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喜劇 頑張らなくっちゃ!

1971年、松竹大船、井手雅人原作+脚本、下飯坂菊馬脚本、瀬川昌治監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

上野公園前交番の前を走るすごい交通量道路で、急ブレーキ音が響き渡る。

とっさに事故だと直感した巡査長(西村晃)は、山崎(フランキー堺)と古井(小田草之助)と言う二人の警官を現場には知らせるが、轢かれたのは猫だと言う。

戻って来た山崎は、死体の処理をさせようと、清掃局に電話をするが、生きているのだったら保健所の管轄だと言われ、もう一度確認に行くとまだ生きている事が分かる。

それで、今度は保健所の方に連絡を取ったのだが、その後、やって来た保健所は、もう死んでいるでそのまま帰ったと言う。

仕方ないので、もう一度、清掃局に電話し、清掃車に来てもらうが、今度は死体自体がないと言う。

不思議に思って、もう一度現場に走った山崎巡査が言うには、もう車に何度も轢かれて行く内に、ボロボロの状態になって、死体の態をなさなくなったらしい。

結局、山崎巡査自らが、ホウキとちり取りで、猫の死体の残骸を処理しに行くが、その僅かなゴミも、持ち帰る際、山崎とぶつかりそうになり急停車した車の風圧によって飛び去ってしまうのだった。

その夜、帰宅が遅くなり、夕食の準備をしかけていた夫の原田尚之(財津一郎)に謝りながら、夕食の準備を交代したのは、山崎の妹で婦人警官の弘子(賠償千恵子)だった。

今は、夫と兄と三人で同居生活状態。

しかも、いつまでもうだつの上がらない兄に比べ、夫の方が成績が良く、今や位も上である。

そんな兄に渇を入れようと、弘子は、裏で下水の掃除をしていた兄にわざと聞こえるように、夫がまたまた、警視総監賞をもらう事になったと報告する。

しかし、部屋に戻って来た山崎はどこ吹く風。

いつものように、妹から小使い銭をせびると、馴染みのおでん屋に飲みに出かけるのだった。

日暮里駅の側の線路脇にあるこの店は、電車が通る度に震動で揺れ、長年通い慣れた山崎には、その振動だけで、通った列車の名前が当てられるほどになっていた。

そんな店からの帰り道、線路の上の橋を通りかかった山崎は、思いつめたような顔で赤ん坊を抱き、向って来る電車を見つめている若い女の姿を見かけ、注視しながら通り過ぎようとすると、その女が赤ん坊を線路の方に落とすかのような仕種をしたので、慌てて女を止めに入る。

いきなり見も知らずの男に飛びつかれた女は、赤ん坊を抱くのに疲れたので橋の上に置こうとしただけだったのだと怒るが、確かに、落とそうと思っていたのかも知れないと自嘲気味な言葉も口にする。

訳を聞いていると、近くの清風荘というアパートに住んでいるのだが、赤ん坊がなかなか泣き止まなくて困っていたのだと言う。

そのアパートなら、僕の受け持ちだと答えた山崎の言葉に敏感に反応した女は、彼が巡査だと知ると、慌てて逃げ帰るのだった。

翌日、さっそく制服姿で清風荘を訪ねた山崎は、女の部屋を見つけるが、そこには彼女の母親らしき女性と赤ん坊がいた。

名前を聞くと、警戒した様子の母親の方が自分は峰岸きん(賀原夏子)、娘の方はナオミ(ビーバー)、19才だと答える。

そのお国訛りから、東北出身と気づいた山崎は、自分も弘前出身だと言うと、きんは自分は下北だと答え、急に親しげになる。

赤ん坊にはまだ名前もつけていないのだと言う。

その時、赤ん坊が泣き出し、きんは、早く乳を飲ませるように娘にせかすが、ナオミは乳首を噛むのが痛いからと、赤ん坊を布団に投げ出してしまう。

なかなか泣き止まない赤ん坊の様子を観ていた山崎は、オシメが濡れているのではないかと察し、率先してオシメを替えてやる。

その手慣れた様子を観ていたきんは、子供がいるのかと尋ねるが、山崎は、自分はまだ独身で、実は、母親が身体が弱かったので、妹と弟も赤ん坊の頃から自分が育てたのだと説明する。

