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笛吹川

1960年、松竹大船、深沢七郎原作、木下恵介脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

戦国時代の甲斐の国。

飯田河原の合戦が起こる。

その戦いから戻って来た半蔵が、笛吹川の脇にある貧しい実家の外で、ふんぞり返って座っている。

それを呆れて観ているお爺(加藤嘉)と、父親の半平(織田政雄)。

お爺は、駿河軍を追い払う等訳もなかった、敵の大将は自分の旦那土屋様が殺したなどと自慢話をしている孫の側に行き、敵を追い払っただけなら、じきにこの家にも仕返しに来るかも知れないとおびえるが、何時の間にか孫の自慢話に酔いしれ、半蔵を戦に行かせたのは自分の手柄だったかのように、おとなしいだけの半平に自慢しはじめる。

彼らは、もともと貧しい農民の家ながら、脳天気な人間が生まれる血筋だったのだ。

半蔵も、子供自分から脳天気の半蔵と呼ばれ、癇癪を起こすと暴れん坊になる短気な気質だったので、かねてから戦に行けと勧めていたのはお爺だった。

やがて、お屋形様(武田信虎)からお呼びがあったとの知らせがあり、馬に乗って出かけて行く半蔵の姿を見送りながら、お爺は褒美をもらえるかも知れない、そうなったら、いつも、この家の事をバカにしている竹の原に嫁に行った長女のミツも呼び戻して、立派な家に建て替えようなどと舞い上がりはじめる。

戻って来た半蔵が言うには、戦の後、積水寺に戻ったお館様に男の子が生まれたと言う。

その直後 、旦那様から用事があると半平が呼ばれていると聞いたお爺は、半平では役に立たないから自分が行くと言い出す。

そこに、嫁に行ったミツにもちょうど同じ日に男の子が生まれたと知らせが来る。

お爺に命ぜられた仕事は、赤ん坊の後産を埋める穴掘り作業だった。

お爺は心もとない手付きでクワを振るい穴を掘りはじめるが、力がない為、自分の左足を傷つけてしまう。

結局、半蔵が掘るはめになるが、帰って来たお爺は、夜中寝ている所を叩き起こされ再び連れ出される。

褒美がもらえるかも知れないと、喜んで出かけて行ったお爺だったが、帰って来たのはその死体だった。

橋のたもとに置き捨てられていたお爺の遺体を確認に出かけた半平は、目出たい日に後産の御胞衣を血で汚したと、甲府のお屋形様の逆鱗に触れて斬られたのだ、旦那の土屋様もカンカンだと半蔵から聞かされる。

翌朝、その死骸を埋葬している時、近くの曲り家で赤ん坊が生まれたと言うので、きっと、お爺の生れ変わりだろうが、あんな貧乏家に生まれて…と、半平らは妙な同情をする。

上條河原の戦いが起こる。

近所で愚か者で有名だったもへやんも戦に行ったと、半蔵と半平は噂しあっていた。

竹の原に嫁に行っていたミツも、赤ん坊を抱いて戻って来ており、もうこの家の事をバカにするあの家には戻らないと言っている。

半蔵は、姉ちゃんはまだ29なんだから、お屋形様の子供勝千代を育てている土屋の旦那に新しい嫁の口を世話してもらおうと言う。

すっかり、息子が偉くなったと思い込んだ半平は、この家も建て直すかなどと脳天気な事を言って喜んでいた。

やがて、そのミツが、その土屋からの紹介で、赤ん坊は置いて行き、自分だけ甲府一の絹商人、山口屋へ嫁ぐ日が来る。

富士須走口の戦いが起こる。

半平は、ミツの赤ん坊定平を背負いながら、お前はでかくなっても戦等行くなと言い聞かせていた。

もへやんも、二度目の戦に出かけて死んでしまったからだ。

梨木原の戦いが起こる。

娘のタケとヒサも嫁に行ってしまい、今や、半蔵と定平の二人暮しになっていた。

半蔵の主人土屋も討ち死にし、今やあの半蔵が土屋半蔵と名乗るようになっていたが、久々に戻って来た彼は、死んだお爺と同じ左足に怪我をして引きずっていたので、それを観た半平は、因縁めいたものを感じ、お爺が土の下から謝っているのだと言い出す。

