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どろろ

2007年、TBS、手塚治虫原作、NAKA雅MURA脚本、塩田明彦監督作品。

この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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賢帝3048年、大地の東では戦乱が続いていた。

嵐の夜、醍醐景光(中井貴一)は、戦の場から、まだ矢が刺さった鎧姿のまま、とある寺の中にある地獄堂へやって来る。

景光は、彫った仏師が狂い死んだと言う48体の魔神像があるお堂に一晩泊まると言い、傷の手当てをしようと付き添って来た住職を追い払う。

たいまつを渡され、独り魔神像の直中に立った景光は、室戸軍を討つと、今度は影山に滅ぼされる。何とか、敵を倒す力をくれ、天下を与えろ!望むものは何でも与えるから…と願をかける。

その時、背後を横切ろうとしたネズミを斬ると、その斬ったネズミの頭が「身体を…、子供の…」と、人間の言葉で囁きかけて来る。

その言葉を聞いた景光は、今、確かに、自分の奥方が妊っている事を知り、その事かと気づくが、ためらう事なく承知し、契りの証を見せろと叫ぶ。

すると、天井から電光が、彼の額に降り注ぎ、そこには火傷の傷が付く。

その時、扉を開けて中の様子を観た住職は、魔と契られたか…と呆然とするが、次の瞬間、その身体は、景光の刃で、真っ二つに切断されてしまう。

景光は、後悔等せぬ…と呟く。

20年後。

全身を黒衣でまとった不思議な人物が荒野を歩いて行く。

その足元には屍が横たわっている。

彼は、とある街に到着する。

その街のキャバレーのステージでは、半裸の踊り子たちが踊っていた。

客席を、占い師(きたろう)が、手相を観てやろうかと歩き回っている。

一方、町中では、雑踏の中を駆け抜けた一人の少年(柴咲コウ)が財布をすっていた。

キャバレーの占い師は、客席に座っていた黒衣の人物(妻夫木聡)の手相を観てやろうと、強引にその手を見るが、その異様な手のひらを観た占い師は、愕然としながら「もう、とっくに死んでいるはず…」と呟く。

黒衣の男は、一旦席を立ち返りかけるが、ステージの中央に出て来た能面の踊子に、突然斬り掛かって行く。

能面は二つに割れ、その下からは異様な顔が現れる。

黒衣の男の両手は刀になっており、踊子が変身したカニのような魔物に挑んで行く。

一瞬の隙を突かれ、その黒衣の男は背後からカニ魔物の爪に胸を貫かれてしまう。

その頃、そのキャバレーに潜り込み、すり取った財布の中身を確認していた少年は、床に落ちた手を見つける。

それは、黒衣の男の手だった。

次の瞬間、少年は、いきなりカニの魔物に襲われるが、黒衣の男に魔物は倒され、命拾いをする。

黒衣の男は、落ちていた手を刃になっている手にはめるが、それを唖然と観ていた少年は、財布の持主のチンピラ(劇団ひとり)に捕まってしまう。

次の瞬間、黒衣の男は倒れてしまう。

苦しむその男の片足が取れ、そこに新しい足が生えて来るのを観たチンピラは、怯えながら「お前は、赤錆山の…」と呟く。

すると、立ち上がった黒衣の男は、自分の目玉を外しながら、「何に見える?お前には…」と迫って来る。

少年は、そのチンピラに、男の正体を知っているのか?と尋ねるが、魔物が住んでいた赤錆山に行って、その魔物を倒して帰って来た奴が魔物だった…としかチンピラは答えない。

じれったくなった少年は、店を出て行った男をつけるが、その男は、街で出あった一人の琵琶法師(中村嘉葎雄)に「もう少し、これを貸しておいてもらう」と話し掛けていたので、その法師に近づき、今立ち去った男の正体を聞き出そうとする。

