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あんみつ姫 妖術競べの巻

1954年、東京映画、倉金章介原作、若尾徳平+新井一脚本、仲木繁夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

(前編「あんみつ姫 甘辛城の巻」あらすじ)

甘辛城の奥方甘茶の方(松田トシ)には、二つの悩みがあった。

一つは、あんみつ姫の(雪村いづみ)お転婆振り、もう一つは城主あわのだんごの守(藤原鎌足)の発明趣味。

そのだんごの守は、ある時偶然、何でも4倍に増やしてしまうバイバイ薬なるものを発明してしまう。

その方程式を記した密書を奪わんと、黒雲城の城主、鬼塚刑部(瀬川路三郎)は、鷲尾軍太夫と、妖術使い不知火陣内(益田喜頓)とその娘お銀(二条雅子)を手下に使って、何かと動きだす。

その頃、武者修行の旅から帰って来た黒雲城の元城主の息子弓太郎(久保明)は、刑部の奥方お熊の方(出雲八枝子)の手から幼い妹すみれ(松島トモ子)を奪い取ると、刑部たちの追っ手から逃げ出す事になる。

途中、すみれは陣内に捕えられてしまい、弓太郎は谷に落ちてしまうが、それを助けてくれたのが、般若の面をかぶった謎の黒ずきんの男だった。

そのご、甘辛城下に入った弓太郎が、町中で出会ったのが、甘辛城を抜け出して、お忍びで遊んでいたあんみつ姫だった。

あんみつ姫は、軽業小屋にある魔法の箱に好奇心から入ってしまうが、その箱は妖術使いの陣内の罠で、捕まったあんみつ姫は、空高く陣内と共に雲に乗って飛んで行ってしまう。

それを、下から弓で射落とした弓太郎は、落下して来るあんみつ姫の着物の袖を、見事に木の枝に弓で縫い付けて助けるのだった。

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あんみつ姫の命を救った弓太郎は、甘辛城の小姓として迎えられる事になる。

ある日、庭先で、あんみつ姫の護衛をしていた弓太郎は、2、3日前から犬がいなくなったと報告する。

不思議に思ったあんみつ姫は「太郎!、太郎!」と犬を呼ぶが、弓太郎は恥ずかしそうに、犬の名はジローだと訂正するのだった。

そのジローは、大蛇ヶ谷にある陣内の牢に閉じ込められていたすみれの元にやって来て、利口にも扉を開け、さゆりを助け出していた。

そんな事とは知らない陣内は、弓太郎の弓で受けた傷の手当てをしながら、軍太夫と、このままでは黒雲城には帰れないと落ち込んでいた。

山の中をジローと共に逃げていたすみれだったが、幼い足ではもう歩けなくなっていた。

ある日、甘辛城の城下に来た陣内とお銀親子は、腰元募集の立て札を見かけ、これは甘辛城に入り込む絶好のチャンスだと申込む事にする。

カステラ先生(丹下キヨ子)から応募者たちに伝えられた試験内容は、野球のバッターボックスに立ち、ピッチャー役のあんみつ姫が投げるボールをホームランにしたら採用と言うおかしなもの。
アンパイアは弓太郎が努めている。

何人かの応募者の三振が続いた後、バッターボックスに入ったお銀は、一回、二回と空振りをするが、側で観ていた陣内が呪文を唱えると、不思議な事に、いきなりホームランを打ってしまう。

さっそく採用され、お銀は、さくらもちと呼ばれる事になる。

ある日、城主だんごの守は、大トンボというヘリコプターを庭先で完成させる。

そのだんごの守たちが帰った後、又しても好奇心一杯で、茶坊主のまんじゅう(小畑あつし)を従えて大トンボに近づいて来たあんみつ姫は、操縦席にたくさんあるボタンの一つをつい押してしまい、プロペラが回転をし始める。

その巻き起こす風で、場内は大騒ぎ。

止めけたが分からないあんみつ姫はパニックになるが、その時駆けつけて来た弓太郎によって、無事、プロペラの回転は止める事が出来た。

でも、この大騒ぎに甘茶の方は大激怒。

あんみつ姫とまんじゅうを、お仕置きの為、天守閣にある鼠の間に閉じ込めると言う。

その時、その場に駆け込んで来たさくらもちは、あの騒ぎの元は自分がしでかしたもので、姫様は何も御存じないのだと詫びる。

この自己犠牲の精神に感心しただんごの守は、甘茶の方をなだめ、誰にもお咎めはない事にする。

その夜、さくらもちことお銀が寝ていた寝所に出現した陣内は、早く、バイバイ薬の方程式を記した密書を見つけだせと催促するのだった。

仕方なく、城主の研究室に忍び込んだお銀だったが、その後ろ姿を塩野餡内(天津敏)に目撃され、室内を物色されている所を誰何されて捕まってしまう。

怪しい奴だと縛り付けられ、口を割らせようとせっかんを受けていたお銀の姿を見たあんみつ姫は、パパの研究に鉄のカーテン事等何もないはず、彼女が何か捜していたのなら、それを渡して上げなさいと、餡内を叱りつけて、お銀の紐を解かせるのだった。

