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蒼き狼 地果て海尽きるまで

2007年、森村誠一原作、中島丈博+丸山昇一脚本、澤井信一郎監督作品。

この作品は新作ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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鷹が大空高く舞う。

タイトル

1161年、モンゴル草原にはいくつもの部族が点在しており、互いに戦いを続けていた。

その年の6月、メルキト部族のイェ・チレド(唐渡亮)が新妻のホエルン(若村麻由美)を馬車に乗せ、旅をしている途中で、 モンゴルの部族に襲撃される。

護衛していた夫は、周りの護衛が次々と倒される仲、最後まで新妻を守ろうと、馬車に付き添うが、必ず助けに来てくれ、この場は逃げてと叫ぶホエルンの言葉に押され、その場に馬車を置き去りにして立ち去る事にする。

襲ってきた男はボルジギン氏族の長イェスゲイ・バートル(保坂尚希)であった。

この時代、女は、戦いに勝った部族側の戦利品扱いをされており、新妻だったホエルンも又、その夜、イェスゲイ・バートルに身体を奪われてしまう。

その後、イェスゲイ・バートルは、宿敵タタールの勇敢な族長を捕まえ、その男を処刑する前に、その勇気を誉め讃え名前を尋ねると、テムジン・ウェと名乗る。

その直後、ホエルンに男の子が生まれたとの知らせが届いたので、イェスゲイ・バートルは、その赤ん坊に、今斬った勇者の名前をもらい、テムジンと名付ける。

その赤ん坊の右手のひらには、赤い痣がくっきりと浮かんでいた。

テムジンが14才になった時、嫁探しの旅に出かける。

ハエルンは、テムジンの後、4人の子供を生み、父親が違う2人の子供も一緒に育てていたが、必ず助けに来ると言っていたメルキト族の元夫イェ・チレドは、その後も姿を現さなかった。

始めて遠出するテムジン(池松荘亮)は、ブルハン岳があんなに遠くに見えると、馬上の父親に話し掛けると、イェスゲイ・バートルは、あの山に住むと言う蒼き狼が、湖を渡り、白い雌鹿と出会ったと言う伝説を聞かせ、お前にもその蒼き狼の末裔であるモンゴル一族の血が流れているのだと教えるのだった。

イェスゲイ・バートルは、とある交易の街で出会ったオンギラト族の族長デイ・セチェン(榎木孝明)から、葡萄酒と言う珍しい酒を振舞われる。

デイ・セチェンは、夕べ、白い鷹が太陽と月を持って我が手に止まる夢を観たが、それは、テムジンを連れたイェスゲイ・バートルの事だと分かったと言いながら、娘のボルテ()を紹介するのだった。

許嫁となったボルテと二人で馬で散歩に出ていたテムジンの所に近づいてきたのは、ボルテの幼馴染みだと言うジャムカ()と言う少年だった。

ジャムカは、馬上からの弓当て遊びに誘い、テムジンの技量のすごさに舌を巻くと、すっかり気に入り、血を分けた兄弟よりも親密な、永遠の友情の印である按達(アンダ)の誓いを交わす。

ジャムカは、金が一国を一人で支配しているように、何時の日か自分がモンゴルを統一しなければ…と夢をテムジンに語ってみせる。

そんな将来を語り合っていた二人の元へ、父親イェスゲイ・バートルが、タタールによって毒殺されたと言う使いが来る。

驚いて、葬儀の五日後にようやく帰郷したテムジンが観たものは、族長を失い、タイチュウト族のカルグタイ(神保悟志)の扇動により、大半の部族のものたちが逃げ出す所だった。

カルグタイは、この部族を出る訳を聞くテムジンに、お前はモンゴル族ではなく、メルキトの人間だと言い放つ。

その日から、僅かな仲間しか残らなかったテムジンの家族は、自ら食べ物を集めて暮さなければならなくなる。

しかし、捕った獲物は、必ず家に持ち帰り、家族で分け合って食べる事を習わしとしていたのを破り、異母弟二人が、勝手に川で捕った魚を自分達だけで食べている所を見つけたテムジンは、メルキトの子供であるお前の言う事等聞けぬと反抗する弟ベクテルの言葉にショックを受け、一旦は帰ると見せ掛け、その後、別の弟を連れて戻って来ると、外で眠っていたベクテルを起こし、お前は家族の和を乱す人間だと言いながら、矢を射って殺してしまう。