問われるがまま琵琶法師は「呪師がおった…」と話し出す。

ある日、川岸に薬草を採りに出かけた呪師寿海(原田芳雄)は、川を流れて来る盥を見つける。

それを拾ってみると、中には、衣に包まれた何か生き物のようなものが入っていたが、それは声も立てずに泣いているように聞こえた。

寿海は、戦場から亡骸を多数を拾い集めて来ると、それを煮込み、さらに数種類の薬草を混ぜ、命の元になる水を作った。

それにエレキテルを通し、型に入れると、まず心臓を作り出す。

水槽に入れた赤ん坊は、花を見せると喜ぶようになる。

そんな寿海の家を訪れて来た琵琶法師は、家の中に「身体をくれ〜」と囁いている人魂を多数発見する。

何故、あやかしどもは、この子を欲しがるのか?と、疑問に思った琵琶法師だったが、自らが持参して来た刀身を寿海に渡す。

それは、あやかしを討つために鍛えられた特別な刀なのだが、今まで、その行き着く先を探し求めていたのだと、法師は説明する。

寿海は、左手は、もっと大きくなってから付けてやる。戦で死んだ子らの分も強く生きろ、と言いながら、赤ん坊から少年に成長した男の右手に小刀を埋め込んでやる。

それからは、毎日のように、少年に剣術を教え込んだ寿海だったが、少年が青年に成長した頃、病に倒れる。

寿海は、術で自分を生き延びさせるような事はせず、自分の死後は、自分の研究成果が醍醐景光の手に渡らぬように、この屋敷を焼き払い、全て葬り去るようにと青年に命ずる。

そして、最後の力を振り絞って、青年の左手に、魔物を討つ剣を仕込んでやった後、自分はお前の本当の父親ではないと告白する。

そんな事は信じられないと、その青年が抱く腕の中で、寿海は息絶えてしまう。

約束通り、家を焼き払った青年は、お前の身体を奪ったのは48体の魔物だ。その左手の剣で、その魔物たちを一匹づつ倒す度に、お前のからだが一つづつ戻って来る…と、どこからともなく声が聞こえて来る。

少年に向い男の話を続けていた琵琶法師は、自分が二度目にその青年に会った時には、3つの妖怪を倒した時だった…と続ける。

不思議な話を聞き終えた少年は、あの刀で人を斬ったらどうなる?と問いかけるが、法師に聞くより、自分で直に男に聞いた方が早いと気づき、急いで街を飛び出し、あの不思議な青年の後を追う。

町外れの路で青年に追い付いた少年は、「あなたのお名前、何て〜の?」とおどけてみせるが、青年は、その少年が実は女である事を簡単に見抜いて相手にしない。

しかし、気が強いその少女は、自分が女である事を認めず、胸毛を見せてやると自らの着物をはだけてみせ、あくまでも男だと言い張る。

しつこく名前を聞く少女に、その青年は、流れの百鬼丸、どろろ…、何とでも呼べと気のない返事。

すると、その少女は、そのどろろと言う名前を自分が使うと言い出す。

そして、その刀で人を斬ったらどうなると問いかけて来るが、青年百鬼丸は、試してみるか?と脅して来るだけ。

しかし、どろろと名乗るようになったその少女は、付いて来るなと邪険にする百鬼丸を、兄貴〜と慕いながら、どこまでも追って来る事になる。

その夜、川辺で寝ていた二人の側に、大きな赤ん坊のような妖怪が出現する。

百鬼丸は、その赤ん坊の後を付いて行くと、焼けた廃寺の中で、そこが住処のような赤ん坊妖怪の様子を観ながら、この場所には、10〜20人の子供の霊が漂っていると、どろろに教える。

赤ん坊の姿をした妖怪は、この寺で焼け死んだ子供達の霊が集まったものらしい。

その寺で一夜を明かした二人は、翌朝、握り飯を供えに来た夫婦者らしい二人の姿に気づく。

それを観た百鬼丸は、ここが子捨て場だったと知る。

その夫婦が言うには、元々ここは金山の領地で無惨な村だったが、その代わりに支配しはじめた醍醐軍は、もっと残忍な連中で、村はもっと地獄のような状態になってしまったので、子供は捨てるしか方法がなかったと、辛そうに言い訳する。

しかし、それを聞いていたどろろは、親に捨てられた子供がどんなに滲めな生き方をしなければいけないか、自分の経験を話して、夫婦に詰め寄った後、感情のやり場に困ったように、そのまま寺を後にしてしまう。