そして、自室にお銀を連れて来たあんみつ姫は、沈んでいる彼女を励まそうと歌を歌いはじめる。

その情け深いあんみつ姫の態度を見たお銀は、自分が悪い人間である事を告白するのだが、あんみつ姫は、あなたは良い人だと言い聞かせるのだった。

その頃、大蛇ケ谷の陣内と軍太夫たちは、城内に潜入して三日経つのに、何の連絡もないお銀を心配しはじめていた。

このままでは、二百両の仕事の口がふいになると案じた軍太夫は、明日、この谷を、甘辛城へ向うパンパルーン国の親善使節、イタチョコ博士一行が通るので、それを襲って、陣内が身替わりになり、甘辛城に潜入しようと計画を立てる。

翌日、イタチョコ博士(有木山太)一行が、甘辛城へ向っている途中、犬に見守られながら、道ばたに倒れている幼い少女の姿を発見する。

その容態を見たイタチョコ博士は、ひどく疲れて衰弱していると判断し、持参して来た長もちの中に入れて、甘辛城に連れて行く事にする。

そこ直後、突如出現した陣内たちに使節団は襲撃され、まんまとイタチョコ博士に化けた陣内と、使節団に成り済ました子分たちは甘辛城に潜入する事に成功する。

イタチョコ博士に化けた陣内は、歓迎会が始まると聞かされ、何か、手に持っていないと格好がつかないからと、長もちの中から、手ごろな杖を部下たちに捜させるが、その際、一番奥の長もちの中に入っていたすみれは、見つかるのではないかとハラハラしながらも、陣内たちが偽者である事に気づくのだった。

その後、親善使節団への歓迎の余興として、まずはイタチョコ博士、続いて、甘茶の方やカステラ先生が、次々と手品を披露しはじめる。

その頃、城内を警護していた弓太郎は、次ローの姿を見つけ、その後をついて行くと、使節団の部屋の長もちの前で立ち止まる。

不審に思い、蓋を開けてみると、中に、妹のすみれがすやすや眠っているではないか。

目覚めたすみれも、別れた兄、弓太郎がいると知り大喜びで泣き出してしまう。

そのすみれの口から、使節団が偽者とすり代わっていると弓太郎は聞かされる。

その頃、余興演芸会をこっそり抜け出していた陣内は、こちらも同じく抜け出したお銀と廊下でばったり出会い、あんみつ姫をおびき出さねば、娘と言えども裏切者として手酷い拷問にかけるぞと脅すのだった。

そこに現れたのが弓太郎。

しかし、陣内は妖術で消え失せてしまい、宴会場で歌を披露していたあんみつ姫の身体は、フワフワと空中に飛び上がって行く。

又しても、雲に乗った陣内の妖術で、あんみつ姫は空にさらわれてしまったのだ。

弓太郎は、急いで弓を持って来させるが、今回は間に合わなかった。

それを知ったカステラ先生は、大トンボがあると言い出し、弓太郎甘栗之助を連れて、三人で追跡を開始する。

大蛇ヶ谷に到着し、あんみつ姫が幽閉されている牢の前までたどり着いた三人だったが、牢内に出現した陣内が、あんみつ姫に刃物を突き付けながら、三日後の十五夜の晩までに、バイバイ薬の方程式を書いた密書を持って来なければ、姫の命はないと脅すのだった。

仕方なく、三人は城に戻り、この事を城主たちに報告する。

小倉ようかん(有島一郎)など、方程式を敵に渡せば、軍備に使われてしまうと反対の声もあったが、娘の命には変えられぬと、渡す事を決心しただんごの守だったが、困った事に、彼はその肝心の密書をどこにしまったか忘れてしまっていた。

その頃、大蛇ヶ谷の牢の中では、陣内があんみつ姫を脅し付けようとしていたが、「ものを取る」とか「殺す」という言葉の意味すら知らないあんみつ姫には何の効果もなかった。

