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黒い家

1999年、「黒い家」 製作委員会、貴志祐介原作、大森寿美男脚本、森田芳光監督作品。

※この作品は、ミステリ的などんでん返しのある作品ですが、最後まで詳細に書いていますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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昭和生命北陸支社の渉外担当主任若槻慎二(内野聖陽)は、保険データセンターと言う所から派遣された三好(小林薫)と言う男と共に、たちの悪い顧客の元に向っていた。

入院給付金の規定日数120日を過ぎる度に、病名を変更して、長期入院している男(伊藤克信)だった。

昼間はパチンコ屋に出かけているらしく、病院とグルになって保険金をだまし取る悪質なケースだった。

契約解除を申し出る為に病院を訪れたのだが、相手の態度はふてぶてしく、説得は難しそうだった。

ところが、その後、居残った三善は、あっさり解除契約に応じさせたらしい。

その手際に驚いた若槻が、三善が、次の仕事の為、九州の小倉に向うと帰って行った後、上司の葛西(石橋蓮司)から、元筋ものだったらしいと言う三好の前身を教えられる。

結婚を期に、昔の特技を買われて、今の会社に拾われたのだそうだ。

そんな若槻の元に、自殺に関する問い合わせの電話が入っていると言うので出てみると、女性の声で、自殺した場合は保険金が下りるのかと言う質問をして来る。

若槻が、契約後1年以内は認められないケースもあると説明すると、相手は若槻の名前を確認して電話を切る。

その後、菰田重徳(西村雅彦)と言う覚えのない客から、名指して家に来て欲しいととのい連絡を受けた若槻は、手みやげを持ってその家を訪ねるが、玄関で呼んでみても誰も答えない。

しばらくすると、左手に軍手をはめた、その菰田と思しき男が帰って来て、息子の和也がいるはずなんだがと言いながら、彼を家にあげると、襖の向こうに息子がいるはずだから、開けて呼んでやってくれと言う。

仕方がないので、その通りにすると、襖の向こうには和也(針谷俊)の首吊り死体がぶら下がっていた。

その後、福井営業所の会議に葛西と共に出席した若槻は、この菰田重徳と言う顧客のデータを洗った結果を、上司たちと検討していた。

今回のケースは、明らかに、若槻を子供の自殺の発見者に仕立て上げようとした計画的行動だと思われたからだ。

菰田の契約のきっかけは、妻の幸子に、小学校の時の同級生だった富山支社の大西光代(友里千賀子)が、パチンコ屋で出会って、名刺を渡した事がきっかけになっているらしい。

翌日、夫の重徳から電話があり、3件の契約を申込んで来たらしい。

重徳と幸子は、2年前に結婚しており、死んだ和也は、幸子の連れ子だったらしい。

結婚前の重徳は、小坂と言う名前だと分かったので、その名前で過去データを検索してみると、すでに、以前1件契約していた事が分かる。

それを見た葛西は、重徳が「指狩り族」の生き残りだと言い出す。

障害給付金目当てに、自らの指を切る者の事だった。

会議の結果、まだ、警察が自殺と断定していないので、しばらく様子見と言う事になる。

翌日、北陸支社の若槻の元に、菰田幸子(大竹しのぶ)がやって来て、和也の生命保険はまだ出ないのかと言いに来るが、若槻は、まだ本社の方で査定中なので下りないと答えると、何を調べているのか、死体を発見したのはあなた本人ではないのかと食い下がって来る。

その後、社内で秘かに恋人の黒沢恵からの手紙を読んでいた若槻の元に、女性社員が、又、軍手の男が来ていると告げに来る。

妻の幸子が来て以後は、毎日のように、夫の重徳がやって来て、保険金が下りないのか確認に来て、「そうか…、まだなのか…」と繰り返すばかり。

持久戦で攻めて来たと察した若槻たちは、「警察がまだ、態度をはっきりさせないので」と、こちらも同じ事を繰り返して追い返す事にする。

そんな中、若槻は、本社で、今回の案件、少し個人的に調査して良いかと申し出る。

そして向った中伏木駅。

大西光代に会った若槻は、幸子だけではなく重徳も、自分と同じ小学校の時のクラスメイトだった事を教えられる。

その幸子の方は、母親が男と駆け落ちしていなくなった後、父親一人に育てられていたが、時々、身体に折檻の痕のようなものがあった事、さらに、その小学生時代、遠足に行った時、一人の女の子が行方不明になり、その後、沼に浮かんでいる所を発見されたのだが、その女の子にしつこく付きまとっていたのが、重徳(小川恵光)だった事を聞く。