幼名勝千代改め、晴信となった、お屋形様の息子の初陣だったと報告する半蔵。

塩尻の戦いが始まる。

春になったら嫁をもらうと言っていた半蔵の遺髪が届けられる。

それを前にしてヒサ(小林トシ子)は、家族で良い目にあったのは、ミツ姉やんだけだったとこぼすが、そろそろ年頃になった定平に誰か嫁をもらわなければと言う話になると、妹の小姑が良いと勧める。

なんでも、片足が悪いが働き者だと言う。

そこへ、その定平が、農天気にも饅頭屋敷に飛び込んだとの知らせがある。

やがて、その足の悪い嫁おけい(高峰秀子)が村にやって来る途中、お屋形様の行列に出くわし、土下座をしていると、誰やらツエで合図をして来る女がいる。

山口屋に嫁いだ長女ミツだった。

お屋形様のお供して一の宮から富士へ行く途中なのだと言う。

やがて、定平と結婚したおけいだったが、5年経っても子宝に恵まれないので、病床の父親を見舞いに来たミツ、ヒサ、タケ(矢吹寿子)ら姉三人から、西の湯に行けば良いと勧められるが、おけいは湯が嫌いなのだと言う。

おけいはミツから、最近、山口屋が大層お大尽になってしまったので、お屋形様からも嫉まれていると自慢ともグチとも取れない事を聞かされるが、新しいお屋形様は、父親以上に気性が荒いらしいので、そろそろ分相応の暮らしに戻らなければいけないのではないかと心配していた。

そんな中、父親半平が息を引取る。

その遺体を埋めていた姉たちは、曲り家で馬の子が生まれたそうだから、父親は馬に生れ変わったのかと冗談を言う。

又、戦が始まる。

結婚以来10年経つが、相変わらず子宝に恵まれなかった定平(田村高廣)は、坊子(ぼこ)でもできれば、自分が戦に行かないだろうとお爺の考えで嫁をもらったのにとか、お屋形様には、もう5、6人も子供が生まれたなどと嫌味を言うので、それを聞いたおけいは、そんな事を言われるくらいなら、西の湯にでも行ってみたいと言い出す。

笛吹川の橋から聞こえる戦の音に、農民たちは、入道になったお屋形様が押されているらしいと、形勢不利な様子を心配していたが、そんな中、定平とおけいに赤ん坊が生まれる。

ちょうど、お寺の北条様が亡くなったので、その生れ変わりかもしれんと村人たちは噂する。

やがて、姉たちが死に絶えて行く。

甲府方面に火の手が上がったので、山形屋ではないかと心配する定平らであったが、案の定、山形屋が、お屋形様に焼き討ちされ、一家皆殺しになったと噂が届くいたので、お大尽様になり過ぎたのだとおけいが呟く。

