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海女の戦慄

1957年、新東宝、志賀弘原作、内田弘三+坂倉英一脚本、志村敏夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

海女の宮川ヨシは、その日も熱心に海に潜っていた。

その岩場で遊んでいた弟、健一(太田博之)は、小さい姉ちゃんことチエ(三ツ矢歌子)と、その海女友達のユキ(万里昌代)が共によそいきの服を着てやってきたのに驚く。

ミス海女に選ばれた彼女は、出版社で開かれる座談会に出席する為、これから東京に行くのだと言う。

海から上がってきた長女のヨシは、東京には十分気をつけるよう、お人好しな所がある妹チエに注意して見送る。

そんなチエを心配して、バス停まで自転車でやってきたのは、ホテル兼飲み屋「いかり亭」の息子で恋人の良一(松本朝夫)だった。

やがて、バスに乗って東京に向った二人だったが、東京で一泊するだけと言っていた二人は、五日経っても戻って来なかった。

さすがに心配したヨシは、「いかり亭」の良一を所に行き相談するが、良一も心配して、出版社に連絡をとってみたが、とっくに二人は帰ったはずだと言う。

ユキの家は子沢山と言う事もあり、あまりユキの帰りが遅い事を気にしていないのだとも。

そんな「いかり亭」に、自家用車に乗った怪しげな一団が宿泊しに来る。

翌朝、岩場に遊びに出ていた健一は、海面に浮かんでいる水死体を発見、すぐに、知らせを聞いた村人たちが集まって来る。

水死体は、源助爺(石川冷)の娘で、東京に行ってたはずの海女のユキだった。

野次馬の一人としてその場に来ていた源助爺は、その事実を知り驚愕する。

泳ぎの達者なユキが、泳ぎ慣れたこんな場所で水死したと言うのも不思議だった。

「いかり亭」では、早速この事件の事が話題になる。

検死の結果、後頭部に致命傷があったと言うが、それが、海に飛び込んだ際、岩場にぶつかって出来たものかどうかは分からないと言う。

そこへ、昨日、宿泊しに来た社長らしき人物(九重京司)が降りてきて、秘書のように見える安原(有馬新二)と政(村山京司)というチンピラ風の男を従えて、「いかり亭」から車で出かけて行く。

「いかり亭」の主人は、あんな立派な自家用車を持っている男たちを身分卑しからぬ乗客だと喜んでいたが、その場にいた飲み屋の常連客たちは、同伴者の様子を少し怪んでいた。

その日も帰って来なかった妹の事を、ヨシは健一と一緒に岩場で心配していた。

その夜も、飲み屋「いかり亭」は大盛り上がりだった。

常連で酒癖が悪い岩太(菊地双三郎)が、女給たちに絡んで嫌がられていた。

そんな所にやってきてしまったのがヨシで、東京に出向いた良一が戻ってないかと聞きに来たのだが、運悪く、彼女に気のある岩太に捕まってしまう。

そこにふらりと、マドロス姿の男が入ってきて、ヨシに絡んでいる岩太の姿を見かけると、止めようとする。

しかし、この港一番の暴れん坊を自認する岩太は、見知らぬ青年に止められた事に逆上し、表に出ろと担架をきる。

旅の風来坊だと言うその青年は、喧嘩をするつもり等なく、迷惑そうだったが、飛びかかって来る岩太を軽くあしらうと、勢い余った岩太は自ら海に落ちてしまう。

その喧嘩の様子を、何時の間にかホテルに戻ってきていた社長風の男たちが見守っていた。

その夜はさっさと帰ってしまった風来坊だったが、翌日も「いかり亭」の前に停めてある自家用車を磨いていた運転手に近づいて来ると、何時こちらへ来たのかと気さくに声をかける。

しかし、そうした様子を、ホテルの入口付近から観ていた社長風の男は、怪んでいた。

風来坊は、海辺を歩いていたが、その横を、先ほどの車が追い抜いて行く。

風来坊は、健一に会うと、ユキが浮かんでいた場所を聞こうとする。

健一は最初、見知らぬ男を警戒していたが、優しそうな男だと分かると、急になついて、素直にユキが浮かんでいた場所を教える。

泳ぎの達者な海女がこんな所で溺れるはずがなく、昔、お千代さんと言う娘が身投げした場所で千代が淵と言う岩だらけの無人島から流れてきたのではないかと、姉ちゃんから聞いたも言う。

