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怪猫トルコ風呂

1975年、東映東京、掛札昌裕+中島信昭脚本、山口和彦監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和33年3月31日、吉原。

明日から施行される「売春防止法」を前に、遊廓を閉める事になった主人弦蔵(殿山泰司)と、後妻の歌江(真山知子)は、食事をしている娼婦たちの前で、明日からトルコ風呂に転身する事にしたので、みんな今のまま仕事を続けてくれるかと問いかけていた。

他に生きる術を持たない娼婦たちは、全員承諾するが、ただ独り、黒猫のクロを可愛がっていた雪乃(谷ナオミ)だけは、辞めさせて頂きますと申し出る。

まさか、辞退者が出るとは思っていなかった女歌江は、この店に借金があるのを忘れた訳じゃあるまいねと気色ばむが、雪之の決心は硬いようだった。

その夜は、最後のかきいれ時だったが、12時10分前になると、警官が入口にやって来て、注意を促すのだった。

こうして、赤線最後の灯は消えた。

翌日、荷物をまとめた雪乃を見送る為外に出て来たのは、足の悪い源蔵の一人娘夏代(東てる美)だけだった。

店までトラックで迎えに来ていたのは、雪乃の内縁の夫鹿内(室田日出男)だった。

その鹿内が、用意したアパートに落ち着いた雪乃は、結婚指輪を送られ感激する。

その場で抱きついて来た鹿内に、郷里の妹を呼んで、一緒に暮しても良いかと尋ねる雪乃に、鹿内は快諾するのだった。

ところが、そんな二人の部屋に突然ヤクザ者が数名なだれ込んで来て、鹿内を痛めつけはじめる。

雪乃が訳を聞くと、50万の借金を踏み倒したと言うのだ。

どうやら、このアパートや家具を買いそろえる為だったらしいと気づいた雪乃は、この人の償いは私がすると手を付いて謝る。

雪乃は「トルコ舞姫」と名を変えたかつての店に舞い戻る事になる。

源蔵は、一旦辞めたものがすぐ戻って来た事に嫌味を言うが、新しい仕事はテクニックを使わなければ行けないので、鍛え直してやると言って、雪乃を受け入れるのだった。

その頃、鹿内は、アパートに殴り込んで来たヤクザものたちに、芝居をやってくれた礼金を渡していた。

すべて、鹿内の仕組んだ罠だったのである。

その後、何も知らない雪乃の妹、真弓(大原美佐)が、上京して来て雪乃のアパートへやって来る。

親切に迎えてくれた姉と鹿内に、田舎育ちで純朴な真弓は、洋装店に努めていという夢を語るのだった。

その夜、布団の中で目覚めた真弓は、隣の部屋で抱き合っている姉たちの姿を襖越しに見て、羞恥で固まってしまうのだった。

数日後、鹿内は、雪乃に、又博打で100万円の借金を作ってしまったと告白していた。

自分は2、3年、田舎に帰ればほとぼりが冷めるが、何とか、舞姫に住み込みで働いてくれないかと頼む。

惚れた鹿内に騙されているとは夢にも知らない雪乃は、自分がいない間、真弓の面倒を見てやってくれと頼んで、住み込みで働く事を承知するのだった。

翌日、バーで歌江と落ち合った鹿内は、雪乃の向こう3年間分の拘束料を受取っていたが、同時に、歌江の身体にも興味を示していた。

その歌江、店で雪乃が吐き気を押さえている様子を見て、妊娠した女等に用はないと冷たい言葉を投げかけていた。

一方、アパートでシャワーを浴びていた真弓は、突然、入って来た鹿内からに襲われていた。

その様子を換気口から、猫のクロが覗いていた。

その日、久々に帰宅して来た雪乃は、二人の様子がおかしいので、すぐにピンと来て真弓に問いただすが、真弓は「姉さん、この人と別れて!」と、思い掛けない事を言い出す。

逆上した雪乃は、思わず、近くにあった果物ナイフで、鹿内を刺そうとして腕を怪我させてしまうガ、次の瞬間、自分の犯した軽はずみな行動に気づき、すぐに謝罪して手当てするのだった。

その二人の姿を見て嫉妬した真弓は部屋を飛び出してゆく。

雪乃は、子供が出来たと打ち明けるが、それを聞いた鹿内は、これまで見せた事がないような表情に変わり、誰の子供か分からないし、そんな事で帰って来たのかと雪乃を虐待しはじめる。

