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続二等兵物語 五里霧中の巻

1956年、松竹京都、梁取三義原作、安田重夫脚本、福田晴一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和19年、冬。

突撃訓練の途中、二等兵の古山(伴淳三郎)と柳(花菱アチャコ)は、溝を飛び越える事が出来ず立ち往生していると、班長が飛んで来て、見本を見せてやると自ら飛ぶが、溝にまっ逆さまに落ち、腰の骨を折ってしまう。

食事の時間が始まり、給食当番の古山と柳が、上等兵から呼ばれ、自分のトンカツは見かけが大きいが、衣ばかりで肉がほとんどはいっていないと因縁を付けて来る。

外からは中身の見分けがつかないので…と言い訳した古川だが、その罰として、彼と柳のトンカチは上等兵に取り上げられてしまう。

意地汚く、その奪ったトンカツを食べる上等兵の姿を見ながら、古山は3年前の自分を思い出す。

それは、ペンキ屋だったものの失業して空腹だった古山が、エサを食べている犬のをうらやましく眺めていた頃だった。

大衆食堂を覗くと、客たちが旨そうに食事をしている。

その中に、一組の男女がいた。

入口から店の中をもの欲しそうに覗いている古山に気づいた男から、目配せされた女は、店を出て、古山に声をかけると、これで外食券を買えるでしょうと1円渡そうとする。

物乞いではないのでと、断わろうとする古山に近づいて来た男の方が、「ただでやろうと言うのではない。お前は口笛が吹けるか?」と、奇妙な言葉を掛けて来る。

古山が口笛くらい吹けると答えると、その男は。それでは、警察が来たら口笛を必ず吹けと命じて、女と共の立ち去って行く。

きつねに騙されたような気持ちになった古山は、もらった1円札を偽札ではないかと街灯に透かしてみたりして、それが盗まれた金だと言う事に気づき、大声で近くにいた警官たちを呼び集め、強盗だ!と申告するが、逆に彼本人が怪しまれ、慌てて逃げようとした事もあって捕まり、冤罪を受けたまま、その後2年間刑務所暮しを強いられる事になる。

柳につつかれ、我に返った古川を待っていたのは、空襲警報のサイレンだった。

翌朝、新任の班長が赴任して来て、古河たちの前に立つ事になるが、驚いた事に、そのウンスン・クリークに一番乗りして来たと自慢げに挨拶している大垣岩二(南田昭二)なる、新班長は、あの夜、自分に1円札を渡して見張り役にしようとした強盗ではないか!

思わぬ再会に動揺する古山の姿を怪んだ大垣は、弛んでいると、さっそく、彼に一人だけ残って、自分の名前を連呼し続けるように命じるのだった。

その姿を見て助けてくれたのは、心優しい上村見習士官(中原伸)だった。

上村見習士官は、辛い時にはこれを読めと、宮沢賢治詩集の文庫本を古山に渡すのだった。

その様子を窓から見ていたのが、大垣班長と、その取り巻き連中。

大垣は、古山が前科者である事や、上村見習士官の事を聞くと、すぐさま、古山と上村見習士官の所で出向き、新任の挨拶をした後、急に態度を変えると、上村見習士官を居丈高に威圧するのだった。

大垣に再度部屋に連れて行かれた古山の姿を心配げに見送っていた柳たちが上村見習士官に事情を聞くと、自分が初年兵時代、教育係の伍長だったのが、あの大垣だったのだと言う。

大垣は、部屋に連れて来た古山が、自分を覚えていないかと口笛を吹いてみせると、顔色を変え、取り巻き連中を部屋の外に出して、自分の事を他人に言い付けるつもりかと開き直って来る。

古山がそんなつもりはないと答えると、その約束に二言はないな、もし破ったらただでは置かないと脅し付けて帰した大垣だったが、このままでは、何時、自分の悪事がばれるか分からないと思案しはじめる。

そこへやって来たのが同期の早川准尉(高屋朗)で、彼が言うには、明日、ここの部隊は演習地へ行かせられる事になったと言う。

それを聞いた大垣は、「演習地なら、独りくらい戦死者が出てもおかしくない…」と、独りほくそ笑むのだった。

列車に揺られて、彼らの部隊が着いたのは雪国だった。

演習地の地元住民たちに見送られ兵舎へ行進していた兵隊たちの列に、嬉しそうに歓迎の声を上げていた少女が、一番後ろからやって来た大垣班長の馬にぶつかり路上に転んでしまう。

