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しびれくらげ

1970年、大映東京、石松愛弘脚本、増村保造脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

寝室のベッドで、ネグリジェ姿のまま艶かしく踊るみどり(渥美まり)は少しづつ衣装を脱ぎ捨てて行く。

それを椅子に座ってみている中年男性たち。

それは、ネグリジェのファッションショーだった。

みどりは、恋人の山崎宏(川津裕介)のお陰で、彼が勤める大東繊維のモデルを一手に引き受けており、所属するモデルクラブの他の娘たちから嫉妬の目で見られていた。

みどりは山崎に、ギャラが1万アップして5万になったと嬉しそうに報告していた。

二人は、港にドライブに行く。

そこで、みどりがモデルになった週刊誌「プレイボーイ」のグラビアページを示した山崎は、ヘンダーソンと言うニューヨーク大百貨店の重役が君の事を気に入ったので、抱かせてくれたら、自分の会社の商品60万ドル、日本円にして2億円分の商品を買うと言って来たと伝える。

みどりは、その言葉が信じられなかった。

言っている本人が、結婚を約束した恋人だったからである。

しかし、山崎は、君も僕が出世した方が良いだろう?と、クールに言い放つ。

一晩だけ寝てくれないかと執拗に迫るヤマザキの頬をぶったみどりだったが、結局、後日、ヘンダーソンに身を任せる事になる。

その後、山崎の自宅にやって来たみどりは、恋人の証を求めるように彼に抱きつくのだった。

父親が待っていると言うみどりを送って、アパートの一室まで送り届けた山崎は、酔ったみどりの父親(玉川良一)から、しつこく酒を勧められる。

ほとんど働かず、娘の世話になっている父親は、山崎とみどりとの仲は承知しており、もうすっかり、自分の息子になってもらった気持ちでいるのだ。

そうした自堕落な父親を、どこか冷ややかな目で見ながら、山崎は帰って行くが、その後、みどりが着替えをしている間に、勝手に娘のバッグからギャラを抜き取る姿をみどりに見られ、大げんかが始まる。

父親は、昔、会社の金を横領した事で一年間刑務所暮しをし、その間に、男を作った妻に逃げられた為、その妻が人に預けていた当時9つだったみどりを引取ると、男手一つで育てて来たと言いながらも、実質的には娘に甘え、たかって生きて来ただらしない男だった。

翌日、大東繊維東京本社ビルの重役室に出向いた山崎は、営業担当重役(内田朝雄)から、今まで難しかったヘンダーソンとの間の契約が、今回あっさり成立したのはどういう手を使ったのだと、上機嫌で尋ねられていた。

山崎は、女を抱かせたのだとクールに答える。

一方、みどりの方は、モデルクラブのマダム(近江輝子)や他のモデル連中から、不摂生を続けていると体の線が崩れるわよと嫌味を言われていた。

しかし、みどりは、山崎とは結婚するつもりだからと平然と受け流すのだった。

一応、ストリップ小屋「アリサ」の楽屋番をしているみどりの父は、踊り子たちからも軽んじられ、雑用係としてこき使われていたが、踊子ユミ(甲斐弘子)などは、郷里で寝込んでいる父親を思わせるなどと優しくしてくれる娘もいた。

その日の仕事が終わり、踊り子たちを送りだした父親は、楽屋を片付けていて、みどりの水着姿が載っている「プレイボーイ」を見つける。

その後、めかしこんだ彼は、いつものように飲みに出かけ、始めてのバーに入り込む。

そこで出会ったママ(根岸明美)に、自分は芸能関係の仕事をしているし、娘はファッションモデルをやっているのだと「プレイボーイ」のグラビアを自慢げに広げてみせるのだった。

その父親がトイレに立った隙に、ママの隣のカウンター席にいた山野(草野大悟)が、グラビアのモデルは使えそうなので、今夜は例の手を使おうとママに命ずる。

戻って来た親父に、急に気がある素振りを見せ始めたママは、相手が望んでいるように、一緒に店を出て「旅館 越路」に連れて行くと、 自ら服を脱いで相手を挑発し出す。

すっかり喜んだ親父が裸になって彼女を抱きはじめたところで、乗り込んで来た山野が、家の女房に何をすると凄み出す。

美人局の手口だった。

それでも、宿代を置いてトットと帰れと言われ、すごすごと自宅アパートに戻って来た親父は、取りあえず怪我もなく、金もとられなくて一安心と喜んでいたが、そのすぐ後からドアを開けて入り込んで来た山野とその子分らしきチンピラたちの姿を見て、つけられていた事を知る。

山野は、最初は落とし前として50万出せとやや下手に出て来るが、自分はしがないストリップ小屋の楽屋番に過ぎないと泣き落しを始めた親父の態度に切れ、すぐに100万に金額を跳ね上げてしまう。