店に連れて帰られた雪乃は、雪の中、裸にされ店の上庭で木に吊されると、歌江と鹿内から徹底的に拷問を受ける。

特に、腹部の子供を堕そうと、木刀で徹底的に突かれ、とうとう流産してしまった雪乃は、さらに息の根を止めようとする鹿内から、最後の拷問を加えられ絶命する。

そうした様子も、猫のクロは、ジッと見守っていた。

やがて、雪乃の死体は、鹿内によって、蔵の中の壁に塗り込められてしまう。

その作業をし終えた鹿内と歌江の二人は、興奮のあまり、その場で抱き合う事になる。

数カ月後、「舞姫」の表に「トルコ嬢募集」の貼り紙が貼られていた。

それを見て店に入って来たのは、真弓だった。

直ちに採用された真弓にテクニック指南役となったのは、佃煮屋の貝太郎(山城新伍)だった。

しかし、教えるつもりの貝太郎は、真弓の生来のテクニックで、逆に昇天させられてしまう。

そうした中、理事長になった弦蔵の下で「舞姫」の店長におさまっていた鹿内は、新人として挨拶に来た真弓の姿を見て驚愕する。

何も知らない弦蔵は、真弓が住み込みで働くようになったと言う。

その弦蔵が事務所から出て行った後、互いに抱き合った鹿内は歌江に、あの真弓は雪乃の妹だと打ち明けていた。

そんな中、猫のクロは、雪乃の遺体が塗り込められた土蔵に近づいていた。

ある日、金勘定している真弓の部屋にやって来た鹿内は、馴れ馴れしく昔とは変貌した彼女に言い寄ろうとするが、真弓は、あんたには貸しがある、バージン代をくれと開き直る。

そんな真弓に、弦蔵は、自ら、トルコ嬢としてのテクニック「泡踊り」を教え込んでいた。

天性の勘の良さから、すっかりテクニックを身に付けた真弓は、たちまち「舞姫」の売れっ子に成長して行く。

店内に2月の個人成績が発表され、真弓のグンと抜いた成績に嫉妬した他のトルコ嬢たちが、待機室で戻って来た真弓を虐めはじめるが、どこから入って来たのか、クロが、ステッキを振り上げた女の顔に飛びかかり、引っ掻いて逃げる。

かつて、姉の部屋で飼っていたクロだと気づいた真弓は、その後を追って裏庭に出てみるが、そこにあった別棟でピアノを弾く夏代に近づき、抱かれているクロを発見する。

夏代は、クロを見て、姿を消してしまった雪乃の事を案じていた。

その夜、真弓は姉の夢を見ていた。

後日、真弓は、鹿内からドライブに連れて来られていた。

鹿内はかつてのように真弓に抱きついて来るが、真弓は、あんたと歌江との仲を弦蔵が知ったら、何をするか分からないよと皮肉を言いながらも、はじめての男にむしゃぶりつくのだった。

その頃、弦蔵は、ピアノを弾いていた夏代の成長に目を細めながら、明日から関西に出かけると打明けていた。

一方、歌江の方は、事務所で鹿内に抱きつきながら、それとなく弦蔵を始末するようそそのかしていた。

そこへ突然入って来た弦蔵は二人の間柄に気づくが、お前たちが狙っている自分の財産は、全て夏代名義に書き換えてあると嘲った為、逆上した鹿内はビール敏で弦蔵を殴りつけ、歌江も背中から弦蔵を短刀で刺してしまう。

二人でなぶり殺してしまった弦蔵の死体は、雪乃を隠したのと同じ蔵へ運び込み、返り血を浴びた自分達の服と共に大きな樽の中に詰め込む。

その仕事を成し遂げた二人は、またもや興奮の極地に達し、その場で抱き合う事になる。

その様子も、猫のクロは物陰から眺めていた。

その後、歌江は、夏代に鹿内と結婚するよう半ば強制的に命ずる。

あまりの急な話に面喰らう夏代だったが、すでに歌江らによって、自分と鹿内の婚姻届が勝手に作られている事を知ると、恐怖に震え上がる。

思わず、庭先に逃げ出した夏代だったが、その場に落ちていた父、弦蔵の血染めの眼鏡を発見する。

その様子を物陰から覗いているのは、真弓だった。

その夜は嵐だった。

父親の部屋に忍び込んだ夏代は、父親のクロゼットの中にかかった背広の中から関西行きの切符を発見し、父親が関西には行っていない事を突き止めるが、そこに突然鹿内が襲いかかって来て、ピアノ室へ逃れようとする夏代をたちまち裸にしてしまうのだった。

その様子もクロは見ていた。

真弓はその翌日、花畑の中で、手首を切って自殺している夏代を発見する。

夏代の死亡で、1億5000万にも及ぶ店の財産を受け継いだ鹿内と、その義理の親子と言う事になる歌江は、事務所で計画の成功を喜んでいたが、その時、障子に映る巨大な猫の姿を歌江が目撃、身を竦ませる。

鹿内は、扉を開けて外の様子を見るが、廊下に手首が落ちているのを発見する。

怯えた二人は、一緒に土蔵に逃げ込むが、突然、桶が転がり、中に入れてあった弦蔵の死体が転がり出る。

見ると、その死体の片腕の手首がなかった。

何とか、その弦蔵の死体を桶に詰め直し、蓋をした二人だったが、次の瞬間鹿内は、クロに飛びかかられる。

鹿内は側に合った斧で、再び襲って来たクロの首を切断して外に逃げて行く。

そうした様子は隠れていた真弓によって目撃されていた。

すると、雪乃を塗りこめていた壁に、見る見る人形の血のシミが浮き出て来て、地震が起きたかと思うと、その壁がひび割れ、中から、白髪に白いドレス姿の化け猫に変じた雪乃が出現する。

