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リンダ リンダ リンダ

2005年、「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ、向井康介+宮下和雅子脚本、山下敦弘脚本+監督作品。

この作品は比較的最近の作品ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので御注意下さい。コメントはページ下です。

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「僕たちが子供でなくなる時…」「2004 柴高ひいらぎ祭!」

「カット!」、校門前で、男子学生二人が女子学生相手に撮っている。

今のセリフ部分、アップを抜いて、カット割した方が良いかどうかで、男子二人が相談を始める。

タイトル。

校舎内で、腕を怪我した為、痛み止めを飲んで登校した山田響子(前田亜季)が、白川望(関根史織)に、立花恵(香椎由宇)の居場所を聞いている。

部屋っぽいが、誰が何を言っても無理と望は答える。

凛子(三村恭代)を見つけたので声をかけるが、無視されてしまう。

同じ頃、学園祭用の日韓交流文化室の展示準備を、中山先生(藤井かほり)に手伝ってもらっているのは、韓国からの留学生ソン(ペ・ドゥナ)。

教員室では、軽音楽部の顧問小山先生(甲本雅裕)が、部長から、明日、バンドをやる予定だった立花恵と丸山凛子が、メンバーの一人、今村萌(湯川潮音)が体育の授業中、突き指をして、ギターが弾けなくなった事がきっかけで、大喧嘩してしまったと報告していた。

凛子が、すぐに自分を代役を決めてしまった事が、恵の勘に触ったらしいと言う。

恵の居場所を探していた部長は、プールに漬かっていた恵を見つけ、先生が呼んでいると伝える。

バンドはどうするのかと聞いても、何の返事もないので、やらないんだなと念を押すと、水の中に沈んでしばらく上がって来なかった恵蛾が、浮かび上がって「やる!私がギターをやる!」と返事する。

小学生の女の子にマンガを貸してもらって読みふけっているソン、彼女には友達がいないのだ。

軽音楽部の部室に集まった恵、響子、望らは、何を歌うか選曲に迷っていたが、古いカセットが詰まった段ボール箱を見つけたので、その中から面白そうなものを選んで、聞いてみると、それは、ブルーハーツの「リンダ リンダ リンダ」だった。

その後、自動販売機の前のベンチで、誰がボーカルを担当するか話し合っていた三人だったが、自分達の中には、適当な人物がいないと判断した恵は、突然、この道に最初に来た奴をボーカルにしようと言い出す。

しかし、その直後に自動販売機の前に来たのは、男子学生だったので、女子に限定する事にする。

次にやって来たのは凛子だった。

凛子は、自分にボーカルやらないかと望たちに誘われると、又、気乗りしなさそうにしながらも、あれこれ口出しして来たので、それを嫌った恵は、たまたま日韓文化交流の展示室から出て来たソンに、バンドのボーカルをやらないかと尋ねる。

