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万年太郎と姐御社員

1961年、ニュー東映、源氏鶏太原作、舟橋和郎脚色、小林恒夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

青函連絡船に乗っているのは、札幌支店に転勤させられた万年太郎(高倉健)。

その顔には無精髭が生えている。

「ボーイズビーアンビシャス!アァ~!」と大きく雄叫びを上げると、それに呼応するかのように、汽笛が響き、やがてその汽笛は列車の汽笛と重なる。

タイトル

あぶた駅に停車した蒸気機関車の窓から弁当を買う太郎。

ところが、新聞紙を広げてみると、中に包まれていたのは一匹の毛ガニ。

こんなもの食えるかと怒る太郎だったが、周囲の席を見渡してみると、アイヌの人たちがみんな毛ガニを頬張っている最中だった。

太郎の前に座ったアイヌ娘(山東昭子)が、隣に座った父親らしき人物に何か耳打ちすると、その父親は太郎に向かい、アイヌ人のくせに毛ガニを食べないとは変だと言っていると告げる。

それを聞いた太郎はひげ面はアイヌだけじゃないと憤慨し、席を立つと、ひげ剃りを持って洗面所に向かう。

そこには先客の女性がおり、太郎とすれ違うように席に戻った彼女の櫛が、鏡の前に忘れられていた。

ひげを剃り終えた太郎は、その櫛を持って、女性の席に持って行ってやる。

すると、その女性は、感謝をすると同時に、太郎が大昭和商事の社員なのかと聞いて来る。

スーツに付いた社員バッジに気づいたらしい。

何と、彼女も同じ大昭和商事の札幌支店に勤務していると言うではないか。

今度こちらに転勤になったのだが、もらった飛行機代を全部飲んでしまったと打ち明けた太郎の話を聞いた彼女、板橋ゆみ子(星輝美)は、けんかっ早い太郎の噂を既に聞いていると愉快そうに教える。

彼女は、札幌では絶対に喧嘩しないと言い張る太郎に対し、もし約束を破ったら、自分の家来、つまり子分になるかとからかうように言って来たので、後に引けなくなった太郎はすぐ彼女と指切りしてしまう。

札幌に着いた太郎から、札幌支店の浅井さんの所を訪ねるように言われて来たと聞いたゆみ子は、浅井さんの居場所なら知っていると太郎を、狸小路にあるバー「あかしあ」に連れて行く。

浅井又兵衛(伊藤雄之助)と、バーのマダムアナスターシア(ナンシー・ブローク)は、太郎を一目で気に入る。

ちょうど、その店の奥には、札幌支店長の腹心で、社員たちがへつらっている林田(大村文武)と、今取引交渉中の日の出水産の重役、石辺(上田吉二郎)と言う嫌な二人が来ていると言う。

浅井とゆみ子はそんな社風に抵抗している反骨グループなのだと聞いた太郎は、自分もそのグループに入れてくれと頼む。

そんな三人の前に現れた林田は、太郎の事を知ると、急にピストルのおもちゃを取り出し、驚く太郎をあざ笑う。

さらに、林田が嫌がるマダムを無理に石辺の席に呼ぼうとするので、太郎は持ち前の正義感から進んで石辺の席に出向き、マダムが好きなのなら自分で申し込めと石辺に啖呵を切る。

そこにやって来た林田は、石辺に対し謝れと太郎に迫り、太郎が拒否すると、ビールを浴びせかける。

その様子を見ていたアナスターシアは、太郎の気っ風に惚れ込んでしまう。

その夜、酔った太郎は、ホテルが満員だと言うので、浅井に誘われ、彼の自宅まで付いて行くが、家では妻が怖いのか、急におとなしくなった浅井から、冷蔵庫から取り出したミソとキュウリを渡され、食べろと勧められる。

