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白蝋城の妖鬼

1957年、新東宝、島木春雄原作、西沢裕+丸谷剛脚本、曲谷守平監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

奥州、早池峯(はやちね)山、白髪、白面の男が白馬に跨がり城下を見渡す廻りには、黒覆面の一団が控えていた。

彼らが、山を下って行くと、その様子を見守っていた鷹の太郎(高村洋三)が、今夜も城下で血の雨が降ると不気味に微笑んでいた。

賊に侵入され、怯える加瀬左近(国創典)は、白面の男、白蝋太郎(明智十三郎)に刺され、やがて「加瀬左近 地獄へ送る 白蝋党」と書かれた貼り紙を胸に屋敷内に吊されていた。

城下の商家も、黒覆面の一団に全員斬殺され、金目の物が全て奪われて行く。

山に戻ろうと、若(わこ)!、太郎様!と呼び掛ける白蝋党の長老、白雲斎(岬洋二)を他所に、白蝋太郎は、まだ仕事が残っていると言い残し、一人城下に戻って行く。

本田陣十郎(倉橋宏明)の屋敷に忍び込んだ白蝋太郎は、あの時の乳飲み子が、今では22になっているとつぶやきながら、あれは、上からの命令でやった事だと言い訳する陣十郎を、問答無用で斬り殺してしまう。

お側役二人が相次いで斬殺された事態を重く観た伊達藩家老松平輝高(杉寛)は、伊達藩の後継ぎである伊達小太郎(明智十三郎-二役)に報告していた。

小太郎の父親である城主伊達宗吉(武村新)は、心労の為、病に伏せていた。

こうした藩内の不祥事を幕府に知られては一大事と考えた小太郎は、堅苦しい城内の暮らしを嫌い、振袖小次郎と名乗り、城下で気ままな一人暮らしをはじめた弟がいてくれたら…と悔やんでいた。

その兄の言葉を伝えに訪れた輝高から、事件の詳細を聞き知った振袖小次郎(和田孝)は、自分が必ず白蝋太郎を捕まえてみせると約束するのだった。

その頃、ぼんやり警護をしていた老いたお蔵番に、木の上から声をかけたのは鷹の太郎だった。

何事かと、鷹の太郎に言われるがまま倉を見ると、鍵がこじ開けられており、伊達藩の家宝「黄金の鷹」が紛失しているではないか。

何事かと駆け付けて来たお蔵番筆頭前田恭之進(九重京司)に、老侍が事情を説明し、木の上を指し示した時には、もう鷹の太郎の姿はかき消えていた。

その黄金の鷹の入った箱を抱え、逃げていた太郎を呼び止めたのは、小次郎とお供の岡っ引平助(小倉繁)だったが、鷹の太郎から目潰しを投げられ、怯んだ隙に、相手の姿を見失ってしまう。

しかし小次郎は、地面に耳を当て、逃げる相手の足音を聞き分けると、その後を追って、とある寺の中に鷹の太郎を追い詰めるが、そこに待ち受けていたのは白蝋太郎だった。

木の上の潜んでいた鷹の太郎から、自分が持っている家宝黄金の鷹がなくなったら、伊達藩の連中は切腹せねばならないと聞いた小次郎は、得意の縄術で、その箱を地面に落とすが、斬り掛かって来た白蝋太郎と戦っているうちに、側に潜んでいた白雲斎によって拾われてしまう。

その直後、白蝋太郎が投げた煙玉と共に、白蝋党の姿は全て消えていた。

絵双紙屋「まつや」では、平助が、店番をしていた千世(ちせ-北沢典子)に、白蝋党との戦いを面白おかしく、自分の手柄話として語っていたが、そこにやって来たのが振袖小次郎、実は、千世は、伊達藩の忠臣、阿部九十郎の娘であり、小次郎とはかねてより懇意の間柄だったのである。

