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悪魔の手毬唄('61)

1961年、ニュー東映東京、横溝正史原作、結束信二脚本、渡辺邦男脚本+監督作品。

この作品はミステリですので、最後で謎ときがありますが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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トンネルを抜け、一台の車が夜の道を走っている。

後部座席で不機嫌そうなのは、人気歌手和泉須磨子(八代万智子)、車が向っているのは、彼女の故郷である鬼首(おにこうべ)村なのだが、彼女がさっきから不機嫌なのは、運転手が、彼女が頼んでいた妹、仁礼里子への帰郷を知らせる手紙を出し忘れていた事を聞いたからだった。

運転手は、遅れて姫路から出したと言うが、それでは、自分の方が先に村に到着してしまう。

間もなく林道へ出たところで、車が停まる。

トラックからでも落としたのか、丸太が二本、道をふさぐように転がっているのに気づいたからだ。

運転手は、その丸太を退かせる為に、車を降り、必死で動かそうとしていたが、そこに車から須磨子の悲鳴が聞こえたので、慌てて、車に戻ろうとした運転手も又、何者かに襲われてしまう。

後部座席に倒れた須磨子の身体の上には、彼女が歌う「鬼首村に伝わる古い手毬唄」が流れるトランジスタラジオが置かれていた。

岡山県鬼首村警察署

和泉須磨子殺人事件捜査本部には、多くの新聞記者たちが詰め掛けていた。

担当する磯川警部(神田隆)は、村一番の実力者の娘である須磨子が殺された事で、随分仁礼家の当主から圧力がかかっているのではないかとの質問に、捜査に、家柄の違いなど関係ないと否定するのだった。

鬼首村に向うバスの中でも、乗客たちが、この殺人事件の事で持ち切りだった。

村出身の人気歌手が殺されたとあって、青年団ものぼせ上がっているのだと言う。

そのバスに、鬼塚の停留所から、お告げババアが乗り込んで来て、後部座席に座っていた見慣れぬ青年の横に座ると、乗客たち全員に向って、どうせお前たちは、仁礼家に御機嫌伺いに出かけるのだろうと皮肉を言う。

