TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

ザ・スパイダースの大進撃

1968年、日活、伊奈洸+倉本聡脚本、中平康監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

何者かが、ダイヤをタンバリンの一部にはめ込むと、その丸いダイヤが赤く光る夕日にオーバーラップする。

その夕日をバックに日本に向う旅客機の中には、アメリカ遠征を終えたスパイダースの一行が乗り込んでいた。

マチャアキ(堺正章)は、海外で買ったタンバリンの皮の部分を切っていた。

その様子をジッと後部座席から見つめているエキゾチックな顔だちの女(真理アンヌ)がいたが、マチャアキの隣に座っていたジュン(井上順)が目ざとく、その美人を発見して、マチャアキに教えていた。

実は、ジュンとマチャアキは、共に、事務所のマネージャー緒方(波多野憲)の妹ゆり子(和泉雅子)を互いに好きだったのだが、抜け駆けをしないように協定を結びあう。

リーダーのショウちゃん(田辺昭知)は、新しい曲を書いた譜面を入れたアタッシュケースを持っていたが、偶然にも、席が隣り合った中年男も同じアタッシュケースを持っていた。

羽田に降り立ったスパイダースは、待ち構えていた大勢の女性ファンに囲まれ、もみくちゃになりながら、所属事務所「スパイ・ダクション」のマイクロバスに乗り込もうとするが、その際、迎えに来ていたゆり子はマチャアキから預かっていたタンバリンを、群集の中の誰かが引っ張って取ろうとしているのを必死で防いでいた。

一方、女の子たちに押され、思わず、持っていたアタッシュケースを落としたショウちゃんと中年男(植村謙二郎)は、互いのケースを間違って持ってしまった事にどちらも気づかなかった。

マイクロバスに乗り込む、スパイダースの様子を、空港ビルの入口付近で監視している男女がいた。

女性は、飛行機の中に乗っていた謎の美女、そしてその相棒のような男(草薙幸二郎)は、テトラパックの牛乳を飲んでいた。

タクシーに乗り、走り出してから、アタッシュケースの中身を確認しようとした中年男は、中身が違っている事に気づき、慌てて、空港に引き換えさせようとしていたが、その横を、スパイダースの面々を乗せたマイクロバスが追い抜いて行くのを見逃さなかった。

事務所に到着したスパイダースのジュンはアメリカ土産をゆり子に渡すが、マチャアキは、それが抜け駆けのようで面白くない。

そんな事務所に電話がかかって来て、ムッシュ(かまやつひろし)が取るが、相手は無言のようなのでそのまま切ってしまう。

しかし、すぐに又、電話がかかって来て、それに出ると今度もやっぱり無言だった。

スパイダースがすぐさま向ったステージでは、すでにビレッジシンガーズが「好きだから」を歌っていた。

それを観ている客席には、孫(親桜子)に付いて来たお婆さん(堺駿二)の姿もあった。

その頃、楽屋では、リードボーカルのジュンが、自分のタンバリンがないと探していたが、首輪のように自分のタンバリンを掛けていたマチャアキは、ざまあみろとでも言いたげな顔。

その頃、謎の美女の相棒は、楽屋から奪って来たジュンのタンバリンを、宝石屋に鑑定させていたが、全部模造品だと分かり悔しがっていた。

すぐさま、誰かに電話し、今夜中に何とかしろと指令を出す。

その頃、ステージに上がったスパイダースたちは「暗闇にバラを捨てよう」を歌っていた。

観客の婆さんは、「全員、床屋に行く金がないのかね?」とか「若いのに、中気の気がある」とか「親の顔が観てみたいよ」と、さっぱり理解できない音楽に平行していた。

一方、ステージ上のジュンとマチャアキは、その婆さんの近くに座っているあの旅客機であった謎の美女を発見して、どちらのファンだろうかと喜んでいた。

同時刻、楽屋で一人留守番をしていたバンドボーイ(原田正男)は、何者かに殴られ気絶する。

侵入者は、誰もいない楽屋を物色しはじめる。

観客席にいた謎の美女は、演奏中にもかかわらず席を立つ。

その後、演奏が終わり、楽屋に戻って来たスパイダース、緒方兄妹が、気絶しているバンドボーイと荒された部屋の中の様子に仰天していた。

しかし、何も盗まれたものはなかった。

表の車で待っていた相棒の元に戻って来た謎の美女は、誰か自分達以外の者が楽屋荒らししていると報告していた。

相棒は、今夜中に手に入れなければ…と焦った様子を見せる。

その夜、宿舎の同じ部屋に泊まっていたジュンは、相棒のマチャアキがシャワーを浴びに言ったので、先に眠る事にする。

その時、宿舎の部屋の鍵を開け、何者かが侵入して来る。

その侵入者は、眠っていたジュンの口にガムテープを張り付けると、目覚めたジュンに銃を向けて来る。

その時、ちょうど浴室から出て来たマチャアキは、偶然にも、ドアの影に隠れて待ち受けていた侵入者の攻撃をかわし、ジュンと一緒に侵入者と揉み合っている内に、逃げ出した相手が持っていた拳銃を奪い取ってしまう。

