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としごろ

1973年、ホリプロ+松竹大船、元持栄美脚本、市村泰一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

泰成中学のバレーボール部では、先輩の大和田章子(和田アキ子)がコーチとして後輩たちを鍛えていた。

タイトル

今日は、卒業する3年生渡辺優子(秋谷陽子)と昌子(森昌子)とのお別れパーティを、部員の一人京子(山口百恵)の兄(東八郎)が経営している音楽喫茶「フラミンゴ」で開いていた。

勿論、先輩でコーチの章子も駆けつけて来て、バレーの名門翠峰高校に入学する優子を応援するのだった。

高校生になった優子は、さっそく、名コーチと言われる沼田先生(森次晃嗣)の元、バレー部の練習を始めるが、そんな優子の才能を狙って体育館に様子を見に来ていたのが、昭和紡績の実業バレーボール部監督とマネージャー岡部(堺正章)だった。

一方、新学期になっても追加募集をしないほど人気クラブである泰成中学のバレーボール部の練習を終えた章子は、図書館で勉強ばかりしている秀才の山岸(山口亮)をからかっていた。

その帰り、章子は、卒業して町工場で働いている昌子にばったり出会う。

残業の帰りだと言う。


せっかくだからと、自宅の甘味屋に誘おうとする章子に、昌子は、帰って食事の支度をしなければいけないからと断わる。

昌子には父が亡く、母一人の家庭なので、遊んでいる暇もないのだ。

章子が残念がって帰ると、母親(武智豊子)が客が来ていると言う。

客は、渡辺優子であった。

彼女が言うには、大工をしている父親(谷村昌彦)が怪我をして仕事が出来なくなったので、自分は学校を辞めて、誘ってくれる昭和紡績に入る事になったと言うのだ。

しかし、それを聞いた章子は、沼田先生に相談してみようとなだめるのだった。

その沼田先生と章子は、優子の家に出向き、何とか優子を働かせないで、学校を続けさせて欲しいと説得する。

沼田先生は、優子は高校No.1の実力を持つ子なので、自分が大切に育てたい。学費も自分が持つとまで言い出す。

しかし、酒浸りになっていた優子の父親は、頑固で、なかなか許そうとはしなかった。

そうした頑な父の姿を観た優子の小学生の弟は、姉ちゃんを勉強されてやれと援護するのだった。

こうした努力が実り、優子は、沼田先生の家に下宿する事になる。

一方、金属加工工場で働いている昌子の可愛い姿に目を奪われていたのは、東北から集団就職で上京して来た塚原(夏夕介)だったが、その塚原の浮ついた態度を注意していたのは、主任(村野武範)だった。

主任は、昼休み、歌を歌う昌子に声をかけ、一緒に話をしていた塚原を見かけると、爽やかにその交際を応援するのだった。

大学の全国大会3連勝の記録を持つ沼田先生の二階に居候する事になった優子は、さっそくその夜から、二階でレシーブの練習を始める熱心さ、そんな優子の姿を、沼田の妻秀子(富山真砂子)も好ましく受け止めるのだった。

その頃、音楽喫茶「フラミンゴ」では、ゲストに招いた西城秀樹が熱唱し、それを京子たちが夢中で応援していた。

その後、店を出て街へ出た京子とその友人らは、ブティックで洋服を観ている藤沢淳子(石川さゆり)を発見し、山岸の名を出してからかったりするが、淳子が言うには、これから昌子と待ち合わせて、美術館に行くのだそうだ。

