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海の情事に賭けろ

1960年、日活、滝口速太脚本、野口博志監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

白浜灯台近くの海上、ヨット「Miss.RAN」の上で踊り廻る大学生グループ。

大学の夏休みも後わずか、富豪のお嬢様とその取り巻き連中が、最後のバカンスを楽しんでいるのだった。

そこへ近づいたヘリコプターから、ヨットに向い、懸命に手を振る若者の姿。

アメリカ留学に行く元カレが、ヨットの所有者である東西貿易の娘、牧蘭子(中原早苗)に別れをしに来たらしいが、蘭子はデッキに寝そべったまま見向きもしない。

今まで付き合って来た男に満足できなかった蘭子は、「男の中の男、海の王子様」のような男性が目の前に現れないかと、夢のような事を言って、友達たちを呆れさせていた。

そんなヨットの連中(待田京介ら)が、海に浮遊している青年を発見し、収容する。

城南大の栗谷剛一と名乗るその青年(赤木圭一郎)は、左腕に弾痕のような傷を負っていた。

落ち着いた彼が話すには、水難救助隊のバイトを終え、東京に帰る途中の船上で、村川という見知らぬ男から「水野の命令だ」と訳の分からない理由で銃を突き付けられ、一発発射された瞬間、無我夢中で海に飛び込んだのだと言う。

取りあえず、陸に上がりたいと言う剛一を蘭子の別荘に連れて行くが、蘭子はすっかり、剛一の魅力に惹かれていた。

しかし、少し会話をする内に、剛一にはすでにガールフレンドがいると言う。

しばらく、その別荘で休養していた剛一だが、ある日、仲間たちが、地元のチンピラに絡まれているのを発見、そいつらを蹴散らした剛一は、蘭子に置き手紙を残して、夜の内にこっそり東京に戻ってしまう。

蘭子は、始めて会った理想の相手に逃げられた悔しさで、その置き手紙を海辺で破り捨てるのだった。

東京に帰り着いた剛一は、先輩で毎朝新聞に勤めている殿村信也(近藤宏)に連絡を取り、自分が遭遇した事件の事を詳しく話し、自分そっくりな人間を捜す協力を依頼する。

殿村の妹こそ、剛一のガールフレンド杏子(笹森礼子)だった。

その後、殿村は、剛一に二枚の写真を見せる。

そこには、剛一そっくりの青年の顔が写っていた。

その正体は、新宿、水野組の幹部だった加藤勇二で、最近、足を洗いたいと周囲に洩らしていたと言うのだ。

剛一は、その自分そっくりな男に会いたい気持ちと、ヤクザの密輸の事を探るために、自ら勇二に成り済まして組に戻る決心をする。

殿村から聞いた勇二の癖をまね、水野組の拠点であるキャバレー「サブリナ」に潜入した剛一は、勇二の愛人だったと言うホステス河村百合子(南田洋子)に接触する。

洋子は、突然現れた剛一を勇二と思い込み驚くが、もっと驚いたのは、店内を見張っていた安井(郷えい治)ら水野組の連中だった。

特に、ボスの水野(高品格)は、殺し屋の村川が殺したと言っていたのを信用しただけに、その勇二が無傷で舞い戻って来た事に衝撃を覚えていた。

勇二に成り済ました剛一は百合子に対し、やはり堅気にはなれないから、又、組に戻る気になったと言い、ボスに会ってその旨を伝えるのだった。

その日から剛一は、念のため、安井たちの監視付きで、近くのホテルで泊まり込みをする事になる。

その頃、蘭子は、剛一の下宿先である雑貨店を訪ねて来ていたが、剛一は一昨日から帰っていないと言う。

しかし、二階の剛一の部屋を掃除に来ていた杏子を発見、ライバル心も手伝って、自分も上がり込む事にする。

そして、杏子に、明後日、自分の誕生日なので、剛一さんと一緒に房州の別荘に来て欲しいと言い残し帰って行く。

その頃、ホステス百合子のアパート白鳥荘には、本物の雄二から無事を知らせる手紙が届いていた。

そこへ、知らずに現れたのが、雄二に成り済ました剛一、勿論、表には、安井たちの見張り付きのサービスだったのだが、当の剛一は、百合子に興味がないので、部屋に入っても、何をするでもないし、百合子の方も、最初から、剛一が偽者だと言う事は勘付いていたので、こちらも表面上取り繕っているだけ。

キャバレー「サブリナ」に戻った剛一は、弟分の安井から、密輸の事を自分にも教えてくれと迫られるが、知らないとは言えず、適当にはぐらかすのだった。

その密輸の事を探ろうと、ちょうど車で出かけようとしていた水野に近づき同行を求めるが、あっさり断わられるが、その際、水野が他の手下の残した「地下室に近づく奴に気をつけろ」という言葉を頼りに、単身、地下室を探りに行くが、そこを、何時の間に戻ったのか、水野や安井らに見つかり、銃を突き付けられる事になる。