もちろん、その銃は玩具だと思っていたマチャアキは、ダーツの的目指して銃を発射してみると、本物の銃弾を発射したので腰を抜かしてしまう。


慌てた二人は、別の部屋で寝ていたリーダーに電話を掛け、賊に襲われたと報告するが、寝ぼけていたリーダーは信用せずいいかげんにあしらっていたが、その時、その部屋に侵入してきた賊に、頭を殴られ気絶してしまう。

賊は、ショウちゃんの部屋も物色しはじめる。

その後、電話の応答が途中で切れた事に不安を覚え、他のメンバーやゆり子と一緒に、リーダーの部屋を訪れたジュンとマチャアキたちは、返事がないのでドアを破って入り込み、倒れていたリーダーを発見する。

翌日、連絡を受けやって来た刑事たちが、ジュンがタンバリンを盗まれた事に端を発し、その後賊が侵入して拳銃を残して行った今回の事件を、極秘裏に調査しはじめる事にする。

メンバーたちの安全を考え、その日から当分、メンバー全員がホテルの同じ部屋に集まって泊まる事になる。

そうした話し合いが行われている間も、事務所の電話は何回もかかって来ていた。

東京タワーの展望台では、中年男が、頬に傷のある男に、邪魔者は消してもらいたいと依頼していた。

一方、酒を飲みながら、ドラムの男も襲われたと不審がる謎の美女の横で、ジョッキ一杯の牛乳を飲んでいた相棒は、別の男を差し向けたと報告していた。

その夜、一部屋に押し込められた形のスパイダースの面々は、

その内、ホテル内のバーくらいなら行っても構わないだろうと言う事になり、向ったメンバーたちだったが、そこのカウンターに座っている、あの謎の美女に再会する事になる。

その美女からの差し入れと言うブランデーを持って来たウェイターが、マチャアキの首にかかっていたタンバリンをそれとなく取ろうとするが、今回も、マチャアキはしっかりガード、ウエィターは美女の方に、ダメだという風に目配せをしてみせる。

スパイダースのテーブルに近づいて来たその美女は、さり気なくアチャアキのタンバリンに興味を示すような言葉を掛けて来るが、マチャアキはそんな事には気づかず、正直に自分達は今狙われているんだと、冗談のようにしゃべってしまう。

その直後、バーに押し寄せて来たファンの女の子たちともみ合いの大騒動になる。

同じ頃、メンバーがいなくなった部屋に侵入して来たボーイがいたが、先に侵入して隠れていた美女の相棒に首を締められてしまう。

その後、美女の部屋に戻って来た相棒は、別の侵入者があったので消して来た報告する。

部屋に戻って来たスパイダースのメンバーたちは、テレビで歌っているビレッジシンガーズの様子を観ていたが、閉じ込められている事に嫌気がさしたジュンが、広い所で思いきり広い場所で歌いたいと想像していた。

国立競技場の真ん中、国会議事堂のてっぺん、ビルの屋上と、次々に想像は膨らんで行く。

みんなが想像の中で歌を歌い終わった後、トイレに入ったマチャアキは、そこの便器に座らされていたボーイの死体を発見し大騒ぎになる。

いよいよ殺人事件に発展し、駆け付けて来た刑事たちは、賊たちの目的が分からないままなので、今後の相手の出方を待つしかないと、緒方らと話し合っていた。

翌朝、スパイダースは講演先の鹿児島に向う日だった。

リーダーは、ゆり子に新曲の譜面の入ったアタッシュケースの運搬を依頼する。

その直後、持って行くアンプの確認をしていたバンドボーイが、アンプの中に入っていた男の死体を発見する。

そんなこんなで、飛行機に乗り込んだマチャアキ、ジュンたちの顔色は冴えなかった。

ようやく、鹿児島空港に到着したメンバーたちは、持って来たアンプに、又、死体が入っていないか確認するが、死体どころか、アンプの中身も何も入っていなかった。

興味深そうに眺めていたスチュワーデス(渡辺智子)も、これにはあきれ顔で去って行く。

オープンカーに乗って全員移動していたメンバーたちは、後ろから付いて来ている車に気づき、全員緊張する。

さらに、前方からは蛇行運転して迫って来るトラックがあり、危うく衝突しかけるが、メンバーたちの車は横にあったクロブタの飼育場に突っ込み、迫って来たトラックと、後ろから付いて来た車は正面衝突して炎上するのを、ブタに囲まれながら唖然として見つめるメンバーたち。

