を受けた高木はつ子(記平佳枝)が、古くからの御贔屓だと言う事を知ったキヨは、彼女を強引に「楓林」に連れて来る。
相変わらず体調が悪く、寝込んでいた絹子の方は、部屋に入って来た健一の姿にさえおびえる程、ノイローゼ状態になっていた。
弘二にも協力を要請したキヨは、高木の代理として、柿沼家に家政婦として入り込む事に成功する。
先輩格のふみ江の手伝いをする事になったキヨは、電話の切り替え等基本的な事を教わった後、何喰わぬ顔で掃除や炊事を開始するが、健一がすぐさま彼女に興味を持ち出した事に気づく。
ある日、打合せ通り、弘二からかかって来た電話を寝室に繋げ、それを寝室の絹子に知らせに出向いたキヨは、子供を轢いておいて自首しないなんてどう言う事だと言う弘二の言葉に、真っ青になった絹子の表情を冷静に観察した後部屋を出る。
その後も、ふみ江から茶を進められた時、何喰わぬ顔で高木はつ子の悪口を吹き込んだりしながら、今後も家庭内に留まる事を画策するキヨだったが、ますます健一が自分になついて来るのだけは計算違いだった。
そんなある日、買い物に出かける時に進んで付いて来た健一に、石焼き芋を買い与え屋敷に戻ったキヨは、久々に寝室から出て来た絹子から礼を言われるが、その時、彼女の首に、白と黒のストライプのマフラーが巻かれているのを観て、おののくのだった。
その夜、帰宅して来た柿沼に、妙な電話があった事を報告した絹子は、自首しようと思っていると打ち明けるが、柿沼はこちらの立場も考えろと相手にしない。
そんな夫の態度を観た絹子は、いつもあなたは自分の事しか考えていない。元々あなたとの結婚は、自分の父親があなたの金を、あなたが父親の政治力を欲しがった政略目的以外のなにものでもなかったと悔しがる。
マフラーの事を話し、いよいよ犯人を突き止めたので、健一を殺して、同じ苦しみを味わわせてやると息巻くキヨに、弘二は、証拠がないと思いとどまらせようとする。
その後、みどり家政婦会に向ったキヨを待っていたふみ江と健一は、住み込みで働かないかと持ちかけて来る。
すっかり、ふみ江もキヨの事を気に入ったようなのだ。
渡りに船とばかり、それを承知したキヨは、柿沼に挨拶に行くが、健一が幼稚園を嫌っているので宜しく付き合ってくれと頼まれる。
すっかりキヨになついてしまった健一に、どうして幼稚園に行かないのかと尋ねると、苛めっ子がいるのだと言う。
自分が叱ってやるからと、久々に健一を幼稚園に連れて行く事になったキヨだったが、道の下を走る車を観ていると、つい、健一をそこから投げ落としたり、一緒に乗った遊園地のジェットコースターから投げ落とすシーンを想像するのであった。
その後も、健一と仲睦まじそうにしている絹子へ、弟弘二からの嫌がらせの電話を当てつけのように手渡したりするキヨは、久々に会った弘二から、絹子に男がいるらしいとの噂を聞くと、絹子の尾行をして確認するように頼む。
ある晩、珍しく出かけると言う絹子の事をキヨから知らされた弘二は、絹子を尾行、小笠原と喫茶店で出会った様子を店内でしっかり確認する。
会社での柿沼は、「瞬間に命を賭けろ!」とコピーが入った「ブルースター180」のポスターを確認しながら、時期社長候補のライバルと目されている木内陣営の動きを、部下の川島から聞かされていた。
その夜、健一を寝かし付けたキヨは、ガス暖房のガス栓を一旦閉め、再び解放してガスを放出させると部屋を抜け出す。
しかし、風邪で臥せっていたふみ江が、ガスの匂いに気づき、急いで健一を外に運び出すと、何喰わぬ顔で駆け付けて来たキヨの頬を殴りつけるのだが、目覚めてキヨが虐められていると思った健一は、ふみ江の方にバカバカと殴り掛かるのだった。
ある日、女性ドライバーが子供を轢いたと言う新聞記事を読んでいた絹枝の元にやって来たキヨは、ふみ江が風邪で休みを取って医者に行ったと報告した後、中外自動車の人が来て車を観て帰ったが、車を売るのかとか、どうして車を運転しなくなったのかなど、さり気なく聞き出そうとするが、そこに小笠原から絹子宛の電話が入り、光沢公園で落ち合うと言う話を盗み聞きしてしまう。
着替える為、寝室に戻った絹子は、ベッドの上に、幼児を女性ドライバーが轢いた記事が乗った新聞紙が乗っている事に気づき愕然とする。
その日、健一を連れて外出したキヨは、交通量の激しい道路の所で、本に夢中になっている健一を残し、さっさと自分だけで渡ってしまうと、反対側の健一に、早くこっちへ来いと誘う。
健一は、何も疑わずに走り来る車の間を渡りはじめるが、トラックに轢かれそうになった瞬間、思わず飛び出し、健一をかばってしまうキヨだった。
光沢公園で落ち合った小笠原は、一旦、出世を諦め、取り止めると言っていたニューヨーク行きを決意したと言い出す。しかも、明日、旅立つと言う。
小笠原にしてみれば、いつまでも煮え切らない態度を取り続ける絹子は、遊ばれた相手としか解釈できないようだった。
そんな二人の様子を、近所に停めたタクシーの中から、弘二はしっかり観察していた。
ホテルに向った二人の報告を弘二から受けたキヨは、ホテルにいる友達から知らせて来たと嘘を言い、帰宅して来た柿沼に報告する。