そんな二人の家に、夜更けになってミツの娘タツ(荒木道子)が駆け込んで来る。

何とか娘と二人だけ逃げ延び、娘のノブは川下の方に置いて来たと言う。

家も夫も焼かれたので、娘と一緒に、お屋形様に恨み晴らしてやると意気込んでいる彼女は、定平に取ってみれば父親違いの妹である。

二人の今後を案じた定平は、馴染みの寺の住職の所に相談に行き、東屋へ行くよう勧められる。

時が過ぎ、善光寺の改修工事に不満を持つ勝やん(安部徹が)、その御本尊を背負い、坊さんを10人も従えて、馬に跨がり意気揚々と村に帰って来る。

おけいは、原の子供の功徳になるかも知れんと言い、拝みに外に出て行く。

村ではすっかり酔っぱらい、工事に関する不満を口にしていた勝やんを、何とかなだめようとする定平。

その夜、その善光寺の普請場が燃えている火の手が村から見える。

噂によると、付け火らしい。

勝やんの姿が見えないのも妙だし、おけいには、火事を観ると、赤痣のある子供が出来る恐れがあるからと家の中へ戻す定平は、まさか、付け火はタツの仕業ではないかと疑る。

その後、御陣屋から追って来られた勝やんは、橋の袂で斬り殺され、その場に放置されていた。

それを知った定平は、自分の曾お爺も、橋の袂の死体を置かれていたらしいと半平爺様から聞かされた話を思い出していた。

やがて、タツが、娘のノブが甲府のお城の奉行人として連れて行かれたと、定平の元へやって来る。

山口屋の孫娘だと身元が分かれば、殺されてしまうとタツは嘆き哀しむが、定平は、身元が分からなかったから奉公に引っ張られたのだと慰める。

やがて、川中島の合戦が始まる。

武田信玄(中村勘三郎)は、馬で迫って来た上杉謙信(松本幸四郎)から斬り付けられるが、軍配で跳ね返し、軽い怪我だけですむ。

その戦から帰って来て定平の家にやって来た虎吉(渡辺文雄)は、自分が、謙信の乗った馬の尻を叩いたので、何とか、お屋形様は難を逃れたと誉められ、仲間の頭にいきなり抜擢されたと自慢話をしていた。

すると、そこにやって来たタツが、定平を外に呼出すと、娘のノブが、子供が出来て、お城を抜け出して来たと言う。

何でも、奉公に出る前から、村の男の子を孕んでいたらしい。

タツは、娘には、仇を打つ事等考えていないらしいと嘆くが、定平は追っ手が来るかも知れないから逃げろと忠告する。

そのタツは、やがて川下の土手の下に小屋を作り、狂女になった振りをして暮すようになり、食事の面倒等は定平がやっていた。

そんな定平の元に、ある日、いきなりやって来たノブが、男に捨てられたので、子供も塩山の寺の前に捨てて来たと言うではないか、翌日こっそり見に行ったら、坊さんが赤ん坊を抱いてもらい乳してくれていたと言う。

さっそくタツを呼びに行くが、もう、ノブは事切れていた。

さらに時は過ぎ、定平とおけいの間には、三人の男の子が育っていた。

ある日、仲間と一緒に、氾濫した笛吹川の補修工事を手伝っていた定平は、川の中に入って行くタツの姿に驚き、本当に気が触れてしまったのではないかと抱き止めるが、数珠を持ったタツは、ただ拝んでいただけだと平然と言う。

三方ヶ原の戦いが始まる。

虎吉が帰って来て、お屋形様が亡くなったと言う。

たった今、信州伊那から自分がその死体を担いで来たばかりだとも。

それを聞いた定平は、雨の中、タツの小屋を訪ねて行き、お前の祈りが通じたと、信玄の死を知らせに行く。

ようやく、定平一家に安寧の時代が訪れると思われたが、20才になった長男の惣蔵(市川染五郎)が、いきなり戦に行くと言い出す。

それを知った定平は、何とか思い止めようと、何もしないのに家族全員殺され気が触れたたつヤンの話とか、殺された伯父の半蔵の話など必死で言い聞かせるが、馬の後先、陣屋ミソ担げと言うではないか、自分は日雇いで仕事等行きたくないと、逆に惣蔵から反論されてしまう。