そのボンネットバスを追い抜いて行った、白いスポーツカーがあった。

乗っているのは、長身にサングラス姿の青年(高倉健)。

その姿を観て、乗客たちは、和泉須磨子のファンか何かだろうと推量するのだった。

村の「亀の湯」旅館の前にスポーツカーを停めた青年が、気が向いたら、この宿にしばらく停まる事になるかも知れないと言うので、出向かえた女中は目を白黒させる。

普段は、神経痛、リウマチなど病気に効く温泉目当てに、長逗留する年輩客ばかりしか泊まらない旅館だったからである。

青年が旅館に入る所で、そうした長逗留している年輩客三人と出会う。

その内の一人、石山(石黒達也)という足が悪いらしい老人は、金田一の隣の部屋らしく、いきなり唄いの練習を始めたのが聞こえて来る。

青年が、仁礼家は大きい家だそうだねなどと女中に聞いて来るので、てっきり女中は、その青年を雑誌社の記者か何かだと勘違いしてしまう。

仁礼家では、須磨子の葬儀が行われていた。

長男の仁礼源一郎(大村文武)が、妹の里子(志村妙子)に、父親の剛三(永田靖)を呼びに行かせていた。

その剛三は、18年間村からいなくなって、五日前に村に戻って来たと言う辰蔵(中村是好)と言う男に出会っていた。

酒に酔った辰蔵は、今、同じ酒好きである放庵の家にいると言う。

そこにやって来た里子が、亡くなった姉、和泉須磨子が文化会館で歌った最後の歌を今から追悼番組としてテレビで放送する所だから、一緒に観ようと誘いに来る。

テレビの前には、親戚一同が揃って、須磨子の最後の姿を観ようと集まっていた。

追悼番組が始まり、在りし日の須磨子が、最後の歌となった「手毬唄」を歌いはじめる。

♪裏のお庭の竹やぶで、一羽の雀が言う事にゃ、あの子器量良し、手毬をつけば〜…

♪村のはずれのお社で、二羽の雀が言う事にゃ、あの子器量良し、梅ノ木に文結ぶ〜

しかし、それを聞いていた剛三は、急に顔をしかめて耳を押さえると、その場から逃げ出してしまう。

♪氏神様の細道で、三羽の雀が言う事にゃ、あの子器量良し、人待ちながら〜

三番まで歌い終わった須磨子は、この歌は、自分の生まれた村に古くから伝わる手毬歌だと、匿名のファンの方から手紙で教えてもらった曲だと説明する。

その頃、「亀の湯」でも、石山、吉田(増田順司)、日下部(山口勇)ら湯治客が集まって、その須磨子殺しの話で盛り上がっていた。

怪談話のように興味本位で話していた湯治客たちに、反発したのは、今日、バスでやって来た青年だった。

その青年の横に座っていた、あのスポーツカーの男が、あなたは、仁礼里子と同じ阪神大学の学生遠藤さんではないか…と、突然話し掛けて来る。

自己紹介した訳でもないのに、自分の素性をズバリ当てられた遠藤和雄(小野透)は、驚くと共に、初対面の相手の素性を怪しみ警戒する。

すると、相手の男は、何故、遠藤の素性を言い当てたのか、論理的に説明し出す。

それを聞いていた客たちは、男の観察眼と推理力に下を巻くのだった。

そこへ、放庵(花沢徳衛)が酒瓶片手に酔ってふらりと現われる。

金田一は、何故、客たちの前で、推理力をひけらかすような行為を見せたのか?

石山と日下部、そして、謎の男の三人が一緒に入浴している所に、放庵が、あの手毬唄を口ずさみ、自分は五つの時から、この子守唄と温泉の事だけは知っていると言いながら入って来る。

その頃、大学生の和雄は、仁礼家から里子を呼出していた。

仁礼家の中では、須磨子の追悼会をしようと村の青年団が源一郎の元に集まっていたが、当の源一郎は、親父が迷惑がっているからと、面白くなさそうに集会を解散させてしまう。

剛三は、戻って来た源一郎が広間から酒を飲んでいたり、あんな青年団等と付き合うのは止めろと叱りつけるが、源一郎の方は、父親が、今回の事件と関係ありそうな出来事を隠したがっている事に反発する。

沼の側にやって来た里子は、和雄に、何か不幸が起こりそうだと怯えながら告げる。

するとそこに、あのお告げババアが現われ、見知らぬ男がうろつくと村の空気が乱れると無気味な事を言うので、ますます里子は怯えるのだった。

仁礼家の様子を表からそれとなく観察していた謎の青年に近づいて来たのは、相変わらず昼間から酔った辰蔵だった。

彼は、立派な屋敷ですねと言う青年に、屋敷は立派でも、中身は立派かどうかは分からないと皮肉を言いながら立ち去って行く。

鬼首署では、磯川警部が鑑識の結果報告を受けていたが、須磨子の遺体の上に置かれていたラジオからも、指紋が発見できなかったと言う点に頭を捻っていた。

刑事たちは、聞き込みの結果、仁礼家の評判が悪い事も付け加える。

その頃、「亀の湯」の湯治客たちは将棋をさしながら、「楓の間」に泊まっている謎の青年は、実は刑事なんじゃないかと噂していた。

特に黒眼鏡をかけた日下部は不安そうだった。

仁礼家に戻って来た里子は、兄の源一郎から、何かお前の所に変わった手紙は来なかったかと尋ねられる。

実は、半年前、父親の元に脅迫状が届いたのだと言う。

源一郎は、その脅迫状と今回の須磨子殺しのが関係しているのではないかと怯えており、自室には猟銃を持ち込んでいた。

その後、二人して父親の所へ行き、秘密があるのだったら聞かせてくれと頼むが、剛造が全く答えようとしないので、酔って精神的に不安定だった源一郎は、僕は死んだ方が良いのかと叫ぶ。

