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飛びっちょ勘太郎

1959年、宝塚映画、長谷川伸原作、高岩肇脚本、久松静児監督。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼


街道で、娘をいたぶっていたヤクザ鬼吉を見つけた股旅姿の男(森繁久彌)が走って来て止める。

鬼吉の腕を捻り上げ、女を逃してやった股旅姿の男は、「俺の名は飛びっちょ勘太郎、女が虐められているのを見ると放っとけないんだ!」と言って去って行く。

ちょうど出発しかかっていた船着き場に着いた勘太郎は、休憩所にいた男からいきなり斬り掛かられる。

先程痛めつけた鬼吉の舎弟で、笠松の権次(石田茂樹)と言うヤクザだった。

その権次の相手をしていると、そこへ、別の組のヤクザ二人が、やっぱり勘太郎目当てでやって来る。

さらに別な方向から、他の二人組まで勘太郎を相手に刀を抜いて来たので、現場は大混乱。

とうとう、権次がくじ引きで勘太郎を殺す組を決めようと提案するが、今度はそのくじ引きの方法の意見が合わず、またまた5人のヤクザたちは喧々囂々。

そんなヤクザたちがふと我に返ると、肝心の勘太郎は、さっさと渡し船に乗って川を渡っているではないか!

そんな勘太郎、とある茶店で休んでいた深編笠の浪人を見つけると、「もしや、あなた様は?」と声をかける。

すると、その浪人(山茶花究)は、いきなり刀を抜いて来るが、あっさり勘太郎から投げ倒され、笠が取れるが、その中の顔を観た勘太郎は、人違いだったと謝り、すたこら逃げ去ってしまう。

「たつみ」 と言う川料理屋の前に通りかかった勘太郎は、若い女(淡路恵子)の手を取り、虐めているかに見える巨漢に遭遇。

いつもの癖で、その巨漢の腕を捻りあげるが、その男か言うには、女はスリで、今、着物を脱がして証拠を見せてやると言うが、そんなら番所でやれば良い事で、こんな店の奥に連れ込んで何をするつもりだ?と言いながら、その巨漢の着物を剥いで裸にすると、近くの茶店の軒先きに手を縛り付け、腹には墨で「ふぐ」と買いて見世物にする。

その場を後にした勘太郎に着いて来たのは、先ほど虐められていた女。

色目を使って、そこの竹やぶの中でも良いんだよ?と誘って来たので、俺はそんな下心があって助けたんじゃない、弱い者虐めを見のがせない者もいるんだと啖呵を切って、勘太郎はさっさと先を急ぐ。

