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喜劇 快感旅行

1972年、松竹大船、舟橋和郎原作、下飯坂菊馬脚本、瀬川昌治脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

金沢行き9時40分発急行「北陸」、発射間際の車内では、山ノ上実践女子高校の修学旅行生が、山本リンダの「どうにも止まらない」を歌い出し大騒ぎ、それを注意しているのは引率の園田綾子先生(園佳也子)。

そこにやって来た専務車掌の坂本大作(フランキー堺)は、その先生に列車を利用してもらった礼を言い、ついでに、金沢の文豪、室生犀生の詩をそらんじてみせる。

すると、その詩にうっとりとした園田先生も又、即興の詩をその場で返すのだった。

やがて、女子高生たちの嬌声に気づき、バレーボールのオリンピック選手でも乗っていたのかと近づいてみると、生徒たちが写真を撮っていたのは、大作の弟で、同じく車掌の健介(森田健作)だった。

モテているのは弟だけではなかった。

大作にも、上野食堂に勤める神田光子(倍賞美津子)と言う押し掛け恋人がいるのだ。

以前、壮行会の時、酔った大作が誰にでもするいつもの癖で、つい彼女にキスをした事がきっかけで、のぼせてしまったらしい。

今日も、店が改装中だとかで暇なのか、車掌室に勝手に入り込み、殺風景すぎると、派手なシール等をべたべた貼っているではないか。

そんな彼女を列車から強引に降ろして、「北陸」は出発する事になる。

やがて、外国人女性一行が集まった寝台付近で、何やら騒ぎが怒っている様子。

彼女たちの言葉が分からないので困惑した大作は、彼女たちのガイドらしき男(ケーシー高峰)に事情を聞くが、その男が言うには、彼女たちは、ヒップバストコンテストの出場者たちだそうだが、言っている言葉は分からないらしい。

すると、近くの寝台にいた聡明そうな男性が、ミス北欧(バーバラ・アダムス)には室内が暑過ぎ、ミスジャマイカ(バートレー・ジジャネット)には寒すぎると言っているのだと教えてくれた。

仕方ないので、室温をさげて、ミスジャマイカには毛布を渡す事で、その場はおさまり、大作は、彼女たちから感謝のキスをもらってしまう。

その場を立ち去りかけた大作は、チャイナドレスを着た御夫人(ミヤコ蝶々)に声をかけられたので、中国代表のミスかと思ったが、その婦人は生っ粋の日本人で、空腹なので、何か食べるものは売っていないのかと言う。

もう、車内販売は終了していたので、たまたま近づいて来た健介に、光子からもらった自分の弁当はもう食べてしまったので、お前の弁当を差し上げろと無茶な事を言う。

呆れながらも、健介が弁当を取りに帰っている間、婦人のベッドに置かれた俳句集「あさがお」を見つけた大作は、実は自分はこの会員で、不乱木と言う雅号なのだと打ち明けると、その婦人も、同じ会員で、雅号は蝶々と言うのだと言う。

二人はそれで、すっかり意気投合してしまう。

車掌室に戻った大作は、日課となっている「不乱木叙情日記」をつけはじめる。

タイトル。

翌朝6時54分、無事金沢に到着した「北陸」の業務内容を、大作は区長(中田昇)に、長々と詩集風に報告し、一緒に並んでいた健介ら他の乗務員たちを呆れさせる。

大作は、その後、江戸村の句会に出席するつもりだったが、そこに現れたのが、加賀屋の番頭山本(立原博)と言う男。

何でも、夕べ、列車内で家の御隠居が世話になったので、そのお礼がしたいので、迎えに来たのだと言う。

すぐさま、あの「あさがお」の婦人の事だと分かったので、無下に断わる訳にも行かず、その好意を受ける事にし、向った旅館「加賀屋」で昼食をごちそうになる。

やがて、件の大女将の娘信乃(森明子)と言う女性が料理を持って来て紹介される。

その後、その信乃、大女将、山本の三者は、席を外し、大作の品定めを始める。

体は丈夫そうだが、35まで結婚していないが怪しいと言えば怪しいし、肥満している男はあちらが弱いと言う説もあるので、一応確認しようと言う事になり、帰りかけた大作は、無理矢理大名風呂に案内される。