骨折したらしく泣叫ぶ少女の姿を見て哀れんだ古山が少女に駆け寄ると、たまたま近くを通りかかった少女の知り合いらしき女性もその泣いている少女に気がつき、介抱していた古山に礼を述べるのだった。

雪中訓練の演習地は、温泉地でもあった。

兵舎の表を通る芸者たちの姿を発見した二等兵たちは大喜び。

しかし、その浮かれた二等兵たちの背後には、大垣班長がいたため、その事に気づかず、最後まで芸者に声を掛けていた柳は、そんなに芸者と話したければ行って来いと嫌みを言われるが、それを真に受け、本当に表の芸者に挨拶に行ったものだから、兵舎に戻って来るや、弛んでいると、大垣に殴りつけられるのだった。

雪中訓練が始まり、体力強化のため、土嚢運びを命ぜられた古山と柳だったが、共に持ち上げる力さえなく、やむなく上等兵たちから無理矢理担がされた土嚢の重みで、雪の中に頭まで埋まってしまう始末。

その頃、足を骨折した少女、くに子は母親千代(幾野道子)に看病されていた。

そこへやって来たのが、母親の妹で、小学校の教師をやっている冴子(伊吹友木子)だった。
実は、くに子が馬にはねられた時、通りかかったのが彼女だったのだ。

くに子は、母親が芸者の仕事で、今夜も出かけるのを嫌がったが、借金を背負っている上に、くに子の治療費もかさむ千代には仕事を休む訳にはいかなかった。

演習が終わり、雪が降る中、外に設置してあるドラム缶風呂に入っていた古山たちは、どこからか聞こえて来る、芸者たちが奏でる小原節の音をうらやましがっていた。

その芸者遊びをしていたのは、部隊の仕官や班長たちだった。

その席に遅れてやった来た駒千代こと千代は、大垣班長の顔を見ると固まってしまう。

大垣の方も、千代の顔を見て驚く。

この二人こそ、3年前、古山に1円札を持たせた男女だったのだ。

千代は、大垣に別室に連れて来られると、捨てられた恨みを言いながらも、二人の間にできた子供のくに子が、兵隊が乗った馬にはねられ、手足を骨折したのだと告げる。

その言葉に驚いた大垣だったが、知らぬ振りをして、又、千代と寄りを戻そうと迫った所へ、酔った芸者仲間の美乃吉(関千恵子)が部屋を間違えて入って来たので、罰が悪くなりすごすごと引き下がる事にする。

一方、ドラム缶風呂から上がって着替えようとした古山は、自分の軍服がない事に気づく。

大垣班長の取り巻きによる悪質ないたずらだった。

寒さに震える古山を見つけたその先輩兵は、弛んでいると言って、雪の中で彫像の真似をしていろと命ずるのだった。

古山の軍服を見つけて来た柳は、雪の中ですっかり凍り付いている古山の身体を発見し、仲間たちと部屋の中に連れ込んで解凍するのだった。

その頃、飲めぬ酒を飲んで帰る途中、苦しがって雪の中に倒れた千代を叱っていたのは美乃吉だった。

美乃吉は、大垣に捨てられ、踏みにじられても、なお、彼の事を責めきれず、独り苦悩を背負っている千代のふがいなさを嘆いていたのだ。

翌日、古山たちは、スキーの訓練をさせられていたが、大阪出身の柳は、全くスキーをはきこなす事が出来ず、靴からはずれたスキー板が一人で滑って行ってしまう有り様。

それを拾いに向う途中、柳は熊を発見。

訓練中だった兵隊が全員逃げる中、腰を抜かして動けなくなった柳と、それを助けに来た古川は、迫って来る熊の姿を見て、もう逃げ切れないと観念し、その場で死んだ真似をするが、熊だと思っていたのは、実は、熊の毛皮を着込んだ猟師だった。

夜、見張り役を命ぜられた古山と柳は、満天の星を見ながら、今頃、戦争で殺しあいをしている人間の愚かさを笑うのだった。

その時、近くの学校から「ふるさと」の歌が聞こえて来たので、思わず、それに合わせて、二人も歌いはじめるが、その声に釣られて来るように、テントで休んでいた仲間たちが全員出て来て、「ふるさと」の大合唱になるのだった。