その後を追う形になった百鬼丸は、竹林の中で馬に乗った一人の男と出会う。

男は、自分の屋敷に来て、旅の話でも聞かせてくれないかと二人に頼んで来る。

素直に付いて行くと、大きな屋敷で、男の妻(土屋アンナ)と、七つ子らしい女の子たちから迎えられる。

一応、腰の物をと、刀を預けるよう男から言われるが、腰に下げた刀がたけみつである事を百鬼丸は示す。

夕食を呼ばれながら、焼けた寺の事を百鬼丸が、鯖目と言うその家の主人(杉本哲太)に聞くと、先日、雷が落ちたと言う。

その夜、一緒の部屋で寝る事になった百鬼丸は、寺で亡くなった子供達の事をしきりに同情するどろろに、お前の親はよほど良い親だったのだろうな、俺の親は、育ての親だったと打ち明ける。

そして、どろろが、自分にへばりついているのは、自分の左手の刀を欲しがっているのだと分かっていたので、48体の魔物を倒したらくれてやると約束する。

さらに、仕事は良いのか?…と、どろろの泥棒稼業の事まで心配してやるが、どろろは仕事はみんなが静まった後だと答えて寝入ってしまう。

その頃、七つ子の女の子たちは、泊めた二人の内、どちらを食べるか相談しあっていた。

やがて、百鬼丸とどろろが眠っている寝室の障子が開き、芋主の姿に変身した女の子が現れる。

寝穢く眠りこけているどろろに襲いかかろうと部屋に入りかけた芋虫妖怪たちは、起きて待ち構えていた百鬼丸に、たちどころに切倒される。

その血飛沫が顔にかかり目が覚めるどろろ。

部屋を出たどろろは、 庭先に出現した赤ん坊妖怪と百鬼丸が話をしている様子を見つける。

その妖怪に教えられたのか、百鬼丸は台所で地下道に通ずる抜け穴を見つける。

どろろも、百鬼丸に続いて、その地下道に付いて行くが、そこ穴の中には多数の子供の骨が落ちていた。

さらに、百鬼丸は、多数の妖怪の玉子らしきものを発見する。

地下道を出た場所は、あの焼けた寺だった。

百鬼丸は、鯖目の奥方が尼さんに化けて、ここをエサ場にしていたのだと指摘する。

その頃、鯖目の館では、その奥方が主人に、百鬼丸を斬り殺すように迫っていた。

どろろは、半鐘を鳴らして、村びとを集めると、屋敷から持って来た妖怪の卵を投付けてみせ、皆、妖怪に騙されているのだと呼び掛ける。

一方、鯖目の屋敷に戻って来た百鬼丸は、奥方に乗っ取られるぞと鯖目に呼び掛けるが、どうにも自分の判断が出来ない様子の鯖目を百鬼丸は突き殺してしまう。

村人と連れて戻って来たどろろの前で、奥方は妖怪マイマイオンバに変身し飛び立つ。

すると、庭先に出た赤ん坊妖怪からいくつもの光が飛び立って行き、マイマイオンバに襲いかかる。

再び地上へ戻って来たマイマイオンバを、百鬼丸は斬り捨て、農民たちは、残った芋虫を殺して行く。

空中を飛び交っていた光は地上に降り立ち、一瞬、子供達の姿に戻る。

それを観て、泣きながらわが子の名前を呼ぶ村人たち。

その時、倒れた百鬼丸が、内臓を口から吐き出したのを観た村人たちは、彼も又魔物と思い込み、どろろにも村から出て行けと罵声を浴びせかけはじめる。

理不尽な村人たちの行為に愕然としながらも、二人は黙って屋敷を後にする。

そんな二人に、村人たちは、石を投げて来るのだった。

その後も、どろろと共に、桜の木に宿った赤毛妖怪と戦った百鬼丸は耳を取り戻す。

巨大なトカゲ風の妖怪とも戦った百鬼丸は、その身体の中に入り倒す。

やがて、雨が降って来た中、百鬼丸は自分の声を取り戻し、喜びのあまり、どろろの名を連呼する。

烏天狗のような妖怪と戦った百鬼丸は、どろろと協力して何とか倒すが、死ぬ寸前、その妖怪が、恨むなら、お前の本当の父親、醍醐景光を恨めと教えられる。

その言葉に衝撃を覚える百鬼丸は、右手を取り戻した。

百鬼丸とどろろは、「ばんもん」と呼ばれる金山と醍醐の国境跡に到着する。

遠くの山には、来る旅に大きくなって行くと言う巨大な醍醐の城が建設中だった。

その城を睨み付けるどろろのように気づいた百鬼丸は、何か恨みでもあるのかと問いかける。

どろろは、親の親を殺したのは、醍醐景光だったと打ち明ける。

まだ子供だったどろろが住んでいた村は、ある日、突然、醍醐軍に攻め入られ、妻や子、村人たちを守ろうと、身体一つで醍醐軍に立ちふさがったどろろの父親、火袋(菅田俊)は、醍醐景光の放った矢を射られ、絶命する。

