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劇場版 仮面ライダーカブト
GOD SPEED LOVE

2006年、東映、石ノ森章太郎原作、米村脚本、石田秀範督作品。

※新作ですが、物語の最後まで詳細にストーリーを説明してありますので、御注意下さい。コメントはページ下です。

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1999年-7年前-隕石落下。

地球上の海は干上がり、大量に発生したワームと戦う為に、ゼクトのマスクドライダー隊が結成された。

やがて、そのゼクトから離反したしたネオゼクトが生まれる。

瓦礫の中に埋もれた少女を、必死に助けようと手を差し伸べた少年も、又、瓦礫に挟まれており、手が届かない内に、少女の前に瓦礫がふさがってしまう。

7年後-現在。

町を独り行くサングラス姿の男。

その姿を観て、「この先は危険だ!」と止めようとする加賀美(佐藤佑基)。

しかし、サングラスの男は「俺の行く道は、俺がきめる」と言って立ち去る。

そこには、「高円寺」の表札が残っていたが、荒廃した砂漠が広がっていた。

その砂漠を走っていた車が突然銃撃を受ける。

車に乗っていた三人は、ネオゼクトの残党北斗、風間大介(加藤秀樹)、織田(小林且弥)だった。

彼らを追い詰めたゼクトメンバーの加賀美や大和(虎牙光輝)に対し、「ゼクトは自由になるのが怖いのだろう」と呼び掛ける織田。

加賀美は大和に対し、ライダー同士が戦うのは良くないと説き伏せようとするが、大和は意外な行動を取る。

織田たちの前に来ていきなり土下座をして「ゼクトに戻って来い」と哀願したのだ。

しかし、その態度が芝居だと見抜いた織田や北斗(森下千里)は相手にしない。

すると、大和は平然と立ち上がり、仮面ライダーケタロスに変身する。

織田も仮面ライダーヘラクスに変身、風間大介は仮面ライダードレイクに、対する加賀美もガタックに変身する。

そんな彼らが戦いをはじめた場所に独りの男が近づいて来る。

天道総司(水嶋ヒロ)だった。

彼は、ゼクトとネオゼクトの両方に対し「どっちか俺を買え」と言い出す。

結局、ネオゼクトの織田が、天道を買う事にする。

その頃、「Bistro la Salle」では、武宮弓子(西牟田恵)にせかされる形で、加賀美が、キッチンにいた日下部ひより(里中唯)にプロポーズしかけていた。

そこに、鯖を持ってやって来たのが天道、入口で、ちょうど帰りかけた客二人(次長課長)とすれ違う。

天道は、加賀美に、ネオゼクトを内部から壊すため、人類のミライを決める「天空の梯子計画」の事を話したと打ち明ける。

「天空の梯子計画」とは、軌道エレベーターの先にある宇宙ステーションから誘導電波を発進し、彗星を引き付けると言うもの。

彗星は、その大半が水で出来ているので、地球にその彗星をぶつければ、又海が復活すると言う目論見であった。

この情報を、ネオゼクトのねぐらに戻って来た天道は、全員に伝える。

それを聞いた北斗は、この計画を乗っ取ろうと発案する。

水を制す者は世界を制すという訳だ。

しかし、ゼクトには、出合った者の後には、屍とバラの花びらしか残さない最強の金のライダーがいると言う噂があった。

その夜、ひよりと加賀美は、星空を眺めながらデートしていた。

加賀美は、今度こそ思いきって、俺の側にいて欲しいとプロポーズするが、ひよりは又もや、曖昧に断わってしまう。

ひよりの為の上着を取りに、加賀美がちょっと離れた後、ひよりは、天国にいる母親に、これで良いんだよね…と、語りかけていた。

本当の所は、加賀美の気持ちは嬉しかったのだ。

そこに突然、ワームが襲って来、来合わせた天道は、カブトに変身して戦う。

ワームを倒した後、ひよりを探していると、戻って来た加賀美と合流、二人は同時に、倒れている彼女を発見する。

病院に連れて行った所、加賀美は医者からとんでもない事実を聞かされる。

ひよりの余命が後わずかしかないと言うのだ。

病室に横たわったひよりは、助けを求めるが、それを見ながら、天道は苦悩するしかなかった。

天道は、加賀美に情報はネオゼクトに伝えたと教えるが、メソメソ泣き続ける加賀美に渇を入れる為、ビンタしてしまう。

この天道と加賀美の会話を、病院の外から盗み見ていた者があった。

北斗修羅だった。

天空の梯子の上空には、巨大なクロックアップシステムが作られている事も分かる。

ひよりを車椅子に乗せた加賀美は、自分は病気の事は気にしない、残された日々を、家族として大切に生きて行こうと伝えていた。

一方、北斗はネオゼクトの仲間たちに報告、戻って来た天道はスパイとして吊され、拷問にかけられる。

しかし、ゼクトの計画を潰さなくて良いのかと不敵に洩らす天道の姿を見た織田は、そのでかい事を見てみたいと言い出す。

その頃、ひよりとのささやかな結婚式を間近に控えた加賀美に、天空の梯子計画の責任者に成るようにと言う通達がおりる。さらに、その後、天道が裏切ったとの連絡も。

天空の箸御計画の基地中枢部に大爆発が起こり、仮面ライダードレイク風間大介たちネオゼクトが侵入して来るが、ゼクトの待伏せに会い、襲撃を受ける。

待ち伏せていたゼクトの中に混じって風間に銃弾を浴びせたのは北斗だった。

彼女も裏切者だったのだ。

ドレイクは「私はただ…、風になりたかっただけ…」と呟いて息絶える。

続いて基地内に侵入して来た天道と織田も、北斗たちの襲撃を受ける。

織田は、仮面ライダーヘラクスに変身、この場は俺に任せろと言って、天道を天空の梯子に向わせる。

その頃、ひよりは、母親の写真を見ながら、私に新しい家族ができると伝えていた。

その加賀美は、大和と共に天空の梯子を使い、宇宙ステーション内に昇り付くが、そこには、天道のバイクがすでにあった。

仮面ライダーケタロスに変身した大和が、仮面ライダーに変身した天道と戦う中、加賀美は、宇宙空間へクロックアップ装置を開き、クロックアップマシーンのスイッチを入れる。