そんな勘太郎を見送っていた女の手には、勘太郎の懐から抜き取った財布があった。

茶店で握り飯を喰っていた勘太郎は、後から店に入って来た男に足(藤山寛美)を引っ掛け、ずっこけさせるが、男は気づかない。

その男が、酒を大盛でくれなどと言っているので吹き出した勘太郎は、代金を払おうと懐を探るが財布がない。

すると、茶店の主人が出て来て、何か落としたと拾い上げると、それはにおい袋だった。

さては、さっきの女が…と気づいた勘太郎は、飯代の代わりにそのにおい袋を渡し、自分は街道を戻って走り出す。

その後、酒を注文していた男が、慌てて勘太郎の後を追い、途中で追い付くと、年の頃22、3の見返りのお柳と言う女を見かけなかったかと聞いて来る。

自分は、大阪天満のやらずの留吉と言う目明かしで、先ほどのにおい袋は、自分が京土産で買ってその女に与えたものだと言う。

さらに詳しく事情を説明しようとする留吉を制して、要するに、追っている女に惚れているんだろう?と勘太郎が察しの良い所を見せると、その通りだと言う。

女を捕まえたら、十手も返上するつもりだと留吉は覚悟を語るのだが、今は教えられないと言いながら、勘太郎は追い縋る留吉を川に突き飛ばして去って行く。

間もなく勘太郎は、お柳と出会い、財布を取り戻す。

お柳は、軽い財布は相手にしない等と憎まれ口を叩くが、勘太郎が突き飛ばすと大袈裟に転び痛そうな声を上げるので、つい同情して助け起こすと、又、財布を盗んでいた。

お柳に、からかわれていたのだ。

すると、すぐ側から「アレ〜」と叫ぶ女の悲鳴が聞こえる。

見ると、若い女が数人の男女に付きまとわれている様子。

お柳から、弱い者虐めは見のがせないんでしょう?とせっつかれたので、仕方なく、その女を助けようとかけ付けると、女は「勘ちゃん」と言いながら、勘太郎ににじり寄って来る。

おくみ(横山道代)と呼ばれたその娘は、明らかに様子がおかしく、どうやら精神を病んでいるようだった。

彼女を捕まえようとしていたのは、彼女の家族らしい。

かかわり合いになるのはごめんと、ホウホウの態で逃げ出す勘太郎。

とある峠で休んでいた勘太郎は、歌を唄いながら反対側の道を登って来る市川あやめ一座の女旅芸人一行と出会う。

その女旅芸人を追って来たヤクザ風の男たちが、彼女たちに因縁を付けはじめたので、又、悪い癖が出て助けに入った勘太郎は、あっという間に三下らしき男たちを投げ飛ばすが、一人だけ着流し姿の相手の股間を蹴り付けても、平気な様子。

それならと、着物を剥いで裸にしてみると、晒しの下にはふくよかな胸があるではないか。

市川小町奴(春川ますみ)と名乗ったその相手は女だったのだ。

急にしおらしくなってしげて行ったヤクザたちは、どうやら、唄うだけの約束で一座を呼びつけ、実際には客の相手に身体を要求するつもりだったらしい。

狐に化かされたかと慌ててその場を去ろうとした勘太郎は、何時の間にか、奥様風の着物に着替えたお柳と、又ばったり出会う。彼女に言わせれば、商売用の着物だと言う。

しばらく彼女と一緒に歩いていると、又「助けて〜!」と叫ぶ女の悲鳴。

見ると、ヤクザ風の男が若い娘をどこかに連れて行こうとしている。

しかし、先ほどの失敗に懲りている勘太郎は観て観ぬ振りをするが、そのヤクザと女が向った道から留吉がやって来るのを発見、同じくその姿に気づいたお柳は、さったとトンずらしてしまう。

留吉と再会したに、そ知らぬ振りで、お柳は見つかったかと聞くが、2年も追い掛けているが、まだ見つからないと留吉はこぼす。

そんな留吉と一緒に、やっぱり、ヤクザの後を追う事になった勘太郎は、近づくと、「親の仇、又五郎!」と呼び掛ける。

びっくりしたヤクザは、俺は、又五郎なんかじゃなく、石頭の安三(立原博)と名乗ると、勘太郎に突っかかって来る。

その娘は、貸した十両を返さないから、親分から連れて来いと言われているのだと言う安三の言葉を遮るように、娘は一両しか借りてないと答える。

あっさり、安三の頭突きをかわした勘太郎は、相手の着物を脱がして左手を脱きゅうさせると、安三は痛がって逃げ帰ってしまう。

改めて、助けてもらった礼を言うお鶴(峯京子)と言うその娘の顔を間近で見た勘太郎は、思わず「雪乃!」と叫ぶが、すぐに知らん振りをする。

留吉と二人で、さらに詳しい事情を聞くと、呉服屋をやっていたお鶴の家は火事で3年前に焼け落ちてしまい、心労が重なった父親は身体を崩してしまったので、観音の忠治親分から金を借りたらこうなってしまったと言う。

良くある話だと留吉は呆れるが、その十手を借りた勘太郎は、二人をその場に残し、一人でその忠治の家に乗り込んで行く。

忠治の家の玄関先では、安三が脱きゅうした腕の手当てをしていたので、あっさりそれを元に戻してやると、出て来た忠治(曽我廼家明蝶)に、十手を出して見せた勘太郎は、自分は三州見廻り役坪内金四郎の使いの者だと名乗る。

