1968年、日活、伊奈洸脚本、森永健次郎監督作品。
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主題歌の「あの時君は若かった」と共にタイトル。
スパイダースの面々は、新幹線で東京に帰って来る。
ミニバスに乗り込み移動中、後ろから、若い女性が乗った車がついて来る。
ミニバスの後部座席で、その女性を発見したマチャアキ(堺正章)とジュン(井上順)は、互いに、自分のファンだろうとか、こっちばかり観ているとか勝手な事を言い合っている。
信号でミニバスと後ろの車が停まった時、その後部から来た車が女性の車に追突して、そのあおりで、スパイダースのライトバンにも玉突き衝突してしまう。
東洋病院にやって来たスパイダースの面々は、特に目立った被害はなかったが、リサイタルを控えた大切な時期だっただけに、診察と脳検査を受ける事にするが、マチャアキとジュンは、担架で運び込まれたあの後ろの車の女性の姿を心配げに見送っていた。
検査の結果、異常なしと言う結果に安心したスパイダースたちは病院を後にする事にするが、マチャアキとジュンは、やはり、あの女性の事が気になり、病室に行ってみる事にする。
その女性がいる301号室には「高村夕子」という名前が書かれていた。
ちょうど出て来た看護婦に、兄弟と偽って、彼女の容態を聞いてみると、ショックで興奮状態にあるだけだと言う。
部屋に入り、夕子(奈美悦子)に面会した二人だったが、ジュンは一人で熱心に話し掛け、マチャアキが会話に加わるのを妨害してしまう。
仕方がないので、マチャアキはいつもの妄想の世界に入ってしまう。
そこでは、外科医になったマチャアキが、ジュンの大脳切除手術していると言うもの。
頭を開いてみると、中から水が飛び出して来て、マチャアキの顔にかかり、ジュンの頭の中には何も入っていなかったと言う落ちであった。
ようやく妄想から覚めたマチャアキは、結局、何も話す機会を得られないまま、ジュンと病室を後にする事になる。
その事をジュンに文句を言うと、シャイで、一人では何も出来ない癖にと嫌味を言われてしまう。
コンサート会場で「あの時君は若かった」を歌うスパイダースの面々。
楽屋に戻り、熱心なファンのヨッちゃん(佐々木梨里)も手伝って夜の部の準備をしている中、マチャアキはジュンがどこかに電話しているのを見つける。
どうやら、東洋病院の高村夕子を呼出しているらしい。
嫉妬心にかられたマチャアキは、又しても、いつもの癖の妄想の世界に入る。
鼓笛隊の格好をしたスパイダースの面々を整列させた指揮官のマッチャアキが、番号!と命ずると、昭ちゃん(田辺昭知)が「ゼロ」、続く大野克夫も「ゼロ」と答えたので、三番目のジュンはつい「セブン」と叫んでしまい、マッチャアキ隊長からお目玉を食らう。
番号を言い直した部下たちに、前進を命じたマッチャアキ隊長は、白馬に乗った女王様(奈美悦子)を迎えるが、その後、命令の変更がないメンバーたちは建物にぶつかったまま動けなくなってしまう。
舞台は変わって戦場のど真ん中、三日三晩、飲まず食わず、不眠不休でこき使われている部下たちはやる気を喪失していた。
ジュン等は、エロマンガを読んでいる始末。
マチャアキ隊長は、そんな部下たちを叱咤激励して、女王陛下の為に突撃しようとするが、気がついてみると、部下たちは全員逃走していなくなっている。
残っているのは、看護婦姿のヨッちゃんだけだった。
ヤケになって、落ちていた銃を掴むと、丘をかけ登って行ったマチャアキだったが、あえなく敵の銃弾に倒れるのだった…。
楽屋で起こされたマチャアキは、夜のステージで「太陽の翼」を歌う。
翌朝、ジュンは、同じ部屋で寝ていたマチャアキのいびきで目覚めてしまうが、時々、夕子の名前を呼んでいるのに気づきからってみる。
ジュンのからかいもあってようやく目覚めたマチャアキは風呂に入るが、浴室の鏡に口紅でハートマークと夕子の名前を書くと、鏡の中に夕子の姿をみて、何時の間にか、鏡にキスをする。