自分も若い頃、饅頭屋敷に飛び込んだ事もある定平は、息子にも、その脳天気の血が流れている事を悟るのだった。

翌朝、惣蔵の姿はなかった。

必死に家の周囲を捜しまわるおけいは、坊子はでかくなったら手前勝手な事しかしないと嘆き哀しむ。

戦に行くのは、殺しやるのと同じなのだ…。

やがて、長篠の戦いが起こる。

その戦いから帰って来た惣蔵は、今や、大隈守様と呼ばれるようになった虎吉に付いていると自慢しはじめる。

その大隈守から、もうすぐ嫁を世話してもらうと言う息子に、おけいは、嫁もらって坊子が出来ても、侍になったら、すぐに死んでしまうと嘆く。

しかし、脳天気な惣蔵は、自分も伯父の名を継いで土屋惣蔵と名乗ると言い出す。

帰る惣蔵は、次男の弟、安蔵(中村万之助)に、今なら大将が少なくなっている絶交の時期だから、お前も腹を決めておくようにとそそのかしていた。

翌朝、その安蔵が姿を消したので、又戦に行ったかと慌てたおけいだったが、安蔵は石切り場で働いていると言う。

その後も、転々と仕事を変える安蔵を訪ね歩いたおけいは、上條で矢や刀を作っていると言う噂を聞き付ける。

その後、安蔵も、結局、戦に加わる事になるのだった。

今やおけいに残されたのは、独り残った三男の平吉(田中晋二)と末娘のうめ(岩下志麻)だけだった。

うめには、15になったら壻を取ろうと考えていたが、ある雨の日、塩山の寺で育っている孫の様子を見に行ったと言うタツがぐしょ濡れでやって来たのを観た定平は、ノブの息子がうめの壻になってくれれば良いのだがと呟いていた。

タツが言うには、孫は、快川(かいせん)和尚のいる恵林寺に移されたらしい。

翌日、その恵林寺に向ったタツと定平は、寺の中にいる孫(川津祐介)を見かけたので、「次郎!寺を出て向こうに廻り、お屋形様に恨み晴らせ!」とタツは叫ぶが、孫は何事かとこちらを振り返っただけ。

帰宅して来た定平は、あれはダメだとおけいに伝える。

その後、再び戻ってた来惣蔵は、今、お屋形様が新府に行ったので、甲府の城では人手が足りないので、お前も来いとうめを誘い、帰り際には、三男の平吉にも戦に参加するように誘う。

ある夜、又舞い戻って来た惣蔵は、お屋形様が信州に行くので、敵を戦って追い返さなければならない、お前も来いと強引に連れて行こうとするが、平吉は頑として行くのを拒むのだった。

高遠の戦いが起こる。

新府の城が夕べ焼け、虎吉も死んだので、これから郡内の山へ向うお屋形様に付いて行くと惣蔵が言いに帰って来る。

先祖代々世話になっているお屋形様のために、皆戦わなければ…と言いはじめた惣蔵に、先祖代々、お屋形様に恨みはあっても恩等何もないと言い返すおけい。

そんな母親に、罰当たりな罵倒の言葉を投げ付ける惣蔵だった。

おけいは、帰りかける惣蔵に、うめと安蔵を返せと叫ぶ。

その母親の姿を見かねた平吉は、自分が迎えに言って来ると独り出かけて行く。

それを見送るタツは、勝頼は戦で殺されるぞと予言する。

やがて、移動する武田勝頼の軍勢に出会った平吉は、安蔵とうめに出会うが、帰ろうと誘っても、もう二人とも言う事を聞こうとしない。

惣蔵に至っては、皆、女房子供も伴って来ているのだと、帰るように説得する平吉を叱りつける。

おめおめ帰る訳には行かない平吉は、その後も、兄弟たちを説得しながら列に同行して行くうちに、とうとう甲府の城にまで付いて行ってしまう。

その夜、これ以上付いて行っては足手纏いになると判断し、自らの咽を突き、自害して果てた 老武士の姿を観て、これでも帰れるかと惣蔵から問いつめられた平吉は何も言えなくなってしまう。

その頃、おけいと定平は、すっかり平吉が皆を連れて帰って来ると思い込み、その時は手狭になるから、床下に板を張って小屋を作ろう等と話していたが、まだ一抹の不安を拭い切れないおけいに対し、定平は、明日山に行って、丸太を斬って来るからと慰めていた。

