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生首情痴事件

1967年、大蔵映画、津川京一脚本、小川欽也監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

藤山玲子(火鳥こずえ)が入浴していると、電話がかかって来る。

出ると、夫の五郎(鶴岡八郎)からだった。

今日は帰れないので、戸締まりをちゃんとして休むようにと言うもので、玲子が何か言いかけると、向こうから勝手に切ってしまう。

実は、その五郎、愛人の順子(高月絢子)と一緒にホテルのベッドの中にいた。

大学の研究室にいた五郎は、林田教授の財産目当てに、その娘の玲子と結婚したのであり、その結果、今や、東洋企業の設計課長になっていた。

順子とは研究所時代からの付き合いだったが、周囲には、順子は五郎にふられて国に帰った事になっていたが、実は関係はズルズルといまだに続いていたのだった。

ベッドの中で、そんな日陰者の立場に甘んじている順子の不満を聞かされた五郎は、三年前に互いに誓いあった言葉を忘れたのかと言う。

林田教授はすでに他界したので、後は、玲子だけの問題なんだと。

自宅で、登記簿を確認していた五郎は蒼ざめていた。

やって来た玲子に、浦和に工場が売りに出ているので、それを購入して、自分も独立したいと言い出した五郎は、お前も妻として協力すべきじゃないかと強い調子で説得しはじめる。

何の事か分からない様子の玲子が、訳を聞くと、土地と株の名義が全て、玲子の名前に変更されていると言う。

全くそんな事は知らなかった玲子だったが、どうやら、結婚後、五郎の人格を疑問視した父親が生前、独断でやった事らしい。

五郎はもどうやらその事に気づいたようで、それなら、全部、自分の名義に変更して良いかと玲子に聞くが、それに対し、玲子は、それは出来ない。名義変更をしたいのなら、順子との中を清算してくれと切り出して来る。研究所時代からの彼女との関係が切れていないどころか、いまだに月々の金まで渡している事を知り抜いているようだ。

そうなると、五郎の態度は豹変した。

お前との結婚は政略目的でしかなく、愛して等いなかった。

悔しかったら、順子と同じような男を喜ばすテクニックを見せてみろと、彼女の着物を強引に脱ぐ¥がし始める。

屈辱されながら、玲子は、自分の悪事をあばかれた腹いせに、こんな事をしている夫を心から軽蔑して泣くのだった。

その時、廊下の電話が鳴り響く。

五郎が出た電話の相手は、順子だった。

彼女は、五郎が買ってやると約束していたバーの物件を相談する為にすでに不動産屋におり、そこから電話して来たのだが、五郎は、事情があって、その話は保留になったと伝える。

がっかりして、その事を不動産屋(冬木喬二)に告げた順子だったが、そんな彼女に、藤山家の屋敷は今売れば、4000万ちょっとで売れるのに…と残念がってみせる。

後日、五郎と落ち合った順子は、その値段の事を伝え、所詮あなたは何も出来ない婿養子に過ぎないとバカにされた五郎は、彼女と一緒に帰る車の中から、どこかに出かけている玲子の姿を目撃する。

順子から、彼女も浮気をしているのでは?と吹き込まれた五郎は、帰宅するなり、玲子を殴って、どこに行ったのか聞き出そうとする。

すると、玲子は意外な返事をする。

子供が出来たので、自分と別れてくれと言うのだ。

今日は病院に行って、妊娠三ヶ月だった事を知ったので、その子が生まれて、あなたから認知してもらったら、それで離婚しようと、前々から考えていたのだと言う。

立ち上がって部屋を出ようとした玲子は、立ちくらみに襲われる。

翌日、ドライブ中、五郎から玲子の妊娠の事を打ち明けられた順子は、このままでは、あなたは無一文になる。自分があなたの為に三回も中絶しに行った馴染みの医者を紹介するから、玲子にも中絶させろと迫る。

その後、五郎が、自宅に往診させた医者(泉田洋志)は、玲子の身体を診察して、神経の方がだいぶんまいっているようで、このままでは出産にも差し障りがありそうなので、神経科の医者にも行った方が良いと診断を下す。