さらに驚く事に、同時に桜島まで噴火してしまう。

先行していたが、心配してメンバーたちの元に戻って来たゆり子たちは、あのトラックはただの酔っ払い運転だったと、メンバーたちを安心させる。

クロブタの一匹がオープンカーを気に入ったらしく、車から出様としないので、それを一緒に乗せたまま、ようやく指宿観光ホテルに到着したメンバーたち。

ちょうどホテル内では、大島紬の展示会をやっており、それに興味を持って見始めたゆり子は、同じく場内にいたあの謎の美女と出くわしてしまうが、初対面だったので気づかない。

その後、つむぎが欲しいと、ゆり子からおねだりされたマチャアキとジュンは、財布の中身を気にしながらも、互いに張り合って、紬会場に入ろうか牽制しあう。

その後、砂風呂に入っていたジュンとマチャアキだったが、ムッシュが、女子高生の団体が裸でやって来たのでヤバいと言いに来たので、内風呂に移動する事にする。

しかし、そこでマチャアキは又しても、岩陰から伸びて来た何者かによって、首に掛けたままだったタンバリンを引っ張られそうになる。

怖くなって、早々に風呂から上がり、メンバーたちの元に戻って来て騒ぎはじめる二人だったが、リーダーと緒方たちは、鹿児島に因んで、こちらの方言で歌を歌えないかと相談していたので、全く二人の言葉を聞いていなかった。

そのアイデアに乗ったゆり子は、いっその事、大島紬を全員が着て歌ったらどうかと言い出す。

結局、ジュンたちは全員、鹿児島弁で「何となく何となく」を歌うイメージを想像するが、呆れた観客がどんどん帰ってしまうので、そのアイデアはパーになってしまう。

いよいよショーが始まりそうなので、新曲の楽譜を見ようと、ゆり子から渡されたアタッシュケースを開けてみたリーダーは、中身が全く違うので驚く。

仕方なく、いつも通りの曲目でショーを始めるスパイダースだったが、客席には、あの中年男も、謎の美女も来ていた。

演奏が始まると、いつの間にか、中年男の姿が先に消えていた。

ステージ上には、楽屋から抜け出て来たクロブタが侵入して来てしまい、メンバーたちは大騒ぎ。

次の場所への移動中、バスの中で、緒方とリーダーは、賊が狙っているのは、間違って持って来たアタッシュケースを狙っているのではないかと相談していた。

間もなく、霧島山上ホテルに到着。

庭先に集まったメンバーたちは、マチャアキのタンバリンと、リーダーが間違って持って来たアタッシュケースが狙われているらしいので、いっその事、ここに置いていかないかとか、警察に渡してしまおうかと、善後策を話し合う事にする。

しかし、相手がやっている事はカッコ良くないよと言うマチャアキをはじめ、勝手に狙って来るのは気に喰わないと、メンバーたちの意見は一致していた。

その頃、独り部屋で仮眠を取っていたゆり子の部屋に、銃を持った賊が侵入していた。

気配に目覚めたゆり子は、侵入者の姿を見て、気を失ってしまう。

その後、彼女の部屋にやって来た兄の緒方は、ノックをしても返事がないので、他のメンバーらと一緒に中に入って、異変を知る。

気絶していたゆり子はすぐに目を覚ますが、ゆり子を襲うなんて許せないと、全員怒りを露にする。

その頃、侵入者を始末して来たと報告する相棒に対し、謎の美女は、自分が近づいてみると決意するのだった。

磯シーパレスでくつろいでいたメンバーたち、ひょっとすると、このタンバリンに付いている宝石が本物なんじゃないかと推理するマチャアキだったが、そこへ、あの謎の美女が近づいて来て、マチャアキと二人きりで話がしたいと言い出す。

