1960年、第二東映、週刊新潮編集部原案、甲斐久尊脚本、日高繁明監督作品。
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甲南高等学校の歴史の授業、教師(神田隆)が、無惨な第二次世界大戦時の写真を生徒たちに見せている。
これだけの犠牲を払いながら、もう人類は、戦争の悲惨さを忘れてしまったのだろうか。
今でも、世の中には暴力がはびこっているが、その暴力が戦争に繋がるのだ。
今後の平和は、君たちに良心にかかっている…。
沢本茂夫(藤島範文)は、クラスメイトの市村美栄(二階堂有希子)、彰二(大源寺英介)、信彦(杉本昭)らと下校しながらも、その授業で見せられた無惨な焼死体の写真の事が頭から離れなかった。
そんな彼らを、バイクに乗った上級生たちが乱暴に蹴散らして行く。
喫茶店に入った4人は、ステレオ等を聞いていたが、独り、茂夫だけは、焼死体の写真が載ったグラビアに見入っていた。
しかし、それに気づいた彰二と信彦が、その雑誌を取り上げると、それはヌード雑誌だったので、からかっていると、何時の間に近づいたのか、例の不良上級生たちに取り上げられてしまう。
その後4人は、明日、美栄の父親のヨットを借りて、海に乗り出そうと言う事になる。
美栄も参加したがるが、女性用のトイレがないと言う事で、男子たちに断わられてしまう。
その夜、帰宅して来た茂夫の父親で銀行員の沢本耕三(加藤嘉)は、通信簿の結果が悪かった茂夫が、妙に戦争の事をやたらに気にしているのを観て、そんな事を気にせず、もっと勉強をしろと叱りつけるのだった。
そんな弟の不安振りを観ていた姉で、父親と同じ銀行に勤めている静子(故里やよい)は、時代の流れが、あまりにも早すぎるのだと同情する。
母親を亡くし、男手一つで二人の子供を育てて来た耕三は、定年まで後10年残っており、これまで10年間コツコツ溜めて来た定期もようやく満期に近づき、家も自分のものになったという事で、今の心配事と言えば、静子と恋人の池永を結ばせてやる事くらいだったが、その事を言い出すと、逆に、自分の再婚を静子から勧められるのだった。
翌日、予定通りヨットで東京湾に乗り出した茂夫、彰二、信彦の三人は、何となく又、原水爆の話になり、日本も、アメリカ軍に基地を提供しているので、ソ連から攻撃される恐れがある。アフリカ大陸だけは、そうした被害から免れるらしいと言う話になり、いっその事、このままヨットでアフリカまで逃げ出そうと話が纏まってしまう。
その頃、銀行で先に帰る静子から、今日は茂夫の誕生日だから早く帰ってくれと言われた耕三は、大阪からの来客を持て成す宴会を早めに切り上げ、鯛の尾頭付きと、バースディケーキが用意された自宅に帰って来るが、まだ茂夫が帰って来ないのだと静子から聞かされ、顔を曇らせる。
何故なら、その夜は、台湾で発生した台風8号が本土に接近して、嵐になっていたからだ。
一方、市村家では、父親の船を勝手に友達に貸したが、まだ帰って来ないと、美栄から聞かされた兄の憲一(石島房太郎)が、その軽率さを叱りつけていた。
すぐさま、水上警察の電話をすると、東京湾一周すると出かけた高校生三人組が帰らないが、大島へでも行っているのではないかと通報する。
美栄は、雨の中、茂夫の家まで、その事態を知らせに走るのだった。
新聞社の社会部に勤務している正木(梅宮辰夫)は、行方不明になった高校生を探しに、海上保安庁の巡視艇が出航したと電話連絡を受け、自分達も現場の写真を撮る為、カメラマンの森本(織田順吉)を連れてヘリで出動する。
やがて、海上で転覆したヨットの上に、三人がしがみついている姿を発見、巡視艇も近づいて来ているので、写真だけ撮って、その後、その高校生たちが収容された愛隣病院に取材に向う。