そんな様子をこっそり覗き観たジュンは、部屋を先に出て行く。
そんな事は知らず、風呂から上がって来たマチャアキは、ジュンの姿がいなくなっている事に気づき、すぐに、病院の夕子の元へ行った事に気づく。
歩いて、病院に向ったジュンの後を、タクシーで追い掛けたマチャアキだったが、そのタクシーが途中で煙を吹き出しエンストしてしまう。
さらに、マチャアキが持っていた本物の銃にそっくりな水鉄砲を観た運転手は、強盗と勘違いしてパニックを起こしてしまう。
ようやく、夕子の病室にたどり着いたマチャアキは、すでに楽しそうに話し込んでいるジュンの声を聞く。
遅れて来たマチャアキは、夕子がクラシックをピアノで弾くのが趣味だと、すでに先に聞いていたジュンから自慢げに教えられる。
こいつはピアノが嫌いなんですよと、勝手な事をジュンが夕子に言っているのを聞いたマチャアキは、反論も出来ないまま、怒りの為、又しても妄想の世界に入る。
夕子がピアノを弾き、その傍らで、ジュンがチェロを奏でるコンサート会場。
ジュンが、チャロを弾き出すと、何故か、チェロから煙が出て来て、やがて爆発してしまい、夕子は怒って、帰ってしまう…。
そんな事は知らない現実のジュンは、近々自分達のリサイタルがあるので、観に来て欲しいと夕子に伝えていたが、そんな所に、看護婦が、あの方から今日も花束が届きましたと持って来る。
あの方と言うのは、どうやら、夕子の車に衝突した男の事らしい事が分かり、ジュンとマチャアキはライバル心を燃やすのだった。
ヨッちゃんがウェイトレスをやっているレストランで食事を取っていたジュンとマチャアキだったが、ヨッちゃんが注文されたマカロニグラタンを持って来ても、マチャアキは上の空。
呆れたジュンは、夕子さんをものにしたいのなら、まず俺を何とかしなけりゃダメだよと挑発する。
そんな言葉を聞いてマチャアキは、又、妄想の世界へ。
黒いショールを被った老婆ムッシュ(かまやつひろし)がギターを弾く西部の田舎。
荒くれ者のジュンが、井戸に水を汲みにやって来た娘(奈美悦子)に声をかけると、ライフル銃を持ったガンマン(マチャアキ)が登場する…。
そこで、カウンターに座っていた現実のマチャアキは、夢見心地のまま、持っていた水鉄砲を発射するが、その水が、ちょうど、料理を運んでいたヨッちゃんにかかってしまい、そのはずみで料理をテーブルの客にこぼした事から端を発し、店中は大騒ぎの連鎖反応が始まる。
あげくの果てに、テーブルクロスに火が引火してしまい、マスター(獅子てんや)もボーイ(瀬戸わんや)も大騒ぎ、消防車が駆け付ける大事件に発展してしまう。
この様子を観ていたジュンは、慌ててマチャアキを外に連れ出し逃げるのだった。
その頃、東洋病院を訪れた青年は、乱暴な掃除振りのおばさん(由利徹)に邪魔されながらも、301号室の高村夕子を見舞い、いつものように持って来た花束を渡していた。
その青年こそ、夕子の車に衝突した加害者、脇田健次(川口恒)だった。
何度も見舞いにやって来る彼の誠実さに、何時しか夕子の心も動いていた。
そんな二人の病室に、又しても、あの掃除のおばさんが何度も入って来て、会話の邪魔をしようとするので、夕子は、もらった花束を活けてくれと渡す。
その時、一人で病院にやって来たマチャアキだったが、やっぱり、自分一人で夕子に会う勇気が出ず、入口付近で躊躇していると、二階の洗面所で花を活けようとしていたおばさんが、面倒臭くなり、窓から外に放り始めた花を下で受け取り、独り御機嫌になるのだった。
その頃、高速道路の隙間で「もう一度もう一度」を練習していたジュンは、他のメンバーたちに、レストランでマチャアキがきっかけを作った騒ぎの事を報告していた。
ジュンは、マチャアキの様子のおかしさを、女と春という季節のせいだと分析するが、昭ちゃんは、むしろ、おれたちの方が夢中になるものがなさ過ぎるんだと、マチャアキを弁護する。
それを聞いたジュンも、俺も心の底では燃えているんだと弁解する。
