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乾杯!ごきげん野郎

1961年、ニュー東映、井手雅人脚本、瀬川昌治監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

桜島を臨む鹿児島、垂水にあるオートメーション化された巨大養鶏場。

見学に来た女学生たちに、所長(中村是好)自らが説明している。

すると、そこへどこからともなく「♪ヤッホ〜」「♪ヤッホ〜」と、歌声が聞こえて来る。

それは、歌が大好きな従業員、滝(梅宮辰夫)、並木(南廣)、白井(今井俊二)、牛山(世志凡太)の四人組が、コーラスを始めたのだった。

彼らの歌声に引き込まれた女学生たちも一緒に歌いだし、最後はヤンやの喝采を受けるが、仕事をサボっていた為、多数の鶏を入れた円筒形の鶏舎がものすごいスピードで回転しはじめる。

それを見た彼らは、慌てて制御室に直行するが、そこで待ち受けていた所長から、卵をぶつけられ、即刻首を言い渡されてしまう。

途方にくれた四人だったが、滝の叔父が東京で自動車修理工場をやっていると言う話を当てにして、この際上京して一花咲かそうと言う事になるが、鳥かごに入れたひな鳥を持って来ていた気の弱い白井は、ただ独り、今後の事に不安を隠せないようだった。

一旦は、一人で帰ると言い出した白井だったが、三人だけで歩き出した道の後から追い掛けて来たトラックの荷台にちゃっかり乗り込んでいた。

三人も、そのトラックに乗せてもらい、その後、あれこれ乗物を乗り継ぎながら、ようやく東京に到着するのだった。

そんな東京の高速をひた走る一台の白いスポーツカーには、人気歌手の明石まゆみ(三田佳子)とマネージャーが乗っていた。

到着した会場では、待ち受けていたファンにもみくちゃにされながら入ると、「大商証券提供 世紀のジャズコンテスト」のゲストとして、まずステージ上で歌を披露する。

その頃、楽屋では、このコンテストでの優勝が既に決まっていたミッシェル川田(大泉滉)の女装を気に入らない、国際演劇映画会社の社長は、いきなり、川田の顔にヒゲをつけると、スカートをドンドン切りはじめる。

国際演劇映画株式会社の会長の孫でもあるまゆみは、舞台袖で演出をしていた女性AD千恵(八代万智子)から、そんな裏事情を聞かされ、おじいちゃんに言い付けてやると息巻くのだった。

そんなジャズコンテストの控え室には、鹿児島から到着したあの四人組の姿もあった。

緊張した彼らは、一緒にトイレに行くが、ちょうどそこに大量の花束を持って来ていた花屋から、一緒に楽屋の中まで運んでくれと頼まれ、仕方なく付いて行くと、その花束の受取人ミッチェル川田が、ヒゲ面に、豹柄のミニスカートと言う珍妙な格好になって待ち受けていた。

花束を受取った社長は、花束の宛名が「ミサイル川田」となっている事に癇癪を起こすが、その場にいたまゆみが、すでにコンテストの優勝が決まっている証だとばらしてしまったので、偶然それを耳にした四人は、そんな不正があって良いのかと、社長や川田ともみ合いの喧嘩騒ぎになってしまう。

それを、まゆみは、嬉しそうに応援している。

がっかりして会場を後にした四人組は、ラーメン屋で食事をしながら、テレビ中継していた審査結果を見ていたが、やっぱり、優勝者はミサイル川田であった。

その夜はすっかりやけ酒を飲んでしまい、路上でぼやきあっていた四人組だったが、そこに偶然通りかかったのが、まゆみの乗ったスポーツカーだった。

彼女は、同乗していたマネージャーをその場で下ろすと、四人組を面白い所に案内すると言い出す。

そこは、人気歌手渡辺マリが生で歌っている「フロンティア」と言うジャズ喫茶だった。

地方出の四人組は、店内のあちこちのテーブルで、カップルたちが濃厚なキスをしあっている様子を始めて見て、目のやり場に困っていた。

店を出たまゆみは四人組に、20世紀後半の今は売り込みの時代。大切なのはラッパを吹く事だと教えた上で、君たちは今の時代に合っていないから、さっさと田舎に帰るよう勧める。

叔父の自動車修理工場に戻り、倉庫の片隅でしょげ返っていた四人を見つけた娘のみち子(山中みゆき)は明るく慰めると、四人と一緒に歌い出すのだった。

歌いはじめると、四人は元気を取り戻し、夢の中では、三組になった四人組と、四人になったみち子が一緒に歌ったりする。

やがて、彼らの歌声を聞き、倉庫を覗きに来た叔父(東野英治郎)とその妻(高橋とよ)は、四人が乗っていたタイヤの山が崩れ、転がって来た巨大タイヤに危うく潰されそうになる。