ベッドに寝かされていた茂夫に取材しようと、病室に押し寄せた取材陣を代表する形で、正木は「どうしてアフリカに逃げ出そうとしたのか?」と、問いつめる。
そうした冷酷な取材態度に怒ったのが、その部屋にいた正木の恋人でもある看護婦の藤本知子(三田佳子)だった。
しかし、記者である正木は、原爆恐怖症が今回の事件の原因なら、それをニュースを通じて訴えたいと熱く反論する。
翌日の朝刊には、こうした原爆に怯える子供の行動には、大人にも責任があると大きく掲載される。
その後、バーで落ち合った正木は、孫はまだかと尋ねる母親からの手紙を知子に読ませて、二年間も付き合いながら、今だ結婚へ踏み出そうとしない彼女の本心を聞き出そうとしていた。
そんな二人のテーブルに近づいて来たのが、流しの殿村(増田順司)だったが、話に夢中の正木は、金だけ渡して断わるのだった。
そんな殿村に、店のホステス(高根黎子)が、病気の妻の事を心配して声を掛けてくれる。
自宅アパートでは、足が悪く寝たきりになった妻の恵子(星美智子)が、殿村の帰りを寂しく待っていた。
殿村は、作曲家になる夢を持っていたが、今では、ピアノも売り払い、その日暮らしの毎日にまで落ちぶれていた。
そんな貧乏生活の中、自分が足手纏いになっている事をすまながる妻が、日本逃亡を企てた高校生たちの話題から、戦争が起きたら自分などはどうなるのかと不安がるので、殿村は、決して戦争なんか起きないと、優しく慰めるのだった。
そんな二人のアパートの隣では、又生まれたらしい赤ん坊が、元気な泣き声を立てていた。
退院して元の学生生活に戻った茂夫だったが、どこかしら、他の三人とはよそよそしくなっていた。
一方、ゴルフ練習場で、久々のデートを楽しんでいた正木と知子だったが、知子が手術に立ち会わなければならないので早めに帰ると言い出したので、又、正木は、看護婦ならたくさんいるのに、こんな短い逢瀬を続けているのは馬鹿げていると引き止めようとする。
しかし、知子は、今の仕事を続けたいのだと言う。
その時、練習場のラジオが、重大ニュースが入っているのでこのままスイッチを切らないようにと言い出したので、正木たちは緊張する。
4時12分、京城放送が伝える所では、核弾頭を積んでいたアメリカの軍用機k-123フェアフィールドが、林通江付近上空で北からの攻撃を受け、爆発墜落したと言う。
朝鮮戦争の記念式典を行っていた韓国軍とアメリカ側は、北朝鮮の計画的犯行だと発表する。
これに対し、北朝鮮側は、アメリカ側に責任があると発表する。
同じニュースを自宅で聞いていた市村家では、父親の良一(亀石征一郎)と憲一が、出かけたまま、何も知らず、仲間たちとディスコで踊りまくって帰らない美栄の事を心配していた。
憲一は、このままでは、戦争が勃発してしまうと極度に恐れ、良一は、原水爆をそう簡単に使うはずがないとなだめていた。
ゴルフ練習場から帰宅途中だった知子は、バスの停留所で、父親に抱かれ泣いていた赤ん坊をあやしてやる。
すぐに母親が戻って来て、赤ん坊を受取りながら知子に礼を言うが、幸せそうに帰る親子の姿を見送りながら、知子は先ほどの正木の「こんな事を何時まで続けているんだ」と言う問いかけを思い出していた。
その後、韓国軍はアメリカの管理下に置かれる事になる。
国連では、緊急安全保障理事会が召集されるが、この時点では、アメリカもソ連も、まだ平和への希望を捨てていなかった。
国会に向った正木は、何とか最新情報を得ようと焦っていた。
一方、病院に戻った知子は、家に帰ろうとする患者たちで、院内がパニック状態になっているのに驚く。
担当の少女、とし子(上野すみ恵)が、誰もいなくなった病室に独り取り残され、泣いているのを発見した知子は、抱きしめて慰めるのだった。
流しの殿村の妻も、病床で不安がっていたが、殿村は、戦争なんか起こるはずがないと慰めていた。