仕方なく、服を脱ぎかけると、三人の視線が大作の股間に向いている。

それを何とかかわしながら、何とか湯舟に漬かった大作だったが、山本が勝手に入って来て、背中を流すと言う。

その山本も、しきりに大作の股間を見ようとし、結局、立派な持ち物と分かると、とたんに事情を説明し出し、家の娘の婿になるには、丈夫で長もちなのが条件なのだと言う。

知らぬ間に見合いをさせられていたと知った大作は、激怒して帰り支度を始める。

慌てて見合い写真を見せようとする山本に、本人にはさっき会ったので見る必要等ない、誰があんなおばさんと…と、信乃の事を相手だと思い込んだ大作は、そそくさと「加賀屋」を後にして、江戸村の句会に向う。

そこで出会ったのが、内海千代(光本幸子)と言う美女。

一目で彼女の魅力に参った大作は、彼女と連れ立って金沢城を散策する。

何でも、旅館が実家の彼女は、今日、見合いだったのだが、すっぽかして来たと言う。

彼女の家に近づいた時、ようやく彼女の家と言うのが加賀屋であり、自分の見合い相手と言うのが、実は彼女だった事を悟った大作だったが、啖呵を切って逃げ出して来た今、のこのこと戻る訳にも行かず、早とちりを悔やむのみ。

その頃、金沢にある大作の家には、健介に昇進試験勉強を仕込む、恋人のかおる(岩崎和子)が来ていた。

万年車掌の兄のようにはなって欲しくなかったのだ。

そんな所に、何と光子がやって来る。

今朝、列車を降ろされたのが悔しく、新幹線で来たのだと言う。

この家は、やはり北陸の車掌だった亡くなった坂本兄弟の父が、退職金で建てた家だと、健介から聞かされた光子は、実は自分の父親も機関士だったと打ち明ける。

そこへ、大作がしょげて帰って来るが、光子の姿を見られたらまずいと、彼女を箪笥の中に押し込めてしまう。

ぼんやりしながら家に入って来た大介は、その箪笥をいきなり片側開けて着替えようとし始めたので、箪笥の中にいた光子は、もう片方の扉の影に隠れながら、自分の方からハンガーやセーターを突き出して大作に渡す。

着替えながらも、今の状況に不自然なものを感じた大作は、箪笥の中をあらためるが、その時すでに、光子は、健介やかおるの後ろを通って、洗面所の方に逃げ出していた。

ところが、その洗面所に大作が向うではないか。

洗面所にいた光子は、思わずコップに汲んだ水を大作に手渡した後、彼がその状況に気づく前に、トイレに逃げ込む。

手渡されたコップの水を見る¥ながら、ふと我に帰った大作が洗面所の方を見ると、そこに立っていたのは、かおる。

その大作、今度は便所に入ろうとするではないか。

しかし、何とか健介たちが光子を外に逃し、その場を凌ぐ事が出来た。

その夜、書斎の机に座った大作は、横で寝ている健介の高いびきに悩み、煙草を耳栓代わりに両耳に差し込み、叙情日記を書きはじめる。

そこには、兼六園で再会した千代との逢瀬の事を綴っていたが、結局、彼女とは何もないままだった。

その後、大作は、能登の古代遺跡群に行きたいと言う千代に誘われ、休養日に一緒に列車で向う事になる。

千代は、かつて、東京の大学で考古学を学んでいたらしい。

すでに、千代は、かつての見合いの相手が大作だった事を聞いたらしく、祖母があなたの事を気に入っていると伝える。

そんな千代を誘って食堂車に向った大作は、そこにあろう事か、ウエイトレス姿の光子の姿を発見し驚愕する。

近づいて、どうなっているのか事情を聞こうとするが、光子は何も答えようとはしない。
かおるも一緒に乗っていた所を見ると、彼女の手引きらしいと分かる。

その後、千代と大作のテーブルに注文を取りに来た光子は、大作がビールを注文したので、そのビールの中に下剤を入れて持って行くが、そのビールを千代にも勧めている大作を見た光子は、ゴミが入っていると嘘を言い、千代のコップを持ち去ろうとする。