すると、にわかに相手の態度が変わり、座敷に招き入れると、上へも置かぬ待遇で酒肴を勧めて来る。

しかし、そんなものには興味がないと行った様子を見せながら、勘太郎は、要件をなかなか切り出そうとしない。

いい加減忠治が焦れて来た頃を見計らった勘太郎は、そなたは追放だそうだといきなり言い捨てると帰ろうとする。

あまりに唐突な内容に呆然とした忠治は、所払いになる理由を聞き出そうとするが、言葉を濁した勘太郎は、證誠寺のとっくり様に尋ねてみなければならないと奇妙な事を言い出し、それには金がかかると言う。

忠治から金を受取ると、何やら妙な印を結んで誰かのお告げでお鶴の証文をもらえば助かると切り出した勘太郎は、バカ正直にそれを差し出した忠治からそれをもらって帰ろうとする。

すると、運悪く、そこに帰って来たのが、以前、船着き場で襲って来た権次で、勘太郎の顔を見るや、その正体を明かしてしまう。

ようやく騙されていた事に気づいた忠治たちは、一斉に逃げた勘太郎の後を追い掛けて来る。

留吉とお鶴とその父親がいる家に駆け付けた勘太郎は、忠治から受取って来た証文と金を全てお鶴に渡して、取りあえず逃げる算段をしだすが、もうそこへ忠治一味がやって来てしまう。

表は俺が始末するからと、留吉に、お鶴と父親を裏から逃すように頼むと、勘太郎は一人で忠治一味の前に姿を現す。

かかって来る子分たちを次々に投げ飛ばした勘太郎は、あっさり忠治の腕を捻りあげてしまい、人質として家の中に連れ込む。

変わって出て来た留吉が、下手に手を出すと、中の親分の命はないぞと脅かし、子分たち全員を整列させると、そのまま帰るよう号令をかける。

留吉が家の中に戻ったのを確認した子分たちは、急いで戻って来て家を開けると、そこには、忠治が柱に縛り付けられていた。

その頃、橋のたもとで、お鶴と父親に別れを告げていた留吉は、横にいた勘太郎が涙ぐんでいるのに気づき、先程、お鶴の事を雪乃と呼んだ事も含め、勘太郎から事情を聞き出そうとする。

勘太郎は、もともと、孤児だった所を拾われた主人に仕える中間であった。

そして、その主人の娘であった雪乃(峯京子-二役)と恋仲になるのだが、そこに現れたのが、大塚雄之進(丹波哲郎)と言う侍。

やはり、雪乃に目を付けていた彼は、仲間と連れ立って、勘太郎と雪乃が会っている所に邪魔に来ると、嫌味を言いながら、勘太郎に乱暴し始める。

そこへ通りかかったのが、少林寺の和尚で、その場は、和尚に免じて大塚は立ち去る事になる。

その後、少林寺拳法を教えていた寺にやって来た勘太郎は、理不尽な暴力を受けても、無力で反撃すら出来ない自分に技を教えてくれと和尚に頼み込むが、人を傷つける為に少林寺を教えているのではないときっぱり断わられてしまう。

やがて、無事、雪乃と祝言の日、突然泥酔して刀をふりかざし部屋に乱入して来た大塚雄之進は、制止しようとする父親をかばおうと駆け付けた雪乃を間違えて斬り殺して逃亡する。