そこに帰って来たのがみどり、部屋に上がり込んでいる男たちは、自分達は筧組の者だと名乗る。

しかし、みどりは怯えるどころか、くたばってしまえば良いと、父親を罵るだけ。

この男に貯金等、一銭だってないと突っぱねるのだった。

取りあえず、その場は引き下がる事にした山野だったが、弟分の健次(田村亮)に、あの女を自分達のものにして稼がせようと呟くのだった。

ヤクザたちが帰った後もしょげ返った父親は、月給たったの2万しかもらえない俺が、どうして100万なんかを作れるかと、みどりに助けを求めるような眼差しで話し掛けて来る。

しかし、みどりは警察に行けば良いと突っぱねるのだが、昔捕まった思い出があるだけに、父親は警察を忌み嫌っており、訴えても、とても相手にされないと嘆くだけだった。

それでもみどりは、相手にせず、さっさとベッドに入ってしまう。

どう訴えてみても、娘が金を出しそうにもないと見て取った父親は、俺がそんなに邪魔なら、ヤクザに殺されてやると逆ギレするが、やがて、良い方法を思い付く。

翌日、大東繊維東京本社ビルに山崎を訪ねて行った父親は、事情を話し、何とか会社から金を借りてくれ、みどりが必ず返すからと説得し、何とか手にする事ができる。

その頃、モデルクラブにやって来た健次は、みどりを見つけると、父親の行方を尋ねるが、みどりが知れん振りをしているので、アパートで張ってりゃ良いんだなと、彼女と一緒にアパートまで戻って来る。

すると、父親は何時の間にか帰って来ており、今日が期限だと言う健次に、100万円そっくり渡すではないか。

事の意外さに、健次もみどりも唖然とするが、さすがにしっかりしたみどりは、帰ろうとする健次に受け取りを書けと要求する。今後も、たかられては叶わないからだ。

しかし、健次は、自分も飲んだくれの父親に育てられ、その父親をバットで殴って少年院に入った身なのだから、お前の気持ちは分かる。俺を信用しろと言って、そのまま帰ってしまう。

その後、金の出所が山崎からだと知ったみどりは怒ると共に悔しがり、もう一緒に暮らせないと、家を飛び出そうとする。

みどりがいなくなると、さすがに暮らしていけないと考えた父親は、頭を下げて止め、そんな哀れな父親の姿を観たみどりは、今後、二度と山崎に迷惑をかけないなら留まってやると折れる事になる。

その頃、「越路」でサブ(平泉征)らが捕まえて来た女を廻している所に戻って来た健次は、山野に100万円を渡すと、この件はこれっきりにして手を引いてくれないかと頼み込む。

山野は、そう言う訳には行かないと突っぱねるが、あまりに熱心に健次が頼むので、一応、その健次の言葉を了承するかのような返事をする。

その頃、モデルクラブにやって来た山崎は、マダムからみどりとヤクザが一緒に出て行った事を利かされる。

自宅に帰った山崎は、合鍵を持っているみどりが勝手に来ており、ベッドの中で待っていた事に気づく。

山崎は、そんなみどりに、ヤクザとの付き合いは自分にとっても命取りだから、父親を捨ててくれと迫る。

しかし、みどりは、放り出したいけど出来ない。あんな父親だけど、血が繋がっている以上、一生面倒見なくてはならないのだと断わる。

その言葉を聞いた山崎は、だったら、自分と別れてくれと言い出す。
100万は、ヘンダーソンと寝てもらったお礼であり、手切れ金として返さなくても良いとも。

捨てられると気づいたみどりは、思わず、果物ナイフで斬り掛かろうとするが、やっぱり、本気で愛している相手を殺す事は出来なかった。

その夜も、泥酔して帰宅して来た父親は、先に帰っていたみどりが、珍しく酒を飲んでいる姿を見つける。

山崎と別れなければならなくなるかも知れないと聞かされた父親は、翌日、又、山崎の会社に出向くと、慰謝料として500万出すように脅しはじめる。

しかし、山崎は慌てず、警察に連絡しようかと返事をする。

かつて横領事件で臭い飯を喰っている父親が、警察沙汰を嫌っている事を知っての言葉だった。

そんな事とは知らず、いつものようにモデルクラブに出向いたみどりは、山崎が、京子(笠原玲子)ら他のモデルたちと契約の祝杯を上げている現場に出くわす。

みどりに気づいたマダムは、父親が山崎を強請りに来た事を告げ、お客さまを脅すような事をしてもらっては困るので、辞めてもらうと宣告する。

その夜、またもや、一人飲み屋で飲んだくれていた父親を、偶然見つけたサブたちは、そのテーブルに近づくと、どんどん酒を勧め、すっかり前後不覚になった父親を「越路」に連れて行く。

