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錆びた鎖

1960年、日活、池田一朗+秋元隆太脚本、斎藤武市監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

横浜での港湾作業を仕切っている長岡企業の次男坊、英二(赤木圭一郎)は、大学生ながら、学校に行くより、船で、ウクレレ片手に歌を歌うのが好きな仲間のハリーこと政吉(杉山俊夫)ら沖仲仕たちと一緒に仕事をしている方が楽しいという変わり者。

一方、兄の健一(小高雄二)の方は、英二も認める大学出の秀才で、父、長岡康三郎(小沢栄太郎)の後継ぎとして期待されていたが、どこかお坊っちゃん育ちのひ弱さを持っていた。

今日は、その健一が、客の馬場(三島雅夫)と談笑していた父親から、2000万の手形を受取り、銀行へ出かける所だった。

従兄弟のみっちゃんこと冬木美枝(笹森礼子)が、映画を観る約束だったと会社を訪れても、今日が大切な仕事だからと詫びて出かける健一。

ところが、横浜銀行の店内で、健一の手形を受取った二人組の一人が、突然、健一を後ろから殴りつけ、手形を盗んでしまう。

そんな事とは知らない美枝は、健一にデートをすっぽかされた穴埋めとして、弟の英二に会いに行くが、英二は洒落た店等知らないからと、美枝を馴染みの居酒屋へ連れて行くのだった。

しかし、臆するどころか、好奇心いっぱいの美枝は、英二が頼んだのと同じ焼酎を自分も飲むと言い出し、一気飲み始めてしまう。

その頃、手形を盗まれたと知った康三郎は、町田弁護士に連絡を取り、即刻、手形サルベージ屋を捜すように依頼するのだった。

その夜、長岡の家に、泥酔して前後不覚になった美枝を担いで英二が帰って来るが、健一も康三郎も、今はそれ所の心境ではなかった。

その頃、手形を盗んだ水原商事の社長水原泰三(大坂四郎)は、町田弁護士の手配で、手形サルベージ屋の大屋根組が動き出したらしいとうろたえる配下の松井(近藤宏)に向って、「こんな時、長岡が心臓マヒで死んだら良いのにな」と謎めいた言葉を投げかけていた。

英二と、海上でクレー射撃の練習をしていた康三郎は、帰社後、こちらの手元に手形があるという、名前を名乗らない電話を受取り、その相手と会うために指定された料亭に出かける。

そこで待っていたのは、三田村平之助(藤村有弘)という見知らぬ男。

取りあえず、猪口に注がれた酒を口に含んで、相手の出方を待っていた康三郎は、急激な眠気を覚えて、その場に昏倒してしまう。

そこへ入って来たのが水野組の松井、曙町の高尾医院へ運べば、ポン中先生が始末してくれると、康三郎の身体を運び出すのだった。

夜、いつものように、盛り場でチンピラ相手に喧嘩をし、警察に連行された英二は、取り調べの刑事の口から、父親が急死した事を知らされるのだった。

父の葬儀には馬場もやって来たが、その場にいたたまれなくなった英二は、一人、モーターボートを飛ばして、空に向けて猟銃をぶっぱなすのだった。

その後、長岡企業の新社長には、満場一致で、健一が就任する事になるが、その場に乗り込んで来た水野が、2000万円分のパクリ手形を自分が持っているので、現金出資の形で経営参加させろと迫って来る。

やむなく専務重役として水野を雇う事になった長岡企業だったが、それからと言うもの、沖仲仕たちには残業残業の連続を強いながら、塩やビタミン剤の補給は個人負担とする等、安全対策を無視した現場軽視の姿勢が濃厚になって行く。

こうした対応を知っていた英二は、自宅のパーティに現れた水野が、自分の一番大切にしている猟銃を触っているのに逆上し、それを奪い取ると部屋に引きこもるのだった。

しかし、そんな英二をなだめに来た健一は、近代企業になるためには仕方ないのだと、英二の考え方と考え方が違う事を明らかにするのだった。

そんな中、あれほど歌が好きだった気の良い政吉が、ハッチのはしごから滑り落ち、病院で死亡するという事故が発生する。

英二は、そんな事故さえ知らずに、会社で仕事を続けていた兄を、病院に引っ張って来て、政吉の遺体を見せつけるのだった。

これをきっかけに、経営姿勢を改めると労働者たちの前で約束した健一だったが、金の返還を迫る水野の前にあっては、何も言い出せなかった。

何とか、水野を退陣させるために、2000万の金を作ろうとあちこちを駆けずり廻った健一だったが、懇意だった馬場を始め、どこも2000万もの金を貸そうとはしなかった。

