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おしどり駕篭

1958年、東映京都、観世光太原作+脚本、マキノ雅弘監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

水口藩の城下、とある屋敷内に生えている柿の木を放心したような目つきで塀の外から見ている一人の美しい娘を、侍女の楓(月丘千秋)が慌てて迎えに来る。

町人たちが興味本位でじろじろ見ていたからだ。

連れ去られて行った娘は、町人たちが納めた18万両もの金をつまみ食いしたと噂される家老黒木兵部(月形龍之介)の娘、千鳥(桜町弘子)で、今や、精神がおかしくなったと噂されていた。

その父親兵部は、城内で、殿がたった今御逝去なされたと、集まった家臣たちに報告していた。

さらに兵部、跡目相続には、行方不明の長男弦二郎君に代わり、次男三之丞君(伏見扇太郎)をと申し出るが、さすがにその一方的な言葉には、長老、松坂善衛門(杉狂児)が待ったをかける。

弦二郎君は、三之丞の母親おきくの方に気兼ねして、城を飛び出し市井の人になったのであり、跡目相続となれば、この方を無視してはならないはずで、何とか自分が探して来るから、それまで待っていてくれと善衛門が願い出ると、ではそれまでは自分が藩政を預かると兵部が応じる。

お江戸日本橋のたもとの新築現場では、左官の源太(中村錦之助)と半次(中村賀津雄)が、陽気に歌いながら仕事をしていた。

弟分の半次は、源太に、小蝶は兄貴にほの字だぜとお愛想を言う。

小蝶(美空ひばり)とは、矢場「当り矢」を経営する娘で、馴染みの源太はすっかり惚れ込んでいるのだが、相手の気持ちが今一つ分からずやきもきしていたのだ。

半次の方はと言えば、同じ店に勤めるお市(中原ひとみ)と仲良しだった。

その頃、小蝶の方も、店で恋の歌を歌っていたので、それを聞いたお市が、それは源太の事だろうと冷やかしていた。

そんな江戸の水口藩江戸屋敷に到着した善衛門は、江戸家老の神崎剛之進(山口勇)に、自分の狂った娘を、三之丞の嫁にし、藩を乗っ取ろうとする兵部の企みを報告し、何としてでも、弦二郎君に国に帰ってもらわなければと説得していたが、聞いていた剛之進の方も、当の弦二郎君が、その願いを聞いてくれるかどうか分からないと悩んでいた。

そんな事とは知らない源太と判次は、いつものように当り矢に行く前に、店の近くにある占い「狂雲」(市川子団次)に手相を見てもらっていた。

その狂雲が言うには、お目当ての相手は確かにあなたに惚れているが、あなたの顔には「剣難」が現れており、それが解決するまでは、その恋が成就する事はないだろうとの事。

やがて、当り矢の前で、お市ら店の娘たちが出て来て一斉に歌い出し、小蝶も加わって、客寄せが始まる。

それを見ていた源太は、何を思ったか帰ると言い出し、慌てる半次を残し、その言葉とは裏腹に真直ぐ、当たり矢に入ってしまう。

ちょっと、小蝶をやきもきさせたい為だったらしい。

小蝶は、横に座った源太に、横を向いても当てると言う得意の矢の射方を教えるが、甘えた源太が小蝶の膝枕の姿勢から射ると、隣の的にあたってしまったものだから、この店の矢は曲っていると難癖を付け始める。

売り言葉に買い言葉で、いつものように、小蝶と源太の他愛のない口げんかが始まってしまい、最後には互いに「おかめ」「きょっとこ」と呼び合う泥試合になってしまう。

左官屋源太と半次が住む長家にやって来た剛之進と善兵衛は、表から声をかけるが、不在の様子。

それを見ていた近所の住人が、源太なら最近女が出来たらしいと教えて来たので、それを聞いた善兵衛は怒ってしまう。

その頃、お市は、喧嘩して表に出た源太に、小蝶の本当の気持ちを伝え、店に残った半次の方も小蝶に、源太の気持ちを伝えていたが、聞いた二人は、それでも、相手の口から直に好きだと言ってもらわなければ納得行かないと、互いにいじっぱりな所を見せる。

そんな所にやって来たのが、剛之進と善兵衛。

その二人に探し人だな?と狂雲が声をかけて来たので、思わず、占ってもらう事にすると、探す相手は辰巳の方角にいると言う。

辰巳とはどちらの方角か?と、二人がきょろきょろしていると、そこに現れたのが、結局喧嘩別れのまま帰る途中の源太。

悔しがった小蝶が、玩具の矢を帰る源太の背中に命中させていた。

それを目撃した剛之進と善兵衛は、やっと弦二郎君を探し当てたと挨拶をするが、源太の方は、半次や小蝶たちもいる手前、人違いだとごまかす。

しかし、二人が、国元で一大事だと言うので、取りあえず、話を聞く為、近くの飲み屋を一両払って一時貸しきりにしてもらい、奥座敷で訳を聞く事にする。

実は、左官屋の源太こそ、弦二郎の世をしのぶ仮の姿だったのだ。

事情が分からない半次や小蝶たちは、飲み屋の表でうろうろするだけ。

奥座敷で、国元の事情を聞き終わった源太こと弦二郎だったが、跡目を相続するのだけは断わると明言する。

武士を辞め、早三年、自分にはこれが出来たのだと小指を立ててみせる。

剛之進たちが自分を探し当てたのは「狂雲」と言う八卦見に教えてもらったからと聞いた源太は、それなら、あの易者が言っていた「剣難」と言うのも、当っているかも知れないと真面目な顔になる。