良く意味が分からなかったソンは、気安く承知するが、近づいて来て良く理解すると、急に怖じけ出し固辞し出す。

しかし、部室に連れて行き、カセットを聞かせて、彼女自身に判断をゆだねる事にした三人は、もし、ソンが断わったら、凛子に頼む事にする。

しかし、ヘッドホンをしたまま静かな様子のソンの様子を訝った三人が、彼女の元にやって来ると、ソンが泣いているのに気づき驚くのだった。

その後、楽譜を四部コピーする。

その日、恵とソンは同じバス停から帰宅する事になる。

恵が、自分はキーボードはやっていたが、ギターはあんまりやった事がないと打ち明けると、ブルーハーツの曲に感動したソンは、自分は頑張っても良いかととやる気を見せる。

その後、カラオケの店にやって来たソンは、ドリンク代を払わないと店に入れない日本のシステムに戸惑うが、結局入ると、さっそく練習を始める。

ベース担当の萌には、三人の弟がいる中、練習を開始。

響子は、ドラムの練習中、弟から電話がかかって来たと教えられ、出てみると、明日、クレープ屋を一緒にやる大江一也(小林且弥)からだった。

響子は、弟が側にいる事に気兼ねしながら、何となく、一也からの余り意味のない電話に生返事をしていた。

突き指した萌は、自分が原因で、バンドが内部分裂した事を恵に謝っていた。

その頃、カラオケボックスで歌っていたソンは、いつの間にか母国語で勝手に歌いはじめていた。

翌日、柴崎東校文化祭が始まり、校内は模擬店で一杯になる。

ビデオ部の二人が、その様子を納めながら、校内を巡っている。

そんな中、何だかぎくしゃくした一也と一緒にクレープ屋を手伝っている響子以外の3人は部室で練習を始めるが、さすがにそれは酷いものだった。

何とか、クレープ屋を抜け出して来た響子も加わり、フルメンバーになった4人だったが、このままでは、とても最終日のバンド大会に出れないと判断した恵は、元カレの前園トモキ(三浦誠己)の所に電話し、スタジオQの事を尋ねると、空いていると言うので、すぐさまバスに乗って、民家の一部を改造したようなスタジオQにやって来る。

久々に会った前園は、近々東京に出ると言う。

ソンは、そんな恵と前園の会話に興味津々。

前園の方も、自分の事をじろじろ観ているボーカルの子が、留学生だと知り、面白がる。

そのスタジオで目一杯練習した後、深夜、裏口から学校の部室に舞い戻った4人は、明かりを隠しながら、こっそり練習を再会するが、そんな彼女たちの様子は、宿直で見回り中だった小山先生に、しっかり見つかっていた。

そんな事とも知らず、屋上で休憩した4人は、ソンに、恵と凛子が始めたこのバンドのそもそもの由来を教える。

その後、新しいバンドの名前を決めようと望が提案するが、恵はちょっと複雑そうな表情だった。

翌朝、部室で練習を続けていた4人は、格段にマシになっていた。

日韓文化交流文化室に、プリントアウトして来たチラシを持って来た中山先生は、受付の机で爆睡しているソンの姿に気づく。

机の上には何やら書き置きが置いてある。

屋上にやって来た恵は、隠れるようにマンガ喫茶を開いていると言う中島田花子、通称タカチャン(山崎優子)に声をかける。

彼女も、去年まではバンドをやっていたのだ。

今年は、メンバー全員が卒業してしまったのでバンド大会には出ない、あんなん、皆でやらなきゃあ、つまんないじゃないと言う。

恵は、今年自分達は、バンドでコピーをやると打ち明けると、どう言う形でも、バンド大会に出りゃあ面白いと励ましてくれる。

「CLUB VENUS」で爆睡していた望を起こしに来る恵。

二人でソンを起こしに行くと、書き置きに気づき、それにはハングル文字で「2時に備品室に来い」と書かれてあった。

備品室でソンを待っていたのは、槙村裕作(松山ケンイチ)だった。

興味津々付いて来た他の三人は、外から、こっそり室内の二人を観察していたが、同じように中の様子を覗いている男子学生に気づき、こっそり呼び寄せると、事情を聞く。

どうやら、マッキーが、ゴミ捨てに行く時、何度か、ソンを見かけ、好きになったらしい。

室内では、必死に韓国語で愛を打ち明けるマッキーだったが、ソンは、「あなたの事、嫌いじゃないけど、好きじゃない」と言い、歌の練習に行くからと立ち去る。

その頃、丸本凛子と話し合っていた中山先生の元に、軽音楽部の部長が、最終日のバンド大会の予定表を持って来たので、立花たちに、別にこそこそ隠れて練習しなくても良いんだと伝えさせる。

先生は、帰りかける凛子にも何か励ましの言葉をかけようとするが、シカトされてしまう。

望の家に集まっていた4人は、大江一也の写真を見つけ興味深げに覗き込むが、そんな中ソンは、好きだと言った方が良いと思うと、一人前にアドバイスしていた。

響子は思いきって、一也に電話し、明日、バンド大会の本番が3時半からなので、その前の2時半に備品室で会いたいと伝える。

その夜、最後の練習を部室でしていた4人だったが、一人外に出たソンは、意味のない日本語を叫びながら、無人の模擬店の中を進み、明日大会が行われる講堂に入って行くと、壇上に上がり、見えない観客たちに向って、メンバー紹介の真似事を韓国語で始める。

