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続・図々しい奴

1964年、東映東京、柴田鎌三郎原作、下飯坂菊馬脚色、瀬川昌治監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和14年、ヨーロッパから5年振りに帰国した伊勢田直政(杉浦直樹)は、千草荘と言うアパートに住む園田美津枝(佐久間良子)を訪れ、今までためらっていた美津枝に結婚を申込むが、美津枝は、切人に身体を許した事を打ち明ける。

実際には何もなかったのだが、心を許したと言う事は身体を許した事と同じだと考えての告白だった。

自分が一番苦境に立っていた時、助けてくれたのは切人だったと言う美津枝の言葉を聞いた直政は、しばし憤然とした後、 直政は アパートを後にする。

いつも、現実から逃げてばかりいた自分への、痛烈な皮肉と聞こえたからだった。

その頃、岡山連隊では、戸田切人が、厳しい神崎班長(潮健児)からしごかれていた。

それでも、立ったまま寝る事ができる切人は、ここでも図太く耐え忍んでいた。

そんな切人を慰問しに、直政の乳母、お多嘉(浪花千栄子)と、まだ子供ながら、切人の花嫁になるよう決められている麻理耶(上原ゆかり)がやって来る。

二人が土産に持って来た久しぶりの甘いものを満喫していた切人に、妻と名乗る女が面会にやって来たと今西上等兵が知らせに来る。

見ると、バー「黒猫」の女給、キリ子(根岸明美)だった。

喜んだ切り人は、お多嘉様や麻理耶に知られないようにキリ子を便所に連れて行くと、その中で事に及ぼうとするが、外に出てみた切人は、折悪しく、ちょうど麻理耶を連れて来たお多嘉様に見つかってしまい、何とかごまかそうと、もう一度キリ子のいる便所の中に舞い戻りかけて、慌てたはずみで便所にはまってしまうのだった。

この浮気発覚がきっかけとなり、切人は伊勢田家で、形だけとは言え、麻理耶と結婚式をさせられるはめになる。

仲人代わりにやって来たのは、切人が六回も落第した中学校の校長(柴田鎌三郎)で、彼が高砂やを歌ってくれる。

その席に現れたのが直政。

切り人は、久々に再会した直政に、美津枝様に会って来てくれと頼むのだった。

一時は、切人に嫉妬や裏切られたような気持ちも抱いた直政だったが、その切人の主人を思う言葉に嘘はないと感じ、素直に礼を言うのだった。

その夜、お多嘉様から、形だけでも麻理耶と同衾をするように命ぜられた切人は、まだ人形を抱いて寝る麻理耶に添い寝してやるが、夜中、おねしょに気づいて起きてしまう有り様。

やがて、太平洋戦争が勃発。

東京に戻った直政は、馴染みの料亭から調達して来た食料を持って、毎日のように美津枝のアパートに出向いていたが、優しくされればされるほど、裏切った自分への復讐をされているように感じると泣く美津枝を観ていた直政は、思わず彼女に抱きつくと、初めての口づけを交わすのだった。

しかし、その直後、アパートを訪ねて来た特高たちによって、直政は、美津枝の目の前で連行されて行くのだった。

その頃、戦況悪化で、南方送りになれば生きて帰れないと感じた切人と同班の後藤(南廣)が、醤油をコップ半杯も飲めばたちまち病気になると言うので、台所から失敬してきた醤油を便所の中に持ち込むと、御猪口に汲み合って二人で飲むが、医務室にやって来た後藤は、ことのほか症状が悪化、たちまち、軍医から、醤油を飲んだ事を見破られ、切人は人事係上官の中尉の元に連れて行かれるが、その上官とは、かつて美津枝の屋敷で出会った事がある小野田(長門裕之)であった。

懐かしさの余り、気安げな口調ではないかけた切人に対し、周囲の目をはばかる為、外に連れて行った小野田は、美津枝からお前の事を面倒観てくれと頼まれたのだと打ち明け、切人と後藤の二人には、高知県長浜に転属を命ずると約束してくれた。

さらに、伊勢田直政が、ゾルゲの仲間と付き合っていた問いう噂があり、スパイ容疑で特高に捕まり、シベリア送りになった事も教える。

やがて、サイパンが玉砕した昭和20年高知県長浜で、切人と後藤は、無事に生き延びており、地元に慰安に来た芸者に夜ばいをかけようと、彼女らが泊まっていた興福寺に忍び込んだ所で、空襲警報が鳴り響き、倉庫が燃えている事を発見した切人は、すぐさま現場に飛んで行く。

倉庫内の物資運搬の手伝いに来たと嘘をつき、燃えている倉庫の中に入り込んだ切人は、物資の中から砂糖袋を見つけると、それを盗み出して逃走するのだった。

終戦の夏、列車で再上京していた切人は、車中で、持って来た砂糖と他の乗客が持っていた食料を物々交換していたが、ハンモックで寝ていた乗客が、あの三田村(多々良純)である事を発見するのだった。