そんな四人の元に、近所の人から届け物を持って来たと男がやって来る。

「一ファンより」と書かれた手紙と、箱を開けてみると、中にはケーキが入っていた。

その頃、近所の二階では、病気で寝たきりの少女田中和枝(中塩和美)と内職をしている母親が、外から聞こえて来る四人の歌に耳を傾けていた。プレゼントの送り主は彼女だったのだ。

和枝は、手鏡で外の様子を写していたが、そこに四人組が映っていた。

翌朝、やっぱり弱気になった白井が、田舎に帰ろうかと並木と相談していルので、滝は頭に来る。

前夜と違い、すっかり静かになった四人の事を、叔父は心配していたが、その内、家が揺れはじめたので二階に様子を見に行ってみると、何と、四人揃ってドドンパのステップをしている最中だった。

やがて、滝は、襖に貼ってあったトーマス小野田(柳沢真一)の写真を観て、何か閃いた様子。

トーマスは、大商証券提供の番組も持つ人気歌手。

四人組は、そんなトーマスを待つべく、テレビ局の前で張っていたが、当のトーマスは、自動車でさっさとどこかに出かけてしまう。

そんなトーマスが、仕事の合間、街角を歩きながら煙草を加えると、横からライターを差し出す手が!

四人組は、いかにも顔見知りのような口調でトーマスに話し掛ける。

有名人と仲良くなれば、自分達にもはくが付くという発想だったのだが、見知らぬ連中からいきなり話し掛けられたトーマスの方は大混乱。

夜、バー「ジョーカー」に出向いたトーマスは、プロモーターの宮崎(十朱久雄)と出会い、最近神経不安症気味で…などと話しはじめるが、何と、その店にもあの四人組が入って来て、親しげな態度を取るので、宮崎はすっかり、リズムジョーカーズと名乗る彼ら四人組の事をトーマスの友人と勘違いしてしまう。

実は、四人組、そんな高級バーで飲む金等持っていなかったのだが、ラッキーな事に、勘違いした宮崎が気前良くおごってくれたので、そのまま、車に乗せて彼を自宅まで送り届けてやる事にする。

すると、別れ際に宮崎が、月曜の朝9時までに、銀座の事務所まで来てくれと言うではないか!

ついに運が開けたと大喜びした四人組だったが、後日彼らに与えられた仕事とは、映画会社対抗野球大会で、試合の助っ人メンバーとして出るだけのことだった。

がっかりして、次は、歌手の渡辺マリに売り込もうとすると、ファンと間違われてサインをもらう始末。

そんなある日、とあるホテルでも催された国際演劇映画会社会長榊安左衛門(榎本健一)の88才の米寿を祝福する会に侵入した四人組は、ボーイを縛ってその服を借りると、会場に紛れ込むのだった。

その会場には、誰彼となく声をかけまくっているおかしな四人組の噂を他の歌手仲間としているトーマスや、マユミも出席していたが、ボーイに化けた四人組は、主賓席に座っていた安左衛門をこっそり担いで外に連れ出してしまう。

祖父がいなくなった事に気づいたまゆみは、ホテル内を探しはじめるが、とある部屋を開けてみると、そこで、祖父安左衛門に煙草や食べ物をどんどん振舞っている四人組の姿を発見する。

呆れたまゆみは、こんな事までするとは、あなたたちを見損なったと叱責する。

その失敗にもめげず、後日、安左衛門の自宅前で張込んでいた四人組だったが、出て来た高級車の中には、犬しか乗っていなかった。

その後、本物の安左衛門が乗る車を、ぽんこつ車で追い掛ける四人組だったが、途中で車が故障してしまい、又しても、追跡は失敗してしまう。

修理工場で気落ちしている彼ら四人組の様子を観たみち子は、たった5円で国際演劇映画会社の会長に売り込む方法を教えようかと話し掛けて来る。

それは、葉書で、リズムジョーカーズを誉める投書をすれば良いのだと言う。

翌日から安左衛門の元には大量の葉書が舞い込む事になり、まゆみが会長室に来てみると、安左衛門が床に放り投げた葉書の中で、一番遠くまでとんだ一枚だけを読んでいる所だった。

内容は、もちろん、リズムジョーカーズは素晴らしいという文面。

やがて、かかって来た電話に出てみると、オカマ声でごまかした滝が、リズムジョーカーズを誉める内容だった。

その後も、作り声での電話売り込みや、みち子が4本ものタイヤを売った金で購入した葉書大量投函作戦は続けられるが、さっぱり効果がなかったので、田舎に帰ろうかと諦めかけた滝だったが、たまたま工場にかかって来た電話に出てみると、それは国際演劇映画会社から、迎えの車を寄越すから来てくれという内容だったので、四人はその場で気を失ってしまう。

