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花くらべ狸御殿

1949年、大映京都、木村恵吾脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

狸御殿の城下町「狸夢(リム)の町」にあるクラブ「ポン」のマスター、櫟林のポン(柳家金語楼)は、店の御婦人客たちに御愛想を振りまいていた。

そんな中、鶏の丸焼きを注文した青年に寄り添ったホステスが、その名前を尋ねると、彼は黒太郎(水の江滝子)と名乗る。

他所ものらしい彼にホステスは、狸御殿のお姫さまは、生まれてこの方一度も笑った事がないので、彼女を笑わせた者には御褒美が出ると言うおふれが店の壁にも貼ってあるのだと教える。

その直後、窓から店内の様子をうかがっていた一団が乱入して来て、黒太郎を捕まえようとするので、一瞬早く、黒太郎は姿を消してしまい、その後に風船が一つ残る。

追っ手が帰って行った後、その風船を捕まえたホステス尾花のお露(大美照子)が風船にキスをすると、黒太郎は、驚いたように元の姿に戻る。

その頬には、くっきりキスマークが付いていた。

お露が黒太郎に、匿ってやろうか?ちょっと可愛がってやっても良いと申し出ると、黒太郎は、歌でも踊りでも何でもするので雇って欲しいと頼み込み、その場で踊ってみせるのであった。

翌日、狸御殿の前にある狸夢の町は、道を掃除するもの、飾り付けするもので溢れかえっていた。

中には、狸姿のまま寝ぼけているホステスもいたが、同僚から注意され、人間の姿に変身する。

今日は、女王様が門前道をお通りになる目出たい日なのだと、さっそく店の楽団に入る事になった黒太郎は、ホステスたちから教えられる。

そんな中、無気味な老婆が「どいつもこいつも不細工な女ばかり」と悪態を付きながら通り過ぎて行く。

ホステスが言うには、森の魔女愛々の手下の泥々(デイデイ-常盤操)と言い、自分達より美しい娘を見つけると、獣に姿を変えてしまうのだと言う。

その時、御殿から、女王様が出発するのを知らせる大太鼓の音が響き渡り、その音を嫌った泥々は、ホウキに跨がって逃げ帰ってしまう。

その姿を観た町の者たちは、一斉に「UFOよ!」と騒ぎ立てる。

その頃、森の魔女の家の中では、愛々(京マチ子)が、魔法の鏡に、この世で一番きれいな者は誰かと問いかけ、それは愛々様だと答えられ、満足しながら踊り始めると、魔王の像の前で姿を消すのだった。

その頃、クラブ「ポン」に、マスターのポンが慌てて帰って来て、ホステスたちに、予定が変更になり、女王様がこの店で休憩を取られる事になったので、みんな粗相のないようにと言い付けていた。

そこへ、女王のおぼろ様(喜多川千鶴)はじめ、左大臣(藤井貢)、右大臣(杉狂児)、司法大臣(渡辺篤)などがこぞって夫人を伴って来店する。

それを歓迎する楽団が演奏をはじめ、ギターを弾いていた黒太郎が立ち上がって歌いはじめる。

ホステスの一人が、そんな黒太郎にウインクを投げて来たので、返礼のつもりで、胸に刺してあったバラの花を投げかけると、それは、ちょうど飲みかけていた女王のコーヒーカップの中に落ちてしまい、それを観たおぼろ姫は、急に憤然として席を立って出て行ってしまう。

それを観たポンは、何が女王の機嫌を損ねたのか分からず大慌て。

やがて、法務大臣が、黒太郎に御殿に出頭するよう通達する。

狸御殿にやって来た黒太郎は、ラフなシャツ姿だったので、お召し替えをするように命じられ、ジャケット姿に変身するが、平服ではダメと言うので、袴姿になると、それは古すぎると文句が多い。

