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チエミの初恋チャッチャ娘

1956年、東宝、北田一郎+浜村保夫脚本、青柳信雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

両親を亡くし、三人姉妹だけで暮している長女である為、いつのまにか母代わりのママ姉さんと呼ばれるようになった愛子(杉葉子)は、ある朝、次女でモデルの京子(司葉子)に、三女で高校生のマミ(江利チエミ)を起こすように言い付ける。

しかし、寝坊のマミは寝ぼけ眼で朝食のテーブルに付いただけ、そこで、京子がラジオを付け、ジャズを鳴らすと、急に元気になったマミは、急いでセーラー服に着替えるのだった。

弁当を古新聞にくるんでいる京子を見たマミは、自分の小遣いは、古新聞と空き瓶を売った金しかないので、古新聞を使わないでくれと文句を言う。

出かける準備を済ませて一緒に家を出た三人姉妹たち。

マミは、京子に、今日は雄一とのランデブーなのかと冷やかす。
愛子は京子に、雄一との付き合いをマミに話したのか尋ねるが、京子に覚えはなかった。

洋裁の仕事をしている愛子の仕事は上司に認められ、今度のファッションショーでは、妹の京子に着てもらおうと言ってもらえる。

その京子は、東京ファッションクラブから、小山電器店の長男雄一(小泉博)に、今日、午後3時に、外苑前で会おうと電話をかける。

一方、高校の友達、伝介(江原達怡)に小遣い難の事を話していたマミは、君はジャズを歌うのが巧いんだから、あちこちののど自慢大会に出て賞金を稼げば良いじゃないかとアドバイスされる。

その頃、小山電気に帰って来た店の主人(柳家金語楼)は、次男の啓二(高島忠夫)が、店のレコードを勝手に聞いているのを注意する。

啓二も無類のジャズ好きだったのだ。

そして、長男の雄一に、今日は3時から、組合の大切な会議があるから、自分と一緒に付いて来るようにと命じるのだった。

京子との約束がある雄一は何とか断わろうとするが、親父はどうしてもと譲らない。

仕方なくなった雄二は、弟の啓二に、自分の代わりに外苑に行って、京子さんに断りを言って来てくれと、彼女の写真を渡して頼む事になる。

承知した啓二は、さっそく外苑に向って、写真を目印に、京子を捜しはじめる。

その頃、偶然、同じ外苑に、伝介と一緒に遊びに来ていたマミは、ベンチで見知らぬ男(堺左千夫)と腰掛けている京子を発見、てっきりその男が恋人の雄一だと思い込み、挨拶しに近づく。

しきりに時間を気にして、京子の腕時計を覗いていた男を見たマミ、京子に優しそうな男性ね、と冷やかすように声をかける。

そんな所を偶然近くから目撃したのが啓二だった。

ところが、京子の隣に座っていた男は、全く別人で、間もなくやって来た女性(楠トシエ)と待ち合わせていたらしく、さっさと立ち去ってしまう。

その後、勘違いに気づいたマミは、京子と一緒に雄一を待ち続けるが、その雄一は一時間経ってもやって来ず、怒った二人は、そのまま帰宅する事にする。

一方、自宅の電器店に戻って来た啓二は、電話で組合に出席中だった雄一を呼出して帰って来させると、京子には別の恋人がいたので、伝言もせずに帰って来たと報告してしまう。

京子の、丸々と太った妹が、姉に向って優しそうな人ねと言っていたから間違いないと言うのだ。

しかし、にわかにそんな言葉を信じきれない雄一は、つい啓二と兄弟ゲンカになってしまい、帰って来た父親を呆れ返らすのだった。

マミと一緒に自宅に帰り付いた京子は、ちょうど鳴っていた電話に出ると、その相手が雄一だと分かり、今日のデートをすっぽかした文句を言いはじめる。

雄一の方も、今日、他の恋人と一緒だったそうだが、話が食い違い、思わず、姉に代わって電話に出たマミは、あんたなんかとは絶交だと言い放って電話を切ってしまう。

小山電器店での夕食時、父親は雄一に、グロリアレコードの社長三沢さんからお前に、東洋楽器の専務の娘さんと見合いをしないかという話をもらっていると言い出す。

その話を聞いていた啓二は、兄さんにはもう、モデルをしている京子さんと言う恋人がいるんだと打ち明けるが、その京子に親がいない事を知ると、そんな素性の知れない娘はもらえないと、父親は反対する。