東亜重工に出社した市村憲一は、すぐさま、横須賀出張所所長田村を呼出すと、米軍の動きを聞き出すが、第七艦隊が町中にサイレンを鳴らし非常呼集を掛けていると言う。
その後、防衛庁の桑田に情報を聞こうとしていた最中、11時、北京上空で、U3型戦闘機とと交戦が始まったとの臨時ニュースが飛び込んで来る。
同時刻、横田基地から第五空軍が飛び立って行く姿も見えた。
自衛隊F104Lも待機状態にあると言う。
沢村耕三が勤める銀行では取り付け騒ぎが起こっていた。
心配した茂夫が、銀行に姉と父親を迎えに来るが、最後まで客の相手をするつもりの耕三は、取りあえず姉だけを連れて帰らせる。
午後5時、国連安保理事会では、米ソ互いに責任の擦りあいをはじめていた。
町は群集で溢れ、パニック状態になっていた。
原水爆反対のデモ隊が行進する中、車は、人間を轢いてもそのまま走り去って行く始末。
そうした有り様を姉と目撃し、「何もかもむちゃくちゃだ、この先どうなるのだろう?」と不安がる茂夫。
国会内では、何とか情報を得ようとする記者たちの間を、無言の政治家たちが会議室に集まっていた。
蒋介石は、中国奪還の為攻撃を始める。
自宅に戻って来た市村良一は、郷里の山の洞窟へ逃げようと、家族に呼び掛ける。
そうした中、ラジオから、総理大臣が、緊急事態宣言を下したとのニュースが流れて来る。
食料を調達しようと、馴染みの池田屋に電話した美栄だったが、もはや繋がりもしない。
ニュースは、自衛隊に防衛出動と治安出動が発せられたと伝えていた。
午後7時、NATOも緊急事態に陥ったとのニュースが入る。
もはや、町は大勢の逃げまどう群集で大パニックを起こしていた。
そんな中、逃げる事が出来ず、アパートに二人きりで残っていた、流しの殿村は、不安がる妻に、人類は絶対戦争なんかしないと、言い聞かせるのだった。
国連のベルン事務局長は、両陣営の対決を避けようと、最後の努力を続けていたが、結局、和解が出来ず、安保理事会は解散してしまう。
茂夫は、電話で、まだ銀行に残っていた父親に逃げるように連絡すると、姉と二人で脱出用の荷造りをし始める。
そんな中、帰宅して来た耕三は、家の前で、市村家が乗った自動車にひき逃げされてしまう。
車に乗っていた美栄や憲一は、運転する父親がそのまま走り去るのを非難の眼で見るが、良一は、今は戦争中なんだと自ら言い訳をするように呟く。
帰りが遅いので心配して出て来た茂夫は、路上で倒れている父親を発見、周囲に助けを求めるが、誰も足を止めるものはいない。
病院にあちこち電話をしても、どこも対応してくれない。
焦る茂夫に近づいて来た静子が、もう医者はいらなくなった告げる。
自宅に寝かせた父、耕三は、もう息を引取ったのだ。
正木も、公衆電話から、愛燐病院の知子に逃げるように電話していたが、逃げる患者でごった返す病院内で電話を受けていた知子は、階段で突き飛ばされ気絶したとし子の姿を目撃し、電話をそのままにしてとし子を助けに行く。
とし子の容態を観てくれと頼んでも、医者も逃げ出して行く始末。
正木は、森本カメラマンから、アメリカ人の家族たちが、一斉に京浜国道を羽田に向っているという情報を聞かされる。
その後、OPI特電で、38度線で、ついに中国と韓国が衝突したと伝え聞いた正木と森本は、車に乗って移動しはじめる。
森本は自分達も直ちに逃げようと言い出すが、おれたちは新聞記者なのだから、最後の最後まで取材して報道するのが、記者としての誇りだと正木は反論する。
そうした車内に、渋谷で、食料を強奪する暴徒が発生したというニュースが流れていた。
正木たちを乗せた車は、愛燐病院に到着し、ただりに病院内を捜しまわった正木だったが、どうしても知子の姿は見つけだせなかった。