その頃、当の昌子は又しても残業で、行けなくなったと淳子の自宅に電話するが、淳子の方はもう一人で約束のバス停で待っていた。

そんな淳子に目を付けた街の不良グループは、わざと彼女にぶつかり因縁をつけると、物陰に引きずり込んで、男三人で集団暴行してしまう。

沼田先生は、優子の面倒を見るのに過剰になりだし、秀子が作る料理にまで口出しをするようになる。

ある夜、夕食にクレームを付けた沼田先生は、外食に連れ出そうと二階の裕子を呼ぶが、その時、階段を降りて来た裕子は足を滑らせ、右足を挫いてしまう。

その足の傷に触って心配する沼田先生の様子を観ていた秀子は、優子に異常な愛情を注ぐ夫の異常なまでの態度に嫉妬心にも似た感情が沸き上がる。

レストランでステーキを食べさせていた沼田先生は、優子に対し「優子は、俺の宝だ」と熱い眼差しで訴えかけるのだった。

ある日、泰成中学のバレー部で練習中の淳子が、突然倒れてしまう。

最近、以前とは、淳子の様子が違っているのに京子たちも気づいていたが、あまりの出来事に愕然としてしまう。

医務室に運ばれた淳子の身体を調べた女医は、章子に、彼女は妊娠していると告げる。

しかし、それを聞いた章子は信じられない。

男性関係がないはずの淳子が妊娠等するはずがないと思っていたからだ。

しかし、その会話を聞いたのか、何時の間にか、医務室のベッドから、淳子の姿は消えていた。

その後、書店で、妊娠に関する本を購入した淳子は、空き地でこっそり読んでいたが、それを捜しに来た章子に発見される。

さらに、その場に現れたのが、淳子に乱暴をした三人の男たち。

とっさに、章子は、自分がヤクザの家の娘だと嘘を言い、男たちを追い払うのだった。

しかし、章子が気が付くと、淳子の姿は又見えなくなっていた。

その淳子は、家に帰る途中、ゴルフ帰りを装った父親(藤村有弘)が車の中で、愛人らしき女とキスしている現場を目撃してしまう。

同じ頃、淳子の自宅を訪れ、母親(南風洋子)に淳子がまだ帰宅していない事を聞いて心配していた章子の所に、その父親が帰宅して来る。

ある日、沼田先生は帰宅した自宅に妻の姿が見えない事に気づく。

テーブルに置いてあった置き手紙には、優子中心で家庭を顧みないあなたには付いて行けなくなったので、実家に帰ると書き記されていた。

沼田先生が握りつぶして捨てたその手紙を、こっそり拾い読んだ優子は、急に、一人になった沼田先生を自分が守らねばと言う自覚が芽生えて来る。

翌朝、沼田先生の下着等をきちんと洗濯し、弁当まで手渡す優子の姿があった。

結局、家には帰らなかった淳子が浜辺で海を観ていると、秀才の山岸が近づいて来て、親の敷いたレールを走らされ、過剰な期待を寄せられている自分も耐えられないのだと告白する。

その後、淳子と山岸が心中したとの連絡が入り、学校は対応に大わらわになる。

淳子の葬式にやって来た校長と教頭は、ひたすら学校には問題がなかったと言い訳し、さらに、山岸の両親の方から、淳子側に否があるかのような抗議があったとまで報告していた。

そんなところへ無遠慮に侵入して来た新聞記者は、章子に率いられたバレーボール部員もいる中で、淳子は妊娠2ヶ月だったと両親に打ち明けて、取材しようとし始める。

それにおろおろする両親や学校関係者たちを見かねた章子は、無神経な新聞記者たちをつまみ出すのだった。

一方、工場内で独り泣いていた昌子を見とがめた主任が訳を尋ねると、亡くなった友人の淳子が、昨日この工場へ来たのだが、自分は忙しくて話を聞いてやれなかったと悔やんでいる様子。