結局、白い制服姿に変身して、許可がおりるが、その黒太郎を部屋に案内した侍女も、又、黒太郎の美貌に惚れ、ウィンクを投げて来る始末。

一方、執務室では、左大臣が黒太郎を死刑にするように進言していたが、女王直々がお裁きをすると言う前例のない事態に、法務大臣も驚いていた。

その頃、黒太郎を待っていたおぼろ姫は、なかなか黒太郎が現れないので時間をもてあましていたが、テーブルの上にあった帽子を被ってみると、ちょうど、その黒いアゴ紐の部分が、姫の鼻の下にかかり、ヒゲのようになったので、それを触っている内に、つい姫はおかしくなって吹き出してしまう。

その時、現れた黒太郎は、御褒美には何を頂けますかと、急に言い寄って来る。

生まれてはじめて笑った姫は、国中に出していたおふれの事を思い出し、何でも望み通りのものを取らす、宝石が良いか、金が良いか、国の半分の土地が良いかと尋ねて来るが、そのどれにも首を横に振った黒太郎は、いきなりお姫さまですと言って、おぼろ姫に抱きつくと接吻を交わすのだった。

身を離した黒太郎は、こんな自分にはどんな処刑が待っているのでしょう?死刑?それとも島流し?と聞くが、姫は、お給仕係になる事を命ずるのだった。

姫がはじめて笑ったと言う知らせは町中に流れ、人々は、祝福の祭りを始める。

その頃、森の中の愛々は、いつも通り、鏡に、世界で一番美しい者は誰かと尋ねていたが、鏡が映し出したのは自分ではなく、おぼろ姫の姿だったので、逆上した彼女は、鏡に岩を投げ付けて破壊してしまう。

狸御殿の中でも、初笑い祝賀会が催されていた。

右大臣直々に歌いはじめ、仮装舞踏会の準備が出来たと知らせると、今回の殊勲者として、黒太郎を出席者たちに紹介する。

給仕として、客たちに酒を配っていた黒太郎は、その紹介を受け、にこやかに歌いはじめるのだった。

その歌には、姫も一緒に唱和し、廻りの者たちは、その二人の良いムードを嬉しそうに眺めていた。

一方、自室にいた左大臣は腹心から、あの黒太郎には油断しないようにと忠告を受けていた。

左大臣は、この国を手中におさめようと野心を持っていたのだった。

その後、仮装舞踏会に、無気味な仮面を付けた女が出席する。

森の魔女と思い込んだ女性が、その姿を観て悲鳴をあげるが、すぐさま、仮装である事に気づき謝罪する。

しかし、その仮面の女こそ、城に忍び込んで来た魔女愛々だったのだ。

彼女がみんなの前で踊ると、いきなり、大広間の電気が消えてしまう。

やがて、姫の部屋に近づいた彼女だったが、姫の被る王冠が放つ光によって近づく事が出来なかった。

おぼろ姫が被る王冠には、魔女の力を封印する神通力が備わっていたのだ。

仕方なく、愛々は、秘かな愛人関係にあった左大臣の部屋に忍び込む。

左大臣は、近い内に、姫の王冠を奪い取ってやると約束する。

その頃、町中では、王女が恋をしたらしいと言う号外が、新聞少年によって配られていた。

この城下の突然のゴシップ騒ぎには、城の右大臣や法務大臣も困惑していた。

当の黒太郎は、クラブ「ポン」に突然戻って来た。

左大臣から暇を出されたと言うのだ。

しかし、それを聞いたお露が、恋に身分の上下はないのよ!と憤慨するので、黒太郎も勇気を得て、自分が女王に恋をしているのだと、正直に告打ち明けるのだった。

城のおぼろ姫の方も、あんな給仕風情と恋をするのは身分が違い過ぎ、御先祖に対し申し訳が立たないと説得する左大臣の言葉に反抗していた。

この世の中は皆平等、自由なはずだから、自分は思い通りに行動すると城を出て行こうとするが、左大臣は、そう為さりたいのなら、今すぐ、王冠を捨てなければならないのが、お家の掟だと忠告する。