帰り際、山崎は赤ん坊の父親の事を尋ねてみるが、ナオミは答えなかった。

翌週、義弟の原田が、三輪車に乗って線路内に入り込んだ5才の子供を救った功績により、警視総監賞を受け、新聞記者たちも取材に訪れていた。

原田は、今回が3回目の受賞と言う事もあり、そつなく受け答えしていたが、そんな中、馴染みの記者の一人並木(田中邦衛)が、長年これと言った功労もない山崎を励ましていた。

その夜、上野公園前交番の山崎を訪ねて来た者がいた。

あの峰岸きんだった。

彼女の要件とは、赤ん坊の父親を探してくれと言うもの。

娘の手帳に書かれた、江東区に住む大山巌と言う相手の男の名前を見つけたのだと言う。

そこまで分かったのなら、自分で探せば良いではないかと答えると、自分には国に、15を頭に5人もの子供がおり、今でも腹を空かせて待っていると、きんは泣き落しにかかる。

それでも、勤務以外の仕事は引き受けられないと固辞した山崎ではあったが、次の休みの日、父親探しをしている彼の姿があった。

チャイナタウンというキャバレーにやって来た山崎は、準備中の店員(佐藤蛾次郎)に大山という男が勤めているはずだがと聞くが、歌手になりたいと言って半年前に辞めたと言う。

次に尋訪れた「三木歌謡学校」では、オカマ風の校長(立原博)から、三日で辞めたと聞かされる。

次に訪ねた「トルコ広重」では、サービスとして、トルコ嬢を紹介されるが、慌てて逃げ出す山崎。

次に入ったのは「エースホール」と言うパチンコ屋だった。

釘を直していた青年に、大山の事を聞くと、大坂のミナミに住んでいる友人の所に行ったらしいと言う。

がっかりして店を後にする山崎の姿を見送ったその青年こそ、大山巌(石橋連司)本人だったのだ。

翌日、再び、清風荘を訪れた山崎は、錦糸町の中丸楽器で出会ったと言う大山との付き合いを確認しようとするが、相変わらず答えようとしないナオミの態度に切れたきんと、親子げんかが始まってしまう。

その巻き添えになりそうな赤ん坊を連れ出し、山崎は馴染みのおでん屋の女将(園佳代子)にミルクを作ってもらうのだった。

その後、エースホールから帰りかけた女店員は、顔なじみだったナオミの姿を観る。

ナオミは、やはり大山の行方を聞きに来たのだったが、今、大山と付き合っている女店員は知らないと答える。

そんな女店員に、ナオミは、ここだけの話と言ってとんでもない打ち明け話を始める。

実は、大山は赤衛派の同士であって、千葉の銀行を襲ったのも彼だと言うのだ。

最近、自分のアパートにはポリが連日のようにやって来るので、もし、大山に連絡が取れたら、絶対近づかないように伝えてくれと言って帰る。

翌日も、清風荘にやって来た山崎は、赤ん坊の戸籍を作るためあれこれ質問しはじめるが、しつこく聞かれるのを嫌がったナオミは、山崎に対し、本当は自分目当てで毎日来ているんじゃないのかとからってしまう。

それを聞いた山崎は、激怒して帰って行く。

その後、警察署内の体育館で、原田と剣道をしていた山崎は、怒りを引きずったまま、原田をめった打ちにしてしまう。

夜もやけ酒を飲んで泥酔状態で帰宅した山崎があばれまわるので、原田と弘子で押さえ付け、無理矢理寝かせる始末。

翌日、造花作りの内職をしていたナオミの元に帰って来たきんは、もうこの内職も今月一杯で断わられたので、その後は仕事がなくなると嘆くが、ナオミは自分が働くから心配いらないと気楽に答える。

そこにやって来た大家が、生まれて14日以内に赤ん坊の出生届を出さないといけないと言いに来たので、法律に疎いきんは、捕まったらどうしようと怯えはじめる。

しかし、ナオミの方は、夕べ赤ん坊が自分の乳を勝手に吸いに来たらしく、痣がついていたと、愛おしそうに話すのだった。

その夜、ネッカチーフで顔を隠したきんが赤ん坊を抱え、繁華街をうろついていた。

そして、一件の寿司屋の裏手に来ると、中で仕込み中だった寿司飯を観て、ここなら食いっぱぐれがないだろうと、そこに置いてあった段ボール箱の中に赤ん坊を入れて立ち去ろうとする。