その後、再び訪れた少林寺で修行をはじめた勘太郎の姿があった。

その話を聞き終えた留吉は、すっかり勘太郎を気に入り、自分も力になりたいと申し出るが、一人になりたいんだと留吉を振り切って、勘太郎はさっさと去ってしまう。

そんな勘太郎、道ばたの地蔵の側で座り込み、足をさすっている女の子の巡礼を見つける。

笠に書いてある文字から察すると、四国から伊豆下田の父母の家を訪ねる途中だと言う。

お光(二木てるみ)と言うその少女、父母は他界していないと言うので、同情しながらも別れを告げて歩き始めた勘太郎だったが、気が付くと、お光が付いて来る。

思わずおんぶしてやると、べそをかき出し、昔父親におんぶしてもらった事を思い出したのだと言う。

そんなお光を少年の馬子(頭師孝雄)が引く馬に乗せて別れた後、道ばたで昼寝をしていると、先ほどの馬子が起こしに来て、近くで敵討ちをしているので助けてやってくれと言うではないか。

見ると、確かに、浪人ものに、姉妹らしき二人組が刀を向けている。

近づいてみると、仇とされていた浪人ものは、以前、自分が人違いをして声をかけた俵藤一角ではないか。

勘太郎は、その一角に味方するような助言を与え、実は、彼の動きを逆に混乱させ、ついに、姉妹に仇を討たせてやる。

大瀬一馬、志乃と名乗る姉妹から礼を言われていた勘太郎の元にやって来たのは、彼を仇を狙う侍三人組。

勘太郎を兄の仇を追って来た米倉甚三郎の仲間たちだった。

勘太郎は、その三人を近くの池に放り込み、さっさと逃げ出す。

その後、渡し船の船着き場で、勘太郎は、まだお柳が見つからないので、明日、間々田の祭りに向う人が通るここで張っていると言う留吉と再会するが、ふと見ると、今正に、船に乗り込もうとしている巡礼姿の女が、そのお柳ではないか!

勘太郎は、そのお柳と一緒に何喰わぬ顔で船に乗り込むと、岸を離れた船の中から、船着き場にいる留吉に向い、身ぶり手ぶりで、ここにお柳が乗っている事を知らせようとするが、勘の悪い留吉にはさっぱり通じなくて、とんちんかんな事を言っているだけ。

とうとう、ここにお柳が乗っていると声を出した勘太郎の言葉で、ようやく気づいた留吉だったが、もう後の祭り。

遅れてやって来た間々田の旅籠「関乃家」に泊まった留吉は、先に泊まっていた勘太郎と相部屋になるが、廊下に出た勘太郎に「勘ちゃ〜ん!」と抱きついて来た娘があった。

以前、勘違いして助けた頭のおかしな娘、おくみだった。

大阪の曽我乃屋と言う父親が言うには、彼女が好きだった寛吉と言う男が病で死んで以来、様子がおかしくなったのだと言う。

その話を聞いていた留吉は、いたずらっけを出して、それなら人助けだと思って壻はんになってやれと、おくにと勘太郎を隣の寝室へ押しやってしまう。

その後、廊下から寝室の障子を開けて覗いて見た留吉だったが、そこにはおくみだけが気持ち良さそうに眠っていた。

勘太郎は裏口から逃げ出していたのだ。

祭りの人ごみの中に、懐かしいお鶴の姿を見つけた勘太郎は、その直後、お柳にも声をかけられたので、これ幸いと、彼女に、お鶴の後を付け家を見つけてくれと頼む。

しかし、人ごみの中には、忠治一味をはじめ、幾組もの敵の姿も見つけたので、隠れる為に近くの芝居小屋の楽屋口に入り込むと、そこにはあの市川あやめ一座の娘たちがいた。

再会を喜ぶ彼女たちは、これから唄が始まるので、舞台で見て行ってくれと言う。

しかし、彼女たちが舞台で唄いはじめた所で、権次たち、忠治一家の者たちが乱入して来たので、思わず、客席にいた勘太郎は、花道から舞台に上がり、唄っていた千代(島倉千代子)と一緒に唄を唄いはじめる。