小次郎は、千世からお守りをもらうと、姥のお槙(花岡菊子)に宜しくと言いおいて、平助と共に出かけて行く。

門に謹慎の竹十字がかかった前田家にやって来た家老松平輝高は、責任を取って切腹しかけていた恭之進を止め、実は伊達藩の秘密があり、盗まれた「黄金の鷹」は偽物で、本物は、5年前、秘密裏に保管を託された阿部九十郎と共に行方知れずなのだと教える。

九十郎とは恭之進の妻、綾(江畑絢子)の兄の事だった。

屋敷に侵入し、それを盗み聞きしていたのは鷹の太郎だったが、その様子をうかがっているもう一人の怪人物がいた。

醜い容貌のせ○し男であった。

そのせ○し男が屋敷内に吹き込んだ吹き矢に付いた文には「障子に耳あり 白蝋党に注意」と記されていた。

寛保3年、加瀬左近、本田陣十郎ら殺されたお側役ら4人に役目を仰せ付けた記録を読んだ小次郎は、その中でまだ生き残っていた井上左衛門(菊地双三郎)の屋敷を訪ねるが、当の左衛門は、すでに恐怖の為、気が触れていた。

その頃、使いから絵双紙屋「まつや」に戻って来たお槙が、店の前でうろついていた鷹の太郎の姿に気づき、千世に注意するように報告するが、そんな二人は何者かに襲われてしまう。

井上邸から出て来た小次郎は、確か、姥のお槙は、20年程前、大奥勤めをしていたはずだから、当時の事情を知っているかも知れないと「まつや」に向う事にするが、その途中、半助が、通りかかった駕篭を守る一団にぶつかってしまう。

十手を見せ啖呵を切った半助に、相手方は無言で去ってしまうが、実はその駕篭の中に、囚われた千世が乗せられていた事は、さすがの小次郎と半助にも気づかなかった。

「まつや」の中は荒され、お槙が殺されているのを発見した小次郎は、障子に書きなぐられた「千世はもらっていく 白蝋党」の文字を観ながら、一足遅れた事を悔いるのだった。

その時、笑い声が響き、入口から顔を覗かせたのは、あの無気味なせ○し男。

そのせ○男は、中池峯山に三匹の鷹がいると謎めいた事を言う。

思わず、小次郎は、縄を投げて相手の腕をからめるが、白蝋太郎と言い勝負だ、白蝋城を捜せと言い残すと、せ○し男はあっという間に、その縄を斬り、逃走してしまう。

その頃、石牢の中に幽閉されていた千世の前にやって来た白蝋太郎は、盗んで来た黄金の鷹を見せると、それを地面に叩き付け、本物はどこだと問いつめるが、千世は知らないと答える。

思わず、刀を取り出し斬り殺そうとした白蝋太郎だったが、側にいた白雲斎から、斬るのはいつでもできると諌められる。

彼らが立ち去った後、千世は、天井部に開いた小窓から、ぶきみなせ○し男に声をかけられる。

そのせ○し男が、心配するなと、自分の名前を明かそうとした瞬間、銃声が轟く。

恭之進に探し出され、家老松平輝高の屋敷に連れて来られた刺青師の紋吉(石川冷)は、阿部九十郎から、昔、二人の娘の背中を合わせると判明する地図を彫り込まされたと説明していたが、それを天井裏で聞いていたのは、やはり、忍び込んでいた鷹の太郎だった。

輝高は、その事実を小次郎に報告する。

その後、外出した小次郎と平助は、「井上左衛門 を地獄へ送る 白蝋太郎」と貼り紙を付けられ、建物の外壁に張り付けられた左衛門の惨殺死体を発見し、一刻も早く早池峯山に登る決心をする。

先を急ぐ小次郎に対し、平助の方は、慣れぬ山道に付いて行くのがやっとといった状態で、途中、自ら進んで休憩を取ることにするが、小次郎と共に弁当を食べている時、遠くに山火事らしき煙を発見する。

