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三億円をつかまえろ

1975年、松竹大船、菊島隆三脚本、前田陽一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

早朝から仕事を求める立ちん坊の列が並んでいる。

そこに、図々しくも、三億円事件時効間近を報ずる新聞を読みながら、割り込んで来た男。

しかし、無情にも、仕事の番号札は、その男の一人前で終わってしまう。

がっかりするその男に、番号札を1500円で買わないかと声をかけて来た男がいた。

二人は、すれ違った後、互いに顔を見合わせる。

番号札を売ろうとしたのは南波(谷村昌彦)、声をかけられた方の男は、ムショから出て来たばかりの野島(長門勇)、共に、昔は一緒にドロボウ仲間だった二人だった。

久々の再会を喜び、近所の飲み屋で盛り上がった二人だったが、途中から、難波が懐の具合を心配しはじめる。

それに気づいた野島は、ムショで溜めた給金が2万7千ばかりあるから大丈夫と、封筒をテーブルに出して安心させるが、ちょっと目を話した隙に、難波とテーブルに置いた封筒が見当たらない。

やられた!…と、思った時には後の祭りで、野島は、飲み屋の親父(由利徹)に、無銭飲食の現行犯として警察に連れて行かれるはめになる。

しかし、途中で、立ち小便を理由に、何とか親父を振払ったと思った野島だったが、親父の方が、その辺一帯の地理に詳しく、あっさり、見つかってしまう。

仕方なく、野島が訪れたのは、その近所で、子供相手の塾を開いていた、元仲間の金庫破り、横山(有島一郎)の家だった。

彼から、飲食代を立て替えてもらうと、すっかり堅気になった彼の今の生活に感心してみせる野島だったが、当の横山の方は迷惑顔だった。

横山には、今年2歳になる正(森本稔)という赤ん坊がおり、その母親らしい若いあけみ(伊佐山ひろ子)という女は、帰宅したかと思うと、野島がいる事も無視して、横山に対し「役立たず」の一言を残すと、そのまま家出をしてしまう。

さすがに、初老の横山に、若い女房は扱いきれなかったようだ。

もう二度と来ないでくれと横山にいわれ、気まずい別れをした野島は、その後、その横山から渡された金をもらって出かけた競馬場で、偶然にも、予想屋をやっていた難波と再会する。

南波を引っ張って、再び、あの飲み屋に戻った野島は、その難波から、農協を襲わないかと話を持ちかけられる。

土地成金たちの泡銭が集まっているのだと言う。

その話に興味を示した野島だったが、又しても、南波は金を持っておらず、やむなく野島は、難波と連れ立ってその店を飲み逃げするしかなかった。

翌日、難波から紹介されたのは、農協に勤めていたと言う、土地成金の息子、米田(渡辺篤史)、競馬に狂ったあげく、ヤクザから借金したばかりに逃げ回っているのだと言う。

その後、難波と二人で、農協中泉支店の様子を観に出かけた野島は、ちょうど、現金を輸送する現場に出くわし、その金額が3億円であると知る。

野島は、今年年末には、3億円事件が時効になる事を引用し、この金額は縁起が良いと言い出す。

しかし、野島は、この作戦には、金庫やぶりの名人だった横山を参加させなくては成功はおぼつかないと悟り、何とか、彼を引き入れるために、正を誘拐しようと言い出す。

そんな野島と南波が、横山をつけて来たのは、とあるスーパーマーケット。

乳母車に乗せられた正を何とか、連れて行こうとする野島だったが、正にはしっかり紐が結わえ付けられており、すぐに、ケーキ売り場にいた横山に気づかれてしまう。

何とか、その場はごまかした野島らだったが、こうなったら、正攻法で説得するしかないと、その日、正の2才の誕生日だと聞いた二人は、その事を理由に、夜、横山の家を訪れ、今度の仕事を自分の引退試合にするつもりなので、何とか、手伝いをしてくれないかと説得するのだった。

だが、横山の答えは同じだった。

もう二度と、昔の仕事に戻る気はないと言うと、その場で酒に酔って寝てしまう。

がっかりして帰る野島と南波は、横になった横山が狸寝入りをして、二人の愚痴話を聞いていた事を知らなかった。

翌日、農協中泉支店の様子を見に行った野島と南波は、正を背負った横山が、その支店から出て来る所を目撃し吃驚する。

近づいて話を聞くと、意外な事に、手伝う決心をしたと言うではないか。

さっそく、横山の塾の部屋で、米田を加えた4人で作戦会議が開かれる。


金庫には、縦横に赤外線が走っており、守衛は一人、夜1時と5時に、警備会社のガードマンが見回りに来ると米田が説明する。

自分の指慣らしの期間も含め、侵入日をその月の14日に決定した横山は、農協の金庫が、鍵とダイヤルを合わせた方式なので、鍵の型を手に入れて来いと米田に命ずる。

翌日、元職場だった農協に遊びに来た振りをして出向いた米田は、女子行員奥山(一谷伸江)の目を盗むと、横山から教わった方法で、支店長の手提げ金庫に入っていた鍵の型をこっそり盗み取る事に成功する。

