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アッと驚く為五郎

1970年、松竹大船、田坂啓+永井素夫脚本、瀬川昌治脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大正12年、ブリキ職人大岩為吉は貧乏の子沢山、すでに、為一郎、為二郎、為三郎、為四郎と言う4人の男の子がいるのに、又、女房のお腹の子供が生まれそうになったので、為五郎と名付ける事にするが、生まれ落ちた瞬間、関東大震災に会ってしまう。

やがて、成長した為五郎は、戦争に駆り出され、川に漬かって板橋を支える役目を仰せつかるが、その彼の面前を落ちて来る水流は、イギリス兵がしていた小便だと分かる。

負傷した為五郎は、ヒロシマの病院に入院するが、その時、すでに両親は、B-29の空襲により行方不明。兄弟たちも全員、中国大陸で戦死していた。

独りぼっちになった為五郎が、その病院で出会ったのが、白衣の天使、折原志乃(梓みちよ)であった。

彼女は、独り夜空を眺めていた為五郎に、蛇つかい座など星座の話等を教えてくれたのだった。

こうして急速に親しくなった二人だったが、裏の薔薇園で、初めての口づけを交わそうとした瞬間、広島に原爆が投下される。

やがて、8月15日の玉音放送が聞こえて来る中、あれ以来、行方知れずになった志乃を必死に捜しまわる為五郎だったが、杳としてその消息はつかめなかった…と、冒頭から浪曲調のナレーションが重なる。

タイトル。

新幹線が走る高度成長期を迎えた日本は、奇蹟の復興といわれ世界有数の経済大国に成長する。

とあるマネキン屋から、マネキンを積み出すトラックの横で、借金のカタに商品全てを持って行こうとする谷村(谷啓)の不人情振りに、店主が文句を言っている。

しかし、その谷村も又、競馬とパチンコに明け暮れ、とうとうサラ金に手をだした為、前に勤めていた会社を首になり、今や、自分自身が、10万円の資本から始め、徹底したドケチ精神で金を溜め続け、今や6億もの資産を持つようになった恵比須金融の社長に、借金のカタとして秘書をやらされるはめになった男であった。

谷村の横に立っていた恵比須金融社長こそ、誰あろう、あの大岩為五郎であった。

その時、近くの工事現場でクレーン車を操っていた運転手が、近くの路上でパンストを直している女性の足に見とれている内に、クレーン操作を誤り、それが元になって、次々にハプニングが連鎖して行った結果、倒れた蕎麦屋の出前持ちの側が谷村の頭上に降り掛かり、トラックの荷台に積んであったマネキンも崩れて全部破損してしまう。

その抗議をしに、工事現場に向った為五郎だったが、足を踏み外し、工事で掘ってあった穴にはまってしまう。

かくして、入院してしまった為五郎だったが、肉体的には何の異常も見つからなかったが、脳波検査の結果、為五郎には、物事に驚く神経が全くない人格である事が発見される。

これは、何か、昔の経験が元で、神経が驚く事に拒絶反応を起こしているのだろうと診断されるが、見舞いにやって来た娘のはるみ(尾崎奈々)は、治療費は全部、建設会社が払ってくれる等と、金の事しか頭にない無神経な父親の事を、同情するどころか、むしろ軽蔑していた。

節約の為、家で飯を食うと平然と言う為五郎と別れ、独り別の道を歩き出したはるみに声をかけて来たのが、隣に住む銀次郎(なべおさみ)、何やら、ヒッピーの格好をしている。

家を抵当に取られたのだと言う。

そんな銀次郎に連れられて、はるみはゴーゴークラブに踊りに行くのだった。

その頃、次の抵当流れである喫茶店「タヒチ島」に出向いた為五郎と谷村だったが、その店主が、利息の50万と元金200万までそっくり返済して来たから驚いてしまう。

その店で出会った尾形竜子(佐藤友美)が、新しい金主らしい。

竜子は、かつてトルコ風呂で「ゴールドフィンガーのお竜」と言われた凄腕で、その腕一本で伸し上がって来た女だった。

次に向った「東京輸送」でも、為五郎たちは、先回りした竜子が、主人に金を渡している現場を目撃してしまう。

その後、馴染みの旅館、濱多家で、芸者の八重桜(九里千春)から十ヶ月分の借金を身体で返してもらっていた為五郎は、彼女の口から、一ヶ月前から竜子が駅前で商売を始めたという噂を聞き、部屋の外で待たせていた谷村に、竜子の身辺調査して、バックにいる金主を探り出すよう命ずる。

