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好色源平絵巻

1977年、東映、深尾道典脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

「金王丸、お迎えに参上!」と、渋谷金王丸(鳥巣哲生)が、屋敷の中にいる源義朝(唐十郎)に声をかける。

「平家一族を平らげねばなりません、殿!」と再度声を掛けても返事がないので、屋敷に上がり込むと、何やら、御簾の向こう側から、激しい息遣いが聞こえて来るので、ハッと立ち止まる金王丸。

出陣を前に、常盤御前(八並英子)を、義朝が抱いている最中だったのだ.

義朝は、激しく常盤御前を責めながら、お前はまだ清盛の事を好きなのかと問いつめていた。

それに対し、常盤御前は、自分はあなたの子を、今若丸(中江一郎)、乙若丸(林田賢)、牛若丸と、三人も子供を生んだ女なのですから、そんな事があるはずがないと言い返すが、昔、六条院に仕えていた頃、手紙をもらった事があるだろうと、しつこく食い下がって来る。

常盤御前は、若い頃、自分を捜しまわっていた清盛(菅貫太郎)のすぐ近くで、若かりし頃の義朝に抱かれていた事を思い出していた。

さすがに、待ちかねた金王丸が、部屋の外から「殿、御出陣の刻が差し迫っております」と声をかけると、義朝は「今、参るぞ!」と言いながら、常盤御前を抱き締めるのだった。

玄関口で、まだ乳飲み子の牛若丸を抱いて、義朝は、出陣して行くが、保元の乱、平治の乱で、平清盛は世を掌握してしまう。

清盛は、渡辺五景綱(入江慎也)に頼朝、義朝親子の探索を命ずるのだった。

常盤御前が留守を守っていた屋敷に、傷付いた金王丸が独り帰って来て、殿は東北目指して逃げ延びられたので、御前には、いかなる事があっても、知るべを頼って生き延びよとの伝言を伝える。

その頃、逃避行を続けていた義朝は、自分は頼朝を探して陸路を行くと、残り僅かな部下たちに伝えていた。

そこへ金王丸が戻って来て、伝言はしっかり伝えたと報告する。

その頃、子供達三人を連れた常盤御前は、すでに屋敷を後にしており、襲撃した平家軍は、すでに屋敷がもぬけの殻になっている事を知る。

清盛は、戦に買った事に高ぶり、月の障りがあるので…と拒否する妻の時子(瀬畑佳代子)を、強引に抱くのだった。

一方、源氏にゆかりのある清水寺に匿ってもらっていた常盤御前一行は、六波羅の武者が探しに来ているとの、住職、西円(大木晤郎)に教えられ、牛若丸に授乳中だったにもかかわらず、すぐさま、そこも逃げ出す事になる。

常盤御前は、空しく子守唄を歌う。

やがて、義朝の首が、平清盛の元に届けられ、清盛は、その首につばを吐きかけ、投げ付けて踏みにじる。

すでに頼朝も捕まえたと言う渡辺五景綱に、清盛は勝勳のあったと、荘園をあまた与えるのだった。

そして、いよいよ、平家にあらずんば、人にあらざる世がやって来たと、得意の絶頂になる。

その頃、竹林の中を歩いていた常盤御前一行だったが、子供達がもう歩けないとぐずり出したので、常盤御前は、近くの地面を杖で掘り起こし、筍を見つけだすと、それを二つに割いて、今若丸と乙若丸に食べさせるのだった。

そして、そこまで同行して来た蓬子(大崎純子)に都に帰るように説き伏せると、親子だけで旅を続ける事にする。

夏の最中、清盛は、性欲の赴くまま、次から次へと女を抱いていた。

その精力の強さには、どんな女も適わず、その日も五人目の女が泡を吹いて失神してしまう。

途中で、女に倒れられた清盛は、伴卜(露乃五郎)を呼ぶと、おさまりきれない性欲を処理させる為、手でしごかせるのだった。

そんな伴卜が、清盛の陰毛に白髪があった事を見つけだすと、それを見た清盛は、人の寿命と言う者ははかないものだ。生きている限り、この世の楽しみを味わい尽くしたいと決意を述べる。