大勢の客が見ている前、その舞台に上がり込む訳にも行かず、入口付近で、権次たちがうろうろしている隙に、勘太郎は裏から外に逃げ出す。

しかし、外の群集の中に、しつこく付け狙う米倉甚三郎らの姿を見かけた勘太郎は、又、近くの博打小屋に入り込む。

そこでは、素人客相手に丁半博打をしていたが、明らかにイカサマ賽を使っていると見抜いた勘太郎がそれを指摘すると、店をしきっていた仁八が、用心棒の浪人を呼ぶ。

その顔を見た勘太郎は驚愕する。

3年間、彼が探し求めていた仇、大塚雄之進の変わり果てた姿だった。

表に出た二人は、対決しかけるが、そこに権次たち忠治一家や、地元の間々田一家、米倉らも集まって来てしまう。

一斉に、勘太郎に刃を向けて来たので、困惑する勘太郎だったが、運良く駆け付けて来た留吉が、祭りの最中、こんな所で刀を抜くとはもってのほか、場所を改めて勝負をしろと助言して来たので、米倉やヤクザたちは承知してその場を立ち去る。

勘太郎に投げ飛ばされ、形勢不利だった雄之進は、明日の明け六つ、荒神山の頂上で勝負だと言うので、勘太郎も受け入れる。

留吉は、ヤクザたちが何を企んでいるか分からないので、様子を見て来るとその場を去り、その後に来たお柳から、お鶴の家を教わった勘太郎は、そこに訪ねて行く。

再会したお鶴は、一人で貧しい暮らしをしているようだった。

聞けば、父親は、勘太郎と別れた後、一月足らずで亡くなったと言う。

多くを語らず泣き出した彼女の様子を見た勘太郎は、忠治一家が復讐のため殺したと察する。

自分が余計なおせっかいをして助けたばかりに、結果的に、父親を死なせたと言う事になるのだ。

そこへやって来た五月屋熊造と名乗る男が、いきなり、お前の亭主に10両渡したので、今日から女郎として働けとお鶴を連れ出そうとするではないか。

思わず、自分はそのお鶴の兄だと名乗った勘太郎は、金は返すから、一日待ってくれないかと止めても、熊造は聞かない。

その話を、表で聞いていたお柳は、外に出て来た熊造にぶつかると、証文はあるのかと聞く。

持っていると懐を探す熊造は、それが見つからないので、悔しがりながらも一端は引き上げる事にする。

お柳は、今掏った証文をそっと勘太郎に渡すと、明日の朝まで、この人を預かっていてくれとお鶴に頼むと帰って行く。

再び二人きりになった勘太郎は、お鶴に、女房を女郎屋に売り飛ばそうとするひどい亭主があった事を聞くが、忠治一家から拷問に近い仕打ちを受けていた所を助けられたあの人に助けられなければ、今自分は生きていられなかったと話すお鶴の言葉を聞いては、それ以上何も言えなかった。

逆に、以前、自分の事を、間違えて呼んだ雪乃と言う人はどんな人なのかとお鶴に聞かれた勘太郎は、もう死んでしまった人間で、お前にそっくりだったと答えるのみ。

思わず、お鶴の手に触れようとした勘太郎だったが、思わずその手を引いて泣き出すお鶴を見てはmそれ以上何も出来なくなる。

その頃、荒神山の頂きでは、集まったヤクザたちと米倉たちが、勘太郎を殺す為に皆力を合わせるかどうかでもめていた。

米倉たちは、ヤクザ等と組むのは嫌だと拒否したのだ。

そうした中、大塚雄之進は、間々田組の三人を連れ、長坂峠を抜けて逃げる算段をしていた。

それを近くで聞いていたのが留吉。

やがて、朝が来て、勘太郎とお鶴は、互いに座ったまま寝ていた状態から目覚める。

水を一杯もらった勘太郎は、それを口に含むと、刀の塚に吹き掛け出かけようとする。

何も事情を知らないお鶴だったが、胸騒ぎがするので行かない方が良い、これっきりでお別れになりそうだからと止めるが、勘太郎は、用事がすんだら必ず帰って来ると約束しその場を去る。