そこに妻が顔をのぞかせたので、慌てた浅井は、太郎にすぐに寝るように言い、隣の部屋に押し込む。

気がつくとその部屋には、何と9人もの子供が寝ており、太郎はやけになって、その子供たちの間に割って寝る事にするのだった。

翌朝、会社に出社すると、社員たち全員の太郎に対する目線が冷たい。

出社して来た堀江課長(花澤徳衛)は、君のような厄介者を自分の庶務課で預かる事になり困っていると、本人の前で愚痴り始める始末。

さらに、太郎の机はまだ用意してないので、当分ゆみ子の机を半分使えと言う始末。

ゆみ子は、隣に座る事になった太郎に、夕べの事がもう社内中に知れ渡っていると教える。

その後、君塚支店長(十朱久雄)に呼ばれた太郎は、日の出水産とは年間3億円に上る取引があると説明されていたが、そこへ林田がやって来て、夕べの不始末で日の出との契約がふいになったと言う。

すぐに謝りに行けと支店長から命じられた太郎だったが、自分は何も悪い事をしていないので嫌だと言う太郎は、その場で、こんな会社、こちらから辞めさせてもらうと言い放ち、社を飛び出してしまう。

林田に追従している社員たちは、林田と同じく全員拳銃のモデルを取り出し、はしゃぎだすが、そこに戻って来た太郎は、前は部下だったから遠慮したけど、今は対等だからと言いながら、林田と殴って会社を後にする。

公園のベンチで放心状態だった太郎の元にやって来たゆみ子は、自分との約束を破ったので、今から自分の子分になれと、固めの杯ならぬジュースを飲ませていたが、そこに浅井も近づいて来て、会社を辞めたら反骨グループが負けた事になると忠告、ゆみ子はチャンスを待つため、支店長に詫びてこいと太郎に命じるのだった。

その後、一応、会社に留まる事になった太郎を迎えた林田は、サラリーマンは英雄になれないし、上司の趣味に合わせるようにしろと説教しながら、モデルガンで殴りつける。

結局、太郎は、石辺に謝るため、釧路へと飛ぶ事になる。

釧路は、折しも港祭りでにぎわている最中。

船に乗ったミス釧路に、橋の上から見とれていた太郎は、思わず帽子を落としてしまう。

ちょうど船の上に落ちたその帽子を、ミス釧路は、持っていた風船に付けて返してくれる。

日の出水産に到着した太郎は、石辺に謝るが、石辺は頑として許さず、取引しないと一歩も引かない。

それでは会社に帰れないと頭を下げる太郎に対し、魚心あれば水心、「あかしあ」のマダムを世話しろと横柄に言い出す石辺。

さすがに堪忍袋の緒が切れた太郎は、テーブルをひっくり返し、部屋を飛び出してしまうのだった。

その後、呆然と座っていた浜辺で毛ガニにズボンの裾をつかまれ、あたふたする太郎だったが、夜は、地元のバー「アナスターシア」に入ってみる。

すると、あのアナスターシアが出て来たではないか。

彼女は、札幌の「あかしあ」とこの店の二件を経営しているのだと言う。

アナスターシアは、太郎にアスパラガスを勧め、今から一緒に阿寒湖にドライブに行こうと言い出すと、すぐ着替えて来ると奥に消える。

その直後、一人の若い女性が太郎の隣に入って来て、追われているので助けてと言う。

入り口の方からは、三人の外国人船員が入って来たので、義侠心を出した太郎は、その場で船員たちを殴りつけ、女性を連れて店を飛び出すと、「石川啄木の碑」の所まで連れて行く。

その女性は、旅行中なので、一緒に旅をしないかと太郎に勧める。

初めてあった男を旅に誘う女の度胸に呆れた太郎だったが、他に予定もなかったので、翌日、車でやって来た彼女に同行する事になる。

ところが、車には、彼女の祖父らしきじいさん(月形龍之介)が乗っているではないか。

聞けば、戦時中、陸軍中将だった人物で、戦争に負けた事が今でも悔しいらしい。

そのじいさん、太郎の名前「万年」を覚えられず、「亀は万年」と孫のチャコこと久子(小林裕子)から教えられたので、それからはずっと「亀」と太郎を呼ぶ事になる。

久子とじいさんに同行する事になった太郎は、遊覧飛行機で摩周湖、屈斜路湖などを見物、太郎と一緒にボートで阿寒湖に乗り出した久子は、急に「悲しいアイヌのマリモ伝説」を話し始めると、自分も悲劇のヒロインセトナのように、マリモの間に浮かんでみるから撮ってみてと言い残し、水着姿になると湖に飛び込む。