さすがに、その場所が以前、やくざたちと出会った旅館と気づいた父親は、娘を呼出せと言われたので、その目的を察し固辞するが、徹底的に痛めつけられる。

アパートでやけ酒を飲んでいたみどりは、旅館に泊まったが金がないので迎えに来て欲しいと言う父親からの電話を受け、「越路」に出向くが、そこで待っていたのは、ボコボコに痛めつけられた父親と、サブら二人のチンピラだった。

サブたちから、服を脱がされ、犯されそうになったみどりだったが、そこに現れた健次から助けてもらい、父親もつれてアパートに送り届けてもらう。

健次は、父親に、今度飲んだくれたら、殺してやると凄み、それを聞いたみどりも、頼むわ、今度…と感謝する。

健次が帰った後、みどりは、モデルクラブを首になったと、傷だらけの父親をさらに殴りつけるが、最後にはやはり本当の父子だけに、痛かった?と詫びるのだった。

一方、バーに戻った健次は、 山野から徹底的に痛めつけられていた。

その様子を冷ややかに観ていたママは、健次はあの女に惚れているのだと冷笑する。

山野は、健次に、明日中に、あの女をものにして連れて来いと命ずる。

翌朝、アパートにみどりを誘いに来た健次は、プールやゴーゴー喫茶で一日遊んで暮す。

みどりの方も、くさくさしており、鬱憤を発散したかったのだ。

夜、人気のない公園のベンチに座ったみどりは、いきなり健次から襲われそうになり、あんたって、やっぱりヤクザね、クズよ!と貶すと、急におとなしくなった健次は、もう止めたと言い、あんたが好きだから、自分は東京を出て行くと告げる。

それを聞いたみどりは、もう一度だけ助けてくれないかと頼むのだった。

その夜、自宅にいた山崎に電話をしたみどりは、明日自分は大阪に行き、父親と別れて一人暮らしする事にしたので、最後に一回だけ会って抱いて欲しいと伝える。

気の乗らない風の山崎だったが、みどりの懇願に負けた形で、指定されたホテルにやって来ると、彼女を抱いてやるが、その後、みどりが寝室に、隠れていた健次を呼び寄せる。

健次は、テープレコーダーを見せつけると、山崎に、アメリカ人とみどりを寝かせて、商売をした話をしろと迫る。

当然、断わった山崎だったが、健次から殴りつけられ、結局、従う事になる。

翌日、山崎もいる中、小野田らの重役室に乗り込んだ健次とみどりは、そのテープを聞かせ、1000万で買取ってくれと要求する。

山崎は、そんなみどりの姿を観ながら、これが君の復讐か?と尋ね、これで本当のさよならだと告げる。

みどりは、私には、本当に好きな人がいると答えると、さよならと言い返すのだった。

京王プラザホテル前の陸橋にやって来たみどりは、やり直さない?最初からと言うと、奪い取った1000万の小切手を健次に渡し、これで組に帰るように勧める。ヤクザは金が目的だから、これだけ持って行けば、許してもらえるはずだと言うのだ。

その申し出に驚いた健次だったが、みどりの言葉に嘘はないと感じた彼は、命がけで兄貴に掛け合ってみる。そして、ヤクザを辞めたら、又会いに来ると言い残し、その場を立ち去って行く。

一人になったみどりは、何もかも解決し、せいせいしたように歩き始めるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

軟体シリーズと呼ばれる中の一本。

扇情的なポスターやタイトルから、かなりエロティックな中身を想像してしまうが、実は、気丈な女が、不遇の中でもたくましく生き抜いて行く話になっている。

渥美マリの下着姿や、ベッドシーン程度の描写は数カ所あるが、過剰なエロティックさを期待していると、拍子抜けしてしまうはず。

主役の渥美マリは、派手な顔だちとグラマラスな肢体で、コケティッシュな印象があるが、映画の中では、ポキポキした男性風の話し方をする、かなりハードボイルドな印象のキャラクターになっている。

そんな彼女が一番目立っているかと言うとそうでもなく、意外と、クールな川津裕介や、徹底的にだらしないダメ親父を演じている玉川良一の方が印象深かったりする。

田村亮も、この頃は印象が薄いので、誰なのか一瞬分からなかったりする。

その田村亮の弟分で、渥美マリを脱がす役目をやっているチンピラ役は、平泉征(現-成)である。

自分の幸せを徹底的に邪魔をする父親が、憎くて憎くてたまらないのに、血縁である為に、どうしても離れられない哀しさ…。

そんな父親を、踏みつけにした後、ついいたわってしまう主人公の裏腹な姿が痛ましくも哀しい。