「亀の湯」の「楓の間」に泊まっていた謎の青年は、廊下の隅に置いてあった小さな目印が動いている事から、廊下の奥の壁が扉になっており、それを開くと非常階段に繋がっている事に気づく。

そこに、隣の部屋から、又、石山の唸る唄いが響いて来る。

謎の青年は、宿に戻って来た和雄に、里子と会ったのかと不躾にも尋ねる。

仁礼家では、遅配された姉、須磨子から自分に宛てた手紙を里子が発見し読んでいると、やって来た剛造がそんなものを読むなと言って奪い取ってしまう。

その手紙には、金田一耕助と言う人物を、村に呼んだと書かれてあった。

その時、源一郎の自室の方から猟銃の発砲音が聞こえて来たので、二人が駆け付けると、咽を血に染めた源一郎の死体が横たわっていた。

源一郎は、賊に襲われたと判断したのか、半鐘をうって、村中を起こせ!と逆上する。

その半鐘の音は、「亀の湯」にも聞こえて来る。

女中が、仁礼家で又事件が起こったので、村の男衆は全員、山狩りの手伝いをするように言われていると伝えに来る。

謎の青年は、非常階段の前に置いてあった目印が動いていたので、元の位置に戻しておくと、スポーツカーに和雄を誘うと、一緒に仁礼家に向う事にする。

仁礼家は、村中から集まった人間でごった返していた。

里子は、やって来た和雄を見つけると、思わず、しがみついて来る。

そこに、警察一行が到着する。

磯川警部は、屋敷内に入り込んでいる村人たちは捜査が混乱するから出てもらうよう、警官に命ずる。

そんな群集の中から、勝手に現場に入り込んで来た青年は、源一郎の死体を見るなり、至近距離から猟銃が発射された事を見向く。

磯川から誰かと聞かれた青年は、「亀の湯旅館」に泊まっている金田一耕助ですと、名刺をさっと渡す。

庭先で金田一を聞いた和雄は、怪訝そうな里子に、有名な人だと教える。

しかし、剛造は、こんな奴こそ怪んだと追い出そうとする。

玄関口に出た金田一は、磯川に「他殺に見せ掛けた毒殺です」と書いた名刺をさり気なく渡す。

和雄も、仁礼家の親戚筋に当る栗林(山本麟一)から追い出されていた。

屋敷を離れ、沼の近くにやって来た金田一は、白い花を発見する。

その近くにあるお告げババアの住まいには、酔った放庵が、辰蔵は見つかったかと聞きに来て、そのままふらふらと姿を消してしまう。

金田一の姿を見つけたババアは、彼が白い花を持っているのを観て、それは毒草じゃ、そんなものを持つと、祟りがあるず、帰れ!と叫ぶ。

旅館に戻って来た金田一は、遠藤に付き添われてやって来た里子から、須磨子から来た手紙を見せられる。

金田一は、須磨子からはこちらも手紙をもらっており全て承知していると、二人を車で送って帰る事にする。

ところが、その途中、道にオイルが撒かれていた為、金田一はハンドルを取られ、スポーツカーを木にぶつけてしまう。

すぐ側には沼があり、何者かが、車をスリップさせ、沼に落とそうと企んだものと思われる。

そうした事もあり、夜中の1時に仁礼家に戻って来た里子を、屋敷の前で待っていた栗林は、送って来た和雄と金田一の責任かのように言い掛かりを付けて来る。

帰宅後も、誰かから狙われているような不安が消えない里子は、旅館の和雄に電話を入れるが、その姿を又しても栗林に見つけられ、電話を切られてしまう。

和雄の方も、何時の間にか、日下部が側で電話を盗み聞きしているのに気づく。

手毬唄を須磨子に、匿名で送りつけたのは誰か?