その後、その医者にコーヒーを出した玲子は、医者が入れた砂糖が塩に変わっていたと指摘され、狼狽する。

そして、すぐにお代りを持って来ますと、そのコーヒーカップをトレイに回収して部屋を出かかった玲子は、ふらついて入口付近に倒れて泣き出してしまう。

そのみじめな様子を、五郎と彼が連れて来た医者は、冷淡に見つめていた。

その夜、玲子は恐ろしい夢を観ていた。

沼周辺の草むらを自分が逃げ回っており、それを追い掛けて来た五郎が、無理矢理錠剤のようなものを彼女の口に押し込もうとしている夢だった。

思わず目覚めた玲子は、横で寝ていた五郎から、君は神経衰弱になっているのだと言われるが、あなたは私を殺そうとしている。その目は悪魔の目だと言い放つのだった。

しかし、五郎は気にしない様子で、医者から渡された粉薬を渡そうとするが、玲子はそれを払い除けてしまう。

その時、又しても、廊下の電話が鳴りだし、それに出た五郎は、ただ「分かった」と言って切ってしまう。

五郎は、グラスに注いだ酒の中に粉薬を交ぜはじめる。

何とか、家から逃げようと考えた玲子は、表に通じるガラス戸を開けるが、外にはグラスを持った五郎が待ち構えていた。

五郎は、グラスの酒を自らの口に含むと、玲子を捕まえて、口移しでその酒を飲ませようとする。必死に抵抗する玲子だったが、結局、飲ませられ、睡眠薬が入っていたのか昏倒してしまう。

そこへ、順子運転の車が到着したライトが見える。

その順子の車が先導する形で、五郎は、後部席に眠ったままの玲子を乗せた車で後を追う。

人目につかないとある線路脇に到着した五郎は、玲子の身体を線路に横たえ、順子の車の方に戻って来る。

やがて、機関車が接近し、五郎が双眼鏡で現場を確認していると、今正に通過した帰還者に轢断された玲子の首が飛んで行く所だった。

翌日、城南警察署の刑事部屋に呼出されていた五郎は、担当刑事松本(椙山拳一郎)から、奥さんの首だけがどうしても見つからないと報告していた。

玲子が神経衰弱だったと言う事で、完全に自殺として処理されているのだ。

五郎が、玲子を乗せて現場に残して来た車は、玲子が自分で運転して行ったと警察では考えられていたため、五郎はそれを引き取るよう刑事から告げられる。

その足で五郎は、順子の待つアパートに向う。

もはや、二人の中を邪魔するものはいなくなったと、安心して抱き合う二人だったが、その順子が、玲子の首が見つからないんですってねと言うので、五郎は驚愕する。

そんな事は一言も告げていなかったからだ。

しかし、順子は、今、あなたが自分の口でしゃべったと言う。

言った覚えのない五郎は愕然とするが、気分を変えようと、順子が裸になってベッドに誘うので、そのまま愛欲で全てを忘れる事にする。

屋敷に戻った二人は、屋敷を売って現金にする事にするが、テーブルの上に置いてあった登記書類が突然風もないのにめくれたので、ガラス戸を閉めようとした順子は、何故か自分で指を挟まれて出血してしまい、その場に倒れてしまう。

その様子を観ていた五郎は、何時か、医者にコーヒーを出した時、入口で倒れた玲子の姿を連想するのだった。

取りあえず、ハンカチで彼女の傷口を押さえ、コーヒーでも飲もうと、台所からセットを持って帰って来た五郎は、居間に血の付いたハンカチが残されているだけで、順子の姿が見えなくなっているのに気づき、屋敷内を捜しまわる。

すると、シャワールームで、順子が勝手にシャワーを浴びているではないか。

無断でいなくなった事をとがめながらも、その順子の裸身に思わず夢中になり、抱きつく五郎。

その後、改めて、コーヒーを飲もうとした二人だったが、入れた砂糖は、又しても塩だった。

玲子を騙す為、自分が塩に入れ換えておいたあの時以降、ちゃんと元通り砂糖を入れておいたと思っていた五郎は戸惑う。

夜、順子とベッドを共にしていた五郎は、廊下の電話がなったので出てみると、相手は城南署の松本で、やはり、玲子の首は見つからないのだが、明日、行政解剖の手続き等があるので来て欲しいと言う連絡であった。

寝室に戻った五郎は、部屋の明かりが消えており、ベッドには順子が布団をかぶって顔を見せないように寝ているので、不審に思い、明かりをつけようとするが、何故か付かない。

しかたなく、暗がりの中で、順子を起こそうと、その顔に手をかけると、首がベッドの脇の落ちて、玲子の顔が睨み付けるので、驚愕した五郎だったが、突然明かりがつき、順子が笑いながら、それはいたずらだと言う。

良く見直すと、首と見えたのは、枕に女物のウィッグをかぶせただけのものだった。

しかし、改めて順子の顔を観てみると、それは玲子の顔になっており、その身体が下の方から消えて行くと、首だけになって睨み付けて来る。

怯えた五郎は、その首を殴りつけるが、気が付いてみると、順子が倒れているではないか。

順子は、急に五郎から殴られたので文句を言って来る。

翌日、不動産屋に出かけた五郎と順子だったが、不動産屋は、屋敷の値段を2500万円だと言い出す。

登記所の名義人が自殺したり、その葬式の前に売るとなると、色々警戒したくなりますので…と言い訳する不動産屋。

その時、急に雷鳴が聞こえたかと思うと、外は雷雨になる。

順子は呆れて、他の不動産屋を当ろうと立ち上がりかけるが、他に廻っても、もっと安く買い叩かれるだけだと聞かされた五郎は、2500万円でも構わないと言って、その場で契約を交わす事にする。