キヨから渡されたホテルの電話番号に電話してみた柿沼は、絹子が出て来たのを確認すると、君が今誰とそこにいるか分かっていると伝える。
絹子は、思わず受話器を降ろすと、ふみ江が教えたに違いないと逆上する。
その後、居間で酒を飲みはじめた柿沼の元へ、つまみを持って行ったキヨは、彼を誘惑して抱かれるイメージを思い浮かべ、ヤクザな元夫に虐められ同士だったなどと同情をかうような嘘を付いてみるが、柿沼は関心を示さず、その直後、会社からかかって来た電話に出てしまう。
社長が急遽帰国して来て、「ブルースター」がDMモーターの盗用ではないかと難癖を付けて来たと言うのである。
出世の事しか頭になかった柿沼は、その報告を受け、ライバル木内の画策ではないかと考える。
そこに帰宅して来た絹子は、出迎えたふみ江をいきなり殴りつけると、唖然とする相手に、今すぐ出て行け!となじり出す。
訳が分からないながら、長年積もり積もった鬱憤があったふみ江は、自分は何も言っていない、あなたが子供を轢いた事もと叫び、その言葉を後ろにいたキヨはしっかり聞いてしまう。
柿沼は、事情はどうあれ、もうこうなった以上、君もここにはいずらくなるだろうから、退職金50万出すと持ちかけた後、今晩は帰らないと会社に出かけてしまう。
家から出ようとするふみ江に対し、さっきの言葉は本当かと問いかけたキヨだったが、あれは嘘と言ったきり、ふみ江は出て行ってしまう。
その後、寝室の絹子から、薬を飲むので水を持って来てくれと呼ばれたキヨは、久々に一緒に寝たいから、すでに子供部屋で寝かし付けた健一も起こして連れて来てくれと頼まれる。
健一を連れて来たキヨは、絹子から言われるがままにガスストーブを着火した後、カーテンを閉める振りをしながら、ベランダ側のサッシ窓の鍵を開けた状態で部屋を出る。
深夜、外のベランダから中に侵入し、以前のようにガス栓を捻ってガスを噴出させようと言う作戦だった。
深夜0時過ぎ、キヨはベランダから開けておいたサッシ窓を開け中に侵入すると、ガス暖房の方へ進みかけるが、その時、何気なく観たベッドの中のきぬ子の首を掻きむしるような苦悶の顔と、その横で眠っているがごとき健一の姿を観た彼女は、恐怖の叫びをあげる。
二人は死んでいたのだ。
慌てて家から逃げ出そうとしたキヨだったが、結局、警察に通報する。
ところが、やって来た警察に連行されたのはキヨ本人だった。
キヨは、必死に自分じゃないと抵抗するが、誰も言う事を聞いてくれない。
窓から部屋に侵入した痕跡が残っている中、状況証拠は明らかに彼女に不利だったからだ。
子供は絞殺、母親は青酸カリで毒殺されたと言う新聞記事が踊る。
調査官(加藤武、稲葉義男)は、交替でキヨを攻め立てる。
ひき逃げ事件の目撃者主婦やふみ江からも事情聴取が行われ、兼松久子を脅したキヨが、絹枝に復讐をしようとしていた事は明らかだったからだ。
度重なる尋問に耐えかねたキヨは、とうとう、自分がやったと嘘の証言をしてしまう。
その頃、柿沼家では、自分のせいで、あの女は罪を犯してしまったと落ち込む菅井の言葉を聞いた柿沼は、妻の死は自殺だった、遺書があったのだと打ち明ける。
菅井は、何とか、あの女を助けてやってくれと頼み込む。
そのかいあって、キヨの無罪は証明されたが、すでに彼女の精神はおかしくなっており、自分がやったの一点張りで、自ら牢に入ろうとする始末。
警察に迎えに来た弘二は、それ以来、すっかり人間が変わってしまったように、道路で子供達の横断を手助けする緑のおばさんとかしてしまったような姉の姿を見る事になる。
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「人を呪わば穴二つ」と言う寓意をベースにしたような、唯一の生き甲斐を一瞬のうちに奪われてしまった不遇な女による復讐サスペンス。
あくまでも、女性向けを意識している為か、サスペンスとしての設定が甘いので、あれこれ不自然な事が多く、高峰秀子の熱演を見る以外にはあまり見所がない、何となく安手の通俗サスペンス風になっている。
最後、一旦疑われ、その後釈放されたキヨが狂ってしまうのは、彼女は直接的な犯人ではなかったものの「未必の故意」の犯人である事に変わりなく、その自責の念に耐えられなかった為である。
復讐等をすれば、気が休まるどころか、逆に自分自身も大きく傷付いてしまうと言う戒めだろう。
この作品の中では、絹子も健一も柿沼も菅井も小笠原もキヨもふみ江も、皆、最後に傷付いてしまう。
交通事故と言う事故が、一挙に二つの家族を崩壊させた事になる。
特に、柿沼家の崩壊劇は、キヨが復讐を考えなくても、別な形でいずれかには起こっていた可能性があるものだと思う。
それは、政略結婚で柿沼と絹子が結ばれた瞬間から始まった嘘が、崩壊する時であるから。
意外と凡々たる常識人として最後まで残るのが、家族を持たずヤクザ暮しをしていた弘二だけと言う皮肉もおかしいと言うか、物悲しい。
健一が劇中で言う「シェー!」が、時代を感じさせる。