実は、知子は、気を失ったとし子を抱いたまま、とある部屋のカーテンお陰で眠り込んでいた為、見過ごしてしまっていたのだ。
防衛庁は都民に対し、東京を離れるよう勧告を出す。戦争回避はもはや絶望的になったのだ。
諦めきれない正木だったが、やむを得ず、車で病院を後にする事になる。
その直後、気を失っていたとし子が目覚めたのに気づいた知子は喜ぶが、両親が迎えに来ないのを寂しがるとし子に、懸命に励ましの言葉をかけるのだった。
そのとし子の両親は、病院に駆け付ける途中で群集に行く手を阻まれ、仕方なく、流れのままに地下街に降りていた。
そんな中、茂夫の学校の不良上級生たちは、避難途中の若い女性を、無理矢理バイクに乗せ、さらって行っていた。
その頃、茂夫と静子は、大勢の群集と共に山に向っていた。
アメリカの空母コレスタル号が、ゴスポラル湾で沈没したとのニュースが流れる。
愛燐病院では、知子がとし子に絵本を読んで聞かせていたが、とし子は、どうして戦争するの?戦争って何?と無邪気に尋ねて来る。
そして、逃げちゃ嫌と、何も答えられない知子に抱きつくのだった。
ソ連は非常警告を発する。
米国も、友好国の一致団結を呼び掛ける。
イギリスでは、1960年は、後年、狂気の年だったと呼ばれるようになるだろうと談話を発表していた。
流しの殿村は、部屋で静かにギターを奏でていた。
その間、妻は、久々に化粧を終えて、本当は赤ちゃんが欲しかったんじゃないかと夫に問いかけていたが、殿村は、今のままで幸福だと答えるのだった。
市村一家を乗せた車は、避難する群集と共に、山を登っていたが、やがて、爆弾が落ちて来ると叫ぶ男の声が引き金になり、全員、パニック状態になって脇道へ逃げ込みはじめる。
市村一家も車を乗り捨て、その後を追う。
その頃、茂夫と静子を追い抜いて行ったバイクが転倒して、乗っていた不良と女性が投げ出されてしまう。
静子がもう歩けないと弱音を吐き出したので、茂夫は、目の前に転倒していたバイクを起こすと、それに乗って逃げようと言い出す。
他人のものを盗む事に抵抗感がある静子だったが、もはや、そんな事を言っている場合ではないと言う茂夫に従いバイクに同乗する。
正木たちが乗った車は、故障して山の中で立ち往生していたが、そんな彼らの上空を、厚木基地からモスクワに向けて飛び立ったジェット機が過ぎ去って行った。
その機影を病院の窓から観ていたとし子は、あの飛行機はどこへ行くの?と問いかけて来るが、知子はそれに答えず、夕焼け小焼けの歌を口ずさみ始める。
モスクワの放送局は、日本政府に反省を促したが聞き届けられなかった。かくなる上は、反撃を加える事になると伝えて来る。
誰もいない病室のベッドの上で、独り、合掌する老婆の姿。
思わず、とし子は「ママ!」と叫び、その声を聞いたと思った地下街の母親は「とし子!」と返事をする。
ソ連放送局は、今から12分40秒後に、世界各地の米軍基地を核攻撃しはじめると宣言した後、日本人民の皆さん、さようならと放送を終える。
正木は腕時計で時間を確認し、後7分しかない事に気づく。
これに対し、アメリカの原子力潜水艦は、ソ連圏に核ミサイルを発射、アメリカは最後の言葉を送りますと伝えるのみだった。
知子は、とし子に対し、お目目をつぶって御覧なさい、そうすれば何も怖くないからと教える。
そして、赤とんぼの歌を歌い続けるのだった。
その頃、無人の教会にやって来た殿村夫妻は、十字架の前にひざまずきながら、もう、歌を作っても、誰もそれを歌ってくれる人がいなくなる。何もかも夢だったと呟く夫に対し、あなたの歌は、私の胸の中にいつまでも残ると答える妻は、元気だった頃、教会の合唱隊で賛美歌を歌っていた頃の自分の姿を思い出すのだった。
無人の浅草、銀座、東京駅。
地下街に集結した民衆の中では、赤ん坊をあやす子守唄の歌だけが聞こえていた。