その言葉にかちんと来たおぼろ姫は、すぐさま王冠を脱ぎ捨て部屋を出ようとするが、その時、左大臣は、王冠を捨てた以上、もう勝手な事は許されないと、姫を追う。

すべて、彼の計略通りになったのだ。

神通力が失われた女王は、突如出現した愛々が放った蜘蛛の糸によって捕えられてしまう。

その夜、ビラ配りの男(灰田勝彦)が表で哀愁漂う歌を歌う中、独り思いに耽っていた黒太郎は、マスターの姿を見るや、胸騒ぎがするので、お城に言って来ると告げて姿を消す。

左大臣と愛々がいちゃついているベッドの下に出現した黒太郎は、二人が姫を薄暗い物置き小屋に閉じ込めていると言う話を盗み聞く。

その鍵は、愛々が預かると言う。

しかし、ベッドの二人も、人の気配を感じ、こっそり、壁に飾ってあった剣を取ると、左大臣がベッドの上から貫くが、一瞬早く、黒太郎は物置き部屋の前に移動していた。

しかし、扉はどうしても開かず、鍵穴から中の様子を覗くと、姫が鎖に繋がれているではないか。

思わず、扉を打ち壊そうと、大きな棒を見つけ持ち上げた黒太郎だったが、そこに駆け付けて来た侍女が、あの扉はどうやっても開ける事は出来ない。姫は、魔女の呪によって口もきけなくなってしまった。鍵を使わず開けるただ一つの方法は、いつもいたずらな恋しかしない森の魔女が、本当の恋をして、神通力が失う事だと教える。

黒太郎は、姫を救う為、魔女の住む森に向う事を決意する。

その頃、森の魔女の家の中では、恋々(レンレン-暁テル子)が歌い踊っていた。

その様子を、窓の外から、黒太郎と、無理矢理一緒に付いて来たポンが覗いていた。

そんな二人に気づいた恋々が外に現れ自己紹介すると、もう一人の魔女喃々(ナムナム-大友千春)も紹介する。

二人だけで住んでいるのかと黒太郎が聞くと、愛々も一緒に住んでいると言う。

その愛々は、物置き部屋の鍵を口にくわえながら、独り魔王像の前で踊っていた。

その踊りに何時の間にか黒太郎も加わり一緒に踊り始める。

一方、一人になったポンは、黒太郎の行方を探し、魔女の家の中をうろついていたが、愛々の寝室を発見、何気なくベッドの上で横たわっていた愛々に近づくと、彼女がにこやかに、彼の首に手を廻して来て接吻するかのように引き寄せたので、すっかり有頂天になったポンは思わず口づけするが、その相手は何時の間にか、狸の置き物に変わっていた。

