1960年、ジョナサン・スウィフト原作、ジャック・シャー監督作品。
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1699年、その頃、フランスと戦争状態だったイギリスだが、ウォッピングの町はまだ静かなもの。
そんな町中で、エリザベス(ジューン・ソルバーグ)は、プリチャード船長(ノエル・パーシェル)から声をかけられる。
彼女が近々結婚予定である医者のガリバー(カーウィン・マシューズ)に、どうしても今度東インドへ向う船医として船に乗ってもらいたいと言うのだ。
しかし、何ヶ月もガリバーと別れる事になる仕事をエリザベスが承知するはずもない。
その頃のガリバーは、貧しい人を診察ばかりしていたので、金をもらえず貧困に喘いでいた。
その日も、患者である老婆からもらった鶏を追い掛け廻していた彼の診療所に現れたエリザベスは、結婚後二人が住む家の候補地へ行ってみる事にする。
ところが、その家は、酷いあばら家で、ドアを開けようとしただけで壊れてしまうような有り様。
それでも、大家のグリンチ氏に約束の金10ポンドを渡したエリザベスだが、ケチなグリンチ氏は3シリング足りないと文句を言い、こんな酷い家に無駄金を使う事に反対のガリバーと、とにかく、二人の愛の巣を手に入れたいエリザベスは、その場で言い争いをはじめてしまう。
数日後、ガリバーはプリチャード船長の船に乗り込んでいた。
嵐の中で船が大きく揺れる中、なかなか巧くスープが飲めないガリバーを、他の船員たちがからかっている最中、倉庫に密航していたと連れて来られたのは、一日もガリバーと離れたくないエリザベスだった。
しかし、女性を船に乗せる訳には行かないと、ガリバーは甲板に彼女を連れて出ると、カナリア諸島で下船するよう説得する。
しかし、彼女も頑固で抵抗し、いつものように口げんかが始まった所で、船が傾き、ガリバーは嵐の海に放り出されてしまう。
こちらはとある島の海岸。
若きレルドレサル大臣(リー・パターソン)は、恋が叶いそうにもないのでブレフスキューに逃げようとする恋人のグウェリントン(ジョー・マロウ)を追い掛けて来た所で、海から這い出て来た巨人に遭遇する。
その巨人とは漂着したガリバーであり、実は、この島リリパット国の住民たちの方が小さかったのである。
たまたま近くにいたも、砂浜に倒れ込んだガリバーの出現にはたまげてしまう。
すぐに、リリパット国の住民たちが見物に出て来て、ガリバーの身体は、兵隊たちによって、砂浜にがんじがらめに縛り付けられる。
フリムナップ大臣(マーティン・ベンソン)らの後から、ついに王様(バジル・シドニー)自身も謁見しにやって来て、自分達は同じ巨人どうしだなどと言葉をかけるが、その時、にわかに曇って来て、雨が降り出したので、縛られていたガリバーは、口から息を空に向って吹き出し、雲を追い払うと、そのパワーに感心した王は、ガルベット大臣に、ガリバーの捕縛を解くよう命ずるのだった。
いきなり、国賓待遇になったガリバーに、さっそく食事が与えられる事になるが、その食べる量は、牛6頭、羊30頭をぺろりと言う、リリパットの住民の感覚からするととんでもないもの。
ガリバーは、食事の返礼として、巨木を移し替え、防風林代わりにしてやる。
これに感心した国王は、ガリバーを名誉リリパット国民と認める事にする。
その儀式として、ガリバーは、右手を頭の上に置き、左手で右足首を持つと言う、おかしな格好をさせられる。
船の引揚の手伝いをしていたガリバーの姿を見た国王は、あれだけの力があれば、敵の艦隊の20倍の威力にはなると見込み、ガリバーに、国民になる交換条件として、敵であるブレフスキュー国王を殺せと命じる。
その頃、リリパットでは、フリムナップとレルドレサルが時期首相の座を狙っていたが、腹黒いフリムナップが首相になれば、国政が悪化する事は目に見えていた。
レルドレサルは、恋人グウェンドリンの為にも勝つと、親しくなったガリバーに伝えていた。
その首相決定の日、王宮に招かれたガリバーは、王妃からいたく気に入られる。