その頃、自分の出過ぎた行動で、京子と雄一の中をこじれさせた反省をして、二人の姉たちに詫びていたマミの元に、のど自慢大会への参加受諾の知らせが葉書で届く。

さて、いよいよ素人ジャズのど自慢大会の当日、司会者(沢村いき雄)に紹介され、おずおずと歌いはじめたマミだったが、その見事な歌唱力に審査員は全員感心しだして、高らかに鐘が鳴り響く事になる。

伝介と連れ立ってのその帰り道、マミは、横に止まった車から降りて来たグロリアレコードの清水(本郷秀雄)という人物から、うちの会社でジャズシンガーにならないかと声をかけられ、そのまま伝介と一緒に、会社まで車で連れて行かれる事になる。

嬉しいし、すぐにでも歌手になりたいマミだったが、親がいないので、ママ姉さんの許可を得なければ行けないとマミが説明すると、その方は自分が交渉すると清水は請け負い、一緒に、レコードスタジオを見学してみないかと誘われる。

スタジオでは、ちょうど、社長の愛人である芸者(藤間紫)が「温泉チャチャチャ」という奇妙な歌をレコーディングしようとしていたが、もともと歌が下手な女のようで、なかなか、歌い出しが巧く行かない様子。

何度やり直しても巧く行かないのにたまりかねたマミは、思わず、見学用の椅子から立ち上がると、マイクの前に進み出て、その歌を楽譜を見ながら器用に歌いはじめる。

これには、ブースにいたスタッフたちも感心してしまう。

しかし、面白くないのは芸者の蝶次。すぐさま、パトロンである社長室の三沢(花菱アチャコ)に、もらった曲が悪いと文句を言いに行く。

三沢社長は、秘書(森川信)に、清水を呼んで来させると、蝶次のために、もっと日本調の優しい曲を提供するように申し渡して返すのだった。

その後、三沢社長は部屋で蝶次といちゃつき出した所を、たまたま窓の外を通ったマミと伝介に目撃されたしまう。

後日、何とか和解し、再びデートしていた京子だが、雄一から見合い話がある事を聞かされ、仲人の面子をたてる為にそれを断れなかった雄一の弱腰に失望し、又怒って帰ってしまう。

その頃、マミから、グロリアレコードからデビューの話を聞かされていた愛子は、あのレコード会社だけはいけないと不思議な事を言いはじめる。

納得がいかないマミが訳を尋ねても、愛子は、それ以上何も語ろうとはしなかった。

釈然としない気持ちのまま、隣の部屋に入ったマミは、何故か泣きながら、今後京都へ行って、しばらく向こうで仕事をするので、当分帰って来ないと呟く京子の姿を見る。

雄二の見合い話の事を聞き出したマミは、またまた怒りだし、単身、小山楽器店に乗り込むと、ここの息子ダと言う啓二を雄一だと勘違いし、一方的に悪口を言って帰ってしまう。

これを面白がった啓二は、その事をそのまま二階にいた兄の雄一に伝えてしまい、また、兄弟ゲンカが始まるのだった。

その騒ぎに気づき、仲裁に入ろうとした父親は、二人の取っ組み合いに巻き込まれ、窒息しそうになる有り様。

そんなある日、のど自慢荒らしで稼いだお小遣いで、何かおごってやると言われた伝介が、銀座で洋食が食べたいと言い出したので、一緒に出かけたマミは、とある洋食屋の店から出て来た啓二とばったり出会う。

先日の失礼を詫びようとしたマミに、自分は弟で、本当の雄一は、中で今、気の進まない見合い中だと教えてた啓二は、彼女をこっそり店の中に連れ込み様子を見せるが、理不尽な見合いを強引にやっている二人の中年親父、三沢社長と小山の親父を見て頭に来たマミは、またまた自制がきかず、ずかずかと見合いの席に進み出ると、二人の中年親父をからかいはじめ、さらに、見合い相手として出席していた大橋マサ子が、先日、外苑で、京子の横に座っていた男の恋人だった事を思い出し口に出してしまう。