それを知った母ホエルンは、兄弟であり数少ない味方を殺してしまったテムジンの残虐さを強く叱りつける。

しかし、テムジンは、あいつは母上を侮辱したので殺したのだと言い残し、ゲルを出て、自分の手のひらの痣を見つめるのだった。

その手のひらは大人の手に成長し、テムジン(反町隆史)は立派な成人になっていた。

その日、タイチュート族が攻めてきても大丈夫なように、仲間たちと作作りをしていたテムジンは、馬泥棒に馬を八頭も盗まれたと聞かされ、テムジンは一人で後を追い掛ける。

とある人家の囲いの中に、その八頭を見つけたテムジンは、ゲルから出てきた男に矢を射ようとするが、相手は慌てて、勘違いするな、今朝方、ここを馬泥棒が通り過ぎていたのを見つけ、自分も以前被害にあった事があったので、取り戻しておいたのだと言う。

ボオルチュ(野村裕人)と名乗ったその男は、タイチュウトに裏切られ苦労していたテムジンの噂を良く知っているようだった。

彼の言葉に嘘はないと感じたテムジンは、無礼を謝罪し、その内、何か礼をすると言って、馬をもらって帰る。

翌年、テムジンはボルテを嫁にする為に、デイ・セチェンの元を7年振りに訪れるが、再開したデイ・セチェンは、心苦しそうに、7年も経って、ボルテもトウが立ちそうだったので、ジャムカの元に嫁がせてしまったと打ち明ける。

ショックを受けたテムジンだったが、父の死後、忙しさの為7年も来なかった自分が悪いと帰ろうとするが、そこに、成長したジャムカ(平山祐介)が会いに来る。

ジャムカは、本当の結婚相手は、ボルテ本人に決めさせようと言い出し、こちらも成長したボルテ(菊川怜)を呼ぶ。

悩んだ末、ボルテが選んだのはテムジンの方だった。

しかし、二人きりになったボルテは、自分が心変わりをしてしまった事を詫びると共に、自分に会おうともせず帰りかけていたテムジンの裏切り行為も責めるのだった。

それを聞いたテムジンは、一生かけてこの償いはしてみせる、二度と辛い目には会わせないと誓う。

テムジンが連れ帰って来たボルテを、ホエルンは暖かく迎え、妹のテムルをはじめとするテムジンの兄弟たちを紹介するのだった。

そんなテムジンの元にやってきたのがジャムカだった。

自分も仲間に入れてくれと言う。

もちろん、テムジンは暖かく迎えてやる。

ホエルンはボルテのできるだけの部屋を与え、豊かな家に生まれた彼女に、今後、貧しさや敵襲ヘの恐怖に怯えながら暮す事への詫びを言うのだった。

ボルテを妻に迎えた2年後の6月、テムジンは父親から、自分の死後、頼って行けと言われていたケレイト部族のトオリル・カン(松方弘樹)に会いに出かける。

黒テンの毛皮を土産に、今後、御加護を願いたいと慇懃に申し出ると、上機嫌のトオリル・カンは、自分に忠誠を誓えば、お前たちは今後安全を手に入れた事になると答えるのだった。

その秋、一人の女が朝の祈りを外でしていた時、どこからともなく伝わって来る地響きの音に気づく。

テムジンもすぐに起き、ボルテをはじめとする女たちを森に逃すと共に、男たちは迎撃に出発する。

見張りによると、山向こうからやって来る敵はタイチュウトで、5、600はいると言う。

しかし、待ち構えていたテムジンたちが観たのは、タイチュウトではなく、メルキトだった。

その頃、森に逃げようとしていたホエルンは、ボルテの姿がないのに気づき、お付き老婆のコアクチン(今井和子)に探させていた。

賢明に戦った末、追い払ったテムジンは、仲間が待つ森に戻ると、全員の無事を喜んでいたが、ボルテがいなくなった事を知らされる。

メルキトの目当ては最初から、ボルテを奪う事だったのだ。

テムジンは、一人で取り戻しに行こうとするが、周りの仲間たちから止められる。

族長が倒されたら、部族全体がバラバラになってしまうからだった。

その後、テムジンは母ホエルンと次男ハサル(袴田吉彦)との三人だけになると、かねがね噂されているように、母上は、メルキト族から奪われてきた人なのか、自分は父親の子ではないのかと自分の出生の秘密を聞こうとする。