母(麻生久美子)と何とか、村を逃げ出したどろろだったが、その母親も、その内、どうしても女に戻れるような相手に出会えるまでは、お前は男として生きろと言い渡した後、雪の中で骸となって果てる。

以後、どろろは、男として生きる事になる。

その話を聞きながら、百鬼丸は、右手から落ちた刃を刀に作り替えていた。

そんな二人の元に、三人の醍醐の役人らしき男たちが近づいて来て、金山の残党ではないかと捕縛しようとする。

百鬼丸とどろろは、そんな三人をたちどころに打ち倒してしまう。

醍醐の街に入り込んだ百鬼丸は、立ち寄った飯家の主人(寺門ジモン)から、食い扶持を探しているのなら、飯場の人足の口ならあると言われる。

そこへやって来たチンピラたちを、百鬼丸があしらっている様子を観ていた侍らしき青年が、店にふらりと入って来ると、仕事を探しているのかと話し掛けて来る。

百鬼丸の腕っぷしを認めたらしきその若侍は多宝丸(瑛太)と名乗ると、百鬼丸を城に連れて行く。

多宝丸は、俺の父親は醍醐景光だと教える。

その言葉を聞いた百鬼丸は、目の前にいるのが自分の弟だと知り、目を見張る。

今でも、金山の残党が、自分と父親の命を狙っていると言う多宝丸は、度胸試しをするように百鬼丸に酒を勧めながら、醍醐をどう思うと続けて聞いて来る。

40年続いている戦乱は、まだまだ終わりそうもないが、いつかは統一しなければ、この戦乱は終わらないのだと解説した多宝丸は、父上にお目通りねがうと言いながら、百鬼丸を別室に連れて行こうとしていた若侍は、母親と出会ったので、役に立ちそうな男を見つけたと百鬼丸を紹介する。