その山火事の中、白蝋党の追っ手から逃げていたのは、千世を救い出したせ○し男だった。

しかし、女連れでは思うように走れず、あっという間に追っ手に追い付かれ、滝の上に追い込まれたせ○し男は、千世の手を引いて、その滝つぼに身を投げる。

そんな事とは知らない小次郎は、平助に勧められるまま、昼食後、昼寝をしていたが、夢の中で、哀しげに遠ざかる千世の姿を観ていた。

一方、家老松平輝高も共を連れ、早池峯連山に登って来ていたが、その川べりで気絶していた千世を発見し、すぐに連れて帰る事にする。

その様子も、木の上から、鷹の太郎が監視していた。

小次郎の方も、滝つぼの近くで千世の落とした簪を見つけた所で、それ以上、探索の手がかりもなく、平助から言われるままに、一度帰る事にする。

輝高の屋敷で目覚めた千世は、今、姉の綾もここに呼んでいるので、そのまま休んでいるが良いと家老に言われていた。

その綾は、乗せられた駕篭がすでに家老の屋敷を通り過ぎた事を訝るが、家老の使いと言って付き添って来た侍から刃を突き付けられる。

綾が、家老の使いを名乗った白蝋党に連れ去られたと部下から知らされた輝高は、慌てて、追っ手の手配をする為部屋を後にするが、独り休んでいた千世の前に現れたのは、白蝋太郎だった。

お前の身体に用があると、千姫を脇に抱えて逃亡した白蝋太郎と鷹の太郎は、ちょうど、早池峯山から降りて来た振袖小次郎と平助コンビに出くわしてしまう。

小次郎は、白蝋太郎に、これ以上城下を騒がせるのは止めろと忠告するが、千世を降ろすと、白蝋太郎は剣を抜いて立ち向かって来る。

千世を逃そうと付き添った平助の方には、鷹の太郎が挑んで来る。

やむなく、一人で逃げ出した千世だったが、その前に立ちふさがったのは、待ち受けていた白雲斎と白蝋党一味。

それを観た小次郎は、斬ってかかって、何とか千世を守ろうとするが、再び、平助に連れて行かそうとした所に立ちふさがったのが、白蝋太郎で、彼が平助に人たち浴びせたかと思うと、倒れた平助から千世を奪い取ると、当て身で気絶させ、そのまま馬に乗せ立ち去ってしまうのだった。

それを観た小次郎も、近くに繋いであった馬に跨がると、後を追い掛け始める。

一方、斬られたと思って倒れていた平助、気が付くと、どこも斬られてない。

慌てて起き上がり、家老に知らせに走る途中で、あの無気味なあえ○し男に遭遇、その相手から、白蝋城の在り処を記した家老宛の手紙を渡される。

せ○し男は、その後、馬に跨がりあっという間に立ち去ってしまうのだった。

途中まで追っていた白蝋太郎の姿を山中で見失った小次郎は、崖を登って行くせ○し男の姿に気づき、その後を追う事にする。

無気味な洞窟を抜けると、その奥には、大広間のような空間が広がっていた。

まさしくそこが、探し求めていた白蝋城だったのだ。

そこに白蝋太郎と、小次郎を完全に取り囲み、銃で狙い済ました覆面の一団が出現する。

大きな石筍に縛り付けられた小次郎の元に連れて来られた綾と千世姉妹は、白蝋太郎の刃によって、着物の背中を切り裂かれてしまう。

しかし、そこに現れた姉妹の背中の刺青を合わせても、単なる鷹の彫り物で、宝の在り処等どこにも記していなかった。

その事実を観て激怒した白蝋太郎は、嘘の報告をしたと鷹の太郎を呼びつけると、言い訳無用で斬り捨ててしまう。

一方、小次郎が縛られた石筍の後ろに隠れていたせ○し男は、綱を斬って、小次郎を自由にしてやる。

小次郎は、得意の縄術で、白蝋太郎の腕を絡めてしまう。

そこへ、松平輝高率いる役人たちがなだれ込んで来る。

白蝋太郎は縄を斬ると、取り囲む捕り手たちを次々に斬って行くが、その時、一段高い所に上がったせ○し男が、懐から「下」と書かれた書状を取り出し、「上意!静まれ!」と声を荒げる。