しかし、ホエルンはテムジンに向い、それを証明するのはお前だけであり、父親がお前を受け入れたのは、お前が蒼き狼の血を受け継ぐものだと信じていたからだと諭す。

そうした会話を横で聞いていたハサルは、これ以上、母上を侮辱するなと、テムジンの質問を止めさせようとする。

外に出たテムジンは、俺は何者なのだと空に向って問いかけるのだった。

そして、何もせぬまま半年が過ぎた。

これ以上、ボルテを敵の手に置いておくと、心変わりされる恐れがあるとし、仲間たちは、ジャムカとトオリルに協力を願い、一気にメルキトを叩こうとテムジンに持ちかけてくる。

何せ、敵の数は3000なのに対し、テムジンの一族は300程度しかいなかったからだ。

その相談を受けたトオルリとジャムカは、戦利品の分配を決め、ジャムカが背後から攻めると作戦を練る。

正面から向う事になったテムジンは、自分達だけでは数が足らぬので、500人廻してくれとトオルリに頼む。

この作戦は見事に成功し、メルキト軍はほとんど壊滅してしまう。

敵陣で、ボルテを探していたテムジンは、馬車に乗って逃げて行く一団を発見したとの知らせを受け、すぐさま後を追う。

やがて、敵の一団は、馬車を捨てて逃げて行く。

その後を仲間に追わせながらも、馬車に近づいたテムジンは、中に乗っていた女に声をかけ、テムジンだと名乗る。

後ろを向いていた女が振り返ると、それはまさしくボルテであった。

久々に抱き合った二人だったが、テムジンは、ボルテが妊っている事に気づく。

メルキトに孕ませられたのだった。

ボルテを再び馬車に乗せ、連れて帰させた後、その場に独り残ったテムジンは、追っ手が捕まえてきたメルキトの族長を、槍で突き刺した後、感情のままに、めった突きにして惨殺するのだった。

メルキトをほとんど壊滅させたテムジンとモンゴル軍の祝宴は三日三晩続いた。

テムジンは、戦で活躍してくれた仲間たちに、感謝を込めて乾杯を繰り返していた。

そこに、ボルテが男の子を生んだとの知らせが入る。

母親ホエルンに付き添われたボルテの元にやってきたテムジンは、その子を寄越せと言う。

その事を恐れていたボルテは、もし、生まれた子供が女の子だったらどうすると問いかけ、女だったら殺さぬと言う夫の言葉に苦悩する。

男の子なら、敵の血を引く故殺すと言うのだ。

しかし、それを聞いていたホエルンは、お前を疑わず育てた父親の事を忘れたのか、広い心を持てと諭す。

考え直したテムジンは、名前を付けてくれといわれ、ジュチと名付けて去る。

ジュチとは他所者と言う意味だった。

その後も、テムジンの活躍は目覚ましく、その名はモンゴル中に伝わるようになる。

そんなテムジンを、ある日、トオリルが訪ねてきて、一緒にタタールを討たないかと誘って来る。

何故、ジュチではなく、自分に声をかけてくれたのかとテムジンが問うと、そちの力を買っているからだと、トオリルはおだてる。

トオリルとテムジンの協力部隊は、約10日間で、タタールを滅ぼしてしまう。

戦いが終わったテムジンは故郷に帰ろうとするが、それを観たトオリルはは、今ならジャムカと戦っても勝てると言い出す。

しかし、テムジンは、ジャムカはモンゴル統一を夢見ている男で、自分とは按達(アンダ)の誓いを交わした仲である事を打ち明ける。

しかし、トオリルは、二人は並び立っては行かないとけしかけて来るが、テムジンは、妻を譲ってもらった恩義もあると固辞するのだった。

そんなある日、近くにメルキトの残党がいるらしいとの知らせを受け、その討伐に出かけたテムジンは、待ち伏せしていた敵軍から襲撃を受けるが、その中の一人を捕らえて殺そうとする。

顔を隠していたので、剥ぎ取ってみると、何とその兵士は女であった。

しかし、女であると知り見逃そうとするテムジンに、自分は、音たちを皆殺しにされた後、一家の主人として仲間たちを守る立場になったのだから、兵士として殺せ、決して、戦利品扱いはされないと我を張る。