部室からかすかに聞こえて来る最後の練習に余念がないメンバーたちの音を、宿直室にいた小山先生は、しみじみと聞き入っていた。

「2004 柴高ひいらぎ祭」ビデオ画像が流れる。

軽音楽部に登校して来た男子部員たちは、部室で寝入っている4人の姿を見つけ、恐る恐る起こすと、機材の搬入をしなければいけないからと、彼女たちを退出させる。

その日、日韓交流文化室では、いつもソンにマンガを読ませてくれる女の子が遊びに来ており、ハングル文字で書かれた牛の肉の部位に向ってダーツをするという遊びをしていたが、そこにやって来た3人が、ソンを迎えに来る。

その後も、恵の自宅で練習を続けていた4人だったが、さすがに全員寝不足でぼーっとした顔をしていた。

顔を洗いに洗面所に来た恵に、続いてやって来たソンが「ありがとう、バンドに誘ってくれて」と例を言うと、慶の方も「ありがとう、メンバーになってくれて」と答える。

再び部屋に戻った恵は、目の前に信じられない光景を見る。

元カレのトモキが、ギターでハッピバースディを弾いているのだ。

やがて、母親(りりィ)が、特製のバースディケーキを運んで来てくれ、メンバー全員が誕生日を祝ってくれる。

その頃、学校では、「ROCK FESTIVAL」が始まっていたが、4人のメンバーがいない事に気づいた男子学生が、校内を捜しまわる。

屋上に来た彼は、今村萌を見つけたので、メンバーたちの事を聞くが、萌はその場からケイタイをかけてみる。しかし、応答はなかった。

その後も、場所を替え、何度もコールしてみるが、いっこうに出る気配がない。

その頃、恵は、母親やトモキに連れられ武道館のステージに立っていた。

何と客席には、ピエール瀧らが観に来てくれているではないか。

そんな恵は、鳴り続けているケイタイのメロディに目が覚める。

出てみると、大江からの電話で、ずっと備品室で待っているのだがどうしたのだと言う内容。

ハッとして時計を見上げると、もう3時半ではないか!

講堂では、間を繋ぐ為、舞台に上がった萌がアカペラで歌いはじめる。

外に飛び出した4人たちは、土砂降りの雨に驚く。

学校では、外にいた生徒たちが全員雨宿りもかねて講堂に集まって来ていた。

講堂では、中島がギターのソロで、間を繋いでいた。

雨の中、バス停まで賭けて来た4人だったが、望が急に、家にベースを忘れて来たと言う。

その後、タクシーで学校に乗り付けた4人だったが、慌てて駆け出したソンは転んでしまう。

そんな所に、傘をさした大枝が近づいて来たので、取りあえず響子を残した3人は講堂にひた走る。

舞台横には凛子がいて、恵に大丈夫かと声をかけて来る。

大丈夫…じゃない…と答えながらも、恵は、身体をタオルで拭くと、ギターを背負うのだった。

やがて、舞台中央に歩み出た3人、少し遅れて、ドラムに座った今日子に全員が視線を向けると、恥ずかしそうに、「言えなかった…」と、今日子は答えるのだった。

「ザ・パーランマウム(韓国語で青い心=ブルーハーツ)です!」と自己紹介したソンが「リンダ リンダ リンダ」を歌いはじめると、場内は総立ち状態になる。

その音に惹かれ、その後も、次々と生徒たちが講堂に集結して来る。

そんな様子を、満足そうに見つめる小山先生の姿があった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

地方の高校での、文化祭期間中の数日間を描いた青春音楽映画。

韓国からの留学生との自然な交流と言う新味以外は、良くある青春ものパターンのように見える。

大向こう受けを狙ったようなわざとらしい演出もなく、淡々と、学生が作った映画のような瑞々しさが心地よい。

誰もが、自分の青春時代にオーバーラップさせてしまうような自然な世界観が魅力。

おそらく、大半の大人は甘酸っぱい追憶に浸れるだろう。

ちなみに、留学生を演じているペ・ドゥナは、「グエムル 〜漢江の怪物〜」(2006)で怪物にさらわれる女学生である。