しかも、その事件の時の、重徳のアリバイを証言していたのが幸子(山岸里沙)なのだと言う。

その後、面会した小学生時代の担任(小林トシ子)からは、「夢」をテーマにした二人の小学生時代の作文を見せてもらう。

その後も、相変わらず店に毎日のようにやって来ていた重徳は、ある日、若槻の住所を聞いた後、若槻が答えられないと返事すると、彼の目の前で自分の右手の指を噛みちぎり、口中血だらけになると言う異常な行動が起こす。

そんな中、恵と久々に会った若槻は、大学の心理学を勉強している彼女の紹介で、金石(桂憲一)と言う犯罪心理学の先生を紹介してもらう。

彼に、菰田夫婦の子供時代の作文を名前を隠して見てもらい、その心理分析を依頼していたのだった。

金石の分析によると、重徳の作文からすると、彼は、情性欠如に、抑制欠如と爆発性性格が組み合わさった背徳性症候群だと思うと指摘される。

しかし、金石と別れた後、恵は、自分は、幸子の作文の方を、どこかで似たような文章を読んだ事があると指摘する。

自分が、心理学を学んで来て知った事は、人間一人一人が、全く違うと言う事だとも。

そんな恵が、人間性をなくした人等いると思うかと尋ねると、毎日、色々嫌なタイプの人間と接している若槻は迷わずいると思うと答えるが、それは、仕事のストレスから来た答えだと思うと、恵は優しく彼の手を川の水につけるのだった。

その日、自宅マンションに帰って来た若槻は、「御想像にお任せします」と謎めいた言葉だけが書かれたファックスが届いているのを見て呆然とする。

翌日も、重徳はやって来たが、その重徳に金石が話し掛けているのを見た葛西は、その金石が若槻の知人と知ると、客と接触されては、後日、何か問題が起きた時、会社にもとばっちりを受けかねないので止めてくれと注意される。

その金石と、その夜、とあるバーで落ち合った若槻が、何を話し掛けたのかと聞くと、天気の事等他愛のない事だと言いながら、やっぱりあの男が作文の男だったのかと独り納得した様子の金石が言うには、菰田重徳と言う男を間近で観察した結果、あれはサイコパスで、あなたを殺す危険性があると言い放つ。

その後、金石は、サイコパスと環境汚染の関係とか、近年の若者のサイコパスまがいの行動の蔓延が、本当のサイコパスを活性化させて行く等と言う独自の自説を展開しはじめる。

そんな話のせいもあり悪酔い気味で帰宅した若槻は、恵から電話をもらい、何時か前に手紙を出したと言うではないか。

受取った記憶がないので、一階の郵便受けに確認しに下りてみると、たまったDMなどの間から、彼女の手紙を見つけるが、その手紙には、緑色の軍手の痕がくっきり残っていた。

さらに、自室に戻ると、意味不明の内容を記したファックスの用紙が延々と出て来るのだった。

しかし、この案件は、警察が、和也の死因を自殺と発表した事であっさり決着してしまう。

本社が、保険金の支払いを決定したのだ。

本社側では、一応これで事件は解決したと安堵している様子だったが、会議に同行していた葛西は、本当にこれで終わるのかと疑問を投げかける。

何故なら、重徳には、後2種類の契約が残っていたからだった。

若槻も、重徳の行動は、最初から犯罪目的だったと感じていたので、次に狙われるのは、幸子だと直感し、彼女宛に、和也君は殺されたのであり、次はあなたが殺される恐れがあるので、それを防ぐには、生命保険の解除をした方が良いとの匿名の手紙を出す事にする。