最初から、水野らも、戻って来た剛一の事を疑っており、その目的を探ろうと、あれこれ剛一に対し罠を張っていたのだった。

警察の犬になったと誤解された雄二こと剛一は、村川に殺されそうになるが、そこに現れたのが百合子だった。

彼女は、水野に銃を突き付け、その男は雄二ではないと打ち明けると、剛一を逃してやるのだった。

下宿先に百合子を連れて来た剛一は、彼女の口から意外な話を聞かされる。

雄二と言うのは、貧しい家に生まれたため、生まれた時、里子に出された剛一の双子の弟ではないかと言うのだ。

雄二も、自分と同じパリ祭の日が誕生日で、年齢も同じ23だと聞いた剛一は、その可能性がある事に気づくのだった。

しかし、百合子は、雄二の居所を教えようとはしなかった。

その頃、水野は、再び生きているはずの雄二を探し出し、消すように村川に命じていた。

一方、別荘で誕生会を開いていた蘭子は不機嫌だった。

お目当ての剛一が来ていなかったからだ。

その態度に気づいた父親の牧浩太郎(三島雅夫)は、蘭子の友達たちから剛一の事を聞き出し、自ら、剛一の下宿先に電話をして、来てくれるよう頼む。

その後、別荘へ向った剛一だったが、父親や蘭子に挨拶もそこそこに、明日、実家に帰る予定があるのでと、そそくさと帰宅してしまうのだった。

その頃、水野の元には、会長と称する人物から、ブツが手に入ったから、明後日の3時までに一人で来るように電話が入っていた。

下宿に戻って来た剛一は、百合子の姿を見て安心するが、翌朝早く、百合子の姿は消えていた。

単身、先日、雄二がいると手紙で知らせて来た千葉に、両国駅から列車で向ったのだ。

それに気づいた剛一も、タクシーを飛ばして、実家に戻っていた。

久々に再会した母親(高野由美)に、双子の弟の事を聞き出した剛一は、雄二が里子に出された家を訪ねようとするが、母親が自分で隠したので、今、雄二が居る場所を知っていると言うではないか。

その頃、一人で山に隠れていた雄二(赤木圭一郎-二役)は、やって来た百合子と再会していた。

しかし、その百合子は、東京から村川に尾行されていた事に気づかなかった。

村川に銃を突き付けられた雄二は、百合子と最後のキスをする振りをして、隠し持っていた銃を取り出すと、振り向きざま、村川の手を撃つ。

手を怪我して山を降りていた武川とすれ違った剛一は、その道を登って行き、雄二と初めて会う。

その雄二の言葉から、密輸の首謀者が牧浩太郎と聞いた剛一はショックを受ける。

昨日、別荘で出会った蘭子の父親の事だと悟ったからだ。

翌日、別荘の蘭子を訪れた剛一は、彼女に勧められるまま別荘の裏手にある防空壕に案内されるが、その中で不審な大量の珈琲缶を見つける。

その一缶をプレゼントとしてもらって帰った剛一は、すぐさま東京の殿村に連絡し、房州の大島荘と言う宿泊先で落ち合うと、珈琲缶の中に隠されていたダイヤの原石を見せて、密輸の首謀者が牧浩太郎だったと証すのだった。

すぐさま新聞記事にしようと喜ぶ殿村に対し、剛一は、浩太郎には自首させてくれと頼み、二人して、別荘で蘭子と休養していた浩太郎を訪ねるのだった。

そして、蘭子を遠ざけた上、浩太郎に対し自首を勧める二人だったが、浩太郎に防空壕を見てみないかと誘われ、二人は同行する。

防空壕の中には、珈琲缶に入ったダイヤの原石だけではなく、高級時計、麻薬が収納してあった。

しかし、浩太郎は、改心していた訳ではなく、ちょうどその時間にやって来るはずの、水野マネージャーを待っていたのだった。

案の上、時間通りやって来た水野は、約束とは違い、安井も同行していた。

水野と安井は、剛一と殿村に銃を向けるが、そこへ飛び込んで来たのが、先ほどの殿村たちの話を盗み聞いていた蘭子だった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

赤木圭一郎主演の通俗サスペンスもの。

浮き輪も付けず、海にプカプカ浮遊して登場するトニーの意外な登場シーンがまず愉快。

事件は、自分そっくりなもう一人の男を捜すサスペンスになっているが、種明かしは古典的な単純なもので、特に複雑なトリックや怪奇性などはない。

三島雅夫が、あの独特の風貌で登場する所が見物。

赤い海水パンツ姿で、明るい学生を演じている待田京介等の姿も、ちょっと珍しい。

ある意味、全編を通しての核となっている、金持ちの令嬢役を演じている中原早苗が魅力的に見えるかどうかは微妙な所だろう。

当時の彼女の人気は知らないが、今観ると、何となく地味な印象に見えるのは確か。

逆に、派手な顔だちでヒロイン顔の笹森礼子の方は、本作ではあまり出番がないと言った中途半端さ。

おそらく、女優としての当時の格で、こういうキャスティングになったのだろうが、時間が経って観ると、その辺の事情が分からなくなっているだけに、あれこれ疑問を覚えないではない。

ただ、娯楽作品としては、それなりに満足できる出来にはなっているのではないだろうか。

二人の赤木圭一郎が登場する所は、当然ながら合成だが、なかなか興味深い。