翌日、小学校でオルガンを弾いていた冴子の元を訪れた古山は、くに子の容態を尋ねるが、くに子は、冴子の姉の娘だと言う事を聞かされる。

その後、冴子に連れられくに子の見舞いに訪れて来た古山は、母親の千代と対面し、はじめて、彼女が、昔、大垣と一緒にいた女だったと気づくのだった。

しかし、もう昔の事は忘れたと、くに子を見舞った古山だったが、そこに現れたのが、今日も酔っぱらった美乃吉だった。

彼女は、古山の姿を見ると、くに子をこんな目に合わせた上官は誰だと詰め寄り、それに答える形で、つい古山は大垣の名前を出すのだった。

それを聞いて驚いたのは、千代、冴子姉妹だったが、義憤にかられた美乃吉は、酔った勢いも手伝って、兵舎まで出かけると、大垣に食って掛かるのだった。

その美乃吉の言葉から、自分が娘を馬ではねた事をばらしたのは古山だと気づいた大垣は、一本杉が見える山向こうに三中隊が演習に来ているから、二中隊がここにいると、一人で伝令に行って来いと古山に命令するのだった。

かくして、吹雪の中、手負いの熊がいると噂される雪山に、独り伝令に行く事になった古山は、スキーもはかず、徒歩で登る事になるが、途中で遭難しかかる。

そんな無謀な命令を受けた事を、柳から伝え聞いた冴子は、自らスキーをはいて、古山捜索に出かけるのだった。

その頃、大垣の部隊は、源隊に向って行進するよう中隊長から指令が降り、そのまま戦地に送られる事が分かる。

それを知った大垣は、早川准尉と計らって、自分達だけ仮病を装い、戦地に行かなくてすむよう書類を偽造していた。

そんな所へ帰って来たのが、古山と冴子だった。

二人は、大垣と早川が話している悪だくみを全て廊下で聞いてしまったが、それに気づいた大垣は、開き直ったかのように、古川を、その場で暴行しはじめるのだった。

殴られ、蹴られ、ストーブに押し付けられ、虐待の限りを尽くされた古山は、つい、薪を掴むんで反抗しようとしたが、それを見て取った大垣は、反乱罪で銃殺だぞと脅かし、さらに執拗な暴行を加えるのだった。

その騒ぎに気づき、部屋の外に集まって来た二等兵たちと、それらを殴りつける上等兵たち。

そこへやって来た上村見習士官は、古山から、大垣らが書いた偽装書類を見せられると、事情を察し、全員、部屋の中に入れるのだった。

そうした仲間たちが見守る中、気絶寸前の状態だった古山は、最後の力を振り絞ると、大垣に反撃を開始するのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「二等兵物語」の続編で、伴淳三郎とアチャコ演じる冴えない二等兵コンビが、似たような名前で登場する他は、全く、前作とは違った話になっている。

今回の舞台は雪国と言う事から、大掛かりなロケーションが行われており、映像的にも見ごたえがある。

嫌な先輩兵や上官から、軍隊の中の階級差を利用され、徹底的に虐め抜かれる二等兵の哀れさ、悔しさを描く骨子や、我慢に我慢を重ねた伴淳扮する二等兵が、最後の最後で大暴れして鉄ついを加える痛快さを見せるラストの趣向は前作と同じであるが、どちらかと言うとユーモア先行だった前作に比べると、今回の方が、勧善懲悪の構図が、より鮮明になっており、悪役となる大垣班長にはユーモア描写はなく、完全な極悪人として描かれている。

このため、ラストの大垣対古山の戦いも、もはやコメディの雰囲気ではなく、完全にガチンコバトルの様相を呈して迫力満点。

いつも酔っているが、戦争によって虐げれれている女性の代弁者のような立場を演じている関千恵子が魅力。

前作で、傲慢な軍国婦人をユーモラスに演じた幾野道子が、今作では、がらりと雰囲気が違う、惚れた男をどうしても憎みきれない哀れな女性を演じているのも興味深い。

その妹役を演じている伊吹友木子も、なかなか魅力的な顔だちの女優さんである。

冒頭の回想シーンで出て来る刑務所内の老囚人として渋谷天外、二等兵仲間として歌手のバタやんこと田端義夫、さらに大垣班長の取り巻きの一人として山茶花究が出ている所等に注目したい。

ラストは、古山たちの部隊が船で戦地に向うシーンで終わっており、さらなる続編を予想させている。