やがて、宣伝用の写真撮影も終え、まゆみや安左衛門と対面した四人組だったが、彼らはウィーン音楽学校出身という嘘を葉書に書いていたので、それを聞かれると困っていた。

明日、まゆみとデュエットでレコーディングしようと計画がまとまり、四人は早速レコーディングスタジオに案内されるが、調整室に座ったまゆみや安左衛門には音が聞こえないと思った彼らは、その場で安左衛門の悪口を散々言ってしまう。

やがて、レコーディングスタジオにやって来た安左衛門は、契約解除を言い渡す。

蒼くなった四人組は、思わず、その安左衛門を捕まえると、スタジオ内にろう城してしまう。

安左衛門を椅子に縛り付けると、とにかく一度歌を聞いてくれと頼む。

社員たちは、警察に電話したり、調整室とスタジオの間の防音ガラスを割ろうとするが、それをまゆみが妨害する。

滝のピアノ伴奏で四人が歌いはじめると、社員たちの動きが止まる。

その素晴らしい歌声に皆感動していたのだ。

喜んだまゆみは、スタジオ内に駆け込むが、安左衛門の補聴器は取れていて、彼は何も聞こえていなかった事が分かる。

ある日、病気で寝ている田中和枝の元に届け物があり、開けてみると、可愛らしい人形と「Good Bye リズムジョーカーズ」と書かれたメッセージが添えられていた。

東京駅には、田舎に帰る四人組を見送る叔父、妻、ちか子の姿があった。

その頃、何とか四人組を世に出したいと考えていたまゆみは、ADの千恵(八代万智子)の事を思い出す。

千恵はラジオのディスクジョッキーもやっていたのだ。

千恵は、まゆみから渡された四人組のデモテープを放送で流す事にする。

すると、四人組が乗った列車が走っている最中、たちまち、その歌は日本中で大ヒットしはじめ、テレビ局にもスポンサーから注文が殺到する。

もはや、日本中の人たちが、リズムジョーカーズの歌声に聞き惚れていた。

ちか子も、和枝もラジオから流れて来る歌声を嬉しそうに聞いていた。

現金なもので、安左衛門は、あの四人組の才能を認めた自分の眼力に狂いはなかった等と、周囲に自慢し出す有り様。

このヒットの知らせを伝えようと、飛行機で鹿児島に飛ぶまゆみ。

そんな世間の動きを全く知らないで、傷心のまま、垂水の駅に降り立った四人組は、駅前で自分達を待ち構えていた大勢に歓迎団に驚く。

その群集の中にはまゆみの姿もあり、彼女の口から、曲が売れた事を知る四人組だった。

数日後、和枝は四人組の歌声が聞こえたので、又ラジオなのかと思うが、そうではない事に気づき、もしやと思い手鏡を持って外を観てみると、そこには、こちらに向って手を振りながら歌っている四人組の姿があった。

彼らは又、東京に戻って来たのだ。

後日、叔父や安左衛門も来場している大勢の観客の前で、リズムジョーカーズが歌うステージがあった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

意外や意外、とんと歌とは縁のなさそうな役者ばかりで構成した音楽映画。

まともに歌えるのは、柳沢真一と渡辺マリくらいではないか?(梅宮辰男も、レコードを何枚か出してはいるが…)

三田佳子は、劇中で実際に歌っているようにも聞こえるが、吹替えのようにも感じられ、はっきりしない。

リズムジョーカーズの歌声は、全て、デューク・エイセスが担当している。

ストーリーは、良くあるサクセスストーリー。

列車が東京駅から鹿児島に着く間に、曲がヒットしてしまうと言う、いかにも御都合主義的なクライマックスをはじめ、全体的にバカバカしいといえばバカバカしい内容だが、とにかく、梅宮辰男や南廣、瀬志凡太など、全く歌とは縁のなさそうな連中が、ポーズをつけて、ミュージカル風な事をやっている事自体が珍妙でおかしい。

何と言っても一番印象的なのは、後に悪役で有名になる今井俊二が、眼鏡をかけた、いかにも気の弱そうな青年を演じている事。

これは、後の悪役イメージを知っていると、よけいおかしい。

地獄大使こと潮健児なども、警官役として屋上で踊っている。

夢の中のシーンで、山中みゆきが4人になったり、四人組が3組、同一画面に登場して共演したり…といった合成シーンは見ごたえがある。

老いたエノケンのおとぼけ振りも、笑えるほどではないが、それなりに楽しいと言えば楽しい。

正に、珍品中の珍品と言った作品だろう。