沼の側で推理したいた金田一は、何の成果もなく山狩りから帰って来た村人たちに出会う。

金田一は、石仏の側に生えた毒草の白い花を発見する。

その日、宿の温泉に浸かっていた金田一は、裸の磯川が入って来たのに気づく。

磯川は、やはり、源一郎の死因は、金田一が現場で指摘した通り、毒殺だった事を教える。

金田一はその後、須磨子からの手紙を和雄にも見せ、自分の助手にならないかと誘う。

おせっかいな女中が、警察の一行は、もう村から引き上げたと知らせに来る。

仁礼家では、すっかり怯え切った里子が、もう家を出ると言い出していた。

それをなだめていた栗林は、剛造の部屋に来ると、わざとらしくその肩を揉みながら、里子を自分の妻にする話を切り出していた。

その栗林に対し、剛造は、全財産を社会福祉に寄附し、無一文になれと書かれた脅迫状の事を打ち明ける。

それを聞いた栗林は、剛造の妻である宮子おばさん(不忍郷子)から青池と言う男の事を聞いた事があるがと言うと、その男の作男だった辰蔵が18振りに村に現われた事を剛造は思い出すのだった。

そこに、須磨子が唄う手毬唄が聞こえて来る。

又、不機嫌になった剛造は、里子が部屋でかけていたレコードを取り上げると、その場で割ってしまう。

金田一と和雄に、自宅で子守唄を聞かせていた放庵は、最近、辰蔵がこの家に帰って来ないが、「亀の湯」とこの家の途中にある、今は廃虚になった牧舎にいるかも知れないと教える。

その牧舎と近隣の牧場は、今では仁礼家の所有になっていた。

その牧舎にやって来た金田一は、自分の推理は出直しかもしてない、道に撒かれたオイルはあの牧舎から持ち出されたものだろうと和雄に話す。

案の定、廃虚になった牧舎内で飲んだくれていた辰蔵を発見した金田一は、外から、仁礼源一郎が殺された事を教えると、辰蔵は急に怯えたような表情になる。

その頃、仁礼家では、剛造が、庭先に落ちていたガラス瓶を見つけ、あいつは生きている、あいつが落としたんだ…と呟いていた。

又、沼の近くに来ていた金田一は、毒草じゃ、祟りがあるぞ!と叫んでいたお告げ婆さんの言葉を思い出していた。

すると、近くで猟銃を撃つ音が聞こえる。

金田一と和雄の姿を見つけた村の青年団たちが、猟銃を空に向けわざと撃ちながら、嫌がらせで近づいて来たのだった。

笑いながら遠ざかって行く青年団を観た金田一は、栗林は、和雄の事を邪魔に思っているんだと教える。

剛造は、20年前の事を思い出していた。

土地財産を剛造に奪われた青池が、妻子を食べさせるための生活費を出してくれないかと頭を下げにやって来た時の事だ。

しかし、剛造は、自分にそんな事をしてやる義務はないと突っぱねたのだった。

一方、金田一は、石仏の側に立っていた毒草が、最初から生えていたものではなく、誰かが供えたものである事に気づく。

青池が家に無心に来てから半年後、今度は、辰三がやって来て、青池の奥さんが赤ん坊を背負ったまま、毒を飲んで沼に身を投げたと知らせに来る。

剛造は、それを聞いた日の事を思い出しながら、苦しんでいた。

金田一の方も何かを思い付いたらしく、和雄をもう一度牧舎に連れて行く。

あいつが生きている訳がないと苦しんでいる父親の様子を心配して、里子が近づいて来た所に、辰蔵がふらりと現われて、里子に秘密を打ち明けなきゃ…と口走るが、それを止めた剛造に、一緒に警察に行こうかと辰蔵は開き直る。

その頃、牧舎の中を観察していた金田一は、夕べ、ここにいた辰蔵は犯人を観たに違いないと、辰蔵が怪我をした手のひらの血の痕の移動を見せながら、和雄に解説して行く。

それは、おそらく青池ではなかったか?