渡された契約書に、印鑑を押そうとした五郎だったが、何故か、全く書類に印がつかない。

さらに、書類に電光が走ったかと思うと、急に燃えだし、近くに座っていた順子の顔にへばりついてしまう。

顔に大火傷を追った順子は、いつもの医者の所に連れて行くように頼み、睡眠薬を飲まされベッドに寝かせられるが、五郎は医者から、もう順子は完治する見込も少ないし、失明する可能性すらある事を聞かされる。

そうした状況でも、五郎は看護婦マチ子(泉ゆり)の可愛さに早くも目を付けていた。

医者から勧められ、別室で酒を振舞われた五郎は泥酔してしまい、看護婦にアパートまで送ってもらって来たが、部屋に入ると、いきなり、その看護婦を襲い、ベッドに連れ込んでしまう。

後日、順子の見舞いにやって来た五郎は、順子に水を飲ませていたマチ子に黙って金を渡す。

その後、マチ子とは頻繁に付き合うようになり、ダイヤの指輪を買って与えホテルに連れ込んだ五郎は、早速彼女を寝室で抱くが、電気が点灯し出したかと思うと、又、おぞましい姿になった玲子の顔を見るのだった。

慌てて逃げ出そうとした五郎は、自分のバッグを倒してしまい、その中に大量の札束が入っている事を、マチ子は見逃さなかった。

マチ子は、五郎が海外へ高飛びしようとしている事を医者に告げていた。

もともと、彼女は、医者の命令で動いていたらしい。

しかし、その五郎が、今夜順子に会いに来ると言っているのが奇妙だと話すマチ子。

その夜、会いに来た五郎に、何かを感じ取ったのか、今夜だけにここにと待っていってくれと哀願する包帯姿の順子。

優しくそれを承知した五郎は、夜風にでもあたったらと、順子を窓辺に誘うと、いきなり、その身体を窓の外に突き落とそうとする。

しかし、振り向いた包帯の顔は、玲子の顔に見えたので、怯んだ五郎は、部屋に置いてあった果物ナイフを取り上げると、その顔を切ってしまう。

すると、中から現れたのは、二目と観られる火傷を追った順子の素顔。

しかも、五郎の手にへばりついた順子の髪の毛は、蛇に変わってまとわり付いて来る。

あらかじめ外で様子を伺っていたのか、その騒動の最中、病室に入って来た医者と看護婦のマチ子は、すぐに五郎の鞄を奪って逃げ出そうとするが、何故か入口のドアが開かなくなる。

病室の中で、4人はくんずほぐれつの大乱闘になるが、藤山を押さえようとしてはねつけられた医者は、ドアに頭をぶつけて血まみれになる。

もはや、狂気に駆られた五郎は、マチ子をナイフで刺すと、医者も刺す。

醜い素顔をさらけだした順子の首も締めて殺した五郎だったが、その様子を、部屋に浮いた玲子の生首が静かに見つめていた。

入口から逃げようとした五郎だったが、躓いて転んだはずみで、自ら持っていたナイフで自分の腹を刺して倒れてしまう。

その手には、しっかり札束が握られていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

新東宝倒産後、大蔵貢社長が立ち上げたエログロ専門の大蔵映画が作った低予算のキワモノ怪談。

基本的には白黒作品なのだが、部分部分に、赤いカラー画面が挿入されているのが珍しい。

最初にカラー画面になるのは、玲子殺害後、順子のアパートに来た五郎が、裸でベッドに誘う順子の姿を見るシーンから。

何故か、腰には広げたヌード雑誌がかけられており、腕は胸を隠していると言う構図だが、一応、全身ヌードの見せ場と言う事なのだろう。

さらに、屋敷で指を挟んだ順子がいなくなるシーンで、今に残された血染めのハンカチがカラーになっている。

その後、看護婦マチ子を抱く時もカラーになるし、後半、エロとグロの見せ場になると思われる部分にカラーが使用されている。

登場人物は基本的に5、6人しかおらず、舞台も限られているのだが、それなりに映画になっているのに感心する。

特に、特撮と言うほどの高度な技術も使われていないが、順子が屋敷の寝室で五郎にいたずらを仕掛けるシーンでは、玲子の半透明な姿が、下からワイプのように消えて行くと言う合成が使われている。

ラストの病室内での乱闘はなかなかの見物。

この手の怪談の決まりごとなのか、亡霊となった玲子の顔は、何故か「四谷怪談」のお岩様のように、片目が潰れている。

大火傷を追った順子の顔があばかれる所も、当時としては、かなりのグロテスクさだったのだろう。

今観て、特に吃驚するような内容でもないが、殺されるヒロイン役の火鳥こずえという女優はなかなかの美人。

又、ヌードを披露している順子役の高月絢子は、わき毛の処理をしておらず、それが画面に大写しになるのだが、これも当時としては、サービスの一環だったと言う事なのだろうか?