ある日、息子の重盛(須田黒冬)が、頼朝の命を助けてやるよう、父の清盛に進言するが、聞いてはもらえなかった。

その後、清盛は、愛しい常盤御前がまだ見つからぬかと、伴卜と景綱に対し苛立っていた。

その日は、白拍子の松虫を抱こうと言う事になり、その屋敷に三人で出向くが、その松虫は、志内六郎(中村昭)と言う男と寝ている最中だった。

清盛は、景綱に五郎を捕まえさせ、その場で斬り殺させる。

ある夜、時子を抱いていた清盛は、つい常盤の名を呼んでしまい、それを聞き付けた時子は、嫉妬にかられ、敵の女にだけは手を出してくれるなと釘を刺すのだった。

その頃、逃避行に疲れ果てた常盤御前は、子供達を連れて、川に飛び込んで心中しようとしていたが、そこに駆け付けて来て止めたのは、清水寺の住職、西円だった。

西円は、死んだ気になって生きろ!と、常盤御前を叱る。

そして、六波羅へ行くように勧める。

そうすれば、関屋(美松艶子)も許されるとの西円んお言葉を聞き、常盤御前は、はじめて自分の母親が捕まった事を知る。

常盤は、自分にとって、この世が地獄のように思えると呟く。

その頃、関屋は、常盤御前の居場所を聞き出そうとする景綱の拷問を受けていたが、何も知らないので答えようがない。業を煮やした景綱は、関屋を蛇の入った桶に閉じ込める「蛇責め」を実行するのだった。

西円は、落ち込む常盤に対し、その昔、千人の中から九条院に選ばれたその類い稀なる美貌に自信を持つよう説得する。

やがて、西円の言葉に従い、生きる道を選択した常盤御前は、三人お子供を連れて清盛の前に名乗り出て来る。

常盤御前は、何の罪もない母親を助けてくれるように申し出、清盛はこれを承知するが、子供達を助けてくれと言う願いは一蹴する。

その後、乳子供達と引き離され、牢に入れられた常盤御前は、その夜出され、着替えさせられると、清盛の前に連れて来られる。

清盛は、力でそちをねじ伏せたくはないと言い、常盤御前は覚悟を決めたように自ら裸身になると、清盛に黙って抱かれるのだった。

清盛は、自分は全てを手にしたが、どうにも思い通りにならなかったものがある。それはお前だ!と言いながら、常盤を抱き締める。

その夜、空には雷鳴が響き渡り、別室で寝ていた時子は目覚めてしまう。

清盛は、常盤は、自分を生んだ母親の面影に似通っていると、その恋慕の気持ちを分析して聞かせる。

そして、常盤の命を許すと約束するのだった。

しかし、常盤が願う、子供達の助命に関しては聞かなかった。

常盤は、その後、部屋に戻ると、清盛からもらったミカン等を投げ散らしていた。

子供達に会いたい!という娘の言葉を聞いた関屋は、清盛をたぶらかし、源氏の血を守ってみせよと、説得する。

翌晩、又しても、常盤に会いに行こうとする清盛を見とがめた時子は、必死に止めようとするが、清盛は適当に言葉を濁しながら、時子の髪を欄干に結び付けると、さっさと立ち去ってしまう。