恵比須金融の会社に戻った為五郎を待っていたのは、金を借りようと、怪しげな発明品を持ち込んで来た二人の男(大泉滉、高松茂夫)、何でも、自動朝起きセットなる発明品らしかったが、社長の目の前でデモンストレーションしている最中故障してしまう有り様。

しかし、そんなものは、為五郎は全く眼中になかった。

その直後、戻って来た社員牧野(立原博)が、かねてより命じていた志乃に関する調査の結果を為五郎に知らせる。

彼女は、原爆病で、すでに他界していたと言うのだ。

さっそく、一人でその墓参りに出向いた為五郎は、驚いた事に、志乃そっくりな娘と出会う。

その娘も墓参りに来たようであったが、じろじろ自分の顔を見つめる為五郎に怯えたのか、その場から逃げるように去って行く。

その際、落としたバッグの中身がこぼれ、娘は慌てて拾い集めて立ち去ってしまったのだが、為五郎がその場に来てみると、五島プラネタリウムの切符が一枚だけ落ちていた。

その頃、竜子の経営するトルコ風呂に客として潜入していた谷村は、係のトルコ嬢に、竜子に付いての質問をしようと仕掛けていたが、顔にタオルをかけられた間に、こっそり、そのトルコ嬢が竜子とすり変わっていた事に気づかなかった。

竜子は、スチームの音頭をわざと上げて谷村を怯ませると、自分のスポンサーを調べに来たのだろうが、そんなものはないと言って、逆に、帰り際、一万円を谷村にこっそり握らすのだった。

店を出た谷村は、何者かに追われている女性から助けを求められ、いきなりその場でキスをされてしまう。

どうやらその女性、谷村と恋人を装って、追っ手の目をごまかそうとしたのだ。

その作戦は見事に成功し、追って来た男たちは去って行ったが、谷村はすっかりその女性の虜になってしまい、食事でも誘うつもりで指差した方向にホテルがあったので、勘違いして怒った相手からビンタを食らってしまう。

その女性とは、為五郎が志乃の墓の前で出会った、あの志乃そっくりの娘であった。

翌朝、為五郎は、抵当で取り上げ、自らの自宅にしてしまった松の湯の湯舟に独り漬かって、浪花節を唸りながら放屁していた。

それが、毎日の習慣なのだ。

その自宅には、毎日、二宮金次郎の銅像を磨かされているはるみと、何やら、押収品の中から部品を飽き集めている小学生の長男為ノ助と、毎朝、為五郎の背中を流している谷村が同居していた。

松の湯の裏手には、かつて松の湯の女将だった波川ツタ子(ミヤコ蝶々)が今でも住んでおり、毎日のように顔を合わせる為五郎と口げんかが絶えなかった。

銀次郎は、そのツタ子の息子だったのだ。

その日、為五郎は、バラの花束を携えて、渋谷の五島プラネタリウムに出向くが、あの志乃そっくりの娘がアンドロメダ星座の解説をしている最中、ぐっすり熟睡してしまう。

終業後、駅前の歩道橋の上で、彼女の帰りを待っていた為五郎だったが、その姿を見た娘は、又しても逃げ去ってしまう。

その夜、その娘は、ゴーゴークラブで、先日助けてもらった谷村と会い、一緒に踊っていた。

谷村は、一流銀行の頭取秘書をやっていると嘘を付いていたのだ。

その後、自宅アパートに帰宅した娘は、部屋の中で待っていた為五郎を観て驚愕する。

為五郎は、広島からやって来た彼女の叔父と偽って、大家に入れてもらっていたのだった。

娘は怯えるが、そんな様子を観た為五郎は、自分と志乃との出会いを素早く説明しはじめる。

すると、娘はようやく表情をやわらげる。

為五郎の事は母親から良く聞かされていたと言うのだ。

娘は、志乃の一人娘で梨枝(梓みちよ-二役)だったのだ。

梨枝は、母親もずっと為五郎を捜していたが、大阪で暮すようになり結婚したが、その父親とも五年前に別れ、上京して料理屋を始めたが、水が合わず、辞めてしまった後、亡くなったと教える。