さっそく、東京に着いた二人は、闇市で砂糖付きの食パンを売った売上を山分けにして、その夜、飲み屋で祝杯をあげていたが、切り人はそこで、美津枝そっくりのリリーと言うパンパン(佐久間良子-二役)を目撃した事から、空襲で全滅したと聞く虎屋の事もあり、彼女の近況を案ずるのだった。

昭和21年、ニュータウンと呼ばれる一角で、進駐軍相手の土産物屋を始めていた切人は、後藤が裏で穴を開けている鉄兜を、銃弾を受けた日本兵のものだと高く売付けて、それなりに儲けていた。

そんな切人が、かねて買おうと目をつけて、すでに登記も済ませていた空き地を、隠匿物資で儲けた元将校が横取りし、レストランを建てはじめたと、後藤から知らされ驚愕する。

その元将校とやらに直談判しようと、完成した「ニューテキサス」という店に乗り込んだ切人は、その元将校のオーナーと言うのが小野田であった事を知る。

切人は、この土地は、こちらが先に登記を済ませたものだと抗議するが、小野田は、自分の方がより権力のあるアメリカ人とコネがある事を臭わせ、切人をあざ笑うのだった。

勝ち目がない事を悟った切人は、ここは諦めるが、これで、以前、軍隊時代に受けた貸し借りはなしだと切り返す。

そんな切り人に会わせたい女性がいると言うので、美津枝の事かと喜んだ切り人だったが、出て来た女性とはキリ子(筑波久子)であり、美津枝の消息については全く知らないと小野田は答える。

とは言え、キリ子とも久々の再会であり、何度も抱くチャンスがありながら、その度に邪魔が入り、本懐を遂げる事が出来ずにいたので、今夜こそと期待して、自宅に連れて帰るのだが、そこに待っていたのは、何と、女学校を卒業し、岡山から上京して来た麻理耶(中原早苗)だった。

キリ子は、又しても邪魔が現れたので、怒って帰ってしまう。

切人も、突然連絡もなく現れた麻理耶に冷たい態度を取り、お前は金儲けの役には立たないから国に帰れと言うと、麻理耶はさめざめと泣き出す。

その姿を観た切人は、すっかり大人に成長した彼女の身体にも興味を抱き、ちょっと言い過ぎた事を反省して詫びるのだが、麻理耶は、お多嘉様宛てに届いたと言う美津代さんから手紙を出してみせる。

富士見の療養所から退院した美津枝は、今、緑風学園と言う施設で、戦災孤児たちの世話をしていると言うのだ。

さっそくその緑風学園に向った切人は、元気そうに子供達の相手をしている美津枝と再会を果たし感激するが、美津枝は切り人に、早く念願だったお城を作るように勧める。

切人は、その言葉をヒントに、貧しい子供たちが住めるお城を作る事を約束する。

遅れてやって来た後藤たちが、子供達に玩具を持参して来るが、その直後、トラックがやって来て、もっと高価な玩具を子供達に配りはじめたので、切人たちが持って来た玩具はたちまちその場に放置される事になる。

トラックを連れて来たのは、何と小野田だった。

小野田は、以前から美津枝を訪問していたようで、その事を自分に隠していた事を知った切人は、その日、「ニューテキサス」に乗り込むと、小野田に抗議するのだった。

しかし小野田は平然と、自分は近々、美津枝に求婚するつもりだと打ち明ける。

昔、お前は、俺と伊勢田政とは勝負にならんとあざ笑った事があるが、今は身分ではなく頭の時代だと嘯く。

それを聞いた切人は、「わしがやる!」と言い放つと、憤然として席を立つのだった。

後日、100万の金を持参して三田村が始めた小さな不動産屋にやって来た切人は、これで山を買って城を建てたいと打ち明ける。

やがて、昭和25年、朝鮮戦争が勃発する。

子供達向けのリゾート施設の計画を進めていた切人に、関係者たちは、建設には15億かかると数字をはじき出す。

切人は、戦争が始まったら何が儲かるかを後藤に尋ねる。

今、切人が持っている財産は山だけだったので、その山にある木を使って儲かるものを考えていた切人は、昭和26年、国土開発株式会社と言う会社を起こし、弾薬運搬用の箱作りを始める。

すると、そこにやって来たジョージ(大泉滉)と言う米兵が、60万箱もの大量発注を申込んで来る。

土屋尚子(広村芳子)という美人秘書も雇い、すっかり社長職が板に付いた切人の元にやって来た三田村が、近々、東都電鉄が開発を始める予定の軽井沢に、今の所、坪40円と言うのうってつけの土地が60万坪あると教えに来る。

さっそく、三田村に案内されてその山を見に行った切人は、山に向って、かつて付き合った女の名前を叫びだした三田村に負けじと、自分も、付き合って来た女たちの名前を片っ端から叫びはじめる。