いきなりちん入して来た娘に戸惑いながらも怒りだした三沢社長は、知り合いだと言う啓二にマミをつまみ出させる。

さしもの啓二も、マミの無軌道振りには「君は、まるで水爆娘だな」と呆れるばかり。

後日、三沢社長の自宅に、先日の見合いの混乱を詫びに出向いた小山親子だが、雄一はきっぱりと、自分にはすでに決めた相手がいるのでと、その場で断わる。

しかし、その場にやって来た大橋マサ子の方は、すっかり雄一の事が気に入った。彼と一緒になれなかったら死んだ方がマシだとまで言うのであった。

その頃、原田家を訪問していた清水は、グロリアレコードだけに入れたくないと拒絶する愛子に、その理由を尋ねていたが、どうしても愛子は答えようとはしなかった。

その家に帰って来ていたマミは、誰かからつけれれている気配を感じ、自分を鼓舞する為、大声でJIブルースを歌いながら玄関先まで到着するが、そこで清水に出会い、明日、こっそり会社でテスト盤を録音してしまえば、ママ姉さんの気持ちも変わるだろうと打ち合わせてしまう。

家に入り、今、誰かから付けられていたと愛子に報告していたマミだが、その直後、チャイムが鳴り、入って来たのは啓二だった。

家が分からなかったので、君の後を付いて来るしかなかったのだと言う。

すっかり安心したマミは、気持ち良く啓二を迎え入れた愛子に、今まで姉さんに恋人が出来なかったのは、自分達妹の世話に忙しかったからだろうと、同情と謝罪の言葉をかけるのだった。

翌日、グロリアレコードのスタジオで、テスト盤のレコーディングをはじめた清水は、その様子を見てもらおうと、三沢社長をブースに招くが、マミの姿を見た社長は、いきなりレコーディング中止を言い渡す。

突然の中止命令に、戸惑う清水とマミだったが、怒られる理由は何もないはずと、又しても自制が効かず、そのまま社長室に抗議に出かける。

そこで、はじめて、グロリアレコードの社長が、この前、見合いの席でからかった中年親父であり、さらにその前に、この部屋の中で芸者といちゃついていた親父である事にも気づいたマミは、自分が怒りを買う理由が瞬時に分かり、一気にしょげ返ってしまう。

しかし、訳を聞かされた清水は、私事と仕事は別なのだから、何とか自分が説得してみると、マミを慰めるのだった。

後日、三沢社長宅に出向いた清水は、原田マミという娘がいかに逸材であり、このままでは、他社に取られてしまうと説得したが、三沢社長の怒りはおさまらない。

ところが、お茶を運んで来て、その話を小耳に挟んだ社長婦人(一の宮あつ子)は、原田マミという娘は、自分達が捜し続けている、義兄の娘の事ではないかと言い出す。

実は、三沢社長には、亡くなった兄がいたのだが、その三人姉妹たちを、これまでずっと捜していたのだと言う。

それを聞いた清水も、確か、マミも三人姉妹だったと教える。

早速興信所に身元調査を頼もうと言い出した妻だったが、三沢社長の方は、三人姉妹は大阪の豊中にいるはずだし、そんな芝居のような偶然があるはずがないとあきれ顔。

同じ頃、原田家では、愛子がマミに、実は自分達の伯父が、グロリアレコードの三沢社長なのだと打ち明けていた。

愛しあって結ばれた三姉妹の両親だったが、母が三沢家の女中だった事から、身分違いの結婚と反対され、静かに暮していた両親を探し当てた三沢家の人間たちによって、両親は引き離され、その後、母は、女手一つで自分達を育て、その後、三沢家が寄越して来た養育費も受取らなかったと聞かせる。

それを聞いたマミは、自分の取った軽率な行動を愛子に謝るのだった。

そんな中、まだ、雄一と大橋マサ子を結び付けようと考えていた三沢社長は、小山の親父と電話で連絡し、二人を温泉宿の一室に泊めてしまえば、後は簡単に結ばれるだろうと作戦を練っていた。