梨枝も、母親に似て、夜空の星を見るのが小さな頃から好きだったようだ。

そんな彼女に促され、一緒に物干台に出て夜空を煽ぎ観た為五郎は、長年忘れていた何かを思い出すようなすがすがしい気持ちになっていた。

その日、今度の日曜日の3時に落ち合おうと約束して、梨枝のアパートを出た為五郎は、すっかり上機嫌異なり、普段のドケチ精神も忘れ、珍しく土産持参で帰宅すると、すでに寝ていた谷村に、調査費だと言って金を渡すほど態度が変わっていた。

しかし、長男為ノ助が、そんな父親には全く無関心そうに、独り、部屋の押入の中でロボット製作をしている事を誰も知らなかった。

翌朝、上機嫌でいつものように朝風呂に漬かった為五郎の様子を、ガラス戸の後ろから覗き込んでいるはるみと銀次郎の姿があった。

二人は、何に対しても驚かないと言う父親を驚かしてみせようと、入浴剤の中に、放屁と反応して大量の泡が発生するという薬品を入れていたのだ。

いつものように、為五郎が放屁すると、見る見る湯舟から泡が沸き出し、浴場中泡だらけになる。

巧くいったと浴場に入り、為五郎の姿を探し求めた銀次郎たちだったが、見つけたのは倒れておる谷村の姿だけで、気が付くと、後ろで仁王立ちになった為五郎が、こんな事くらいでは驚かんと、二人を睨み付けていた。

その日は日曜日、為五郎はめかしこんで、梨枝との約束の場所であるデパート屋上の遊園地に出かけて行く。

一方、谷村は梨枝といつものゴーゴークラブで踊りながら、アンドロメダの話に花を咲かせていた。

その帰り道、梨枝は谷村に、自分には東京が合わないので北海道に行ってみたいと洩らす。

あちらに住む友人が、持っているビルの中に店を出しても良いといってくれているのだと言う。

それを聞いた谷村も、そこに宇宙ランドと言うのを作ったらどうかと賛成するのだった。

そんな話に夢中になっていた梨枝は、向いのデパートの屋上の遊具飛行機に乗っている為五郎の姿を発見し、すっかり約束を忘れていた事に気づき、慌てて駆け付けると、終業時間まで飛行機に乗っていた為、すっかり遊具に酔ってしまった為五郎を見つけ、そのままアパートに連れて行くと介抱してやるのだった。

何とか元の状態に戻った為五郎は、持参して来た天体望遠鏡を梨枝にプレゼントする。

そして、北海道に作る宇宙ランドの夢の話を聞かされると、自分も手を貸そうと言い出す。

すっかり上機嫌になった為五郎が、試しに物干台に設置した望遠鏡を覗いてみると、そこに、向いのマンションに住む竜子が、谷村に迫っている様子が見えてしまう。

相手のスポンサーを探る為、体当たりでぶつかれと為五郎が応援していたにもかかわらず、気の弱い谷村は、良いムードになりかけたところで、竜子の部屋から逃げ出してしまう。

実は、竜子の方が、恵比須金融の脱税帳簿を見せろと谷村に迫っていたのだが、望遠鏡を覗いていただけの為五郎にそんな会話が聞こえるはずもなかった。

その後、空腹を覚えた為五郎は、梨枝にカツ丼二人前出前を取って欲しいと言い出し、電話を借りに彼女が部屋を出た時、谷村がアパートの彼女を訪ねて来る。

始めて彼女の部屋に入った谷村は、そこに社長の為五郎がいる事を知り固まってしまう。

そこに戻って来た梨枝に、為五郎が谷村を自分の秘書だと紹介したものだから、谷村が職業を偽っていた事を初めて知った梨枝は愕然となり、二人とも帰ってくれと追い出しすのだった。