その不振な動きに気づいた大作は、自分が飲みかけたビールを持って、光子に何をしたのか詰問しに行くが、その下剤入りのコップを、横から奪い取った客がいた。

それは、かつてヒップバストコンテストの外国人美女たちを連れていたワールド観光のガイドだった。

もうすでに、かなり酔っている様子。

今日は、「白ユリ旅行会」と言う年輩婦人会を引率しているらしい。

慌てて光子が止める間もなく、そのガイドは下剤入りのビールを飲み干してしまう。

その後、食堂車では、ゲストの朱里エイコが歌をサービスし出す。

そんな状況下、ハラハラして、ガイドの様子を見守る光子と大作だったが、意外と大丈夫そうで、なまもの等、バクバク食べてしまっている。

しかし、やがてガイドの様子がおかしくなる。

腸が自らグルグルと異常を語りかけて来る「腸カタル」などと、ガイドは洒落を言っていたが、目的地の珠洲駅に降り立った彼は、もうトイレにしょっちゅう往復するゲリ状態に突入していた。

困ったのは大作、駅前のバスに乗り込もうとする千代にそのまま同行したいのだが、ガイドのゲリの原因の一端は自分にもあると感じていたので、ガイドに取り残されて待っている「白ユリ旅行会」の御婦人方の事を思うと、その場を立ち去れないのだ。

結局、千代だけバスで向わせ、自分はガイドの付き添い役として「白ユリ旅行会」に随行する事になる。

鯖尾岩、平時忠の墓、見附海岸軍艦島、珠洲八幡太鼓などをめぐりながらも、その内、少しだけしかビールを口にしなかったはずの大作までもがゲリ状態になってしまい、木ノ浦海岸では、ガイドと二人でバスから降り、道路脇で用を足すはめになってしまうのだった。

後日、列車に乗った大作は健介に、光子を東京に帰すように命ずる。

その時、千代が近づいて来る。

珠洲古墳で集めた遺跡を、東京の友人に持って行く所なのだと言う。

そして、大作に手作りの弁当を渡して去るのだが、感激した大作は、すぐさま車掌室に入り、その弁当を食べはじめるのだが、いちいち、その弁当の中身に感動する気持ちを口に出してしまい、彼の目の前に会った車内放送のスイッチが入ったままである事に気づかなかった。

自分の寝台に戻って来た千代は、弁当の中身を詩的に述べている大作の声が聞こえており、乗客たちが驚いているので、思わず微笑んでしまう。

その声に気づいた健介が急いで大作に知らせに来るが、大作は自らの失敗に気づきながらも、慌てず騒がず、「純情日記の一節でした」と締めて、放送のスイッチを切るのだった。

上野の美術館に独りやって来た千代は、そこで働いている恋人の藤田(藤巻潤)と出会い、返事を早くもらわなければ、祖母が養子を決めそうになっていると迫るが、藤田は、自分のふがいなさを反省するだけだった。

一方、金沢の自宅に戻って来た大作は、自宅前にトラックが停まっており、かおるが手伝いながら引っ越し荷物を家の中に運び入れている様子を見る。

家に入ると、二階を光子が借りた事が分かる。

それだけでも不機嫌になった大作だったが、あろう事か、少し遅れてやって来た、彼女の父親神田淳三(伴淳三郎)までもが同居するらしい。

光子が言うには、あなたともう結婚したと、嘘の手紙を出してしまったのだそうだ。

その夜から、福島の大湊区から始めた機関士時代からの癖で、時間厳守を貫いていると言う淳三の言葉に無理矢理従わせられ、慌ただしい夕食を取る事になる大作や健介。

その後、光子は、二階の父親と一緒に寝ようと上がって来るが、もう結婚したものと思い込んでいる淳三は、彼女を下に降ろしてしまう。

仕方なく、大作の隣の部屋に布団を敷きはじめた光子だったが、すぐに、淳三が様子を見に降りて来たので、慌てて、大作の布団の中に潜り込んでしまう。

こうした光子親子の態度に切れた大作は、布団を抜け出すと、そのまま家を飛び出してしまう。

翌朝、駅に出勤した大作は、さらに驚く事になる。

何と、区長が、大作が結婚した事を何故隠していたのかと話し掛けて来たからだ。

誰がそんな事を告げ口したのかと怪んでいると、何と、淳三が制服姿で入って来るではないか!