それを盗み聞いた啓二は、喫茶店にマミと伝介を呼出すと、そんな親父たちの悪だくみをばらしてしまうのだった。

義憤に駆られたマミは、京都にいる京子をすぐさま帰京させる為、愛子が病気だと電報を打つことにする。

伝介が、その電報を打ちに出かけた間、喫茶店にやって来た四人組(ダーク・ダックス)と、マミと啓二は、春の歌を歌い出すのだった。

ある日、小山の親父は作戦通り、雄一を温泉に誘う。

しかし、そこへやって来た啓二は、雄一の耳に、親父たちの悪だくみを教え、こっそり自分と一緒に逃げるよう伝える。

一方の、三沢社長の方も、温泉旅行に大橋マサ子を誘っていたのだが、喜ぶマサ子に面会人が来たと部屋に連れて来られたのは、外苑でデートしていた男秋山だった。

秋山は、自分に冷たくなったマサ子に、捨てないでくれと泣きついて来る。

小山電器店では、主人の小山が雄一を捜しまわっていたが、どこに行ったのか、その姿を見つける事が出来なかった。

その雄一は、啓二と共に原田家のマミの所に来ていた。

そんな所に、京都から帰って来たのが京子だった。

京子が雄一の姿を見て喜んだのを確認したマミと啓二は、気を利かして、二人を残し家を出て、自分達は明るくデュエットするのだった。

その頃、家の中では、すっかり京子と雄一は仲直りしていた。

三沢家に、雄一に逃げられたと詫びに行った小山だったが、三沢の方も、実は、マサ子には男がいたと告白し、その秋山と一晩でよりを戻したマサ子は、この人と二人で温泉に行くと言い出すのだった。

これには、三沢も小山も、呆れてため息を付くばかり。

そんな三沢の元に、妻がやって来て、やっぱり、あの三人姉妹は、自分達が捜していた兄の娘たちだと分かったと報告する。

嬉しい反面、あのアプレ娘が自分の姪たちであったかと思うと、三沢は複雑な思い。

さっそく、原田家に車で乗り付けた三沢夫婦、 まずは秘書が三沢家の三人姉妹に迎えに来たと伝令に立つが、愛子は、三沢家とうちとは何の関係もないと拒絶する。

この答えを聞き、自ら玄関に入って、あなたたちの父親の弟三沢慎一だと名乗った社長は、そちらが怒る事情も分かる。実は、そちらの両親を無理矢理引き裂いたのは、因習に凝り固まった先代の仕業で、自分は亡くなった兄から、自分の死後はくれぐれも、娘たちを引取って面倒を見てくれと頼まれているのだと頭を下げる。

三沢夫婦の謙虚な姿勢を見た愛子は、それならば、お父さんの写真を見せて頂きましょうと、三沢邸に行く事を伝える。

三沢邸で、亡き両親の結婚写真を見せられた三姉妹は、ようやく、三沢夫婦への頑な態度を解きほぐす事が出来た。

そんな所に雄一同伴でやって来た小山は、京子が、今日から、三沢家の娘になったと聞かされ、それならば、家柄、血筋にも何の問題はないと、雄一との結婚を承知するのだった。

翌日、東京ホールで開催された愛子デザイン、モデルを京子が努めるファッションショーが、有島一郎の司会で開催され、その観客席には、三沢夫婦、小山夫婦、愛子と清水コンビ、雄一、啓二、伝介等の姿があった。

そんな中、ファッションショーの後に行われたミュージックショーで、デビューホヤホヤの新人歌手となったマミが、得意の歌を披露するのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

江利チエミ主演の明朗青春音楽映画。

この年始まったチエミの人気シリーズ「サザエさん」とほぼ同じキャスティングが、すでに出そろっている所が興味深い。

高校生役のチエミは、セーラー服の前エリ部分が、三角形に窄まらず、背中のラインと同じく縦にラインが走る斬新というか不思議なセーラー服を着ている。

映画用の特注なのか、当時、同じような制服があったのかは定かでないが、ちょっと印象に残る。

ラストのステージで、有島一郎が、本人の役で登場する所も面白い。

話しは良くあるサクセスストーリーだが、随所に挿入されるチャチャチャやマンボのリズムが明るく楽しい。

特に、貧しく身寄りのなかった三人娘が、実は大富豪の血筋と分かり、その家に引取られる事になる後半は、何だか「ALWAYS 三丁目の夕日」を連想させる展開だ。

この作品に登場する高島忠夫は、学生服を着たいかにも若々しい姿で、今の息子の長男の方にそっくりだ。

その高島忠夫から、劇中で「丸々太った」と形容されている江利チエミは、肥満体と言うほどの事はないが、確かにコロコロとした印象がある。

しかし、そのバイタリティに溢れ、明るいキャラクターは可愛く、憎めない。

それがそのまま、実写版サザエさんに受け継がれ、大衆の人気を博した事が良く分かる。

次女役の司葉子も美しければ、長女役の杉葉子も、おっとり落ち着いた大人の魅力を見せてくれる。

いかにも古き良き時代の映画らしく、特に派手さはないが嫌味もなく、観終わると、小さな幸せ気分を感じさせてくれる作品である。

ちなみに、映画のタイトルは、単に「初恋チャッチャ娘」と出て来る。