それを、8mmで撮影していた太郎は、ボートに戻って来た久子に引き上げてとズボンをつかまれ、その拍子に湖に落ちてしまう。

その頃、じいさんは、アイヌの踊りを一人上機嫌で見物していた。

ずぶぬれになって岸に戻って来た太郎と久子は、同じく遊びに来ていたアナスターシアに遭遇する。

先日、太郎にドライブをすっぽかされたアナスターシアは、太郎を奪った久子に文句を言い始め、久子の方も、ただ用心棒にちょうど良いから、太郎に同行を頼んだだけと言い返し、女二人は言い争いを始める。

その後、久子とホテルの庭で休息していたじいさんは、あの亀は最近にしてはなかなか気骨がある男だが、お前の婿にどうだと言い出した後、その久子に、東京の大昭和商事に電話を入れさせると、笹間社長(永田靖)を呼び出し、日の出水産との取引がダメになったそうじゃないかと叱りつける。

慌てた社長は、その事を札幌支店長に注意。

首になるかもしれないと窮地に立たされた支店長は、これはすべて万年のせいだと怒りだす。

その支店長と林田に呼び出され、また文句を聞かされた太郎は、日の出がダメなら、他の取引を取れば良いのでは?例えば、アスパラガスの缶詰で有名なクレードル興農などはどうかと提言するが、林田は、あそことはこれまで何回も交渉して来たが無理だった。もしお前がその取引を取れなかったら責任取れと迫る。

太郎が去った後、林田は、日の出との問題はいつものように金で解決しようと言い出し、支店長から200万出してもらう事にする。

その後、手提げ金庫を持って廊下を歩いていたゆみ子に言いよる林田。

抱きつかれそうになったゆみ子は、とっさに火災報知器を鳴らし、林田の暴挙を未然に阻止するのだった。

太郎は、街の食料品店から、アスパラ缶をはじめ、クレードル製品を買い集めていた。

そこにゆみ子がやって来たので、彼女のアパートで、クレードル製品の試食をしてみる事にする。

そこでゆみ子は、実は、クレードルの社長秘書みどりは自分の高校時代の友達だし、社長と言うのは銃が趣味らしいと太郎に教える。

早速、太郎は、ゆみ子を伴い、バスでクレードル興農に向かう事にするが、その途中、急にバスの前に立ちふさがり、強引に乗り込んで来た迷惑客がいた。

あのじいさんと久子だった。

太郎は、いきなりそのじいさんから日の出との取引の失敗の事を聞かれたので、あれは現場の事を何も知らない我が社の会長が悪く、会長など無用の長物だと不満を述べる。

そのじいさんがゆみ子の隣に強引に座り、結果的に太郎の隣に座る事になった久子がいちゃつきだしたので、久子はご機嫌斜め。

喜茂別に到着した太郎は、怒るゆみ子をなだめながらクレードル興農の社内に入り込み、古川みどり(光岡早苗)と合流。

製品作りを自ら現場に出て手伝っている丸山社長(三島雅夫)を教えてもらう。

すると太郎は、直談判してみると、いきなりその社長に近づくと、社長と気がついていない風を装い、クレードル製品を誉め始める。

社長は、そんな太郎の下手な芝居をすぐに見破るが、太郎の人柄に惚れ込んだのか、洞爺湖での銃の練習に付き合わせくれる事になる。

ところが、御機嫌取りができない太郎は、その練習でまぐれにしろ、社長より良い結果を出してしまう。

その最中、社長に、林田から匿名の電話が入り、万年と言う人物がお宅に伺っているはずだが、その人物は大昭和を辞めた人物だから話に乗るなと忠告される。

社長は、その後、練習を切り上げ、太郎に引き取ってくれと言うと帰ってしまう。

車も通りかからないような辺鄙な場所で、いきなり帰らされる事になった太郎とゆみ子は途方に暮れる。

今の銃の練習で、社長に太郎が勝ってしまったのが怒らせた原因だと思い込んだゆみ子は、太郎の融通の利かなさを責めるが、気を取り直した二人は、唄を歌いながら歩き始める。