その鬱憤を晴らすために、愛人の社長秘書、沢村可奈子(白木マリ)と寝た健一だったが、事情を知っている可奈子は、以前、康三郎と馴染みだった、湾岸通りにある「スタンレー」というキャバレーのママが、康三郎に借りがあるような話をしていたと告げると、すぐさま、その店に向うのだった。

しかし、言葉巧みに、その店のママ正緒(宮城千賀子)から2000万を借り受けようと切り出した健一だったが、あっさり嘘を見抜かれた上、借りと言うのは、20年前、英二を生んだ事だと聞かされた健一は驚愕する。

何と、英二は、自分とは腹違いの弟だったのだ。

その頃、当の英二は、労働者仲間から呼ばれて、今後の会社への対抗策などを聞かされていた。

しかし、その酒場に忍んでいた水野の子分から、その反乱話が水野に伝わる事になり、それを水野当人から聞かされた健一は、英二に対するさい疑心が生まれて来るのだった。

その後、クレー射撃の練習をしていた英二を訪ねて来た健一は、自分がどんなに金策に苦労しているかを聞かせるのだった。

さらに、久々に家に早く帰って来た健一は、母親に、美枝と結婚したいので、冬木家に話してくれないかと急に頼み出す。

あまりに急な話に驚いた母親は、もしや、美枝の持参金を当てにしての話なのではないかと疑うのだった。

その頃、夜道で見知らぬ一味に取り巻かれていた英二の姿を発見し、喧嘩の助っ人をしてくれたのは、仕事を終え、60円旅館に帰る途中だった、風太郎の平太(西村晃)とその仲間たちだった。

翌日、いつものように愛人の可奈子に結婚する話を打ち明けた健一だが、それを聞いた可奈子は、その後、英二を呼出すと、自分が健一の愛人である事、実は手形を盗まれたのは父親の康三郎ではなく健一だった事、自惚れ屋のケンイチには、もはや美枝の持参金に頼るしか残されていないのだと、全てを打ち明けるのだった。

その夜、自宅で兄を呼出した英二は、父親を殺したのは兄さんだったようなものだと詰め寄る。

それを聞いた健一も逆上し、お前の本当の母親は「スタンレー」というキャバレーのママなんだと応酬し、それを聞いた英二はショックの余り、家を飛び出して帰らなくなる。

英二は、その「スタンレー」の正緒に会いに行っていた。

そして、彼も又、2000万円貸してくれと切り出すが、正緒は承知しようとはしなかった。

しかし、彼女の口から、水野泰三という男が有名な手形のパクリ屋だと言う事を教えてもらった英二は、自宅に戻ると、こっそり二階に登って美枝に会うと、兄と結婚するな、俺の方が君を好きだと告白して、家を立ち去るのだった。

英二が向ったのは、先日助けてもらった平太たちが泊まっている60円旅館「旭荘」だった。

翌朝、平太たちと立ちん坊の仕事に出かけた英二は、自ら長岡企業のトラックに彼らを乗せて、長岡組のかつての仲間たちと合流するのだった。

そんな英二の行動を知らない母親は、家に帰って来なくなった理由を健一に問いただし、英二の出生の秘密を打ち明けたと聞かされるのだった。

数日後、旭荘にいた英二は、平太に先日、喧嘩の助っ人をしてくれた時、俺を襲った相手の事を知らないかと尋ねると、松井組の連中らしかったと答える。

それでは、その中に、「デブで汗っかきの男」と「たえず貧乏揺すりをしている男」はいないかと尋ねると、調べておいてやると言う。

実は、その二人こそ、兄の健一から手形を盗んで行った二人だと、兄と喧嘩した夜、健一自身が言っていたのだ。

翌日、調べて来た平太から、その二人は、松井組の中西と大林と言う男だと聞かされる。

その頃、健一を呼出した三枝は、今回の結婚は断わらせてもらうと伝えていた。
他に誰が好きな男がいるのかという健一からの問いに対しては、自分でも分からないと答えるのみだった。