その頃、メンバーが独りいなくなって困っていたちんどん屋(青空はるお、あきお)は、道ばたにしょんぼりしゃがみ込んでいたマチャアキを見つけ、強引に仲間に引きずり込んでしまう。
白塗りのチャップリンの格好をさせられたマチャアキは、意外と、メイクをすると大胆な事ができる事を発見し、率先して、街を練り歩きはじめる。
その音に顔をしかめていたのは、東洋病院で「♪わ〜らべ〜は見たり〜」と、仲良く合唱していた夕子と健次だった。
その後、マチャアキの事をまだ相談していたメンバーたちの元に戻って来たマチャアキは、顔に白塗りの痕を残したままの状態だったが、そんな事には気づかずに「風が泣いている」を歌いはじめるが、何だか、メンバーたちの視線が冷たいのを感じる。
皆冷たいよ、心が燃えてないよと呟いたマチャアキは、又、妄想の世界に入り込み、そこでは、他のメンバーたちが防寒着姿で北極のような所で演奏している隣で、自分と夕子は、火山が噴火する南方の島の住民の格好で踊っているのだった。
現実に戻ったマチャアキが、俺、寂しいんだ!と叫んで、持っていたカーネーションンお花を投げ捨てると、急に思いつめた様子で、近くにあったナイフを手にしたので、慌てた他のメンバーたちがその手を止めようとするが、それを振払ったマチャアキは、「これが食べたいだけだ」と言いながら、レモンを切って、口にするのだった。
翌朝、いつものように目覚めたマチャアキは、ジュンに、夕子さんは明日退院してしまうから、今日中に一緒に病院に行こうと誘うが、ジュンは、ムッシュが開いているサイケデリックデザイン展を観に行くので行かないと言う。
その個展に渋々付いて来たマチャアキだったが、ムッシュの目の前で、夕子さんはこんなものは嫌いだと言いながら、又、妄想の世界に入る。
ボディペインティングの女たちが怪しく踊る場所の近くで、ウエディングドレス姿の夕子と二人、優雅に踊っていたマチャアキだったが、他のメンバーたちが奏でるサイケデリックなメロディーに何時しか乗せられ、独り浮かれはじめる中、夕子は、健次と踊りながらどこかに行ってしまうのだった。
その後、ジュンと二人して病院に出かけたマチャアキだったが、301号室からちょうど出て来た掃除のおばさんから、あんな表六玉なんかに負けるんじゃないよと、ハッパをかけられる。
しかし、勇んで病室には行った二人だったが、どうしてもライバルの健次を目の前にしては、さすがのジュンも丁寧に接してしまうのだった。
健次は、父親が経営する建設会社で設計技師をやっているそうで、去年大学を出たばかりなのだと言う。
大学時代はサッカーをやっていたと聞いたマチャアキは、又、勝手に妄想の世界に耽りはじめる。
サッカーの試合、敵チームの健次に翻弄されていたスパイダースチームだったが、ハーフタイムの間、グラウンドの横に置いてあるボールの一つに「爆弾」と書かれたものがあるのを発見したマチャアキは、それを持って来ると、他のメンバーたちにそっと扱うように言って、試合は再会する。
しかし、メンバーたちがあちこちに蹴っている内に、ラインの外に飛び出たそのボールは、たくさん置いてあった他のボールと混ざってしまい、それを探しに行ったマチャアキは、どれが爆弾だか分からなくなり、ままよと蹴ったボールが大当りで、大爆発、マチャアキは黒焦げになるのだった…。
顔を拭く真似をしながら現実に戻ったマチャアキは、もう、ジュンが帰りかけているのに気づく。
帰り道、今日も満足な会話も出来なかった事を悔やみながらも、健次の事を考えるとファイトが湧いて来ると一人張り切るマチャアキの様子を、ジュンは呆れたように観察していた。
そんなマチャアキの様子を、ジュンは、その内、何かやらかしてしまうと思うと、テレビ局でリハーサル中だった他のメンバーたちに報告するが、そこへ遅れてやって来たマチャアキは、「夕陽が泣いている」のイントロが始まったのに、いきなり「♪や〜ると思えば、どこま〜で〜やるさ〜」と「人生劇場」を歌いはじめたので、ディレクターから注意されてしまう。