一方、横山の方は、金庫屋に出かけると、客を装い、最新式の金庫を相手に、ダイヤルを回す勘を取り戻そうとしていた。

野島はと言えば、元電気工の知識を生かし、赤外線装置をごまかすライトを購入していた。

かくして、準備は整い、蕎麦屋の二階で最後の打合せを終えた4人は、正も引き連れて高輪の泉岳寺にお参りすると、忠臣蔵の気分になり、結束を固めるのだった。

実は、まだ赤ん坊の正も現場に連れて行くと言うのが、仕事に参加する横山の出した条件だった。

奪った金は、頭数で分ける事に決定。

いよいよ、犯行当日の14日深夜、車の中で、ガードマンの1時の点検を観察する4人と正。

二人のガードマン(財津一郎、立原博)は、「大根の花は白い」「カボチャの花は黄色い」という合い言葉で、守衛(三木のり平)から農協内部に入れてもらうと、二階と一階を見回り帰って行く。

しかし、車からその様子を観ていた4人には、守衛室に、常時、金庫の周囲を写しているビデオ装置が新たに設置してある事に気づかなかった。

いよいよ、クレーン車で釣り下げられたワゴンに乗り込み、ビルの最上階から内部に侵入した4人と正は、守衛室の様子をうかがい、酒に酔った守衛が寝室に引きこもるのを確認した後、金庫室に近づく。

野島が用意した赤外線撹乱用のランプの設置を終えると、横山は、金庫の解錠に取りかかる。

その間、タダシのおむつ替え等をしている内に、自分の尿意を我慢していた米田は、野島に言われるまま、室内にあった花瓶の中に用を済ませようとするが、その際、目の前に設置してあるビデオカメラに気づく。

昔、自分が勤めていた時にはなかった装置に慌てる4人。

さらに、3時に、予想もしていなかったガードマンの巡回がやって来る。

何とか、めいめい室内に隠れ、それをやり過ごした4人だったが、新しい情報を知らなかった米田は、さんざん野島たちからいじめられる事になる。

そうこうする内に、ようやくダイヤル錠を開ける事に成功した横山だったが、重い扉を開けてみると、その中には、格子状のもう一枚の扉があり、その鍵は、予想もしていなかったスプリング錠であった。

もちろん、米田も知らなかったらしく、用意した合鍵はない。

もはやこれまでか…と、諦めかけた4人だったが、横山は、落ちていた細いパイプを見つけると、それをその場で細工しながら、臨時の合鍵をこしらえると、見事に、第二の扉も開けてしまう。

かくして、金庫室への侵入に成功した4人だったが、お目当ての現金がどこにも見つからない。

現金はすでにどこかに移動した後で、作戦は失敗したかに思えたが、野島が座り込んだ袋の中に札束が詰まっているのを発見、全員、その場で山分けと言う事にする。

その時、金を四等分しようとしていた野島に、横山は、正も参加しているのだから、五等分してくれと言い出す。

渋々、それに従った野島だったが、その内、またまた、正がべそをかきだす。

おむつが濡れたのだ。

しかし、もう手元に用意したおむつはなかった。

正が洩らしたおしっこは、床を伝い、赤外線装置を濡らしてしまう。

室内に轟き渡る警報!

全員、守衛を突き飛ばし、慌てて外へ逃げ出すが、警察の到着も早かった。

現金を抱えた4人+赤ん坊の運命は…?

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

3億円事件の時効の年に作られた犯罪ドラマ。

最初の内は長門裕之が主役かと思わせるが、途中から、ベテラン有島一郎が、ドラマの中核となって行く。

ユーモラスな表現も得意な個性的な役者が揃っているため、最初はコメディかと思わせるが、別に笑うようなシーンはない。

ペーソスというほどの情感もなく、「犯罪は引き合わない」というパターンの、割と平凡な印象のドラマになっている。

犯罪が始まってからのサスペンスも、お約束といった程度の展開。

あえて、本作の見所を捜せば、 犯罪現場に赤ん坊を連れて来ていると言う所だろう。

これに、「子連れ狼」の歌等を重ねている所から見ると、当時流行りだったその原作から、「子連れ犯罪もの」という着想を得たのだろう。

ただし、冷静に考えると、御都合主義で塗り固められたその展開には、多分に無理を感じるし、その着想が、ものすごく巧く成功しているかどうかは疑問が残る。

2才児を使ったシーンは、さぞかし大変だったろうと想像するが…。

金庫屋の店員役で、草薙幸二郎が登場していたりする。