しかし、さすがに気になるらしく、赤ん坊の様子を近くで観察していたきんは、酔っぱらいの若者三人に赤ん坊が連れ去られるのを目撃する。

翌朝、ナオミが交番に知らせに来たので、清風荘に向った山崎は、部屋で泣き伏しているきんの姿を見つける。

赤ん坊を連れ去った若者の風体を訪ねた所、「西洋こ●き」みたいな格好だと分かり、察しをつけた山崎は、z上の美術館の前でたむろしていたヒッピーの仲間に、赤ん坊を連れ去った人物を知らないかと声をかける。

すると、ローザ(田坂都)と言う娘が、ちょんという仲間が新宿に連れて行ったと言うではないか。

仕方なく、ローザを連れて新宿に向った山崎は、ヒッピーのたまり場的旅館「日之出館」で、ノン子()と言う坊主頭の女性から、ちょんなら南口のホットドック屋で見かけたとの情報を得、歌舞伎町に向うと、そこを歩いていた女性が抱いている赤ん坊を確認しようと声をかけるが、不審者に間違われ、近くにいたその旦那からも因縁を付けられそうになったので、警察手帳を示すと、今度はそれに気づいた全学連の連中が、山崎を取り巻きはじめる。

もめ事になるのを嫌い、その場を逃げ出した山崎だったが、とある喫茶店で、シンナーを吸っているローザを発見、一緒に連れ帰ろうとするが、ラリったローザから抱きつかれ、歩行者たちから妙な目つきで見られたので、その場にローザを置き去ろうとするが、偶然にも近くにノン子がおり、ちょんなら花園の「バラ」と言うアングラバーにいるらしいとの情報を得る。

目的地の「バラ」を見つけた山崎は、電柱をよじ登って、部屋の中の様子を探ろうとするが、その様子を向いの店の女たちに見つかり、又しても、警察である事を教えるが、女たちは「♪頑張らなくっちゃ〜」と、CMソングを歌ってからかいはじめる。

ようやく、「バラ」の室内に入り込んだ山崎は、そこに干してあったおむつや、ベビーパウダー、がらがらの玩具等を観て、一応ほっとするのだった。

自宅に戻った山崎は、弘子から、署から電話があり、赤ん坊が保護されたと聞かされたので、その足で警察署に駆け付けると、そこには、赤ん坊を抱いたナオミの姿があった。

一方、取調室に行ってみると、数人のヒッピーたちが、巡査長立ち会いの元、原田から尋問を受けていたが、その中には、ローザの姿もあった。

何も答えようとしないヒッピーたちに対し、強圧的な態度で尋問をしている原田の態度に業を煮やした山崎は、彼を別室に連れ出すと、取りあえず、ヒッピーたちは赤ん坊の面倒をきちんと観ていたのだし、無理矢理犯罪者扱いして、点数稼ぎばかりするような態度は止めろと注意する。

それに対し、署内では立場が上の原田も言い返そうとするが、その時、尋問室から聞こえて来た歌声に気づき戻ってみると、楽しそうにギターをかき鳴らし、合唱しているヒッピーたちの姿があった。

その後、ナオミと赤ん坊を連れて、清風荘に戻って来た山崎に、ナオミは、まるでお父さんみたいだと山崎に微笑んで帰るのだった。

個人的に、ナオミと赤ん坊の世話をしている山崎の行為を、少年課の婦警白子から聞いたと言う並木記者は、その美談を記事にすると言い出す。

ちょっと、内心嬉しくなった山崎は、署内にいた原田に会いに行くが、その事、原田が何気なく話していた、映画館で捕まえたせこい痴漢男の名前が大山巌と聞き驚愕する。

さっそく、調書に記載されていた大山の住所に出かけてみると、そこはアパートで、何と、大山は、別の女のヒモとして、のんきに同棲していた。

外に呼出した大山にナオミの事を話し、思わず、相手のいい加減な態度に切れた山崎は、側の給水パイプを殴りつけるが、今世話になっている女に真相を知られたくないと拝む相手の卑屈な態度を観ては、それ以上、追求するのは諦めるしかなかった。