梨枝が怒った理由が今一つ分からない為五郎は、谷村を誘って屋台にしけ込み、あの娘に手を出すやつはぶち殺すと息巻くものだから、彼女との付き合いを打ち明けられない谷村は蒼ざめてしまう。

その後帰宅した二人を待ち受けていたのは、脱税容疑で踏み込んでいた警察の一団だった。

その後、警察署内で、二重帳簿の在り処を尋ねる刑事(村上不二夫)の尋問にも、為五郎は一切口を開かない。

谷村の方はと言えば、もう恵比須金融からおさらばしようと夜逃げし、梨枝のアパートの前まで来たところで、偶然、ヤクザ風の男ら数名から拉致されかけていた梨枝の姿を発見、それを止めに入って逆にボコボコにされてしまう。

何とか梨枝を助ける事は出来たが、谷村は、梨枝の部屋で傷の手当てをしてもらいながら、あの人たちはヤクザなので、もう自分の事は忘れてくれと意外な事を切り出されてしまう。

相手がヤクザなら、金さえ出せばどうにでもなると息巻く谷村に対し、梨枝は500万もの金が必要なのだと言う。

考えたあげく谷村は、公衆電話から竜子に電話し、事情を話すと、増沢製薬の手形を持ち出して来いとの指令を受けるのだった。

翌日、自宅に戻って来た為五郎は、自分をチクった犯人捜しを始めるが、一番疑わしそうなツタ子に、極秘の二重帳簿の事等分かるはずもなかった。

犯人は内部にいると気づいた為五郎は、谷村の姿が見えないのと、金庫内にあったはずの増沢薬品の手形が紛失している事を発見する。

金の行方を捜そうと躍起になる余り、この世で武器になるのは金だけだとまで言い放つ為五郎の浅ましい姿に、父さんは機械だと言い放ちビンタされたはるみは、大嫌いと叫んで、そのまま家を飛び出してしまう。

娘に去られた為五郎は呆然となって仏壇の前にしゃがみ込んでしまう。

そんな姿を側で観ていたツタ子は、ざまあみろと冷たい言葉を投げかけるのだった。

その後、梨枝のアパートに行ってみた為五郎は、既に引っ越し、もぬけの殻になった部屋の中に残された、望遠鏡と志乃の写真を見つける。

その写真を愕然と見つめていた為五郎を迎えに来たのは、心配してつけて来たはるみだった。

そんな娘の優しさを喜んだ為五郎は、一緒に星でも観ないかと、望遠鏡を物干台に持ち出し覗いてみるが、そこで見つけたのは、竜子から金を受け取っている牧野の姿だった。

スパイは牧野だったのだ!

その牧野を銀次郎らヒッピー仲間に手伝ってもらって拉致した為五郎は、その牧野から聞き出した情報を元に竜子の部屋に乗り込み、谷村からパクった500万を返せと迫る。

竜子は、自分の背後には陣場組がおり、今日は、取引相手の海道安之助と言う大坂の親分が上京して来たとまでは話すが、それ以上は口を割らない。しかし、その直後かかって来た電話に出たヒッピー娘が、竜子に成り済まして応対し、その海道が今トルコドラゴンで待っている事を聞き出す事に成功する。

さっそく、そのトルコに乗り込んだ銀次郎たちだったが、その直前、肝心の海道の部屋の番号「9」がひっくり返って「6」になっていた事実を知らず、全く別人の前衛芸術家、忠尾横則(財津一郎)を海道と勘違いして竜子のアパートに連れて来てしまうのだった。