その頃、その幸子と重徳は、仲良く、海水浴に出かけていた。

そんなある日、若槻は、自分の名刺を持った他殺死体が見つかったと言う事で、金沢中警察署に呼ばれ、松井と言う刑事(町田康)から、その死体の身元確認をさせられる。

惨たらしく斬殺されたその死体は金石かずみだった。

その頃、菰田幸子は、独り黙々とボウリングをしていた。

久々に恵と会った若槻は、その後、以前もらった2つの作文を読み直している内に、幸子の方の作文の方が異常である事に気づいたと教えられる。

ホン・フランツという学者が分析した「心がない人間」の作文と酷似していると言うのである。

ボウリングをしていた幸子は、レーンに投げたボウルを、途中まで追い掛けて行って、レーン上で抱きとめると言う不可思議な行為をする。

その後、本社では、その菰田夫婦の行為に愕然とする事になる。

何と、重徳が事故で両手をなくしたと言う事で、重度障害保険3000万の支払いを要求して来たのである。

重徳の入院している病院に駆け付けた葛西と若槻は、ベッドに横たわり、本当に両腕をなくした重徳の姿を目の当たりにする事になる。

事故の発見者は、妻の幸子だそうで、独り残業して裁断機をいじっている内にこうなったと言う。

明らかに不自然な事故であり、葛西はこの契約を潰す事にするを若槻に耳打ちする。

本社に戻った若槻も、自分が最初受けた、自殺で保険金がおりるかどうかを問い合わせる女性からの電話は幸子からだったと思うと打ち明ける。

それに気づかず、彼女に重徳から殺されるかも知れない等と言う手紙を送ってしまったばかりに、こちらを与し易い相手と読んで、こうした事をやったに違いないと。

さらに、幸子の過去データを遡ってみると、彼女は、前の結婚時期、白川幸子名義で、すでに1件の子供保険に入っていた事があり、そのヨシオと言う実子も又、縊死で保険金を受取っていた事実を若槻は知る。

葛西から呼ばれた「潰し屋」三善は、すぐさま病院に向い、契約書の約款を盾に、この契約をなかった事にすると幸子に迫る。

保険金は払えないが、掛け金は全て返すと言う事である。

しかし、それを聞いた幸子は、今ここには判子を持ってないと言い出し、言葉巧みに三善を外に連れ出すと、どうやったのか、彼を縛り上げてしまい、ビニールで隠してボートに乗せて移送する。

夜、マンションに帰って来た若槻は、自分の部屋に入って行く幸子の姿を見かけ、慌てて外に逃げ出すと、公衆電話から自室の留守電に電話をすると、集音装置を作動させ室内の音を聞きはじめる。

すると、部屋の中を荒し回っている幸子の無気味な独り言の間から、恋人の恵を拉致しているらしき言葉が聞き取れたので、恐怖に怯えた彼は、急いで、警察の松井刑事に連絡を取ろうとするが、相手がいないので伝言を頼んで、取りあえず自分で幸子の自宅に駆け付けてみる。

誰もいない室内に侵入した若槻は、ライターの灯を頼りに家の中を捜しまわるが、異臭に気づき、居間の床下をめくってみると、床下に三善のバラバラ死体を発見する。

さらに、懐中電灯を見つけたので、それを使い風呂場を捜してみると、その空の湯舟の中に押し込められていた恵を発見する。

恵は、幸子から執拗な暴行を受けたようで、明らかに怯え切っていた。

彼女を助け出そうとしていた時、幸子が帰って来る音がしたので、慌てて、恵を抱いて納戸の中に身を顰めた若槻だったが、人の気配を察知した幸子が、長い包丁を握りしめながら室内を捜しはじめる。

やがて、若槻を恵が隠れていた納戸に気づき、ジリジリと近づいて来たが、その時、接近して来るパトカーのサイレンが聞こえて来る。

幸子は逃亡し、若槻たちは救出され、時間が経過した。

三善のバラバラ遺体のみならず、床下からは、幸子の前夫白石オサムと思われるものを始め、10数体の白骨遺体が発見され、しばらくこの事件で世間は騒然とする事になる。

幸子が逃亡に利用した車は、川に落ちているのを発見されるが、幸子の遺体は見つからなかった。

入院後、実家に戻った恵を案じ、電話してみた若槻だったが、先方の母親からは、もう電話して来ないでくれと素っ気なくあしらわれてしまう。

百万石祭りの日、仕事に復帰した若槻は、高倉(西美子)と言う別支社の女性社員から電話を受け、今夜10時に会って相談事があるのでうかがいたいと言われたので承知し、独り残業する事にする。