その日帰宅した山崎は、弘子の築地署時代の先輩で、今、新宿で民生委員をやっていると言う高木(阿部百合子)という女性を紹介される。

翌日、清風荘の訪ねた山崎は、赤ん坊の名前に太郎というのはどうだろうと、もうすっかり赤ん坊を可愛がりはじめたナオミに対し、都の児童福祉斡旋所に養子を欲しがっている夫婦がおり、戸籍に入れる前の赤ん坊の方が良いと言っていると伝える。

ナオミは、いまだにまだ、大山が戻って来ると思っている様子。

どんなに山崎が、そんな事はあり得ないのだと説得しても、聞く耳を持たなかった。

その夜、山崎の自宅にやって来たきんは、娘から預かったと、布にくるまれた拳銃を持って来る。

昨年の夏、千葉の銀行から500万を奪った赤衛派のリーダー大山のものだと言う。

その驚くべき話を聞いた山崎は、直ちに上司(村山不二夫)に報告し、署内全員を動員した大山逮捕の大掛かりな出動が行われる。

ところが、捕まえた大山は、赤衛派のリーダーでも何でもない事が判明、大山は、始末書ものだと上司から叱責されてしまう。

取調室に出向いた山崎は、のんきにカツ丼を食っている大山の姿を観ると、もう何も言う気はなくなってしまう。

この捕物を特ダネとして、新聞のスペースを空けさせていた並木もがっくり。

こうなったら、ナオミに大山の事を諦めさせるには、大山を死んだ事にするしかないと提案した並木と共に、清風荘を訪れた大山は、大山は大阪で交通事故でなくなったと嘘を教えるが、ナオミはそう動揺するでもなく、あっけらかんと受け止めるのだった。

そのドライな態度にちょっとショックを受けた山崎だったが、ゴミ出しに外に出たナオミが見せた寂しげな様子を知るはずもなかった。

部屋に戻って来たナオミが、先日の養子の話を蒸し返して来たので、要するに、赤ん坊は男をつなぎ止める為の道具に過ぎなかったのかと山崎は激怒する。

その後、並木と共に、おでん屋に向った山崎は悪酔いしてしまう。

並木は、ナオミへの山崎の感情を見抜いており、何故、あの場で結婚を申込まなかったのかとなじるが、山崎は喚いて外に出てると、嘔吐して崩れ落ちるのだった。

高木女子に伴われ、きん、ナオミと赤ん坊を新宿中央公園に連れて来た山崎は、そこで待ち受けていた養父(太宰久男)とその妻(三原有美子)と出会う。

赤ん坊を相手に渡したナオミだったが、いざ、養父たちが去りかけた時、赤ん坊が泣き出したのを観ると、乳が張って痛いから、赤ん坊に乳を飲まさせてくれと言い出す。

情にほだされた山崎は、それを許すが、ベンチに座って赤ん坊に授乳させはじめたナオミの姿を遠目で観ていた彼は、涙を押さえる事が出来なかった。

近くの水飲み場で顔を洗っている間、山崎は、側に置いていた制帽がなくなっている事に気づき、周囲を見回すと、遊んでいた子供の一人が被って走り去って行く姿を見つけ、慌てて追い掛けて行くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

栄養ドリンクのCMソングとして流行語になった「頑張らなくっちゃ」をタイトルにした人情喜劇。

この当時の松竹喜劇の例にもれず、この作品も、笑わせる内容というよりは、むしろ完全にお涙頂戴もの近いものになっている。

見所は、何と言っても、ヒロインを演じているビーバーこと川口まさみの珍しさだろう。

もともと、ラジオのDJトリオとして人気を博したモコ(高橋基子)、ビーバー(川口まさみ)、オリーブ(シリア・ポール)の一人。

男に騙されたとも知らず、赤ん坊を生んでしまった少女の葛藤振りを良く演じている。

フランキーの妹役を演じている倍賞千恵子等は、むしろ、ゲスト出演と言った感じ。

ちりちりパーマの独特のヘヤスタイルで、何ともクズのような若者を演じている石橋連司も印象的。

ヒッピーの生態や新宿歌舞伎町界隈の様子等、当時の風俗が懐かしくも貴重。