その言葉を聞いた輝高も驚き、一同に静まるように命ずる。

一同注視する中、醜い容貌の部品を外しはじめるせ○し男。

やがて、着物も着替え、すっくと立ち上がったのは立派な侍。

彼は、3年間、せ○し男に身をやつし、白蝋党と名乗る、豊臣の残党が幕府転覆を画策する伊達藩の内情を探っていた幕府隠密佐々木竜之助(丹波哲郎)だと名乗る。

小次郎から、お側役人たちを殺害した理由を聞かれた白蝋太郎は、自分は、伊達家の後継ぎとして生まれた双子の一人だと名乗る。

つまり、小次郎の兄と言うのだ。

双子と言うだけではなく、生まれつき白い身体を持つ特異体質だった彼を忌み嫌い、早池峯山で殺害するよう命じられたのが、4人のお側役人たちで、彼らから危うく殺される所を白雲斎に助けられ、今日まで育てられたのだと言う。

追い詰められた白蝋太郎は、人間と言う人間が皆憎い、人間を呪ってやるのだ。小次郎!お前を殺してやると反抗するが、その小次郎から、兄上!と呼び掛けられると、にわかに洞窟内を逃げ回り、持っていた刀を自らの腹に突き立て、笑いながら切腹する。

床に崩れ落ちた兄の身体に駆け寄った小次郎だったが、白蝋太郎は笑いながら息絶えて行く。

輝高から阿部九十郎の所在を聞かれた竜之助は、今、病に臥せり、江戸で療養中だと教えた後、綾と千世に再び背中を広げさせると、自ら持っていた薬紙を両者の背中の絵柄の上に当て、擦って剥がすと、そこには早池峯山を描いた地図が現れる。

その地図を元に、見つけだした本物の黄金の鷹を抱いた伊達小太郎が、安堵の笑顔で帰路に付く行列の様子を、遠くから見つめる振袖小次郎と千世の姿があった。

小次郎は、自分は今後も気ままな町暮しを続けると、千世に告げていた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

数年前、あの天下の丹波哲郎が、怪奇なせ○し男の姿になって写っている1枚のスチールを観た瞬間から、観たくて仕方なかった作品だったが、実際に観てみると、どうと言う事はない通俗チャンバラ映画だった。

怪奇時代劇と言えば確かに怪奇だが、今想像する程、怪しい要素はない。

アルビノ体質の白蝋太郎の姿は、冒頭から出て来るので意外性はないし、途中から登場するせ○し男にしても、種明かしをしてしまえば、子供だましと言うしかない代物。

おそらくこの作品、大人向けと言うより、最初から子供向けに作られていたような気がする。

前髪姿の美少年剣士、頼りない岡っ引が相棒、怪奇な敵や変装した隠密など…、どう考えても、大昔の時代劇マンガそのままの内容である。

何度も屋敷内に鷹の太郎が忍び込んでいても、全く気づかない家老たちとか、千世を何度も敵味方が奪い合うまどろっこしさや、馬で逃げる白蝋太郎に気づいた小次郎が、何時の間にか、近くに繋いであった馬に乗って追い掛けるなど、御都合主義そのものと言うか、その無邪気さには、今の大人の感覚で観てしまうと退屈にも感じるが、当時の子供向け時代劇は大体こんな感じだったような気もする。

白馬に跨がった白蝋太郎の姿も、何だか山城新伍で人気を呼んだテレビ時代劇「白馬童子」(1960)を連想させるし。

この当時のチャンバラでは、刀同士がぶつかりあう「カチッカチッ」と言う音は入っているが、剣が空を斬る音や、人を斬る効果音はまだ入っていないので、何だか「ちゃんばらごっこ」みたいに見えなくもない。

ただし、丹波ファンとしては、この作品でも、やはり偉そうにしゃべる「丹波節」と言うか、「演説口調のセリフシーン」があるし、貴重な特殊メイク姿も観られたので、一応の満足感は得られた。