その後、レストランに集まったメンバーたちは、マチャアキがトイレに行った間に、確かにこのままでは又問題が起きそうだから、マチャアキに彼女の事を諦めさせる為にはどうすれば良いか相談を始める。
夕子の前で恥をかかせれば諦めるだろうというジュンの提案を具体化する為に、興奮材でも飲ませれば良いのではないかと言う事になり、かっぺちゃん(加藤充)が何か適当な薬を買って来る事で話がまとまる。
ちょうどそこに帰って来たマチャアキは、ギターを手にすると、夕子を讃える即興フラメンコ風のラブソングを歌いはじめ、他のメンバーたちを呆れさせるのだった。
かっぺちゃんが薬を買って戻って来た中、ジュンは、やって来たマチャアキに、今日、自分は夕子さんにプロポーズしようと思っていたが、お前一人で会いに来て欲しいと言って来たと嘘を言う。
すっかり、そのジュンの言葉に舞い上がったマチャアキは、他のメンバーたちに勧められるまま、精神安定剤だと言われ、かっぺちゃんが買って来た巨大なアンプル剤を二本も飲んでしまう。
すると、やにわに興奮状態に陥ったマチャアキは「健次なんかくそくらえだ!」と叫ぶと、そのまま病院まで駆けて行こうとする、
そのあまりの異常な興奮振りに戸惑った昭ちゃんが、何を買って来たんだとかっぺちゃんに聞くと、馬用の興奮剤だと言う。
もはや、さっきの話は嘘だったと全員が謝っても、マチャアキの耳に届いている様子はなかった。
走り去ったマチャアキを追い掛けはじめたメンバーたちの一団に、何時しか、ファンたちも一緒に加わる。
途中、ボクシングの大川ジムに飛び込んだマチャアキは、リング上にあがると、スパーリング中だった二人を殴りつけ逃走、工事中の信号に登ると、勝手に配線をいじりだしたため、信号がクルクル変わり、混乱した車が衝突する始末。
やがて、とある倉庫のような場所に逃げ込み、中でゲバ学生のような格好になったマチャアキに対し、他のメンバーたちはホースの水をかけて応戦するが、何時の間にか、そのホースを逆に奪われ、逃げまどう事になる。
さらに、火薬庫から持ち出したダイナマイトの束を、近くにあった七輪の上に置いてしまったから、大爆発。
当のマチャアキは、一瞬早く塀を乗り越えそのまま病院へ。
ちょうど、その場にいた掃除のおばさんも加わり、追い付いたメンバーたちと、何とかマチャアキを押さえ込もうと必死だったが、そんな彼らの騒ぎを他所に、玄関口では、健次の運転するスポーツカーに乗って退院して行く夕子の姿があった。
もう直接、夕子に言ってもらうしかないと判断したメンバーたちは、後日、彼女の自宅を訪れると、代表して昭ちゃんが、庭で歌を歌っていた夕子に面会し、事情を説明すると、きっぱりマチャアキに諦めさせてくれと頼むのだった。
マチャアキの片思いを知り困惑する夕子だったが、実は最近、婚約した事実を昭ちゃんに打ち明け、明日から別荘に行く事になるので、メンバー全員それに参加してくれれば、自分の口からマチャアキに話すと答える。
翌日、何故、メンバー全員で夕子の別荘に行くのか疑問に感じているマチャアキだったが、別荘に到着し、夕子の友達の女の子たちも交え、全員でダンスパーティが始まると、すっかり、その場の雰囲気に溶け込んでしまう。
やがて、夕子から、話があるので湖まで一人で来て欲しいと告げられたマチャアキは舞い上がるが、やはり、一人で行こうとすると勇気が出ない。
その時閃いたのが、何時か、白塗りのちんどん屋をやった時、上がらなかった事。
さっそく、夕子の化粧台でこっそり顔を白く塗ると、そのまま夕子の待つ湖の畔に向う。
その様子を、他のメンバーたちは、桜の木に登って、望遠鏡で観察していた。
巧く行った場合は、夕子がハンカチで合図をするという約束だったからだ。
すっかりロマンチックな気分になっていたマチャアキは、途中で、「種蒔け、種蒔け」と呟くと、草の中に一本のチューリップが花開く。