ここの谷口助役(生井健夫)はかつて同期だった事もあり、今回、故郷列車の洗車係りとして再雇用されたと言うのだ。

告げ口の主はもちろん淳三だった。

彼は、さらに、結婚披露宴のパンフレットまで大作に見せようとするので、頭に来た大作は、それをくしゃくしゃにして破り捨ててしまう。

その日、帰宅して来た大作は、急に世話女房のような言葉遣いになった光子に返事もせず、荷物をまとめて家を出て行く事にする。

その家を出たところで、加賀屋の番頭山本と出会った大作、再び、大女将の元に連れて行かれると、千代との結婚について決断を迫られるのだった。

すでに、大作自身は養子になる決意は決めたものの、気になるのは、相手の千代の気持ちの方。

それを尋ねると、大女将は、千代は明日こちらに帰って来るので、返事は聞かずとも間違いないと太鼓判を押す。

かくして、大作は短歌の形で決意を伝え、大女将も又、短歌で答えるのだった。

その夜、酔って一緒に帰って来た淳三と健介は、家の中で沈んでいる光子を発見する。

一旦出て行った大作が、これを渡して又出て行ったのだと二人に見せたのは、退職届だった。

後日、大作は、加賀屋の養子になる修行として、三日間、山城ビューホテルと言う姉妹ホテルで、朝から晩まで、徹底的に仕事を覚えさせられる事になる。

朝起きて、屋上での朝の点呼に出向くと、何と、女中の中に光子が紛れ込んでいるではないか。

そのしつこさに、さすがに腹に据えかねた大作は、後三日立ったら、自分はここの跡取りになるので、君を解雇すると気色ばむと、光子も負けず、不当解雇はさせないと、その場で大声を上げはじめる始末。

それからと言うもの、大作の出向く先々に光子がいて、何かと、大作に圧力をかけて来る。

それでも何とか三日目を迎え、いよいよ修行の最後の日、ホテルに千代が帰って来る。

その姿を見て喜んだ大作だったが、その後からやって来た客を顔を見て仰天する。

何と、淳三だったからだ。

しかも、まるで大作を無視した様子。

その淳三、大女将を始めホテルの従業員を一室に集めると、自己紹介を始め、さらに、大作との関係を話だそうとし出したので、慌てた大作は、無理矢理料理を食べさせ、淳三にそれ以上、発言させないようにする。

そんな様子を、千代は部屋の外で聞いていた。

事情が良く分からない大女将らが部屋から出て行った後、淳三は残った大作に手をついて、不憫な娘をもらってやってくれと言い出す。

手紙で嘘を知らせられた事はとうに知っていたと言うのだ。

しかし、当の光子は、さすがにもう諦めたらしく、もう良いと言い出す。

その後、大作に酒を無理強いしはじめる淳三は、だんだん泥酔し始め、やがて旅館に飾ってあった鎧兜を勝手に見煮付けると、大作に向って矢を射始める。

光子も泥酔し、こちらは日本刀を抜いて、大作に斬り掛かろうとし始める。

部屋はもうむちゃくちゃな状態。

そんな部屋から抜け出した大作は、疲れて廊下で横になるが、そこに近づいて来たのが千代。

彼女は、大作を寝室の布団に連れて行くと、いきなり、抱いてと迫りはじめる。

最初は、結婚するまで清い関係でいようと、必死に抵抗していた大作だったが、あまりに積極的な千代の様子に押される形で、じゃ、一回だけと応じる事にする。

しかし、それは夢で、実は大作が抱きついていたのは淳三だった。

そんなおかしな二人に、光子はビールを吹き付けて目を覚まさせるのだった。

ようやく目が覚めた大作は、又部屋を出るが、先ほどと同じように廊下に横になってしまう。

そこに近づいて来たのは、今度は光子だった。

彼女が又、自分を寝室に連れて行くので、又夢だと思った大作は、もう結婚しなくて良いと言う光子の言葉にいじらしさを感じ、どうせ夢だからと抱く事にする。

ところが、翌日目覚めた彼は、横に寝ている光子の姿を発見し、あれが夢でゃなかった事を悟る。

間が悪い事に、そこにやって来たのが、大作の寝坊を叱りに来た大女将、信乃、山本の三人。

すでに、三日を無事過ごしたので、寝坊は許し、今日から六代目千代の養子となったと言い渡した大女将は、その後、団扇だけの披露宴を開くので、早く起きるように促すが、大作はなかなか布団から出ようとしない。