やがて二人は、無人の船小屋を見つけ中に入ってみる。

するとそこに、丸木舟と櫂が置いてあったので、これ幸いとばかり拝借しようとする。

ところが、無人だとばかり思っていた小屋の物陰にアイヌの女が潜んでおり、いきなり斧で太郎に襲いかかって来る。

万年は、その女が、列車で同席した女と気づくと、自らの胸毛を見せ、女に自分を思い出させようとする。

しかし、アイヌの女は、仲間たちが近づいて来る声に気づくと声を上げはじめる。

やむなく、太郎は、その女を抱きしめると接吻をして声を奪う。

女は黙ってしまい、その直後、小屋に入って来て丸木舟を運び出す男たちと一緒に外に出て行ってしまう。

その間、物陰に隠れていた太郎とゆみ子は難を逃れるが、ゆみ子は、今の太郎の接吻でまた怒っている様子。

疲れたのでここで一晩明かそうと言う太郎に、自分一人でも帰ると憤慨したゆみ子だったが、さすがに犬の遠吠えが聞こえて来ると、小屋を出るのをためらい、結局、太郎と一緒に小屋に泊まる事にする。

その洞爺湖で一晩明かした噂は、翌日社内中に知れ渡る事になる。

恥ずかしがるゆみ子だったが、そこにクレードルのみどりから電話が入り、昨日は、社長に匿名の電話があり、太郎が大昭和の社員ではないとの密告があったのだと知らせてくれた。

そのみどりの電話中、社長室に入って来た丸山社長は、そのみどりの口から、今電話で先方に確認した所、万年太郎は正規の大昭和社員であるばかりでなく、昨日、丸山社長が機嫌を損ねたのは、銃の勝負に負けた事が原因だと先方では思い込んでいる様子だと聞かされ憤慨する。

くさくさして表に飛び出した太郎は、クラーク博士の像の前で、クラーク博士に励まされたような気分になる。

そこにゆみ子が駆けつけて来て、丸山社長から、銃のリターンマッチの連絡があった事を知らされる。

ガンマンの姿になり、猟犬「タロー」を連れた丸山社長と狩りに出かけた太郎だったが、いきなり熊が出現し、二人とも逃げ出す結果に。

その後、ジンギスカン鍋を食べながら、以前からリベートを渡して契約を取ろうとする事で有名な林田がいる大昭和と取引すれば、周りからこちらがリベートをもらったと誤解されるので、あの男がいる限り取引できない。君の会社のリベート政策は有名だと、丸山社長は太郎に腹を割って教える。