その勇敢な言葉を聞いたテムジンは、そのクラン(Ara)と名乗る女を、兵士として自分達の仲間に加える事を約束する。

久しぶりに故郷に帰ったテムジンは、17才の青年に成長していた息子ジュチに、何でも好きなものを戦利品の中から取れと言葉をかけるが、内気なジュチは、弓を射る際に用いる小さな指輪を選んだだけだった。

ボルテは、そろそろ、このジュチにも戦に連れて行ってやってくれと頼む。

テムジンは、北方にメルキトとタタールの残党が残っているので、それを討伐して、お前が、蒼き狼の血を引いている事を自ら証明して来いと命ずる。

初陣にもかかわらず、そんな困難な仕事をいきなり命じたテムジンに、ボルテや後から聞かされたハサルは困惑するが、ジュチは恨み言も言わず出かける事にする。

そのクランは、テムジンを呼びに来ていた。

クランが呼んでいると言うのだった。

クランのゲルに出向くと、何故、自分を抱いてくれないのかと言う。

お前は女を捨て兵士だったのではないかとテムジンが問いかけると、戦の時以外は女であり、今は、人として女を扱ってくれたお前に、その女をやると言う。

テムジンは、その言葉を受けとめ、お前の誇りと女をもらうと言いながら、抱き締めるのだった。

その後も、テムジンの人徳を慕って、ジャムカの部族衆たちが、続々とテムジンの元に集まって来るようになる。

これには、当のジャムカも困惑していた。

かねてより、トオリルが自分を避け、テムジンとばかり話し合っている姿も気に喰わなかった。

ジャムカは、同じく苛立っていた弟のタイチャルに、お前もテムジンの元へ向えと命ずる。

タイチャルは、言われた通りにテムジンの元に向うと、悪し様に兄ジャムカの悪口を言い出し、そんな兄の元にはおれないので、自分もこちらに加えてくれと懇願する。

テムジンは、そんなタイチャルを迎える事にするが、油断してセを向けた隙に、タイチャルがナイフを抜いた事に気づかなかった。

いきなり立ち上がり、テムジンを襲おうとしたタイチャルだったが、女の姿で側に控えていたクランが、ナイフを首に投付け殺す。

死んだタイチャルの手に握られたナイフを観たテムジンは、ジャムカが自分の暗殺を事を弟に命じた事が信じられなかった。

やがて、これまでの戦いとは比較にならないくらい規模の大きな、モンゴルを二つに分けるような戦いが始まる。テムジン軍とジャムカ軍の戦いであった。

黒の甲冑に身を固めたジャムカ軍は勝ちを焦っていた為、徐々に、蒼い甲冑に身を固めたテムジン軍に劣勢になって行く。

味方を全て失ったジャムカは、その足でトオリルの元を訪れると、援護を願い出る。

戦いが終わった直後で疲弊しているテムジン軍を、今一緒に襲えば、モンゴルを手に入れる事ができるとけしかけたのだった。

それを冷静に聞いていたトオリルは、そなたが奪われた領地や兵隊たちが今どうなっているか知っているかと問いかけて来る。

負け戦で遁走していたジャムカは何も知らなかったが、テムジンは、ジャムカから奪った土地や兵を、何も手を付けなかったと言うのだ。

ジャムカは、いまだにテムジンが按達(アンダ)の誓いを忘れずにいてくれた事に驚く。

ただし、トオリルの考え方は違った。

テムジンのそうした考え方に甘さを見たのだ。

トオリルとジャムカが手を組んで攻めて来る噂を耳にしたテムジンは、このままでは疲弊しているこちらに勝ち目はないので、二人に使いをだし、しばらく和平の時間を稼ごうではないかと言う周囲の進言に反対し、このまま戦うと言い張る。

すでに、北方から戻ってきていたジュチは、今度こそ、自分もその戦いに参加させてもらえると思っていたが、テムジンが彼に命じた仕事は、又しても、北方の敵の討伐と資源として、北の森林の確保だった。