その静寂に耐えきれなくなった憲一は、嫌だ!あいつらの犠牲になるのは嫌だ!と急に叫びだし、地上に飛び出して行く。
次の瞬間、東京タワーがミサイルで木っ端みじんに破壊される。
次いで、国会議事堂も。
東京の方向に上がったきのこ雲を目撃した正木たちの廻りに、白い灰が降って来る。
死の灰だった。
車の無線で新聞社を呼出す森本カメラマンだったが、もはや何の返事もない。
厚木基地だけを攻撃すると思い込んでいた正木は、もはや東京全体が壊滅した事を知るが、トモコを残して来た彼は、自分一人で東京に戻ると言い出す。
もはや、どこにいても、後数時間しか生きていれないのだからと、森本に言い残して。
ソ連の基地からは、次々と核ミサイルが発射される、
アメリカの原潜からも次々に核ミサイルが飛び立つ。
水爆があちこちで爆発し、モスクワもサンフランシスコも壊滅してしまった。
きのこ雲が沸き立ち、東京の町は無惨な焼け野原になっていた。
累々と続く、死体の山。
その中には、焼けこげたバイクの横に横たわった、茂夫と静子の死体もあった。
東京に戻って来た正木は、病院痕の瓦礫の中に倒れていた知子を発見する。
知子死体がかばうように覆っていた下には、とし子も死んでいた。
そのとし子の顔にハンケチをかけると、正木は、知子の死体を抱きかかえ、「どうして?どうして、何もしないおれたちが、こんなみじめな死に方をしなくちゃならないんだ!一体、誰が戦争をはじめたんだ!」と、無人の廃虚に向って叫ぶのだった。
その後、生き残ったアルゼンチン放送局が、世界に呼び掛ける。
今回の第三次世界大戦で、28億の世界人口の内、20億の人命が失われた。
そこに、勝敗はなく、人類自身が破れ去ったのだ。
我々が今後作る新世界では、絶対に、第四次世界大戦等起こさない事を宣言する…。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
山並の絵の上に、東映の三角マークが出て来る「第二東映」が作った、終末テーマのSF映画。
円谷英二の特撮で有名な、東宝の「世界大戦争」(1961)のちょうど一年前に作られた作品であるのが興味深い。
何しろ、この二つの作品、内容はほとんど同じと言って良い。
「世界大戦争」が、フランキー堺扮する運転手家族を中心としたドラマであるのに対し、こちらの東映版では、複数の家族のドラマが平行して描かれているのが違うくらいで、当時の日本人が恐れていた核戦争が勃発し、東京が壊滅してしまう展開は全く一緒である。
無力で罪のない庶民、特に、小さな子供と、それを守ろうとする若い娘の叙情的な描写がある所も共通している。
「世界大戦争」がカラーで、いかにも予算を掛けた特撮大作風に作られているのに対し、こちらの作品は、あくまでも、添え物風の低予算で作られた白黒作品である事が違うくらいで、その息詰まるようなサスペンスやパニック描写振りは遜色がないというか、むしろ、こちらの作品の方が上のようにも思える。
矢島信男の手になる特撮面は、さすがに円谷特撮ほど豪華ではないが、実写フィルム等も巧く挟み、こちらはこちらで見ごたえがあり、特にチャチと言う感じでもない。
東京タワーが破壊されるシーン等は、この作品独自の描写で、衝撃的ですらある。
原水爆に怯えたり無関心な高校生たち、子供達を育て上げ、小さな老後の幸せを掴みかけている小市民、自分達の幸福を掴み倦ねている恋人二人、不遇の芸術家夫婦など、その群集ドラマのバリエーションに不足はない。
熱血漢の記者を演じている梅宮辰夫も、看護婦の仕事に殉じようとする三田佳子も、共に若くて初々しく、その互いの美しさが最後の涙を誘う。
これは「世界大戦争」の宝田明と星由利子コンビと好対照である。
隠れた特撮名作の一本だと思う。