一人で、南京町の松井興行に乗り込み、中西と松林にあわせろと迫った英二だったが、相手にされず、喧嘩騒ぎとなった所へ、助けに来た平太たちも加わり、大乱闘になる。

結局、警察に連行された英二を迎えに来たのは母親だった。

自分と一緒に家に戻ろうと言う母親に対し、自分は出生の事等気にしていないが、今は、兄のために帰らないと英二は別れるのだった。

旭荘に戻った英二を待っていたのは平太だった。

彼に連れられて港に来た英二が観たものは、永岡組の仲間たちが集結している所だった。

何でも、専務が無理な荷受けを受けてしまい、大変な事になっているのだと言う。

その無理な荷受けとは、ペトロニウムという液体火薬の事で、何ヶ月も訓練を受けたような人間でないと危険で扱えない仕事なのだと言う。

憤った英二は、彼らを引き連れ、会社の専務の所へ談判に行くが、実は仕事を受けたのは社長本人なのだと言う。

健一は油だとばかり思い込み、騙されて受けた仕事だが、これをボイコットすれば、莫大な違約金を取られると蒼ざめている。

それではと、平太ら風太郎と自分でその仕事をやり遂げてみせると大見得を切った英二を観た、長岡組の連中は、負けてなるものかと、自分達でやり遂げてみせると決意するのだった。

こうして、危険な荷揚げ仕事が始まるが、そうした中、健一は金の当てが見つかったと水野専務に告げて会社を後にする。

彼が向ったのは「スタンレー」だった。

ようやく金を貸す事を決意した正緒は、現金2000万健一に持たせると、自分は秘かに「辰村不動産」に電話を入れていた。

「スタンレー」を後にした健一だったが、彼が乗り込んだ車に、何者かが侵入して来て、彼をどこかへ連れ去るのだった。

約束した会議の時間になっても戻らない社長を案じる社員たちだったが、一人、水野だけは平然としていた。

一方、英二の方には、平太が新たな情報を持ってやって来た。

捜していた二人組の一人、大林が心臓マヒの死体として、高尾医院という所で見つかったと言うのだ。

手形パクり事件の関係者が、二人も同じ病気で、しかも同じ病院で死んだというのはおかしいと気づいた英二は、早速その病院に駆け付けると、明らかにヤク中の高尾(高原駿雄)を締め上げて、殺しの依頼人の名前を聞き出す事に成功する。

それは松井だった。

その後、行方不明になった健一の車が第2突堤から海に突っ込んだが、中には乗っていなかったと聞かされた英二は、水野を会社から引きづり出すと、ペトロニウムを荷揚げしている船に連れて行き、そこで健一の居場所を聞き出すのだった。

その頃、健一を捕まえていた松井は、水野が来るのを待ち構えていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

赤木圭一郎主演のサスペンスアクション。

何やら、爽やかな青春ソングのようなテーマ曲と、加山雄三演ずる若大将でも連想させるような屈託のない大学生として登場する赤木圭一郎に最初は面喰らうが、そのお坊っちゃん主人公が、性格の違う兄と対立しながらも、気の合う仲間たちと協力して父親の死の真相を突き止めて行くストーリー。

東宝の若大将シリーズと決定的に違うのは、トニーのいかにも下手な歌や、冴えないルックスの政吉が歌う垢抜けないメロディ。
しかし、これは御愛嬌と言うべきだろう。

正直な所、トニーが演じている主人公にあまり魅力はないのだが、どこか屈折した秀才の兄を演じている小高雄二や、「今時の若いのは嫌いだ」と愚痴ばかり言っている風太郎を演じる西村晃、生みの母親ながら、湿っぽい所が一切なく、むしろサバサバした女傑を演じている宮城千賀子など、陰のある情婦役、白木マリなど、魅力的な脇役陣に助けられて、それなりに楽める娯楽活劇になっている。

やはり、海や船が登場する作品は、それだけでもあけっぴろげな雰囲気を感じるから不思議だ。

知能犯的悪役を演じている大坂四郎や三島雅夫も印象的。

この頃の日活作品らしく、ヒロイン役の笹森礼子の掘りさげは甘く、今一つ魅力的に見えないのが惜しい。

英二と健一の母親を演じているのは、キネ旬ネット資料にある轟夕起子ではない。