後日、太郎、ゆみ子、浅井の反骨グループが「あかしあ」に集まっていると、ホステスのお時(梶すみ子)から電話を受けた林田は、例のものを仕掛けておけと命ずる。

その反骨グループがいる部屋に、突如入って来たのはあのじいさんと久子。

隣の部屋にいて、君たちの話は聞こえたので、自分も仲間に入れてくれと言うではないか。

作戦を授けてやる。林田なんて一刀両断で斬ってしまえと息巻くじいさんに困惑した太郎は、浅井たちに、このじいさんは頭がおかしい元軍人だと耳打ちする。

そこに、アナスターシアが入って来て、また太郎に色目を使い始めたので、怒ったゆみ子は帰ると言い出し、ふすまを開ける。

ところが、そこは出口ではなく押し入れで、そこにテープレコーダーが仕掛けてある事に気づく。

それを見た太郎は、スパイはこれを止めに来るはずだと気づく。

案の定、その後、テープレコーダーを回収しに来たのはお時だった。

隠れていたアナスターシアたちは、お時の前に姿を見せ、それを仕掛けさせたのは誰だと迫る。

そこに、林田と石部がやって来たと知らされた太郎は、これを逆利用しようと言い出す。

テープを仕掛けたアイヌ人形をアナスターシアが仕掛けた座敷に座った林田は、石辺に百万円のリベートを渡すと、今後もごねてくれと笑い合う。

その後、大昭和商事と日の出水産は無事取引が成立し、両社主催のパーティが執り行われる事になる。

堀江課長の進行で、舞台では演芸が始まり、まずゆみ子が唄う「ソーラン節」に合わせ、女性たちが踊りを披露する。

その後、いきなり予定外の寸劇「水戸黄門漫遊記」が始まったので、司会の堀江課長は面食らう。

面をかぶった三人が舞台に登場し、水戸黄門役の人物が、今回の取引成立の裏ではリベートで儲けている輩がいると暴露し始める。

驚いた君塚支店長は止めさせようとするが、話に興味を持った若手社員たちはもっと聞かせろとやじり始める。

黄門役の人物は、その悪者は林田と石辺だと実名を挙げる。

たまりかねた君塚支店長は、部下たちを舞台に上げ取り押さえようとするが、助さん役の青年から妨害される。

その時、舞台下で一部始終を聞いていた笹間社長が、その声は大田黒会長ではないかと黄門役の人物に声をかける。

黄門役の人物が面を取ると、そこに立っていたのはまぎれもなく、大昭和商事の大田黒会長その人。

集まっていた社員たちも驚くし、横に立っていた助さん役の太郎、格さん役の浅井も、初めてじいさんの正体を知り呆然となる。

大田黒会長は、証拠があると、アナスターシアを会場に呼び寄せると、あの日テープに録音した林田と石辺の密談の会話をその場で再生してみせる。

それを聞いた両社の社長は、即刻二人に首を言い渡すのだった。

一件落着した後、大田黒は太郎に、孫の久子の婿になってくれないかと頼む。

またとない大出世のチャンスだったが、太郎はすぐに、自分には札幌に来る前から決めた恋人があると告白し、その話を断ってしまう。

それを聞いていたゆみ子は怒って、会場を飛び出してしまう。

出世を棒に振ってまで信念を貫いた太郎の態度に感心した浅井は、ゆみ子を追って行けと太郎に教える。

太郎は、エレベーターに乗り込むゆみ子に追いつこうとするが、寸前で扉が閉まってしまう。

ゆみ子が目指しているのは、閉鎖されている屋上。

太郎は必死に階段を駆け上る。

屋上に到着した太郎だったが、すでにゆみ子の姿はなく、下を見下ろすと、救急車が近づいているではないか。

しまった!遅かった!と後悔した太郎だったが、その時、物陰から姿を現したゆみ子を発見して安堵する。

救急車が運んで行ったのは、犬だった。

恋人がいたとは知らなかったと怒るゆみ子に、それは君の事だよ。気にと会ったのは、まだ札幌に到着する前だったじゃないかと太郎が答えると、「いじわる!」とゆみ子は抱きつくのだった。

そんな二人を心配した大田黒たちは、建物の下から「降りてこい!」と叫んでいた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

持ち前の正義感からけんかっ早いが、女にはもてまくる好青年、万年太郎を主人公としたシリーズ3作目。

4作も作られたと言う事は、それなりの人気があったのだろう。

今観ると、いかにも不器用で、監督の命ずるまま、ただ「はい!はい!」と懸命に演じている様が見て取れる、当時の高倉健の姿が微笑ましく映る。

シリーズ4作目の本作は、北海道の観光案内を兼ねたご当地映画風になっており、さらに劇中に登場するアスパラガス缶詰の会社も実在のもので、これはタイアップだと思われる。

しかし、高倉健には北海道ロケの作品が多い。

健さんが唄うシーンもあるが、さすがに上手いと言う感じでもなく、主役の健さん自身、笑顔がかわいい童顔とか、すごい美形と言う感じの外見でもないので、「若大将シリーズ」のようなアイドル人気を博したと言うよりも、若い男性が観客の中心だったのではないかと想像する。

敵役を演じている大村文武は、東映版「月光仮面」(1958)の主役だった人。

こちらも健さん同様、それなりに整った顔立ちながら、特に際立った美形とかかわいいタイプではないので、東映と言う社風の中では、今ひとつ役者としてのポジションを得にくかった人ではないか。

本作で一番印象的なのは、やたらとガンマニアが登場している事。

確かにこの当時は、テレビの「ララミー牧場」や「ローハイド」などの西部劇ドラマが大人気だった事の影響からか拳銃ブームが巻き起こり、それは子供たちにも広がっていた。

本作では、健さんが西部劇のガンマン風のスタイルで登場するシーンもあり、珍しい。

もう一つの見所は、月形龍之介が登場し、劇中劇の形で、お得意の「水戸黄門」を演じている事。

水戸黄門を演じた役者は、過去何人もいるが、この当時で黄門と言えばこの人しかいなかった…と言うくらいはまり役。

そのベテラン月形龍之介が、当時はやっていたフラフープなどをしてみせたりしているサービス振りも、今観ると楽しい。