店を出て来た源太は、明日四つの刻に、日本橋のたもとで待っていろと命じた後、先ほど、払わなかった見料として占い師に一両払いに行く。

翌日、約束通り、日本橋のたもとにいた半次は、お殿さまの行列が通りかかったので、他の者たち同様、土下座をしながら、源太の出現を待っていた。

ところが、彼の前に殿様の駕篭が止まったかと思うと、どこからともなく、半次を呼ぶ源太の声をするので、きょろきょろしていると、目の前の駕篭が開き、その中に座っているのが、殿様の形をした源太ではないか!

源太こと弦二郎は、一月ばかり留守にするが、小蝶に浮気しないように伝言してくれと頼むと旅立って行く。

きつねに騙されたような顔で、当り矢にやって来た半次は、源太兄貴は殿様だったと小蝶や娘たちに伝えるが、誰も信用しない。

しかし、その内、そう言えば、どことなく気品が合った等と娘たちがはしゃぎはじめると、小蝶も落ち着いていられなくなり、皆で源太の後を追い掛けて行こうと言い出す。

宿場宿場で、商売しながら行けば良いのではないかとアイデアを出すと、皆も即座に賛成し、半次も加わった当たり矢一行は、荷車を引いて旅に出かける事にする。

途中、休憩をとっていた弦二郎は、まだ八卦見の占いを気にしているのか、このままやすやすと国入れるかどうか分からない、ひょんな事が起こるやも知れぬと、剛之進や善兵衛に伝えていた。

一方、水口藩には、江戸藩邸より急使が駆け付け、弦二郎が今正に、こちらに向っているとの知らせを届けていた。

それを聞いた三之丞は浮き足立つが、腹心の袴田(清川荘司)は、自分達の栄達の為にも、一行を鈴鹿峠で討ってみせると、兵部に確約するのだった。

そこに迷い込んで来た千鳥は、父上も悪い、みんなも悪いと言って自室に戻るが、次女の楓に、弦二郎様たちは鈴鹿峠で待ち伏せされると教えるその眼つきは正気に戻っていた。

途中の宿場で「水口藩飛騨弦二郎宿」と書かれた本陣の立て札を発見した半次たちは、どうしようかと迷うが、取りあえず、向いの茗荷屋と言う宿に泊まり、そこで店を開けば気づいてくれるはずと意見がまとまる。

その頃、本陣の中では、逃げ出さないように終始間近で見張っている善兵衛のせいで、自由に外出もままならなくなった状況に、弦二郎は苛立っていた。

その善兵衛から千鳥が狂ったと聞かされていた弦二郎だったが、以前の利発な千鳥を知る彼にとっては、にわかには信じ難く、はっと思い当ったかのように、千鳥、なかなか面白い芝居をやりおると、一人で感心するのだった。

そこへ、剛之進が、向いの宿に小蝶たちが宿をとったと知らせに来る。

その小蝶は、さっそく、客寄せを始めようと、宿の前で歌を歌いはじめると、その声が、本陣の中の弦二郎にも聞こえて来るが、さりとて、簡単に会いに行く事も出来ず、知らぬ素振りが、又つらいと嘆いていた。

歌い終わった小蝶だったが、その後どうして良いのか分からないので立ち往生していると、半次が、派手に商売を始めようと言い出し、それを聞いていたかのように、本陣から出て来た剛之進は、歌を聞いていた藩士たちに、今日は休憩の為、この店で思う存分遊んで良いと許可が出る。

そうして、小蝶には、こっちへ来いと手招きをする。

小蝶が向った林の中には、弦二郎が待ちかねていた。

その再会を見届けようと、半次とお市コンビ、そして、見張り役の剛之進と善兵衛も、各々別の場所に待機していた。

そんな中、小蝶は、源太が殿様の身分を隠していた事をすねてみせるが、その内、又、互いに照れて、なかなか本心を打ち明けられないまま、しばらく用事を済ませるまで、江戸へ帰っていてくれと弦二郎が頼んだのに端を発し、仲良し特有の甘えた口げんかが始まってしまう。