それを持って、夕子と出会ったマチャアキだったが、夕子は、私はあなたの事が好きだけど、好きと恋するのは違うと前置きした上で、自分には恋した人がおり、その人と婚約したのだと打ち明ける。
それを聞いたマチャアキは、その人物が健次である事に気づき、静かに涙を流しはじめる。
そうした様子を遠目で観察していたジュンたちは、なかなかハンカチの合図がないので、やきもきしていたが、やがて、夕子がハンカチを振る姿を確認する。
涙でぐちゃぐちゃになった白塗り顔のまま、とぼとぼと別荘の方に戻りはじめたマチャアキは、失恋した事をファンの前で告白したら笑われるだろうが、そうした気持ちは計算できない事であり、大切な事なんだと自らに言い聞かせるように呟きながら、やがて、夕焼け〜…と、「夕陽が泣いている」を口ずさみはじめる。
何時しか、スパイダースは、コンサート会場で「夕陽が泣いている」を演奏していた。
その後、夕子と健次の結婚式に招かれたスパイダースの面々。
心配するジュンに対し、マチャアキは、もうすっかり吹っ切れたと口では言っていたが、心は又、妄想の世界に戻っていた。
突然、結婚式上に乱入して来た女(楠トシエ)が、その新郎の方は、私と二年間も同棲して来た男で、これは重婚だと騒ぎはじめたのだ。
その言葉に同調するように立ち上がったマチャアキは、結婚なんかは馴れ合いだ!と叫びだし、女は、ウエディングケーキに顔を突っ込んでしまうは、その腹いせに女が投げ付けたケーキはマチャアキの顔に命中するはで、もう結婚披露宴はハチャメチャの大騒ぎになって行く。
その夢が覚めたマチャアキは、これが最後の空想だとジュンに伝え、空想の中の夕子さんはいつも俺のものだと呟く。
その後、披露宴で「あの時君は若かった」を披露するスパイダース。
しかし、その後も、移動中のミニバスの後部席に座ったジュンとマチャアキは、前と同じように、後ろから付いて来る車に乗ったサングラス姿の女性にあれこれ合図を送っていた。
やがて、ミニバスを追い抜いて行ったその車の女性から、渡された雑誌を見た昭ちゃんは、そこに「後ろの二人、精神病院に見てもらったら」と走り書きがされているのに気づくと、それに上書きするようにマジックで文字を書いて、後ろへ廻す。
それを受取ったジュンとマチャアキは、雑誌に書かれた「くよくよするな、それが男の人生だ!」と言う昭ちゃんの文字を見て微笑むのだった。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
人気グループ・サウンズだったザ・スパイダースを主役に据えたシリーズ3作目。
今回の特長は、マチャアキを、恋多き割には奥手で、一人では満足に女性と話す事も出来ないシャイな性格で、しかも、いつも妄想に耽るおかしな癖があると言う、独特のキャラクターにしている事。
その妄想の世界で、色々なスパイダースの面々の寸劇を見る事ができる仕掛けになっている。
ただし、妄想世界に笑える要素は少なく、あくまでもイメージの飛躍を楽しむ程度だろうか。
作品としては、全体的にアイデアの練り方が中途半端な感じで、今一つ弾けきれず、低調な印象を受ける。
クライマックスのマチャアキの暴走劇も、獅子てんや瀬戸わんや、青空はるおあきお、楠トシエ、由利徹ら賑やかなゲスト陣も、熱演の割には今一つ笑いに繋がっていないのが惜しまれる。
むしろ、クライマックスでのマチャアキのちょっとリリカルな芝居の方が印象的。
白塗りのメイクが涙で汚れるイメージは、ピエロの悲劇を象徴しているのだろう。
奈美悦子に、ヒロイン役としての魅力が足りないのも、盛り上がらない原因だろう。
劇中のセリフから、この時のマチャアキが21才と言う、他のメンバーとはかけ離れた若さだった事が分かるのが興味深かった。
その一番若いマチャアキに、笑いや芝居に関して、何もかも頼ってしまっている感じが辛い。
それでも、若きスパイダースたちのお馴染みのナンバーを、しっかり見聞きできるだけでも有難い作品ではある。
今回もタイアップなのか、ベアー時計バンドというのを、メンバーたちが全員、腕にはめているのがおかしい。