そのヨシが、海から上がってきて、健一と連れ立っている風来坊を見ると挨拶して来る。

その後、千代が淵へ独りやってきた風来坊は、洞窟の中で、タバコの吸い殻と、折れたマッチの燃えカスが落ちているのを発見する。

その後、その場所にやってきた運転手仙吉(木下隆二)は、動く岩に隠れた洞窟に入って行くと、サボっていた見張りの譲次(川村健)を探し、叱りつける。

その中には、見知らぬ中年男と娘が縛られていた。

一方、近くの海域では、船に乗せられたチエが、社長風の男たちから潜れと強要されていた。

彼女たちは、東京の出版社を出たところで、この男たちに拉致され、無理矢理、魔の海と言われて誰も潜らないこの海域に潜るよう連れて来られたのだった。

ユキは、抵抗しようとして、船の中で突き飛ばされ、船の角で頭を強打して死んでしまったのだった。

その夜、処置に困った男たちが海に投げ込んだその死体が流されて行き、健一に発見されたのだった。

あの女と同じ目に会いたいのかと脅かされると、仕方なく、チエは海に潜る事にする。

海底には、古い船が沈んでいたが、男たちが要求する、その中にあるはずの金庫を探すまでは、まだ未熟なチエでは無理だった。

船に上がったチエは、気味の悪い光が内部から見えていたとしか報告できず、もう一度潜れと言われても応じようとはしなかった。

そんな様子に焦れた政は、最初から海女等を使わず、潜水夫を雇えば良かったんだと言うが、それを聞いていた社長風の男は、それでは目立ち過ぎると反論するのだった。

そこへ、海上保安庁の巡視艇が近づいてきたので、船を一旦島に戻す事にする。

島のほろ穴で縛られていたのは、社長風の男、木島の軍隊時代の上官だった春日啓三郎(林寛)と、その娘の雅子(桂京子)だった。

実は、沈んでいる船は、戦時中、民間から供出されたプラチナや宝石類を積んだ軍の駆潜艇だった。

終戦の年の7月10日、嵐の中、この海域を進行中、スクリューが故障し、沈没したのだった。

嵐だった為、その沈没は周辺地域の住民たちにも知られず、その救助信号を受取った海軍省の無電室にいた春日だけが知る事実だった。

当時部下だった木島は、この噂を知ると、巣鴨刑務所から出てきた春日を捕まえ、船の沈没場所を問いただしたが、木島に奪われると知った春日は頑として口を割ろうとしなかった。

やがて、木島は、娘の雅子をさらってきて、とうとう、この場所を聞き出したのだった。

その後に連れて来られたのが、二人の海女だった。

木島たちが「いかり亭」に引き上げた後、ほろ穴に取り残された春日は、宝の箱が見つかったら、自分達は木島たちから、絶対口封じの為殺されると、娘とチエに教える。

そこへ、見張りとして残っていた政が突然入って来ると、逃してやっても言いなどと甘い言葉を囁きながら、雅子に抱きつこうとする。

そこへ、政の性格を疑っていた木島たちが戻ってきて、政を殴りつける。

その頃、「いかり亭」では、夕べの喧嘩に負けた事が悔しい岩太が、酒も飲まずに風来坊の出現を待ち受けていた。

そこへ、木島一行が戻ってきて、その後から、例の風来坊が入って来る。

風来坊は、岩太の姿を見つけると、一旦、外へ誘き寄せ、自分は裏口から逃げた風を装おう。

何時まで経っても出て来ない風来坊が、実は裏から逃げたと知るや、岩太は後を追い掛けるが、実は風来坊は逃げておらず、一時身を隠していただけだったので、又店に戻って来る。

カウンターに座った風来坊は、横に座ってきた木島の子分たちの一人が、タバコの火をつけた後、必ず二つに折るクセがある事に気づく。

それは、あの千代が淵で見つけたマッチの軸と同じ形だった。

そこへ、又、岩太が舞い戻ってきたので、風来坊は入口から退散する事にする。

ちょうど、表の道では、東京から戻ってきた良一が、チエとユキは、高級車に乗ってどこかに行ったとだけしか分からなかったと、ヨシに伝えている所だった。

そんな二人にぶつかってしまい謝ったのが、岩太の追跡から夢中で逃げていた風来坊だった。

ヨシは、そんな風来坊の後を岩太が追い掛けて行く様を、唖然と見送っていた。

翌日、風来坊は、健一と共に岩場にやってきていたが、その様子を、政が岩陰からうかがっていた。

しかし、その監視を風来坊は気づいており、逆に近づいて話し掛けたので、政は逃げ去ってしまう。

健一は、この洞窟には昔海賊が住んでおり、戦争中は防空壕としても使われていたので、おっかないから入るのは嫌だと言って帰ってしまう。

一人になった風来坊は、その場所でも、タバコの吸い殻と折れたマッチの軸を見つける。

外に出た風来坊は、外で拳銃を向けて待っていた政と出会い、がけっぷちに追い詰められる。

やがて、発砲された風来坊は、海に転落してしまうが、たまたま近くの海で潜っていた為、その物音を聞き付けたヨシは、海に落ちた風来坊を救い上げると、家に連れて行き、一晩中看病してやる。