その様子を見た信乃は、男の朝は布団から出にくい状態になっているのだろうと気を利かせ、部屋から帰りかけた三人だったが、山本が、布団から以上に長く伸びている足を見つけてしまう。

おかしいと思い上布団を剥いだ大女将は、そこに隠れていた光子を見つけてしまう。

さらに、鎧兜の姿のままの淳三までやって来たので、大女将は、その鎧兜は家宝なのにと激怒してしまう。

結局、淳三と光子親子は、ホテルを追い出され、すごすごと帰る事になる。

荒れ果てた淳三たちの部屋残された大作は、養子の件を断わられるのをもう観念していたが、大女将は、今後の態度如何で決めると、養子は成立したかのような口ぶり。

しかし、大作は、畳に落ちていた栓抜きを見つけて物思いに耽る。
それは、仲居役の光子が身につけていたものだったからだ。

さらに、その後、千代から呼ばれて外に出た大作は、あんな良い人がいながら、養子になろうとしたのかと聞いて来て、大作が答えに窮していると、私たちはこのままお友達のままでいましょうと言い出す。

すっかり落ち込んだ大作を迎えに来たのは健介だった。

休暇は今日までなので帰ろうと言う。

健介は、代作の辞職届を出さなかったのだ。

一方、淳三と光子は、かおるに付き添われ、夜汽車で郷里に旅立とうとしていた。

そこに現れたのが、車掌の姿に戻った大作。

彼は、淳三らの切符を確認すると、これは往復切符ではないので、こちらで手配すると言うではないか。

訳が分からない淳三と光子に、大作は事務的に、今度は本格的に荷物を金沢に持って来るように嫁げて立ち去る。光子との結婚を承諾した言葉だった。

その後、夜汽車の洗面所にやって来た乗客(佐山俊二)は、顔を洗いながら泣いている淳三、その脇で泣いている光子とかおる、さらに車掌の健介や、車掌室に籠っている大作までもが全員泣いているのを見つけ、訳も分からずもらい泣きしてしまうのだった。

一年後、いつものように専務車掌の仕事をこなしていた大作は、車内に、千代と藤田の姿を見かけ声をかける。

あの時、通訳してもらった男が、千代の恋人だった事をその時初めて知ることになる。

今度、金沢の大学で考古学を教える事になったのだと言う。

千代から子供は出来たのかと聞かれた大作は、三つ子が生まれたと恥ずかしそうに打ち明ける。

車掌室に戻った大作は、写真立てに入った三つ子を抱いた光子の写真を見つめる。

赤ん坊たちは、全員、大作に売り二つの顔だちだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

旅行シリーズ11作目にして最終作。

いつもの、フランキー演ずる主役が、顔に似合わず、積極的な女に一方的に求婚を迫られて困ると言うドタバタパターンだが、今、観ていると、倍賞美津子演ずる本作のキャラクターの行動は、もはやストーカーである。

その余りに度を越した執拗さは、おかしいと言うより、怖さを覚える。

この展開に加え、シリーズお馴染みの観光案内要素、さらに、夢の中で美女に迫られると言う、お約束も登場する。

ケーシー高峰との下痢を巡るドタバタなど、何となく古臭い下ネタも相変わらずで、全体的には、いつも通り安定したまとめ方をしているように感じる。

詩集を絡めて、ちょっと真面目な文学臭を加えているのが、ドタバタとの落差を生んで効果的。

初々しい森健こと、森田健作も魅力。

マドンナ役となる光本幸子は、「男はつらいよ」シリーズでも、第一作と七作目に登場しているが、地味と言うか陰が薄いと言うか、あまり印象に残らない顔だちであるのがちょっと可哀想。

冒頭の女子高生が歌っている「どうにも止まらない」や、弁当の実況中継をしてしまうフランキーのセリフ、「ワンパクでも良い、たくましく育って欲しい…、丸大ハム」などの時事ネタが懐かしい。