そして、その犯人は、ここから何かを持って行ったか、持って来たかしたに違いないと推理をすすめる。

犯人は鬼首の町に住んでおり、夕べ、その犯人はここで、思わず妻の名か何かを呟いたのを、辰蔵は聞いたに違いないとも。

金田一は、この牧舎の歴史も全て調べ終わっており、自分は警視庁の嘱託であり、機動力や科学捜査も思いのままである事を証す。

犯人は絶対に逃げないと見込んでいた金田一は、絶対、牧舎の中に入らず、外から見張っているようにと和雄に言い残すと出かけて行く。

「亀の湯旅館」の前では、眼鏡をかけた若い女性が金田一の帰りを待っていた。

金田一の助手、白木静子(北原しげみ)だった。

鬼首署では、磯川警部が、青池一家の消息の確認を取っていた。

当時、村にいた岡田巡査(沢彰謙)の証言では、村が洪水に襲われた後、四つの遺体があり、その遺体を観た村人たちが全員、それは青池一家のものだと証言したと言うだけで、今一つ確証がなかった。

仁礼剛造が、青池の実印を偽造して、その土地を奪い取った事も調べ上げていた。

そこへ金田一がやって来て、毒殺に使用された毒は、沢桔梗から取ったものだろうと推理し、里子宛の手紙に犯人の指紋がついているはずだと手渡す。

一方、牧舎の外で監視をしていた和雄は、辰蔵が帰って来るのを確認するが、驚いた事に、その後を里子がついて来るではないか。

里子は、辰蔵から過去の秘密を聞こうとやって来たのだが、飛び出した和雄は彼女を止める。

そこに、仲間を連れた栗林がやって来て、里子を奪い取ろうと、和雄を袋叩きにし始める。

そんな表の騒ぎを他所に、牧舎の中にいた辰蔵は、ふと観たオイル缶の底に、自分が昔なくしてしまったばかりに、剛造に偽造印を作られ、結果的に、主人であった青池の全財産を奪われるきっかけになった実印を発見する。

さらに、毒の入ったガラス瓶も。

思わぬ二つの品物の発見に、夕べ来たのは旦那に違いないと言いながら、辰蔵は、興奮を沈めるように酒瓶を口に運ぶのだった。

そこへ、白木静子を伴った金田一が戻って来て、倒れている和雄を助け起こす。

気がついた和雄が、里子が栗林に連れて行かれた事を話している時、牧舎の中から苦しむ声が響いて来る。

見ると、辰蔵が倒れているではないか!

金田一は、ただちに白木静子に警察への連絡を頼むと、自分は牧舎の中の辰蔵の側に駆け寄る。

辰蔵は、手毬唄が聞こえると言いながら、息絶える。

和雄は、側に落ちていた毒入りのガラス瓶を見つける。

その頃、「亀の湯旅館」に来ていた磯川警部は、唄いが録音されたテープレコーダーを押収していた。

そして、日下部に対しては、お前は公金横領だと指摘する。

石川は散歩に出ているらしい。

牧舎にやって来た石川に、金田一は、青池だなと呼び掛ける。

しかし、石山はとぼけて、歩く訓練で、沼まで散歩に来ただけだと言いながら、その場を立ち去ろうとする。

金田一は、仏に花を供えたのはあんただと指摘させると、石山はその場に凍り付いてしまう。

旅館に泊まっていた石山こと青池は、部屋のすぐ横の非常階段から抜け出すと、犯行を繰り返していた。

源一郎が殺された直後、風呂から上がって来た振りをして戻って来たあんたのタオルは、先の方しか濡れていなかったと金田一から問いつめられると、覚悟を決めたかのように青池は牧舎の中に入って来て、死んだ辰蔵を抱き締めるのだった。