将来、モンゴルが統一された時、民を養って行く為には資源が必要になると、テムジンは説得するが、二度とあんな北方等へは行きたくないとジュチは珍しく抵抗する。

さすがに見かけたハサルも、北方へは自分が代わりに行くからとテムジンをなだめようとするが、テムジンは、自分と息子の事に口を出さないでくれと、その申し出を断わる。

ジュチは、一人で悩み、やってきた母親ボルテに、メルキトの血を引く自分が生まれてきた時、父親が殺そうとしたというのは本当かと尋ねる。

しかし、ボルテは、そんなジュチを叱りつけ、父親の言う事を聞けと命ずるのだった。

出て行ったジュチの姿を見ていた祖母のホエルンは、母屋が別の部族に略奪されて生まれた苦しみを、テムジンが一番良く知っているはずのに、何故、こう行き違うのかと嘆く。

トオリル、ジャムカ混成軍に、疲弊したまま戦い続けていたテムジン軍は、徐々に苦戦を強いられて行く。

そんなある日、休息をしていたテムジンは、隠れて接近していた敵兵の放った毒矢を首に受けてしまう。

倒れたテムジンに駆け寄ったクランは、必死に、首の傷口から、毒の混ざった血を吸い出して、助けようとする。

そうした応急措置の素早さもあり、何とか一命は取り留めたものの、すっかり体力を失い、意識も朦朧状態になったテムジン一行が遁走していた時、新たな敵軍と遭遇したかに思えたので、テムジンは最後の力を振り絞って刀を抜く。

しかし、力はすでになく地面に崩れ落ちるのだった。

近づいてきた男たちは、敵ではなかった。

何と、ボオルチェら味方だったのだ。

互いに、無事だった事を喜んだ二人だったが、ボオルチェの勧めに従い、傷ついたテムジンは一旦、陣地に戻って、腹一杯の飲んで喰って休養して、そして又、気分も新たに戦場に戻る事にする。

その頃、トオルリの方は、すっかり戦は終り、勝った気分でいた。

ジャムカは、テムジンは生きているかも知れず、油断しないようにと進言したが、トオリルはもう帰るつもりだった。

そこに、いきなり、蒼い旗を掲げたテムジン軍が攻めて来る。

ジャムカは、逃げずに立ち向かうよう、トオリルに頼み、一旦は、トオリルも兵を向わせるが、その兵たちが言う事を聞かず、途中で逃げ出しはじめたのを見ると、自分もそそくさと逃げようとする。

その姿を見たジャムカは、トオリルの老いを感じ、その場で斬り殺してしまう。

そんなジャムカの元にやってきたテムジン軍の兵は、同行するように命じる。

テムジンとは、久々の再会だった。

始めて会った時、互いに気が会い、按達(アンダ)の誓いをしてから、もう30年が過ぎていた。

丁重に迎えられたジャムカは、モンゴルを統一するのはお前だったのだとテムジンに言う。

そんなジャムカにテムジンは、俺の片腕になってくれないかと頼むが、それでは自分の誇りが許さんので、この場で殺してくれ、願いを聞いてくれるのなら、一滴の血も流さず、お前自身の手で絞め殺してくれと言う。

その言葉を聞き入れたテムジンは、ジャムカの首に手をかけ、泣きながら絞め殺してやるのだった。

1206年、4月16日、ついにモンゴルの統一を成し遂げたテムジンの戴冠式が執り行なわれた。

シャーマンの教祖ケクチュ(津川雅彦)が祝いの言葉を述べ、テムジンの名を今日から、チンギス・ハーンと改める事を、集まった数万の民衆たちに宣言する。

そのチンギス・ハーンを称える民衆たちの呼び声を聞いたテムジンは、今こそ、宿敵、金を討つ事を決意するのだった。

チンギスは、その場で、その先陣を勤めるのは、ハサルとジュチだと伝えるが、そのハサル、実はジュチが北方で病気になりまだ帰ってないと言う。

それを聞いたチンギスは不審がる。

自分の命令が聞けぬ程、重篤なのかと疑ったのだ。

その後、旅の行商人から、そんなはずはなく、ジュチ王子は、北方の山で、つい先日も元気に狩りを為さっていたと言う話を聞いたチンギスは激昂する。

しかし、そのチンギスを、かつて弟を殺したその手で、今度は息子を殺そうと言うのかと母親ホエルンは必死に止めようとする。

チンギスは、苦しみの中から這い上がって、本当の男に育って欲しかった。それが、自分にとってのあいつへの償いだったのだと、これまでの冷たい仕打ちの真意を打ち明ける。

しかし、ホエルンは、蒼き狼の血が殺戮の血筋であるとするなら、そんなものはいらないと断言する。

その後、軍を率いて自ら北方に向ったチンギスは、ジュチがテント内で寝ていると部下から聞かされ、こんな昼間から怠けているのかと怒りながら、そのテントの中を覗くと、ジュチは明らかに病気で寝込んでいた。