さらに、妖術の恐ろしさを見せつけようと、一つ目入道やからかさお化けに変身してみせる陣内だったが、逆にあんみつ姫には、楽しいと、大喜びされてしまう有り様。

そんな間も、甘辛城では、家臣たち一同が方程式を書いた密書を捜しまわって大騒ぎをしていた。

そんな中、こっそり城を抜け出したお銀の姿を見つけた弓太郎はその後を付けて行く。

あんみつ姫はと言えば、そんな最中でも、牢の中でのんびり歌を歌っていた。

いよいよ、約束の十五夜の晩、だんごの守は最後までとうとう密書の置き場所を思い出せなかった。

牢の外に引き出し、がんじがらめに縛り上げたあんみつ姫を前に、陣内はいよいよ処刑を始めようとするが、手裏剣をふりかざした所にやってきたのが弓太郎。

一方、縛られたあんみつ姫の背後から駆け寄って来たお銀は、その紐を解いてしまう。

その頃、甘辛城内では、カステラ先生が家臣たち一同に、飴や餅付きの準備、水鉄砲など不思議なものを多量に掻き集めるよう指示していた。

大蛇ヶ谷から逃れたお銀とあんみつ姫は、高い木の上に身を顰め、夜の明けるのを待ちかねていた。

弓太郎も、軽い手傷を負っただけで逃げ延びていた。

翌朝、甘辛城から城主だんごの守、甘茶の方をはじめ、12万8000人もの家臣たちが、一斉に大蛇ヶ谷に進軍し始める。

カステラ先生は、単身、大トンボに乗って、空から目的地を目指していた。

その報告を軍太夫から受けた陣内は、又しても妖術で立ち向かおうとするが、印を結んでも術が効かない。

その内、懐に入れてあった妖術の虎の巻を盗まれている事に気づく。

娘のお銀の仕業に違いない。

しかし、妖術が使えなくなった陣内に、黒雲城の鬼塚刑部は冷たかった。

もはや用なしとばかり陣内を無視すると、軍太夫だけ引き連れて黒雲軍を出陣させる。

その様子を見つけたカステラ先生は、大トンボからビラを巻いて、黒雲軍襲来の報を、進軍中だった甘辛軍に知らせる。

いよいよ、陣地を気づいた甘辛軍は、その場で餅を付きはじめ、付きたての餅をパチンコ銃で、用意して来た飴などと一緒に発射し始める。

これには、近づいて来た黒雲軍も大慌て。

一方、木の化けたあんみつ姫は、近づいて来た敵兵たちの頭をぽかりと叩いて気絶させる。

小さなすみれも、夜眠っている敵軍に近づき、次々に刀を盗み取ってしまう。

その時、たき火の中に投じた癇癪玉が破裂しだし、さらには、水鉄砲攻撃、鏡による光反射作戦など、次々と甘辛軍がくり出す作戦に敵はひるみだす。

最後のとどめと、大トンボから空中にコショウを散布しはじめたカステラ先生だったが、風向きが甘辛軍の方に向いてしまい、くしゃみをし始めたのはあんみつ姫たちだった。

これをカミカゼと感じた刑部は、黒雲軍に一斉攻撃を命じ、これを機に、甘辛軍は形勢が悪くなってしまう。

追い詰められた家臣たちは、だんごの守に、かくなる上はバイバイ薬を使ってはと進言するが、あれは平和の為だけに使うものだからと、だんごの守はきっぱり拒絶する。

弓太郎も、必死にあんみつ姫を守って戦っていたが、もはやこれまでと思われた時、黒雲城内に謀反が起こり、旧家臣だった右近之助(小堀明男)が弓太郎救援に駆けつけて来る。

その右近之助こそ、いつしか弓太郎を救った般若面の怪人だったのだ。

勇気づけられた弓太郎は、今こそ、父の仇を打たんと、刑部の元へ賭け参じるが、先ほどのコショウのせいで、くしゃみが止まらず、力が十分に出せない。

この様子を見ていた陣内は、こうなったら、自分も甘辛軍の味方になると言って、妖術で弓太郎のくしゃみを止めてみせる。

かくして、弓太郎は父親の仇、刑部を討ち取る事に成功するのだった。

かくして、戦いは終わり、甘辛城には又平和が訪れていた。

その頃、大蛇ヶ谷では、お銀が父親の陣内に心を入れ替えるよう説得していた。

その言葉に打たれた陣内は、この際、子分たちも含め、改心する事を約束、その後、頭を丸めて旅に出たと、後日、あんみつ姫の所に報告に来たお銀は、これからもこのお城で奉公してくれとあんみつ姫からねぎらわれるのだった。

そうした中、弓太郎は、黒雲城の新城主として、すみれとともに、甘辛城を後にする事になる。

何時の間に登ったのか、天守閣の屋根に座ったあんみつ姫が、旅立つ弓太郎を見送りながら、楽しそうに歌を歌うのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

光文社発行の「少女」に連載されていた人気マンガの実写化作品。

この前編の公開は、有名な「ゴジラ」(1954)の翌週に当る。

「ゴジラ」が男の子向けだったのに対し、東宝はちゃんと、翌週には女の子向けの作品も用意していた事になる。

この作品も、一応、煙玉でドロンと消えたりする初歩レベルのトリック撮影は登場するが、基本的に「特撮映画」というほどのものではなく、昔風の忍術映画の流れを汲むトリック喜劇と言った方が良い。

「甘辛城の巻」が前編、この「妖術競べの巻」が後編に当る二部構成になっている。

当時、4、5才くらいに見える松島トモ子の愛らしさ、若武者姿も初々しい久保明、そして、マンガ風の大袈裟な眉とひげを付けた大柄な塩野餡内に扮している若き天津敏などの姿に驚かされる。

ストーリー自体は、コントレベルと言うか、他愛無いものだが、時代劇の中に、野球をはじめとする今風の風俗や小道具、セリフなどが登場するナンセンスは、古めかしいながらもなかなか楽しい。

鯱ならぬ兎が逆立ちしている甘辛城の天守閣のセット等、本物にしか見えない所がすごい。

カステラ先生に扮している丹下キヨ子は、女装した南利明そっくりな事を発見。

当時、人気者だったらしい小堀明男が、又しても、般若面の怪人として、美味しい場面で登場する所に注目したい。