そこでガリバーは、リリパット国とブレフスキュー国が険悪な状況になっている理由を王から聞かされる。
もともと、ブレフスキュー国王はリリパット国王の従兄弟に当るのだが、リリパットでは、朝食に出るダチョウの卵を、尖った端の方を割って食べる習慣なのに対し、ブレフスキューの連中は、反対側の丸い端を割って食べると言うので言い争いになったのが始まりだと言う。
やがて、首相を決める勝負が始まる。
綱の上に乗った対立候補二人の内、先に落ちた方が負けと言うもの。
その時、フリムナップの手下が、ロープの端を揺すって、不正を働こうとしている所を目撃したガリバーは、息を吹き掛けて、そいつらを飛ばしてしまう。
かくして、レルドレサルが勝利し、首相の座を勝ち取るのだった。
しかし、腹黒いフリムナップは、レルドレサルの恋人グウェリントンは、卵の丸い方を割る危険な女だと王に告げ口をする。
これを聞いた王は、グウェリントンと別れなければ逮捕すると、無茶な要求をレルドレサルに突き付けるのだった。
これを脇で聞いていたガリバーは、卵は真ん中から割って食べれば良いのでは?と進言するが、これは聞き入れられなかった。
結局、この要求に従わなかったレルドレサルは捕まって、翌朝までに処刑される事になるが、ガリバーは、そんなレルドレサルを、幽閉された城の一室から逃してやる。
王は、グウェリントン親子を捕まえろと命ずる。
こんな状況に呆れたガリバーは、海を渡って、ブレフスキュ国の港に近づくと、係留してあった軍艦を全て引いてリリパットに戻って来る。
これに喜んだリリパット国王は、ガリバーに勲章を授与する事にする。
そして、ブレフスキュの国民を皆殺しにしろと命じるが、ガリバーは従わない。
仕方がないので、首相になったフリプナップにガリバーをブレフスキュに送って殺すよう命ずるのだった。
そんな陰謀が、王宮の中で繰り広げられている中、戦勝祝賀会に招かれたので、王宮内で歌っていたガリバーの声に、王妃は惚れ惚れするが、その後、近くにいた藁を積んだ荷車が燃えはじめた為、口に含んだ酒を消化器代わりに吹き付けて消し止めたガリバーだったが、その飛沫が王妃にかかってしまった為、急に彼女を怒らせてしまう事になる。
さすがにガリバーも、こんな国に長居は無用と、さっさと、ボートを奪って島を脱出してしまう。
やがて、ガリバーが乗ったボートは、ブロブディングナグと言う島にたどり着くが、そこに、自分と同じような背丈の男女の人影を見つけたので近づいてみると、それは人形で、その直後、その人形の持主である巨大な少女に見つかってしまう。
ここは、巨人の島だったのである。
その少女によって、城に連れて行かれたガリバーは、ミニチュアの城に入れられるが、そこには何と、船で分かれたエリザベスがいるではないか!
先にこの島に漂着して、この城に連れて来られたらしい。
王は、すっかり、この小さな人間たちを気に入るが、持って来たグラムダルクリッチ(シェリー・アルヴァローニ)と言う少女は、ガリバーは見つけた自分のものだから、いくら王様とは言え売らないと言い出す。
王は、少女に、自分がコレクションしている小さな動物のどれかと交換しようと申し出るが、少女は聞かない。
困った王様は、彼女に城の中で一緒に生活して良いと許す事にする。
再会した恋人同士のガリバーとエリザベスは、ウォッピングとは天と地ほども違う豪華な住まいに喜び、城の中で甘い抱擁を繰り返していたが、ただ一つ困るのは、時々、少女グラムダルクリッチが覗きに来る事。
仕方がないので、その夜中、彼女に王たちを呼んで来させ、この場で正式な結婚式をあげる事にする。
就寝中、叩き起こされた王や王妃(マリー・エリス)らも、この珍事には嬉しそうで、王は巨大な結婚証明書を城に立て掛けるのだった。
翌朝、覗きにやって来たグラムダルクリッチは、城の中にガリバーたちの姿が見えず、結婚証明書に書かれた「ハネムーンに行く」という文字を発見する。
見ると、城が置かれているテーブルから、床に紐が垂れ下がっているではないか。
それを伝って出て行ったらしい。