毎度のごとく、守衛(荒谷清水)が声をかけに来て戻っていた後、10時を過ぎても高倉が現れないので、トイレに行った若槻は、曇ガラス窓に妙な影が写っているのに気づき、それに目を凝らしていると、それは外から飛び込んで来たボウリングの玉だった。

ボウリングの玉には、無数のガラス片が貼付けてあり、思わず、触ろうとした若槻は手の平を斬ってしまう。

部屋に戻った彼は、いきなり、部屋中の蛍光灯が消え、電話も通じなくなった事に気づく。

唯一、テレビ電話だけが鳴りだし、それを取ってみると「チブキガデズニ…」と、意味不明な言葉が聞こえて来る。

パニック状態になり、階段を下りて逃げようとした彼は、途中で躓いて踊り場に落ちるが、そこに、首を斬られた守衛の死体が横たわっているのに気づく。

そこに、どこからともなくボウリングの玉が転がって来て、包丁を持った幸子が彼の耳に食らい付いて来る。

何とか包丁をたたき落とし、彼女の両手を掴んだ若槻だったが、股間を蹴られてしまい、幸子にまた包丁を拾い上げられてしまう。

そんな幸子は、若槻と取っ組み合いになりながら、自分も子供の頃、親に保険金目当てに手首をきられた事がある、同じ事をして何が悪いのかと叫び出す。

そして、強引にキスして来ると、自らの胸をはだけ「乳しゃぶれ!」と迫って来る。

必死にその要求に答えていた若槻だったが、「へたくそ!」と突き放されると、彼女の首に手をかけ締めて行く。

死んだようにぐたりとなった彼女の身体に、念のため消化器の泡を吹き掛けた若槻だったが、その直後、生き返った幸子の包丁で、足首を斬られてしまう。

じりじりと、階段を這い登って来る幸子を見た若槻は、ガラス片だらけのボウリングの玉を拾い上げると、それを彼女の顔面目掛け投げ落とす。

まともに、その玉を食らった幸子は、跳ね返って踊り場に壁に頭を強打し、血の痕を残しながらずり落ちて行く。

幸子の死によって事件は解決した。

その後、何とか元の状態に戻った恵に再会した若槻は、きつく彼女を抱き締めるのだった。

ある日、葛西からボウリングに誘われた若槻は、気が進まなかったが断わる訳にも行かず、何となく同行させられるが、ボウリングしている最中も、幸子の腕輪のチャリチャリ言う音がどこから聞こえて来るようで落ち着けなかった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

貴志祐介原作のヒットホラーの映画化。

原作も良く出来ていたが、この映画版もそれなりに原作を忠実に再現しており、原作を先に読んでいる者にとっては、オチを知っているので衝撃感こそないもの、まずまず楽しめるし、原作を知らない者にとっては、未知の怖さを体験できるのではないだろうか。

原作を読んだのはかなり昔なので、今、あらためて映像作品を観ていると、ミステリ仕立てにしては、あれこれ気になる点がないではないし、森田監督独特の、かなり意図的な演出法も、観る人によっては好き嫌いがはっきり別れるのではないかと感じられる。

重徳を演じている西村雅彦や、刑事役を演じている町田康の、妙にわざとらしく見える「個性演技」も、評価が分かれる所だろう。

公開当時は、賛否意見が分かれたようだが、時間が経過し、今観た感想としては、出来は普通のような気がする。

大竹しのぶの演技にしても、彼女の技量からすると、ごく平均的な出来ではないだろうか。

小林薫や石橋蓮司の安定感のある演技よりも、むしろ、主役を演じた「の・ようなもの」(1981)の頃から、全く芝居が巧くなっていない伊藤克信の素人っぽさの方が、妙に印象に焼き付いてしまったりするのも御愛嬌か。


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