他のメンバーたちが席を外し、美女と二人きりになって舞い上がるマチャアキに対し、ここでは落ち着かないので、私の部屋へ来ないかと、美女は誘って来る。

すっかりその気になったマチャアキは、すぐさま、教えられた501号室に向い、部屋をノックしようと部屋の前で張り切っていたが、偶然そこを通ったゆり子に見つかり、部屋を間違っていると、メンバーたちが待つ505号室に連れて帰られてしまう。

結局、501号室で、ネグリジェ姿になり、ベッドの上で待ち構えていた美女は待ちぼうけを食わされる事に。

メンバーたちは何事もなく東京に舞い戻って来る事になる。

その日から、又、いつも通りの忙しい毎日が始まり、そうした彼らの活躍はテレビで放映されていたが、それを見ていたのが、あの中年男。「誰かが持っている」と呟くのだった。

そうした中、緒方と刑事たちは、明後日の「赤白歌合戦」出場を控えているスパイダースの事を考え、明日の早朝にケリをつけようと計画を練っていた。

翌朝、高速道路をひた走る一台のオープンカー。

運転しているのはマチャアキだったが、後部席には、ジュンが隠れて横たわっていた。

その後方には、同じように、リーダーが後部座席に隠れ、ムッシュが運転する車が付いて来ていた。

そうした作戦を知らず、謎の美女と相棒の車、さらには、中年男とその仲間たちを乗せた車が、マチャアキたちのオープンカーを追跡していた。

途中の料金所で、それら尾行者たちの様子を確認したのは、隠れていたゆり子と刑事たちだった。

やがて、人気のない場所に車を停めたマチャアキの後頭部を、付けて来た車の中から、謎の美女の相棒が、狙撃銃で狙い発砲する。

弾は、見事に運転者の後頭部に命中し倒れたので、近づいて様子を見に来た相棒は、命中したと思っていた人物が、いつの間にかマネキンにすり変わっていた事に気づく。

実は、マチャあきとジュンは、狙撃者が近づいて来る間に、こっそり車から外へ抜け出していたのだった。

そして、近づいて来て戸惑う、相棒とその仲間たちと、待ち伏せていたスパイダースたちの戦いが始まる。

その騒ぎを見て、美女は一人で逃げ出そうとするが、遅れてやって来たムッシュの車とぶつかりそうになったので、衝突を避けようとハンドルを切り損ね、工場の壁に激突して、運転していた美女は死亡してしまう。

その後、騒ぎを知らずに接近して来た、中年男たちの車は、やって来たパトカー数台に包囲され、あえなく御用となってしまう。

翌日、赤白歌合戦に出場し、元気一杯に歌い踊るスパイダースの姿があった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ブルー・コメッツと共に、GS(グループ・サウンズ)ブームの先駆けとなった人気グループ、ザ・スパイダースを主役にした音楽映画。

いまだに、現役として芸能界で活躍する、堺正章、井上順、ムッシュ・カマヤツ(かまやつひろし)、作曲家となっている大野克夫らが在籍していたグループで、その音楽的レベルの高さと、マチャアキを始めとする、芸達者振りは有名。

着想自体は、ビートルズの「HELP!4人はアイドル」(1965)の完全なパクリみたいなもので、ストーリーに特別凝った展開はないのだが、マチャアキ、ジュンコンビの軽妙なトークなどもあり、ハチャメチャながら、肩の凝らない楽しい音楽映画に仕上がっている。

ヒロイン役が和泉雅子で、スパイダースを追い掛ける謎の女性が真理アンヌ。

真理アンヌが登場するシーンでは、必ずインド風の音楽が流れる。(そう言えば、「ウルトラマン」でも真理アンヌは、科学特捜隊インド支部パティ隊員だったっけ…)

その真理アンヌの相棒を演じている草薙幸二郎は、 牛乳好きというキャラらしく、いつもテトラパック(特定の世代の人しか知らないはず)の牛乳を飲んでいるのが懐かしい。

ムッシュ・カマヤツ(かまやつひろし)と、その後、田辺エージェンシーの社長となったドラマーでリーダーの田辺昭知は、この頃から、どう観てもおじさん。

ムッシュとマチャアキとは、7つくらい年が違うはず。

逆に言えば、この頃のマッチャアキは、ひどく子供っぽく見える。

マチャアキの実父である堺駿二も、ちゃんと親ばかサービスで出ていて「親の顔が見てみたい」など、楽屋落ち的ギャグをしゃべっている。

ギャグとして、桜島が噴火する特撮シーンあり。

「北の国から」の倉本聡の脚本だと言うのも、今となっては意外に感じる。

「亜麻色の髪の乙女」で知られるビレッジシンガースも登場している所にも注目したい。