慌てたグラムダルクリッチは、二人を追い掛けて外に捜しに行く。
その頃、森の中で、久々の外界の空気を吸っていたガリバーとエリザベスだったが、そこに現れたのが、巨大なリス。
ガリバーたちは、そのリスに運ばれ、巣である穴に落とされてしまう。
そこへやって来たのがグラムダルクリッチで、彼女は、穴の中のガリバーたちを見つけると、自らのお下げを穴の中に降ろして、ロープ代わりに登らせて助け出す。
グラムダルクリッチが言うには、勝手に城を抜け出されては、自分も城を追い出されてしまうのだそうだ。
ある日、王と側呪術師のマコバン(チャールズ・ロード・パック)がチェスをしているのを見物していたガリバーが、試合に詳しそうな様子を見て取った王は、ガリバーとの対戦を希望する。
ガリバーは、その申し出を受け入れるが、あっさり試合に勝ってしまったため、王が怒り出したので、それを見ていた王妃から耳打ちされたグラムダルクリッチが駒を持って逃げ出し、その試合は無効と言う事になる。
ところが、その直後、王妃が苦しみ出す。
さっそく呪術師のマコバンが祈祷を始めるが、いっこうに効き目はない。
その王妃の寝室に忍び込んだガリバーは、王妃の苦痛の原因が胃痛と見抜き、アヘンチンキ液を調合して飲ませる。
これで、あっさり、王妃の苦痛は治ってしまうが、それを知ったマコバンは、ガリバーを魔物と断定すると、火あぶりにするよう王に進言する。
マコバンは、魔物かどうかは、ある液体につけると色が変わるので分かると言う。
そのマコバンの実験室に連れて来られたガリバーだが、そこにいたマコバンの娘(ウィブニー・リー)と、ガリバーを助けようと忍び込んで来たグラムダルクリッチが外で喧嘩になる。
ガリバーは、アルカリ溶液に入れられれば青くなり、酸に入れられれば赤くなると言う理屈を知っていたので、機転をきかし青くならないですみ、逆に酸の溶液をマコバンにかけると、彼の髪は赤く染まってしまう。
そんなガリバーに対し、王はブロブディングナグ人こそ世界一賢いと自慢するので、王の対面を考え、一応、その言葉を受け入れることにするが、結局、死刑を言い渡されてしまう。
王のコレクションの鰐と戦う事になったガリバーに、王妃は、盾を投げ渡す。
しかし、盾の力だけでは防戦一方で、ピンチに陥ったガリバーは、テーブルに置かれていた宝石箱の留釘を抜いて、鰐を倒す。
この結果に怒った王は、ガリバーを捕まえようとするが、その寸前、ガリバーとエリザベスを捕まえたグラムダルクリッチが城を逃げ出す。
後を追って来た王は、家来たちに野に火を放たせ、あぶり出そうとする。
野生のオゴジョもガリバーら二人を襲おうとする。
グラムダルクリッチは、ガリバーらを箱に入れると、川に流すのだった。
箱の中の二人は、やがて、とある海岸にたどり着く。
やって来た漁師にウォッピングの方向を訪ねると、すぐ山向こうだと言うではないか。
二人は、ようやくイギリスに戻って来たのだった。
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スウィフトの風刺小説「ガリバー旅行記」の映画化。
いくつかのエピソードの中から、ビジュアル的に分かりやすい小人国と巨人国の二つをメインに描いている。
さすがに複雑な風刺要素は描ききれないので、あくまでも、シンプルなラブロマンスとトリック撮影の面白さに重点を置いた、他愛無い通俗娯楽ファンタジー作品になっている。
合成等はなかなか見事で、小さな人間を表現するには、キャメラが上方から見下ろすアングル、逆に、人間を巨大に見せるには、キャメラを下から煽るという形で撮っており、いかにもそれらしく見える。
ハリーハウゼンも参加しており、劇中で登場する鰐とリスは、モデルアニメ技法で表現してある。
その他の動物は実写使用。
風刺要素は希薄とは言え、下らない原因で戦争を始めようとするリリパット王や、学がないのにプライドだけは高いブロブディングナグ王などの姿には、愚かな施政者を揶揄する、分かりやすい皮肉が投影されている。
子供から大人まで楽しめる、典型的なファミリー映画だと思う。