間もなく、山から降りて来た留吉と出会い、大塚雄之進は長坂峠の方へ逃げたと聞いた勘太郎は、その知らせに感謝をすると、飛ぶように長坂峠目掛けて走り出す。

やがて、大塚雄之進一行の姿を確認した勘太郎は、裏道を急ぎ、彼らの前に姿を現すと、さしもの大塚雄之進も肝を潰す。

一方、再び、荒神山の頂上の様子を見に帰って来た留吉が目にしたものは、ヤクザや米倉たちが、互いに斬りあっている場面だった。

結局、互いに意見があわず、全員が喧嘩状態になったらしい。

呆れながら近づいた留吉は、誰かが掘っていた落し穴に落ちてしまう。

上がるに上がれず、半泣き状態になった彼の目の前に現れたのは、探し求めていたお柳。

留吉は、もう追い掛けない事を約束し、彼女に助けてもらうのだった。

護衛のヤクザたちを失い、ホウホウの態で村まで降りて来た大塚雄之進は、とある家の玄関口で勘太郎に追い付かれるが、その家から飛び出して来て、雄之進をかばったのは、何と、朝別れたばかりのお鶴であった。

彼女の亭主とは、大塚雄之進の事だったのだ。

許してやってくれ、こんな人でも、生まれて来る子にとってはただ一人の父なのだと言う、お鶴の告白を聞いた勘太郎も雄之進も驚愕する。

特に、これまで辛酸を舐め、仇を討つ事のみを生き甲斐に生きて来た勘太郎にとっては、最大の苦悩を強いられる言葉だった。

きっと、この人を真人間にしてみせるとまで、お鶴に頭を下げられては、もう何も出来ない。

大塚雄之進も、雪乃の事が忘れられなかったのだと言うので、そんなお鶴を女郎等に売ろうとした彼の身勝手振りが我慢できず、思わず、その頬を殴りつけた勘太郎は、3年間だけ命を預けるが、戻って来て、お鶴が不幸せになっていたら、その時こそ殺すと告げ、勘太郎は去って行く。

その後、勘太郎は留吉に再会するが、何と、お柳も一緒におり、二人は夫婦になったと言う。

呆れながらも、二人と別れようとした勘太郎は、近づいて来た巡礼がお光である事に気づくと、一緒に伊豆まで行こうとその手を引いてやるのだが、そこに「かんちゃ〜ん!」と走って来たのはおくみだった。

慌ててお光をおんぶすると、スタコラ逃げる勘太郎だった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

長谷川伸原作の映画化だが、前編コミカルな楽しい股旅もの時代劇。

ただし、単なるドタバタ喜劇かと思っていると、哀しい仇討ち人情話も根底にあり、「唄あり踊りあり、笑いあり涙あり」の典型的な大衆娯楽になっている。

「警察日記」(1955)で共演した名子役二木てるみと、又、一緒に出ているが、二木てるみの方は4つ年を重ね、小学生くらいに成長しているのに対し、老警官を演じていた森繁の方は、打って変わって若々しい股旅を演じており、走ったり喧嘩をしたり、「警察日記」の渋い演技とは正反対の元気一杯な所を見せている。

時代劇なのに、主人公が少林寺拳法を使い、一切刀を抜かないで戦うという設定も珍しい。

劇中で、22、3と称しながら、この頃から妙に色っぽい淡路恵子や、コメディエンヌ振りが楽しい横山道代、「三匹の侍」の柴左近みたいな雰囲気の若々しい丹波哲郎、ゲストで出ている歌手の島倉千代子などの姿も皆貴重である。

この作品が今、観る機会が少ないのは、やはり、横山道代演じる娘の設定のせいかも知れない。

楽しい作品だけに、惜しい気がする。

派手さはないが、清楚な娘の二役を演じている峯京子と、おっとりした藤山寛美の助演も印象的。

唄って踊って、笑わせて泣かせて、口八丁手八丁の大活躍をする森繁久彌の芸達者振りに、ほとほと感心させられる逸品である。