その数の多さには、さすがの三田村も負けを認めるしかなかった。

すっかり成功者となり、付き合う女も自由になった切人は、その日も、秘書で愛人の一人である尚子と地元のホテルで泊まる予定だったのだが、ベッドインする直前、会社から電話が入り、美津枝が喀血して入院したとの知らせを受ける。

すぐさま病院に飛んで行った切人は、すっかり衰弱した美津枝と、それを看病する麻理耶に出会う。

美津枝を励まし部屋を出た切人の前に、小野田も姿を現す。

そんな小野田を切人は外に連れ出す。

二人とも、もう美津枝の余命が幾許もない事を医者から聞かされていたのだ。

今やブローカーをやっているらしい小野田は、金儲けばかりに奔走し、何か大切なものを見失っていた自分を反省し、素直に、児童ホームの建設にまい進している切人の姿勢に敗北を認める。

しかし、特需景気で儲けた君も、人一人の命も救えなかった…と皮肉も付け加え、「光金融経済会」と言う名刺を渡した小野田は去って行く。

その後、切人は、美津枝の存命中に完成させようと、伊勢田児童ホームの建設に着手する。

そして、豪邸に住むようになっていた妻の麻理耶に、自分は、ホームを完成させる為、この自宅を処分して、又、元の裸一貫に戻るつもりなので、郷里の岡山に帰るように命ずる。

貧乏暮らしに戻る事には何の抵抗もないと答えた麻理耶だったが、帰る前に、あなたの子供が欲しいと打ち明ける。

それを聞いた切り人は、それなら2晩でこしらえようと、その日から、昼夜を問わず子作りに励みはじめる。

そんな最中、秘書の尚子から電話がかかって来て、ジョージの注文はペテンだった事が分かったと知らせて来る。

すっかり工事がストップしてしまった軽井沢の工事現場で独り呆然としていた切人の元に、心配した後藤や麻理耶がやって来て、伊勢田直政が、明後日、舞鶴に帰って来る事が分かったと知らせる。

その嬉しい知らせも、会社も潰し、借金だけが残った今の切人には、素直に喜べなかった。

その時、小野田の会社の事を思い出した切人は、彼に援助してもらおうと口に出すが、新聞を持って来た後藤が、その会社が取り付け騒ぎで破産し、小野田は自己資産2、3億を持ったまま逃亡中という記事を見せる。

10年振りに帰国を果たした直政は、美津枝の病室を訪れ、もう離さないと告白するが、その直後、遅れてやって来た切人をお多嘉は叱りつける。

そんな切人に後藤から電話が入り、小野田から提供された資金で、軽井沢ニュータウンの工事が突貫工事を始まったとの連絡を受ける。

しかし、そんな切人と麻理耶に、これまで世話になった礼を言って、美津枝は息絶えるのだった。

憧れの人を失った切人は、霧に霞む裏の林に向い独りさめざめと泣くが、そこに現れたのが小野田だった。

小野田も又、憧れの人を失い涙していたが、自分が工事用に提供した3億の金は、決して汚い事で儲けたものではない事だけは信じて欲しいと切人に告げ終わると、近づいて来た警察に連れ去られて行く。

やがて、児童ホームが無事完成し、子供達を招いての式典では、直政がテープカットをする。

その近くの丘に建てられた美津枝の墓参りをした切人は、もう一儲けしたら、もっと立派な墓を作るつもりだと約束する。

そして、同行した麻理耶が、無事懐妊した事をその場で知らさた切人は、又新たなファイトを燃やすのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

柴田鎌三郎原作小説の映画化「図々しい奴」(1964)の後編に当る。

戦後、特需景気で、又、大成功をおさめる主人公の姿と、逆に悲劇的な運命をたどるマドンナ美津枝の姿が描かれて行く。

特に悲劇的展開がメインとなる本作は、意外な展開の面白さがメインだった前編に比べると、やや単調で、面白さの点でも見劣りがする。

又、同じ年に作られた続編であるのに、キリ子や三田村など主要キャストが別人に入れ替わっているのも、何となく違和感を抱く。

主人公が、どうやって成功するかが、この種の話の見所だと思うが、軍需成金と言う発想はやや平凡で、観ていても驚きや痛快感があまりないのだ。

特に、後半の、すっかり成功し、女にも不自由しなくなった切人の俗物振りは、憧れのマドンナの為にひたすら励んでいた若き日のひた向きな姿と比べると、明らかに魅力がなくなっており、素直に感情移入しにくくなっているのが辛い。

純朴な麻理耶役を演じている中原早苗のキャラクターが、せめてもの救いか。

切人と幼い麻理耶の仮祝言に出席する、中学校長役の原作者シバレンこと柴田鎌三郎と、目立たない脇役に徹している二枚目の南廣も注目点。