その化け猫が外に出た後、恐る恐る土蔵の中に進み出た真弓は、床に落ちていた姉の簪を発見する。

その簪を持って外に出た真弓は、店から出て来た歌江や他のトルコ嬢たちに発見され、姉と同じように、古井戸の中に縛り付けられると、拷問を受け、そのまま井戸の中に落とされてしまう。

すると、突如、白い化け猫が出現し、古井戸の周囲にいた女たちを襲撃しはじめる。

すると、どうした訳か、菊の花畑で死んでいた夏代の身体が、真弓に変身し目覚める。

事務所に逃げ込んだ歌江だったが、座ろうとした椅子が壊れ、逃げ出そうとすると、ドアの外には、廊下の天井から逆さに吊り下がった化け猫が待っていた。

そこへやって来た鹿内は、水槽の中の観賞魚たちが苦しんでいる姿を見て驚くが、その水槽の向こう側に化け猫を発見、思わず、その水槽を壊してしまう。

その頃、トルコ風呂の一室で、3人の女たちとプレイを楽しんでいた貝太郎は、部屋の風呂のお湯が回転しだし、やがて、お湯が空中に逆流してなくなった後から、化け猫がはい出して来た事に気づいていなかった。

その頃、鹿内は、金庫から現金を持ち出そうとしていたが、近づいて来た歌江の顔が、化け猫に引っ掻かれたため無惨な様相を呈しているのを見て、思わず突き放すのだった。

やがて、障子に化け猫の影が映る。

思わず、鹿内は、室内にあった槍でその障子を突くが、障子を破って倒れ込んできたのは化け猫ではなく、歌江だった。

次の瞬間、部屋の周囲の障子が一斉に倒れる。

その後、トルコ風呂で再会した真弓と鹿内は、これで、店には誰も邪魔者がいなくなったと、その場で二人きりのプレイを始める。

快感に酔っていた鹿内の様子を見透かした真弓は、突然、姉の簪を取り出すと、「あんたは天国に行く柄じゃないわ!」と言い刺そうとするが、鹿内は必死に抵抗し、逆に真弓の首を締め付けて来る。

すると、急に部屋の照明が暗くなったかと思うと、風呂の中の泡が逆流し、部屋はシャボン玉だらけになる。

そこに白い化け猫が登場。

鹿内は思わず外に逃げ出す。

日本刀を持ち出して来た鹿内は、遅い来る化け猫に立ち向かおうとするが、驚異的な動きをする化け猫の鋭い爪で、まずは顔、次いで腹をえぐられる。

鹿内は、最後の力を振り絞って、その化け猫の首を刎ねるが、切断された首が鹿内の首に食らい付いて来る。

断末魔の鹿内は、室内にあったコンロを倒してしまい、事務所はたちまち火の海になって行く。

風呂場で気絶していた真弓は、ようやく目を覚ましていたが、気がつくと、部屋の外は煙に充満していた。

「舞姫」が炎上する中、何とか、服を着て外に飛び出した真弓は、朝焼けの空に、姉の雪乃が合掌しながら登って行く姿を見つける。

その幻影を見ながら、「姉さん!」と、思わず泣き崩れる真弓だった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

一応、成人映画だが、怪奇物語として作ってある為、女性の裸はふんだんに出て来るが、エロティックさは希薄である。

舞台が、時代劇の城ではなく、現代のトルコ風呂と言う所が異色なだけで、ストーリーの骨格は、猫を可愛がっていた女性が、愛し合っていると思っていた男に騙され、徹底的に拷問され惨殺された後、最愛の妹までも傷つけられ、殺されそうになったため、猫がその姿を借りて復讐すると言う伝統的な「化け猫もの」の展開をほぼなぞっている。

現代劇ではあるが、古井戸、土蔵、商事、日本刀など、時代劇風の小道具もしっかり登場しており、化け猫ものの基本はしっかり押さえてある感じがする。

東映作品である為、セット等はしっかり作られており、役者の芝居も普通の映画と変わりはない。

エログロものではあるが、プログラムピクチャーとして、低予算ながらもそれなりにしっかり作られているため、想像するほどのチープさはあまり感じない。

胸の大きく開いた現代風の白いドレスをまとった化け猫と言うのが斬新。

エログロだけではなく、ナンセンス要素として、トルコ嬢にテクニックを指南する遊び人風の若旦那を楽しそうに演じている山城新伍や、客としてちらり登場する大泉滉が、コメディリリーフ役を勤めている所にも注目したい。

成人映画を会社から求められたスタッフたちの、映画人としての抵抗と言うか、精一杯の遊び心が生み出した怪作と言えるかも知れない。

助監督を勤めているのは、澤井信一郎である。