そこへ、剛造、里子、栗林らがやって来ると、青池は、剛造に、20年間の恨みを晴らさせてくれと叫びながら、拳銃を取り出すと、発砲する。

しかし、弾は外れ、逆に栗林が青池に飛びかかる。

そんな騒ぎの最中に、白木静子が磯川たち警察を連れて来る。

もはや、逃げも隠れもできないと悟った青池は、剛造に、浮浪者のみじめさ、肉親を失ったものの気持ちが分かったかと呟く。

それを聞いていた磯川は、法にも涙がある事を胸に刻んでくれと言い聞かす。

金田一は、見つかった毒入りのガラス瓶を見せながら、辰蔵の死体を警察に見せる。

ガラス瓶を観た青池は、自殺用に昔持っていたものだが、辰蔵に取り上げられて、その後なくなったと思っていたものだと打ち明ける。

金田一はさらに、辰蔵ふが最後に口にした一升瓶が、剛造の家のものだと言う事を指摘すると、剛造は蒼ざめて、俺が毒を入れたと言うのかと反論する。

すると、すかさず金田一は、辰蔵の死因が同じ毒だと何故分かったと追求する。

そして、剛造に近づいた金田一は、その懐から同じような形をしたガラス瓶を取り出す。

剛造は、それは持病の胃腸薬だと言い張ったので、ではこの場で飲んでみてくれと金田一が言うと、剛造は何も言えなくなってしまう。

辰蔵が屋敷の庭で落としたのを拾ったんでしょうと、金田一は推理する。

その時突然、牧舎の中にいた青池が、置いてあった毒入りの酒を一気飲みしてしまう。

そして、倒れた青池は、子供達よ、母さんよ、随分待たせたな…と言いながら、絶命するのだった。

事件が解決し、帰る金田一を見送りに来た里子は、仁礼の土地は全部、社会福祉に寄附する事にしたと打ち明けていた。

白木静子から、この後は九州に行くのか、東京に戻るのかと聞かれた金田一は、一度東京に戻ろうかと答える。

そこにやって来た磯川が、青池の死は自分の失態だったと言うのを聞いた金田一は、にっこり笑いながら、あなたの失態が、青池の最後の幸せな言葉を言わせたんだと慰めるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

白いオープンカーに乗り、サングラス姿で鬼首(おにこうべ)村に颯爽と登場する、スマートな健さん金田一が異色の珍品。

物語途中から登場する、白木静子と言うメガネっ子の助手を従えている所は、片岡千恵蔵版の継承であるが、今回は、彼女よりも、美空ひばりの実弟である小野透扮する大学生を助手がわりにして、最初っからホームズ張りの鋭い観察眼推理をここぞとばかり見せつける嫌味ったらしさを見せてくれたりする。

警視庁の嘱託であり、どうやら、白いスポーツカーをぶっ飛ばしては、日本中の事件を解決して廻っている、スーパー探偵という設定らしい。

この当時、健さんは、美空ひばり主演「べらんめえ芸者」シリーズでも、事件を解決する若社長役などを演じており、流れとしては、その延長線上にあるものだと思われる。

当然、新人高倉健を売り出す為のヒーロー像の一つとして、名探偵としての金田一の名前だけが選ばれただけであり、原作のイメージの忠実な再現などは最初から考えられてもいなかったのだろう。

磯川警部は、神田隆(「妖怪大戦争」でダイモンに乗り移られる悪代官で有名)だが、これがなかなか聡明温厚で人情派の刑事を好演している。

子守唄は登場するが、原作のような見立て殺人ではなく、主要人物名が原作通りなのを除けば、事件そのものは全くの別物になっている。

そう割切って観れば、これはこれで、いかにも都会的でスマートな若者が事件を解決する低予算青春ミステリものとして、普通に楽しめる出来にはなっている。

この健さん金田一、シリーズ化してもらいたかった気もする。