翌朝、定平が出かけた後、川上の道をお屋形様の軍勢が逃げて行くと言う知らせを聞いたおけいは、無我夢中で橋を渡ると、その列に追い付こうと出かける。

馬に乗った惣蔵の姿を見つけた彼女は、必死に帰るようにその足にすがりつくが、息子は返事一つ返さない。

結局、足の悪いおけいも、必死でその列と共に移動し続ける事になる。

郡内の山に入って行きかけた一行だったが、お屋形様一番のお気に入りの家来が裏切り、山に入れなくなったので、どこか別の山に籠るしかないと惣蔵が皆に伝える。

おけいは、皆一緒に死んでしまうつもりかと息子に迫るが、結局、彼女も一緒に寺で夜を明かす事になる。

翌朝、天目山に向う事になった一行の数は半分に減っていた。皆、夜の内に逃げ出したのだ。

まだ、一緒に随行していたおけいは、みんな可愛がって育てて来たのに、親より、お屋形様の方が良いのかと嘆く。

そこに、いきなり敵が放った矢が飛んで来たので、必死に草むらに逃げ込むおけい。

お屋形様は、甲府のにいる恵林寺にいる目が不自由な兄信親の事が気になっておられるので、その方の元に行く事になった安蔵と平吉が、おけいを自宅に送り届けると申し出るが、おけいは、仕事を先にすませて来いと二人の息子を送りだすと、自分はそのまま列に付いて行く事にする。

惣蔵は、お屋形様を守りながら、最後の防戦に巻き込まれて行く。

川の畔では、おけいとうめの死骸が抱き合うように横たわっていた。

一方、甲府の信親の元に駆け付けた安蔵と平吉も又、襲って来た敵と戦うが、信親は討ち死にし、何とか生き延びた兄弟二人は、その足でお屋形様が向ったと言う恵林寺に駆け付ける。

僧侶たちと共に、塔の上に集められた安蔵、平吉の二人は、他の武士たちと同じように、火が放たれた寺の中で、互いに刀を突きあい果てる。

僧たちのい中心に座した快川禅師は、「心頭を滅却すれば火もおのずから涼し」と唱えながら、炎に飲み込まれて行く。

家族の誰一人帰って来ず、一人になった定平が、老いた身体で川に水を汲みに行くと、そこに流れ着いた布を拾い上げるが、それは滅亡した武田家の家紋だったの、そのまま川に捨ててしまうのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

武田家の興亡を、貧しい農民の家族三代の視線から描き、戦いの空しさを描き出した昭和35年芸術祭参加作品。

まず、松竹の会社タイトルとしてお馴染みの雲海に浮かぶ富士山の絵柄が、原色の絵筆で荒く描いたようなタッチのカラーと合成されている事で度胆を抜かれる。

本編も皆同じパートカラータッチで、白黒映像に、部分的な原色の色彩が加えられており、独特の映像になっている。

戦いの場面等は、戦いごとに違った原色に全面染められ、それに鈴の音などが印象的にかぶさる。

又、死の前兆のように、悲劇の前になると、突如無気味な老婆(原泉)が出現し、鈴を振る姿が前半何度か出て来るが、彼女は象徴的意味合いらしく、劇中の人物には見えていないようだ。

又、川中島の決戦の信玄と謙信の一騎討ちの場面等を中心に、ストップモーションと言うか、着色写真風のインサートシーンもあり、全般的に前衛的な画面作りになっている。

最初の内は、白黒で描かれている登場人物たちの区別がつきにくいと言う事もあり、この奇抜な美術設定の方に目を奪われがちであるが、足の悪い高峰三枝子と、田村高廣の夫婦の物語になってからは、多少、話が見えて来はじめる。

と言っても、やはり、後半になっても人物の区別がつきにくい点は同じで、歴史に疎い観客にとっては、やはりストーリーは、何となく流れを掴む程度にしか理解できないと思う。

それでも、作者が言わんとする戦の空しさ、世の無情さみたいなものは十分に伝わって来る。

武田一族に対する地元民の本音と建て前を、母子が互いに言い争う部分も興味深い。

今考えると、随分贅沢なキャスティングだと思うが、その役者の魅力が十分に伝わって来るかどうかは疑問が残る。

あくまでも、監督の作家意識が先行した作品だと思う。


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