その夜も、清盛は常盤を抱いていたが、常盤が全く感じていないので訳を聞くと、子供達の事が気になってどうしても…と言う。

仕方なく、清盛は、今若だけは、命を助けてやろうと言い出す。

そんな最中、時子は、独り丑の刻参りをして、常盤御前の名を書いた藁人形に、五寸釘を打ち込んでいた。

その後も、常盤が感じそうにないので、結局、清盛は、法師にする事を前提に、子供達全員を助けてやる事にする。

その言葉を聞いた常盤御前は、はじめて、本当の女の喜びを知った…と洩らすのだった。

しかし、そんな常盤御前との再会も、清盛の欲望を長く満足させる事は出来なかった。

伴卜と景綱は 、子供達を法師にして生き延びさせれば、やがて、末代まで祟られる事になるかも知れない。今や、平家の勢いに陰りが見えて来た…と噂しあっていた。

ある日、常盤の部屋にやって来た清盛は、彼女が手遊びで作って飾っていた4体の土人形を見て、三体は思いを寄せる子供の身替わりだと気づくが、残りの一体は誰じゃと問いかける。

義朝か!?…と逆上した清盛は、その土人形を投げ捨て、常盤を後ろから抱きはじめると、それを偶然見てしまった景綱夫婦にも、側で同じようにやれと命ずる。

仕方なく、景綱は、女房を後ろから責めはじめる。

清盛は、激しく常盤を責めながら、義朝め〜!!と絶叫するのだった。

やがて、清盛が去った後、雨が振って来た庭先に、素足で降り立った常盤は、地面に吐瀉する。

そして、花が咲いた木を揺すって、花びらを散らすのだった。

伴卜を呼出した清盛は、公家の中で一番ダメな奴は誰かと聞く。

一条卿藤原長成(天竺五郎)だろうと、伴卜が答えると、常盤は妊っているので、その男の嫁として渡そうとと言い出す。

一方、常盤の方は、庭先に出て来た蛇を見て、おびえるどころか、自由な身がうらやましい。他のものに生まれかわれるものなら、自分は蛇でも良いと呟いていた。

後日、入浴中、殿!と、亡き義朝の事を思いながら、独り身悶えていた常盤の姿を庭先からうかがっている影があった。

独り生き残っていた金王丸であった。

彼は、風呂から上がった常盤の部屋に忍び込み、一思いに殺そうと刀を抜いて近づくが、鏡に映ったその姿を見た常盤は、少しも騒がず、この恥多き常盤を、早く貫きなさいと命ずるが、その言葉を聞いた金王丸は、刀を捨てて逃げ出してしまう。

やがて、炉が燃える小屋の中に入った金王丸は、決心をしたように、その燃え盛る火の中に、自らの顔を突っ込むのだった。

後日、常盤御前は、藤原長成の妻となり、野立てに付き合っていた。

その場で、彼女は意外な人物と再会する。

蓬子であった。

蓬子は、牛若丸様も無事に育っていると、常盤に知らせる。

そうして時が流れ、いつしか、常盤御前の事を思い出すものはいなくなっていった。

ある日、老いた常盤御前の屋敷を訪ねて来た、顔が焼けただれた男が、「今日、成長した牛若丸が源九郎義経と名を変え凱旋致します」と教える。

そなたは、もしや、金王丸ではないかとの問いかけにも答えず、去っていた男の姿を見送った常盤は、何かを成し遂げたように、満足そうに微笑むのだった。

その後、源九郎義経が、平家を討った事は誰独り知らぬものはない…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

常盤御前の半生をベースにした異色成人映画。

キワモノの一種だが、意外と芯は通っており、史実に乗っ取ったストーリーになっていると思われる。

若々しい唐十郎の姿も珍しいが、神経質そうな悪役イメージが強い菅貫太郎の清盛も、意外と面白い。

低予算なので、合戦シーンなどスペクタクル要素は皆無で、全て絵巻の挿入でごまかしているが、成人映画を作るように会社から命じられた監督が、その条件を最低限満たしながらも、自分のやりたかったテーマを好き勝手に作ったという反骨精神が透けて見える感じが頼もしい。

結構、駄洒落等も交えて、艶笑譚風に表現している所も見られ、そういう映画的な工夫がある所が、逆に、成人映画としては物足りないと感じる向きもあるかも知れないが、作られた時代も時代だし、東映という大手が作る映画としては、これが限界というか、逆に特長だったと捕らえる方が良いだろう。