すると、宇宙空間が開き、その奥の空間から彗星が現れるが、加賀美は、その彗星の後ろに付いて来る、さらに巨大な惑星を満て驚愕する。

仮面ライダーケタロスはカブトに破れ、宇宙空間へ消えて行った。

その最後の言葉によると、ゼクトの本当の目的は、地球でゼクトと共生する新たなワームの巨大卵を呼び寄せる事だったらしい。

彗星の後ろに出現した巨大な惑星には、そのワームの卵が付着しているのだ。

その頃、地上の基地で北斗を倒した仮面ライダーヘラクスは、新たなライダーと遭遇していた。

蒼い花びらに囲まれ、蒼いバラを持った金色の仮面ライダーコーカサス(武蔵)だった。

敢然と、そのコーカサスに立ち向かったネラクスだったが、一瞬の内にやられてしまう。

宇宙ステーションにいた加賀美は、ひよりの事を愛しているらしき天道を殴るが、天道は意外な答えを返して来る。

ひよりは、自分の妹だと言うのだ。

その頃、地上のゼクト内では、加賀美陸(本田博太郎)が、反物質兵器を積んだミサイルの発射を命令していた。

花嫁衣装に身を包みベッドに寝ていたひよりの様子がおかしくなる。

弓子からの電話で、ひよりが亡くなった事を知らされた天道。

ゼクトはワームと手を組んだと伝えた天道に、お前の戦いは俺の戦いだと言い切り、参戦しようとする加賀美。

そこへ、仮面ライダーコーカサスが出現する。

加賀美はカブトを助け、コーカサスを宇宙空間に放出する。

その後、カブトは、加賀美をひよりの元へ戻れと、救命艇に無理矢理押し込み、宇宙空間に向け発射する。

しかし、その救命艇に、先に落とされたはずのコーカサスがへばりついて来て、機体を壊そうとし始める。

ワームの卵を乗せた巨大惑星が地球に接近する。

ライダーは、ハイパークロックアップを押し、時間を逆行させる。

地球と、接近する巨大惑星との間に、7年前、地球に衝突した惑星が出現、両者はぶつかって大爆発を起こす。

地球には雪が降って来て、爆発した隕石の破片の一つが日本の渋谷に落下して来る。

瓦礫に埋まった妹ひよりを助けようと、必死に手を伸ばす兄の天道少年の前に、突如、大人の天道が出現、ライダーベルトを渡して、これを腰につけろと伝える。

その言葉通り、腰にライダーベルトを装着した少年天道は、埋まっていた瓦礫を抜け出し、妹ひよりを救出するのだった。

そして、別の7年が流れ、元気な娘に成長したひよりは、公園で楽しそうに遊んでいた。

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▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

テレビシリーズの設定を利用しながらも、全く別のパラレルワールドを描いた劇場版。

何だか「タンクガール」とか「スーパーマン」とか、その他、どこかで見たようなチープなイメージをくっつけただけのような安易なSFワールドになっており、その世界観をきっちり説明しないまま、お馴染みの人物たち、何体もの新ライダーを登場させながら、一方で、すでに時代遅れになった「お涙要素」も加え…と言った風な、無茶なドラマだけがずんずん強引に進んで行く感じで、テレビシリーズとの差異が良く分からないで混乱したまま、最後を迎えてしまうと言った印象が強い。

トリッキーな力技と言えば、そうも思えるが、何となく、誤魔化されたような後味の悪さが残る。

せっかく、「天空の梯子」なる軌道エレベーターのアイデアがありながら、一番、アクションの設定としては面白そうな、梯子の中間地点、つまり成層圏での戦いなどは全く描かれておらず、おそらく、手間と予算が掛かり過ぎる為、実現できなかったのだろうと想像してしまう勿体なさ。

明らかに、セットとしか見えない宇宙ステーション内での戦いは、地上での戦いとあまり変わらず、スリリングさは希薄。

一方で、バイクだけで、カブトが宇宙空間まで昇って来ると言う破天荒なアイデアを見せながら、ラストのアクションは凡庸な展開というアンバランスさも、予算の制限のためか?

そもそも、予算も製作時間もゆとりもない中で、上映時間もほんの1時間程度、そんな中で、何体ものライダーを登場させると言う玩具の宣伝目的も満たしつつ、一方で、宇宙スケールの壮大なシリアスSFアクションドラマを成立させる等、最初から無理だったとしか言い様がない。

「お涙要素」も、いかにも無理矢理くっつけた感じで、白けるだけ。

併映の戦隊もののように、ノリだけで見せるハチャメチャ映画にも成り切っていないし…。

昨年の「響鬼」同様、今年も、そのチャレンジ精神だけは買いたいが、何だか乗れない、残念な結果に終わったように思う。