とうとう怒って帰りかけた小蝶は、腹いせの為か、弦二郎の背中に、又玩具の矢を射てしまうのだった。

そこへ駆け付けて来た剛之進たちに、「お労しい」と同情の声をかけられるた弦二郎は、ヤケのように、お労し過ぎらあと啖呵を切るのだった。

翌朝、出立する弦二郎たち一行の行列を横目に、江戸に帰る事を決心し泣いている小蝶。

そこへ、お市が、半次の姿が見えないと言いに来る。

その言葉を良いきっかけとした小蝶、きっと、源太に何か言われて出かけたに違いないから、自分が直接源太に会って、訳を聞き出して来ると言い、宿を飛び出して行く。

それを追うお市。

取り残された格好の他の娘たちも、これは面白くなって来たと、急いで荷物をまとめると、又弦二郎一行を追い掛ける事になる。

弦二郎たちの列に追い付いた小蝶は、家臣たちが止めるのも聞かず、駕篭に近づき、強引に扉を開けるが、その中には誰も乗っていなかった。

その頃、当の弦二郎は、股旅姿に変身し、相棒の半次と共に、別の道を急いでいた。

そんな弦二郎は、前方から来る一人の娘に目を止める。

千鳥の侍女、楓であった。

弦二郎からいきなり声をかけられた楓は戸惑うが、相手が、股旅姿ながら、弦二郎と分かったので、その場で、鈴鹿峠で待ち伏せされているとの千鳥からの伝言を伝える。

弦二郎は、その知らせを、後から来る剛之進らに知らせる用意に言い残すと、自分一人で先に鈴鹿峠を目掛けて足を急がせる。

その半次と楓から、弦二郎が先に一人で鈴鹿峠に向ったと聞いた小蝶は、その身を心配する。

鈴鹿峠にやって来た袴田率いる一党を呼び止めた股旅姿の弦二郎は、歌を歌いながら、戦いはじめる。

あっという間に全員討ち倒し、最後に残った袴田も峰打ちに仕留め終わった弦二郎は、江戸に帰ったと思っている小蝶を思い出しながら、待っててくれよと呟くが、その背中に何かが当る。

それは、遅れて到着した小蝶が放った、いつもの玩具の矢だった。

やがて、水口藩に入った弦二郎は、小蝶らと共に、役者姿にひょっとこの面を被り、踊りながら、人質の袴田を連れて、黒木邸に入って行く。

寝入っていた兵部は、袴だの呼ぶ声で目覚め、廊下に出てみるが、そこには、頭を下げたまま無言の袴田と、暗がりから出て来た弦二郎がいた。

もはやこれまでと、持っていた刀で腹を斬ろうとした兵部だったが、その手を押さえた弦二郎は、お前は悪い夢を観ていたのだ、ゆめなら必ず覚める時が来る。千鳥も実は狂ってないのだ、彼女は三之丞の嫁にさせる、そして、お前は、三之丞の父親となるのだと諭すのだった。

その言葉に仰天した兵部の元に、まさしく正気の千鳥が駆け付けて来る。

彼女は、父親の悪行を諌める為に、今まで、狂った芝居をしていたのだった。

明日再び、正式に登城するから、その時は、三之丞共々、しっかり出迎えてくれと伝え、千鳥には、決して、兵部に腹を斬らせてはならぬと言いおき去って行く。

その姿を庭先に隠れて観ていた小蝶は、源さん好きよ!二度惚れしたわ…と感心するのだった。

翌朝、着飾って馬に乗った弦二郎と小蝶が城に到着したので、それを出迎えた三之丞に対し、世継ぎは、三之丞がなるのだと、弦二郎は居並び家臣たちを前に宣言する。

その言葉に驚く三之丞、兵部らに、照れたように、弦二郎は、俺には、後継ぎになれない訳があるのだと、馬上で着物の片肌を脱いでみせると、そこには桜吹雪の刺青が入っていた。

その後、源太の姿に戻った源二郎と小蝶は、別々の駕篭に乗り、城の皆に見送られながら、当り矢の娘たちや半次と一緒に、明るく歌を歌いながら江戸に戻って行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

お嬢、錦ちゃん共演のオペレッタ時代劇。

美空ひばりが歌うシーンは、当然ながら全て本人だが、中村錦之助が歌うシーンは、鈴鹿峠の剣劇シーンだけが本人で、後は吹替えになっている。

話の骨格自体は、庶民の中に殿様が混じっていたと言う、良くある貴種流離譚のバリエーションで、要するに、アイドルが庶民の格好をしたり、殿様の格好をしてみせるコスプレ的ショーを見せる為のアイデアだろう。

市井の人となっていた殿様が、お家の一大事に駆け付けて行くと言う展開は「桃太郎侍」の話等にも似ている。

錦之助は、左官屋、殿様、さらに股旅姿の三種類のコスプレを披露するし、ひばりの方も、何故か、ラストで、お姫さまの格好で登場して来たりする。

ひばりファンや錦之助ファンが気軽に楽しめるアイドル映画と言った感じで、特別面白く出来ていると言う訳でもないが、普通に楽しめる平均的な作品だと思う。

基本的に、お嬢が歌っているだけのシーンが大半なので、オペレッタ映画としては、少し物足りないかも知れない。

月形龍之助辺りが、一緒に歌ったりすると、又、すごい伝説的作品になっていたかも知れないが、さすがにそれは無理だろう。

中村賀津雄や中原ひとみらも、一ケ所くらいは、肉声で歌って欲しかったようにも思える。