着物を着替えた黒太郎が歌っていると、その姿に恋した喃々が加わり、さらに恋々も加わり、一緒に歌い踊り始める。

その様子を見ていて、嫉妬心にかられた愛々も加わり、何時しか、黒太郎と三人魔女の踊りが始まる。

その内、黒太郎を独占した形になって踊り続ける愛々だったが、黒太郎の心を読んだのか、相手が本当にほしいものは鍵であり、偽りの恋を仕掛けて来たのだろうと見抜く。

しかし、それでも黒太郎は黙して語らず、白いタキシード姿に変身して、愛々と踊り続けるのだった。

その頃、おぼろ姫が幽閉されていた物置き部屋にやって来たのが左大臣。

実は、その部屋の鍵はもう一つあったのだ。

彼は、女王を鎖から解放してやると、助ける代わりに自分の妻になれと迫って来る。

驚いた姫は、抱きついて来る左大臣を必死に避けようと抵抗する。

思わぬ抵抗を受けた左大臣は、窓から見える満月が、向こうの山の端に沈むまで、良く考えるよう姫に言い残すと、一旦部屋を去って行く。

愛々との踊りを続けていた黒太郎は、相手の口から接吻の要領で鍵を奪い取ると外に逃げ出すが、追って来た愛々の魔力によって炎に囲まれてしまう。

一方、物置き部屋の姫は、刻々と、山の端に月が隠れているのを見つめながら苦悩していた。

炎に焼き殺されそうになっていた黒太郎を助けたのは、喃々だった。

喃々が、魔法で炎を消したのを知った愛々は、おとなしく彼女の前に跪いた喃々をその場で石に変身させてしまう。

そして愛々は、逃げ出そうとした黒太郎に抱きついて組み敷くのだった。

御殿の物置き部屋に再びやって来た左大臣は、再び姫を襲おうと抱きついて来るが、彼女が何時の間にか、短刀を持っているのに気づく。

仕方ないので、左大臣は、強引に姫を捕まえ縛り付けると、床に仕掛けてあった落し穴に落としてしまう。

床下は、溶岩が煮えたぎっていたが、姫を吊した紐は、落し穴の角に擦れて、今にもちぎれそうになっていた。

その頃、黒太郎は、又しても、愛々と踊らされていた。

その踊りに、何時しか恋々も加わり、二人の魔女は、互いに黒太郎にしがみつくと泣き出してしまう。

愛々の口からは、何時しか鍵が落ちていた。

その途端、吊された姫は、思わず「黒太郎、助けて〜!」と叫ぶ。

魔女の魔法が解け、声が元に戻ったのだ。

その姫の叫び声を聞き付けた左大臣は、魔女の呪いが解けた事に気づく。

その魔女の鍵を持って城に出現した黒太郎とポンだったが、その行く手を、今日は、年に一度の花見の宴だと城の家臣どもが防いでしまう。

仕方ないので、黒太郎とポンは侍姿に変身し、家臣たちと戦いはじめる。

ようやく家臣たちをかわし、物置き部屋にやって来た二人は、鍵を開け中に入ると、その中では、先に入り込んでいた左大臣が待伏せをしていた。

その瞬間、おぼろ姫を吊していた紐が、重さに絶えきれず切れてしまうが、一瞬その切れた紐を握ったのは黒太郎だった。

彼は必死に紐を引き上げようとするが、その背後に、槍を持った左大臣が迫っていた。

しかし、その左大臣を斬り付けたのは、ポンであった。

斬られた左大臣が苦しんでいるのを見たポンは、心配ない。斬った刀は竹みつだと教えるが、それを聞いた左大臣は、わしが死ななければ話が終わらないと言い放つ。

その後、おぼろ姫と黒太郎の婚礼が行われる。

実は、黒太郎の正体は、白夜の森の王子様だったのであった。

その婚礼の席、嬉しそうなおぼろ姫は画面に向い、これが、王冠を捨て、幸せになった王女と王子の物語ですと語りかける。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

木村恵吾監督の「狸御殿もの」の一本。

「春爛漫狸祭」で、男役を演じた喜多川千鶴が、今回はお姫様役に転じ、王子役の水の江滝子と接吻をかわす展開となっている。

これまでの「狸御殿もの」が時代劇仕立てだったのに対し、今回は、全編、現代劇仕立てになっているのが珍しい。

アラビアンナイト風と言うか、手塚治虫の「リボンの騎士」の世界そのまま。

基本的には、男装の女優が演ずる主役と、お姫様役の恋物語と言う、完全に「宝塚パターン」になっている。

ただし、映画では、男優が加わっているのが特長。

女優として色々な映画に出演しているターキーさんこと水の江滝子だが、宝塚風に歌って踊る姿を観たのははじめて。

NHKの人気番組だった「ジェスチャー」の赤組キャプテンでも有名だった彼女が、白組キャプテンだった柳家金語楼と共演しているのも楽しい。

現代劇に設定している分、踊り等が伸びやかに繰り広げられている。

ただし、歌は、いかにも古臭い歌謡曲風なのが時代を感じさせる。

「春爛漫〜」では歌わなかった杉狂児や渡辺篤と言った俳優が、珍しく歌を披露しているのも珍しい。

クライマックス、「禿山の一夜」をバックに踊り続ける京マチ子とターキーさんの姿が圧巻。

特撮は、円谷英二が担当しているが、割とシンプルな二重露光等が多く、画像がダブってしまっており、あまり巧くいっているとは思えないシーンが多い。

余談だが、この頃から「UFO」と言う言葉を使っているのが興味深い。

水の江滝子ファンには、必見の作品だろう。