初対面のはずだったが、百鬼丸の姿に何かを感じた醍醐の妻百合(原田美枝子)は、近づくと、彼が着ていた着物の柄を観て、この布地をどこで手に入れたと問いかけて来る。

その百合の手を掴んだ百鬼丸は、たちまち、目の前にいるのが自分を生んだ母親だと気づく。

彼女は、身体の48箇所を失った状態で生まれたわが子を、その場で殺そうとした景光を必死で押しとどめ、布地とともに盥に入れて川に流したのだった。

百合は、多宝丸が戻って来た!と叫ぶ。

その事場を聞いた弟の多宝丸は、ことに次第が飲み込めず唖然として立ちすくむ。

「多宝丸」とは、百合が捨てた最初の子供に付けた名前を、次に生まれて来た次男にも付けてしまった名前だった。

いたたまれなくなり、その場から帰ろうとした百鬼丸は、追って来た多宝丸の腹を殴り気絶させると、すみやかに立ち去るのだった。

百合から、捨てた多宝丸が帰って来た事を聞かされた景光は、あの時、殺しておけば良かったと悔やむ。

街に居残っていたどろろの方は、慣れた手付きで、店から食べ物を盗んで来ると、川岸で待っていた百鬼丸と合流する。

百鬼丸は、そんなどろろに、自分が知った出生の秘密を打ち明ける。

自分が、醍醐景光の息子だったと言う事を明かした上で、自分の手の剣を取るように命ずる。

驚いたどろろは驚愕混乱しながらも、親の仇の親族と知った百鬼丸の胸を自らの小刀で貫く。

しかし、それは、百鬼丸がまだ心臓を取り戻していない事を知った上での行為のようであった。

そこに出現した琵琶法師は、時が来ちまったか?と二人に問いかける。

法師は、景光が魔物と契約をした後、地獄堂を訪れた事があり、そこに漂っていた住職の霊から、事情を聞いていたのだった。

その夜、どろろは百鬼丸に、親が憎いかと聞いた上、お前には出来ない、親なのだから。これでお別れだ…と言い捨てて立ち去って行く。

その頃、城にいた百合は、お庭番を呼び寄せ、百鬼丸の行方を探して来るよう命じていた。

雪が降って来た。

琵琶法師は、どろろに、百鬼丸には罪がないと説く。

しかし、どろろにしてみれば、長年、心に鬱屈していた憎しみのやり場に窮していた。

一人になった百鬼丸の方には、二匹の黒犬のような魔物に囲まれる。

黒犬は、親に再会したら、抱かれるつもりだったのか?すべては身果てぬ夢に過ぎぬ、お前の夢等一生かなわぬ…と、百鬼丸をからかうような言葉を浴びせて来る。

その二匹の魔物を倒した百鬼丸は、誰か、俺を殺してくれ!と苦悩の叫びを上げながら、両目を取り戻す。

その本当の目に最初に写ったのは、戻って来たどろろの姿だった。

どろろは、自分が持っていた小刀を川に投げ捨てると、俺は敵討ちを諦めるから、お前もきちんと生きやがれ!と叫ぶ。

翌日、百合は、百鬼丸に会いたさ一心で、城を抜け出ようとするが、あらかじめ、それを警戒していた多宝丸に阻止されてしまう。

百合を掩護しようと出現したお庭番も斬り捨てられてしまう。

その頃、醍醐景光も、自室で苦悩していた。

いまだに、天下統一できないからだった。

人の一生を持ってしても、その野心は不可能なのかと苛立っていた。

すると、人である事を捨て切れぬお前の弱さだ。即刻、あやつ(百鬼丸)を血の海に…と魔物の声が聞こえて来る。

景光は、因果の決着は俺がつけると言いながら、近づいて来た家来を斬り捨てて出かける。

ばんもんの下で、百鬼丸は、何だか自分が酷く小さくなったみたいだと呟いていた。

そんな百鬼丸に、どろろが花を見せると、こんな目にも綺麗に見えると百鬼丸は気づく。

そんな二人に向って太砲が撃ち込まれる。

それは、駆け付けて来る多宝丸が乗った馬車から放たれたものだった。

百鬼丸は、手伝おうとするどろろを琵琶法師に預け、多宝丸と対決する。

やって来た多宝丸は、この世に「多宝丸」はただ独り!と叫びながら剣を抜いて来るが、そこに、百合も駆け付けて来て、兄弟通しの争いを止めようとするが、その多宝丸は、折れた刃が首に刺さり、すでに事切れていた。

さらに、馬に乗って醍醐景光もやって来る。

百鬼丸に剣を抜いて向って来る景光を止めようと、百合は立ちふさがるが、一刀の元に切り捨てられる。

百鬼丸は、そんな景光に立ち向かおうとするが、どろろが止めに来たので、腹を殴って気絶させる。

百鬼丸と剣を交えながら景光は、その身体どうした?と聞いて来る。

百鬼丸が、父が作ってくれたと答えると、それは人か?と尋ね、俺はお前を魔物に売ったが、後悔していないと言いながら、百鬼丸に斬られた腹を押さえていた。

景光は、迷わずに俺を斬れと迫るが、百鬼丸は、あいつ(どろろ)が憎しみを捨てるなら俺も捨てるととどめを刺そうとしない。

そして、多宝丸はあんたの事を信じていたぞ、あいつの心を無駄にするなと付け加える。

すると、その死んだはずの多宝丸の首が動き、その口から、このせがれを生かして欲しいか?と魔物の声が聞こえて来る。

それを聞いた景光は、何が望みだ?と聞き返す。

おまえの身体を!と要求する魔物。

この国は、いつかこのせがれに継がせてやるぞと答える景光を観た百鬼丸は止せ!思いとどまれ!と警告するが、景光は俺の命をやると口にし、その額に、契約の傷が付けられる。

百鬼丸は魔物に国をやるな!と叫ぶが、その時、死んだはずの多宝丸が甦る。

百鬼丸は、騙されるな、こいつは魔物だと再び叫ぶが、次の瞬間、景光の身体は、空から降りて来た魔物に頭から食われてしまい、魔物の顔を持った新しい景光に変化してしまう。