部下に訳を聞くと、少し前、戦場で敵の毒矢を受け、三日前からもう目も見えないのだと言う。

何故、そんな重篤なのなら、自分に知らせなかったのだと聞くと、ジュチ王子自身から、もし、自分が病に伏せた事が敵に知られたら、一気に攻め込んでしまわれるし、父上には決して心配をかけないようにと止められたと言うのだった。

全てを知ったチンギスは、自分の浅はかさを反省すると共に、今にも死にそうなジュチを抱きしめて詫びる。

その声を聞いたジュチは、朦朧とした意識の中で、自分も蒼き狼として死ねるだろうかと尋ねて来るではないか。

チンギスは、そなたこそ、蒼き狼の子だ、死ぬんじゃないと抱き締めるが、やがて、その腕の中でジュチは静かに息を引取ってしまう。

チンギスは、ジュチが最後まで握りしめていたあの指輪も見て、失ったものの大きさを噛み締めるのだった。

その後も、チンギスの戦いは継続されて行った。

いつも側近として同行していたクラが、モンゴルを統一しても戦を止めないのかと問いかけると、チンギスは、わしが、領地を大きくすればする程、国の境目はなくなり、みんな自由に交易できるようなり、豊かで安心して暮らせるようになるのじゃと答える。

そのために、又血を流すのですかとクラが聞くと、これ以上血を流させない為。仕方がない戦なのだとも答える。

そのチンギス軍は、万里の長城を目前に控える。

チンギスは、ジュチの指輪がはまった指で自ら矢を絞ると、ジュチ、お前が一番乗りだとつぶやきながら、矢を放つと、その矢は大きく空に飛び立っていく。

その後を追うように、チンギス軍が万里の長城へ向って行く。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

モンゴル建国800年記念、チンギス・ハーンの半生を描いた叙事詩。

空前のスケールで描かれるスペクタクル巨編…。

確かに、膨大なエキストラを動員した群集シーンや騎馬戦は迫力がある。

ただし、そうした物量に証した歴史スペクタクルは、最近の日本映画としては珍しくはあっても、50〜60年代頃のハリウッド全盛期や日本映画では良く見かけたものであり、そうした作品を知っているものの目から観ると、特に目新しさはない。

この作品の製作者角川春樹氏自らが監督を勤めた「天と地と」よりは、多少ストーリー的にはマシのように思える程度の出来ではないだろうか。

あくまでも、角川春樹氏の思い込みの世界であり、その趣味性に好みがあうか否かで、この作品の評価も多少変わって来るだろう。

基本的にこの手の歴史劇は、人の半生なり一生を、ざっと俯瞰的に眺めて描くものだけに、年代ごとのエピソードを並べた、人生のダイジェスト版のようになってしまう傾向があり、あまりきめ細かな人間ドラマやサスペンス的盛り上がり等は最初から期待できないジャンルである。

そうしたジャンルものとして観れば、本作は、まずまずの出来と言った所ではないだろうか。

特に面白い!と言う程ではないけど、ひどく退屈…と言う訳もなく。前半、やや退屈…くらいと言った所か?(後半、少し、間延びして感じるのも確か)

予想された事であるが、モンゴルと言う舞台が、どこまでも続く平原ばかりで、画面的に大きな変化がない。

ある程度最初の方で、その風景に見慣れてしまうと、後は構図的な変化に乏しくなる。

勢い、何度も出て来る騎馬戦も似たようなものになりがちで、単調に感じる。

なるべくCGに頼らず、生身のスタントアクションで見せようとしているので、それが逆に、映画ファンなら一度はどこかで観たような定型アクションになってしまっているのも気になる。

おそらく、基本的な馬を使ったスタントアクションは「駅馬車」の頃から、そう変わってないのではないかとさえ思える程。

ただし、カット数は少ないながらデジタル処理も巧みに使われているし、衣装等美術も丁寧に作られており、アクション映画だと思わなければ、それなりの見ごたえ感はある。

後半、屈折した感じのジュチ役、松山ケンイチが出て来ると、ちょっと、それまでとは雰囲気が変わり、若干面白くなったように感じた。