うなされていた風来坊は、夜中に、課長、必ず犯人は逮捕してみせますと、うわ言を言っていた。

一緒の部屋に寝ていた健一も又、小さい姉ちゃんはきっと生きているよとうわ言で答えていた。

翌日も、チエは、木島たちに海に潜らされていた。

風来坊は、ヨシの介抱の甲斐あって、元気を取り戻して岩場にやってきていた。

もう、負傷した左手を吊っているだけだった。

その風来坊に気づいた海女たちは、一緒に潜っているヨシをからかい、ちょっとした喧嘩が始まってしまうのだった。

海から上がり、風来坊と並んで歩き出したヨシは、その男の正体が、木島と言う男を追ってやってきた海上保安庁の波野(天城竜太郎)だと聞かされる。

ヨシは、岩太が彼に迷惑をかけた事を詫びながら、妻に死なれた事が原因でああなっているが、元々は気が優しく良い人なのだと説明する。

そこにやってきたのが、しつこい岩太、海女たちから、この場所を聞き付けてやってきたのだが、ヨシが自分の事を乱暴さえしなければ、男の中の男なのだと弁解してくれている言葉を小耳に挟み、思わず表情をやわらげるのだった。

一方、一人で岩場を歩いていた健一は、木島一行に連れて行かれているチエを発見し、思わず声をかける。

結局、子分たちに捕まってしまい、健一も又、岩の隠し洞窟の中に連れ込まれてしまう。

帰って来ない健一を心配したヨシと波野は、必死に周囲を捜しまわる。

その夜は、岩太らも加わった村人総出の捜索が始まる。

政は、そうした大掛かりな捜索が近くで始まった事に驚いていた。

一方、洞窟の前では、二人の見張りがウィスキーを飲んでいた。

その様子を隙間から覗いていた健一は、逃げるチャンスを探していた。

その夜はまんじりともせず、ヨシは自宅の神棚に祈っていた。

翌朝、又、岩場で波野と出会ったヨシだったが、そこに、山村巡査(芝田新)が駐在所の方に至急電話が入ったとの知らせに来る。

隠し洞窟の前では、二人の見張りがすっかり眠りこけていた。

その合間を縫い形で、隙間から脱出した健一は、逃げ出そうとして、一方の男の足に蹴躓いてしまい、目を覚ましてしまう。

二人の見張りに追い掛けられながらも、素早く岩場を逃げ出した健一は、ヨシを発見、駆け寄るが、結局、見張り二人に追い付かれ、ヨシが捕まってしまう。

その頃、木島は、又自家用車で千代が淵に向っていた。

一方、波野は駐在所で、木島商事の木島の正体を調べ上げたとの本部からの報告を受けていた。

良一と岩太が話し込んでいた家に駆け込んできた健一は、姉たちが悪い奴らに捕まっていると二人に話す。

その二人と健一は、駐在所から戻ってきた波野とも遭遇し、事情を説明するのだった。

その頃、木島はヨシに銃を突き付け、船から潜らせようとしていた。

ヨシは、潜ると、船の中にあった小型金庫にヒモを結び付け戻って来る。

そのヒモを引き上げた木島らは、その金庫の中に、思った通り宝石類が詰まっているのを発見し大喜びするが、人質たちの処分をどうしようかと相談している所で、巡視艇が近づいて来るのを発見する。

巡視艇には、波野も乗船していた。

木島らの船は逃亡を計ると共に、一斉に銃撃を始める。

一方、巡視艇「うみかず」の方も、応戦しながら接近する。

その様子を、山村巡査や岩太ら村人衆は、手に汗を握りながら岩場から観ていた。

やがて、波野が撃った弾が木島の手に当り、その手から落ちた拳銃をヨシが奪い取ってしまう。

船にたどり着き、木島を逮捕した波野は、ヨシに大手柄ですと誉めたたえる。

岩場では、岩太たちが万歳をして大喜びしていた。

やがて、事件が解決し、波野が長浜のバス停から東京に帰ると気がやって来る。

それを、全員が見送りに来ていた。

ヨシも健一も、チエは良一と仲睦まじそうに、岩太もいた。

やがて、波野を乗せたバスは去って行き、独り残ったヨシは、波野に抱いた淡い恋心が叶わなかった事に涙するが、又、いつものように海に戻る日々が始まるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

新東宝お得意の「海女もの」にサスペンスを絡めた一本。

捜査するのが、マドロス姿の秘密捜査員と言うのがいかにも古臭いし、展開も陳腐そのものなのだが、この手の映画は、あくまでもストーリーは付け足しのようなもので、水着姿の海女に扮した女優の姿を楽しむ、お色気趣味がメインだったものと思われる。

実際に海に潜っているシーンは、明らかに女優とは体格が違っており、別人だと思う。

水中撮影は、プールで行われているようで、手前に置かれている魚が泳いでいる水槽越しに撮られているのが明らかだが、その辺は時代を考えれば御愛嬌と言うべき所だろう。

万里昌代の出番が少ないのが、ちょっと物足りないような気もする。

主役を演じている前田通子と言う人は、決して美人と言う感じではなく、どちらかと言うと、むしろ地味な印象の人なのだが、大胆な水着姿を披露している。

マドロス役を演じている天城竜太郎が、ぷっくりとした昔風の二枚目なのも、観ていてちょっと拍子抜けする要素。

全然強そうに見えないのが残念だが、当時としては、人気があった顔だちだったのだろう。

コメディリリーフ風の岩太の存在と言い、全体的にいかにも古臭い感覚と言うしかない。

子役を演じている太田博之は、一時期「小銭寿司」の社長として名を成した人でもある。

本作でも、なかなかの活躍振りを見せてくれる。