その魔物の景光は、この国はもらったぞと笑いながら馬に跨がるが、突然、自らの刀で胸を突き通す。

そして、百鬼丸に向い、俺諸共…と呟く。

人間としての景光が、身体の中から「斬れ!」と叫んでいるのだった。

百鬼丸は、その父の言葉通り、魔物に変化した父親を斬り捨てる。

斬られた後もふらふら歩いて来る景光に向いどろろは、死ぬのなら、こいつに詫びてから死ねと百鬼丸を指す。

死ぬ寸前の景光は、どろろの名を尋ね、そやつ(百鬼丸)を頼むと言いながら立ち去ろうとする。

父上!と駆け寄ろうとする多宝丸を制した景光は、砂漠の方にしばらく歩いて行った後、爆発して消滅してしまう。

そんな百鬼丸やどろろの周囲を、いつしか醍醐軍が取り囲んでいたが、多宝丸は彼らを止める。

そんな中、百鬼丸は心臓を取り戻すが、いつまでも胸の痛みが消えないのをいぶかしんでいた。

城に戻った多宝丸は、生き残った唯一の肉親である百鬼丸に、この城を継いでもらいたいと申し出るが、百鬼丸は、まだ半分(魔物が)残っていると断わる。

まだまだ人の喜びや哀しみを知りたいと言う百鬼丸の言葉を聞いた多宝丸は、待つと答え、宝刀を兄に渡す。

一方、城下町の橋の上に琵琶法師と共にいたどろろは、一人で旅立とうとしていた。

再び、ばんもんの所に差し掛かったどろろは、「遅えぞ、どろろ」と言う声に驚く。

門の陰で、百鬼丸が待ち受けていたのだ。

思わず、感動のあまり泣きそうになったどろろだったが、俺はまだ女にはならねえぞ!と憎まれ口を叩きながらも百鬼丸に抱きつくと見せ掛け、その股間にケリを入れるのだった。

二人は、大きな海を見晴らす場所に到達していた。

はじめて見る海の大きさに、百鬼丸は感嘆の声をあげるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

水木しげるの台頭等に寄る「妖怪ブーム」の最中に書かれた手塚治虫の妖怪漫画の映画化。

1969年には虫プロ製作のアニメ版が作られ、テレビ放映されている。

名作と言われているのは、このアニメ版の事である。

コミック版もアニメ版も、リアルタイムに接していた世代としては、この新しい実写版には馴染めないのではないかと危惧していたが、見て行く内に、これも又、紛れもない「どろろ」であると感じ、意外にも楽しめた。

普通、子供の頃に観た原作に思い入れがある場合、大抵は、その実写映画化には不満の方が先に立つものだが、取りあえず、素直に受け入れる事が出来たと言うのは、この映画に、それなりの力があったと言う事だろう。

中盤、「マイマイオンバ」のエピソード辺りから、技術的な拙さが目に付くようになるが、どうも作者は、そうした「妖怪もの」とか「アクション」などの「見世物性」を売り物にしようとしているのではない事に気づく。

妖怪との戦いは、さらっと流して撮っている感じがするからだ。

やはり、物語の中核は、親と子の対決。

その親は、手塚治虫が何度も漫画化して来た「ファウスト」のように、魔物との契約によって、自らの欲望を獲得しようとする人物である。

百鬼丸は、いわばその犠牲者。

そこに、その百鬼丸の親に、自分の両親を殺されたもう一人の犠牲者が絡んで来るので、一昔前だったら、この二人の犠牲者が、魔物と非常な父親を滅ぼして終わり…だったはずなのだが、やはり、今は、そう簡単な復讐劇ではおさまらない。

憎しみの連鎖、復讐の連鎖を食い止めようとする今風のメッセージ性を取り込もうとして、本作のラストは、コミック版やアニメ版とは又違った展開になっている。

この作品、原作を全く知らない人、コミック版は知っている人、アニメ版も知っている人等で、各人、受ける印象は違うと思う。

個人的には、アニメ版やコミック版を知っている事が、本作で省略してある部分を補ってくれたような気もする。

つまり、初見の人には、十分理解できなかった部分が多かったのではないかとも思われる。

どろろを演じる柴咲コウは、あまりにも原作イメージとかけ離れているので、観る前は心配していたが、これが意外と新しい「どろろ」像を作っていたので感心した。

百鬼丸を演じる妻夫木聡も、途中から百鬼丸にぴったりと感じて来たから不思議である。

多宝丸を演じた瑛太や、景光役の中井貴一も、そう違和感がなかった事だけは確かである。


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