その時、そんな昌子に、ぶつかりそうになったコンベア部品に気づいた塚原が、身を呈して昌子をかばい、代わりに自分が怪我を負ってしまう。

その頃、章子は、街で例の三人の男を見つけると、殴り合いのケンカとなり、とうとう三人は、淳子に暴行を働いた犯人として逮捕させる事になる。

章子は、何とか、淳子の妊娠の誤解を解いた事には安堵していたが、もはや戻って来ない淳子の事を想い、独り寂しく歌うのだった。

入院した塚原の看病をしていた昌子は、輸血を引き受けてくれた主任に感謝を言う。

その日から、定時制の学校の授業に出られなくなった塚原の為に、昌子は、彼が通っている学校へ出向き、こっそり授業内容を窓の外からテープに録音するようになる。

優子はと言えば、階段から落ちた怪我がその後も思わしくなく、バレーの練習も明らかに支障が出て来る。

沼田先生は、病院での診断で、優子の怪我は全治半年かかり、その後半年間も運動等無理だと言われる。

優子に見切りを付けた沼田先生は、戻った学校での練習でも、優子をメンバーから外し、他の選手を鍛えはじめるのだった。

あれほど自分を誉めてくれていた沼田先生の豹変振りに絶望した優子は、その後、自宅に戻させる事になる。

優子を迎え入れた父親も、あれほど大切に育てると言っていた沼田先生の無責任振りを責めるが、先生は一言も言い返さない。

事情を知り、学校に出向き、沼田先生のスパルタ振りに抗議した章子であったが、バレー部員たちは、むしろ沼田をかばい、それを批判する章子の方を拒否してしまう。

音楽喫茶「フラミンゴ」で、何とか失意の優子を慰めようとする章子であったが、優子も又、沼田先生の事を慕っている様子。

そんな時、ステージで歌いはじめたのは昌子ではないか。

訳を聞くと、自分を助けて怪我をしてしまった友人の入院費を稼いでいるのだと言う。

章子は早速、その塚原を見舞い、そこで紹介された主任に一目惚れしてしまうのであった。

その後、「フラミンゴ」で自らも歌い、そのギャラを昌子に渡してもらうように、京子の兄に頼む章子。

優子は、その後も、沼田先生の事が忘れられず、こっそり自宅を訪れてみるが、窓から見えた居間では、何時の間にか戻っていた妻と仲良く抱擁する宣誓の姿を観てしまう。

自宅に帰っても、夜、隣で寝ている弟が寝言で言う「ねえちゃん、金メダルを取ってくれ」という言葉にプレッシャーを感じて眠れなくなる始末。

思いつめた優子は、昭和紡績を訪れ、もう一度、こちらで採用してもらえないかと頼むが、彼女の膝の怪我を知っている監督は、彼女がもう使い物にならないと言外に臭わし、去ってしまう。

残されたマネージャー岡部も優子を慰める言葉を持たず、外に連れ出し、何時の間にか歌っているだけだった。

京浜病院を退院した塚原を迎えに行った昌子は、雨の中、傘もささずずぶ濡れの状態で帰っている優子を目撃して、空家に誘うと、たき火を熾して彼女の服を乾かしてやる。

何もかもに絶望した優子は、淳子が死んだ気持ちが理解できる。彼女は、大人たちの身勝手さの犠牲になったのだと訴える。

しかし、それを聞いた昌子は、自分は死を選んだ淳子を最低だ、一緒に死んだ山岸も軽蔑するとまでと冷たく言い放つ。

それを聞き、愕然とする優子。

しかし、優子と分かれた昌子は、淳子の墓に出向くと、挫けそうになっている優子を力付けるために、わざとあなたの悪口を言ってしまったのだと謝罪するのだった。

翌朝、高校に通った優子の様子を陰ながら伺っていたのは昌子。

一瞬、優子は、校門に入るのをためらうが、思いきったように入ると、沼田先生を見かけ、何事もなかったかのように朝の挨拶をするのだった。

安心した昌子は自らも工場へ出かけ、その途中、主任さんと出会う。

そして、その側を、章子に率いられたバレー部員たちも走り抜けて行くのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

和田アキ子、森昌子主演のホリプロ作品だが、山口百恵のスクリーンデビュー作でもある。

とはいえ、和田アッコと森昌子は、時々画面に登場して、座を盛り上げているだけと言った印象で、ドラマの実質的な主役は、優子を演じている秋谷陽子であり、石川さゆりだと思う。

タイトルとキャスティングから、所属タレント宣伝目的の他愛のないアイドル学園ドラマを想像していると、思いのほかヘビーな展開に唖然とさせられる事になる。

特に衝撃を受けるのは、当時、山口百恵や森昌子同様、清純派アイドルとしてデビュー仕立ての石川さゆりが、他の二人が終始ニコニコアイドル演技をしている中、いきなり一人だけ体当たりの汚れ役を演じている事。

公開当時の観客も、アイドル目当ての子供が多かったのではないかと想像するが、そこへいきなり「集団レイプ」シーンである。

さすがに、全裸シーンは吹替えだが、下着シーンまでは石川さゆり本人が演じている。

何故、これほどハードな役柄を中学生の彼女だけが要求されたのか、今もって謎である。

想像するに、見た目的に一番美少女タイプだった石川さゆりには、女優としての道も想定されていたのかも知れない。

全体的には、森昌子歌う「せんせい」に合わせた、スパルタ高校教師とそれを慕うスポーツ部員の、やや倒錯した愛情物語になっているが、その何となく「奇妙な師弟愛」描写は「トンデモ映画」風であり、観ていて奇妙なハラハラ感に襲われる。

おそらく、脚本家が描きたかった「思春期の少女たちの悩み」というシリアスなテーマを、無理矢理、脳天気なアイドル歌謡映画の枠に組み合わせてしまったために起こった珍現象だと思われる。

「ウルトラセブン」のモロボシダンで有名だった森次晃嗣や、「飛び出せ青春」の教師役やテレビ版「日本沈没」で主演した村野武範らが、颯爽とした二枚目役として登場している所や、当時アイドルだった堺マチャアキや西城秀樹がゲスト出演している所などに時代を感じさせる。

肝心の百恵ちゃんは、まだプクプクとした幼児体型で、可愛らしい少女という以外に特別強い印象は残らないが、そういう素朴な彼女の姿が観られる貴重な作品ではある。


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