その奇抜なヒッピー風の衣装を、海道のものと勘違いして身につけた為五郎は、その格好のまま、陣場組に海道を名乗って乗り込んで行く。

陣場組の親分(藤村有弘)は、海道の身分を確認する為、割り符を要求するが、そんな話は初めて聞いた為五郎は必死に衣装のポケットを探るが、そんなものがあるはずもない。

為五郎がぐずぐずしている間、為五郎が衣装から取り出した煙草を一本もらって吸い出した陣場は、急に様子がおかしくなる。

忠尾の衣装に入っていた煙草状のものは実は麻薬だったのだ。

すっかりラリッてしまい、その場に倒れ込んでしまった親分の異常に気づいた子分たちは、一服盛られたと、全員ドスを抜いて為五郎を取り囲むと気色ばむ。

そこになだれ込んで来たのが、銀次郎たちヒッピー仲間。

人物取り違いに気づき、為五郎を助けに駆け付けて来たのだった。

ヒッピーたちは、ヤクザたちに生卵を投げ付け、陣馬組の家の中は大混乱となる。

そこに現れたのが、本物の海道安之助(金子信雄)。

彼は、谷村からパクった500万の手形を、ヤクザらしく丁半博打で為五郎が勝ったら返そうと提案する。

その壺振り役として現れた女性を観た為五郎は「アッと驚く…」と言いかけるが、「驚くのはまだ早い」と海道から制せられる。

その女性とは梨枝だった。彼女は何と、海道の娘だったのだ。

彼女が振った壺に「丁」と賭けた為五郎、開けてみると「2・6の丁」だった。

勝ったと喜んだ為五郎だったが、海道がさらに連れて来させた人物は、捕まった谷村だった。

梨枝は、自分の事を諦めさせようと、つい500万等というデタラメな金額を谷村に言ってしまったのが間違いだったと謝罪するし、谷村は谷村で、手形を盗みに来て捕まってしまったと謝る。

海道は、谷村は消さねばならないと言う。

そんな谷村の哀れな様子を観ていた為五郎は、社員の責任は社長の責任と手形を海道に渡しかけて、その代わり、二人を自由にしてくれないのなら、もう一暴れするぜと啖呵を切る。

その言葉を聞いた海道は、あんたには負けた、二人への引き出物のつもりで手形を受取ってくれと頭を下げる。

後日、家財道具一切、脱税容疑の差し押えとして札が貼ってある自宅に戻って来た為五郎は、谷村たちの結婚資金は用意してあると、庭に飾ってあったにのみや金次郎の像をたたき壊すと、その中に札束がぎっしり詰まっていた。

その中から、10万円だけ取り出すと、今までも、10万円から始めた商売だったから、また、この10万を元手として成功してみせると言い、残りを谷村と梨枝に渡すのだった。

その気っぷの良さを観ていた銀次郎は、もう自分はヒッピーなんか辞めるので、為五郎の弟子にしてくれと頭を下げ、いつもは犬猿の仲だったツタ子も、その態度を珍しく誉めるのだった。

しかし、万事ハッピーエンドに終わったと思われた為五郎の家族の中、長男、為ノ助だけは、こっそり作っていたロボットを人気のない土手に持って行ってスイッチを入れると、そのロボットは設計通り大爆発を起こすのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

斬新なスタイルのテレビバラエティとして人気を博した「巨泉・前武のゲバゲバ90分」(1969〜1970)の中で、時々現れる奇妙なヒッピー風のキャラクターが叫ぶ「アッと驚く…為五郎〜、何?」という流行フレーズをタイトルにした風刺喜劇。

テレビで、そのフレーズを叫んでいたのが、この映画の主人公になるハナ肇。

テレビの方が、流行を先取りするようなスマートなものだったのに対し、映画の方は、全く逆に、全体的に泥臭い人情喜劇風になっている。

もちろん、当時の風俗だったヒッピーやトルコ風呂、高倉健主演で人気を呼んだ仁侠映画パロディ等もセリフ上は出て来るが、底辺に流れているのは、古臭い人情話。

その古臭さはハナ肇のキャラクターには合っているが、喜劇映画としてはどうにも凡庸と言うしかない。

大体、放屁ネタで笑いを取ろうなんてセンス自体が、当時としてもお粗末で情けない。

時代を作り上げていた当時のテレビバラエティとの、笑いに対する時代感覚の落差を感じさせる出来となっているのが残念。

ヒロイン役となる梓みちよと尾崎奈々も、共に魅力不足なのも辛い。

登場シーンは短いものの、財津一郎の切れたようなハイテンションポーズは、笑い的にはお寒い全体の中で、唯一にやりとさせるシーンかも知れない。