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俺の血が騒ぐ

1961年、山崎忠昭原案、池田一朗+長谷部安春+加藤新二脚本、山崎徳治郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

商船大学の練習船「海洋丸」が海上に漂う不審船を発見する。

無電で問い合わせても応答がないので、訓練生たちを相手の船に乗り込ませ内部調査するが、その際、キャビンに2体の死体を発見する。

その知らせを海洋丸に送った後、帰船しようとした調査メンバーたちは、再び戻ったキャビンで、死体が消えている事に気づく。


さらに生徒の一人、笠原明(沢本忠雄)の姿も見えないのに気づき、船内を捜しはじめるが、間もなく発見し、一緒に海洋丸に戻って来る。

その直後、問題の幽霊船は、炎上爆発してしまう。

その様子を見ていた明は、一人、「兄さん…」と呟くのだった…。

明を商船大学に通わせるため、自らは商船大学をやめ、船乗りになった兄の邦夫(赤木圭一郎)が久々に戻って来たので、明と、邦夫の許嫁、節子(笹森礼子)が港に迎えに来ていた。

しかし、邦夫に対する明の態度は、どこかよそよそしかった。

邦夫と明兄弟は、船長だった父親の死後、叔父に当る船医、宮沢浩平(小沢栄太郎)の家で世話になっており、節子は、その叔父の娘だったのだ。

その叔父宅に三人で帰って来た明は、すぐに邦夫の部屋に入って来るが、その際、邦夫がいじっていた拳銃を見て驚く。

それは、父親が殺されたのと同じ、リボルバー38口径で、復讐のため、シンガポールで手に入れて来たものだと聞き、さらに戸惑う明だった。

実は、二人の父親は、何者かに眉間に銃弾を撃ち込まれ死亡した上に、その死体の周辺には麻薬が散乱していたので、麻薬密輸関係者と疑われ、30年間真面目に勤務して来た船会社から、退職金も満足に出ないほど冷遇されたまま、兄弟も麻薬犯の子供達として辛い2年間を過ごして来たのだった。

その悔しさが忘れられない邦夫は、外国に、黄金の弾丸を眉間に撃ち込む殺し屋がいるという噂を聞き、自ら、その殺人犯を暴き出し、復讐をしようと今も今まで機会を伺っていたのだ。

しかし、何故かその夜、明は宮沢家の夕食の席に帰って来なかった。

明の行動に不審を感じた邦夫は、彼の下宿先に行き、最近、明が布川と言う友人とつるんで、毎夜のように麻帰りしているという話を大家から聞き込む。

さっそく、大家から聞いたバー「エルム」という店に向った邦夫は、占いを得意にしているマダム(南田洋子のいる店で泥酔している明を発見、連れて帰ろうとするが、その際、たちの良くない酔客に絡まれ、明は喧嘩に巻き込まれそうになる。

瞬間、マダムに持っていた銃の保管を願い出、すぐさま止めには行った邦夫だが、その時、店に入って来て、喧嘩の助太刀をしてくれた「ケン」と呼ばれる男がいた。

喧嘩はおさまったものの、その夜の騒ぎは、邦夫が勤めている船会社にも知られる所になり、邦夫は一ヶ月間、船員証没収と言う罰を受ける事になる。

明に、最近の生活の乱れの原因を聞こうとした邦夫だったが、明は、兄からもらった月謝を全部、布川に渡してしまったとしか答えない。

では、月謝はもう一度自分が送るから、今後一切、布川とは付き合うなと釘をさす邦夫だった。

再び、バー「エルム」を訪ねて、昨日保管を頼んだ銃を、マダムから返してもらっていた邦夫は、その現場を、たまたま店に来ていて様子を伺っていた「ケン」に発見されてしまう。

ケンも又、拳銃の使い手だったのだ。

色々、邦夫から事情を聞いたケンこと健次(葉山良二)は、すっかり邦夫を気に入り、二人はバーを船に見立てて、その夜は盛り上がるのだった。

こちらも、そんなケンの人柄を好きになった邦夫は、金が欲しいと本心を打ち明ける。

それを聞いたケンが邦夫を案内して来たのは、キャバレー「オリンパス」という店の奥にある、秘密のカジノ部屋だった。

そこでは、花札賭博が行われており、勝負度胸の良い邦夫は面白いように勝ち続ける。

最後に、挑んで来た外国人との大勝負がイカサマである事を見抜いた邦夫は、トリックの花札を銃で打ち抜くと言う荒技を披露するが、ケンに制止され、大人しく、その店の社長である立岩(安倍徹)に紹介される事になる。

立岩は、邦夫の銃の腕前に惚れ込み、仲間になれと誘って来る。

そこで、先ほど勝負をした外国人エリック(マイク・ダニー)も、この店の用心棒の一人で、拳銃の名手である事を知る邦夫だった。

立岩の元には、他にも、大野(高品格)や関(弘松三郎)という拳銃の使い手たちが揃っていた。

その日は申し出を断わって帰った邦夫だが、帰宅した時間が遅かった事もあり、家人たちを起こすまいと、庭木を登って、二階の部屋へ戻ろうとした邦夫は、そこで話し込んでいる明と節子の会話を盗み聞いてしまう。

実は、邦夫が海に出ている間に、明と節子は互いに好きあっていたのだった。

節子は、父親の復讐に燃える邦夫を怖くなり、もう付いていけなくなったと打ち明けていたし、明の方は、兄の婚約者を好きになった事を後ろめたく感じていたのだった。

事情を察した邦夫は、再び、庭木伝いに下に降りると、玄関から明を呼出し、夜の港に連れ立って行く。

そこで、明に、どのくらいの気持ちで節子を愛しているのか、俺にかかって来いと挑戦した邦夫だったが、すぐさま謝罪し、節子を譲る事を打ち明けて、明の前から去って行くのだった。

バー「オリンパス」にやって来た邦夫は、そこで木村組と言う男たちに連れ去られるケンの姿を見かけ尾行する。

そして、連れ込まれた無人の波止場で、危うく袋叩きにされそうになっていたケンを、持っていた銃を使って救い出すのだった。

そんな邦夫に、俺と一緒に船に乗らないかと誘い掛けるケン。

乗り気ではないと見たケンは、さらに、その船に乗れば、リボルバーを持った男を見つけるかも知れないと、謎めいた言葉を投げかけて来るのだった。

その言葉で思いを決した邦夫は、立岩の下で、一航海、15万の報酬を条件に船に乗る事を承知する。

その日から、バー「オリンパス」内部の部屋で寝泊まりする事になった邦夫は、まず、自分と同室になったケンの拳銃コレクションを改めさせてもらった上、翌日、マネキンを取り寄せると、エリックたちに、この眉間を撃ち抜く事ができる奴はいないかと、犯人捜しを始めるが、一見乗り気ではなさそうだったエリックは簡単にマネキンの眉間に命中させてしまう。

その後、ケンと邦夫は「オリンパス」の賭博場に「エルム」のマダムの姿を発見する。

ここへは、ケンの名前を使って入ったと言うが、店をたたんだ金で、自分も一緒の船に乗せて欲しいと言い出す。

その頃、宮沢浩平も、ボルネオへの船旅に出る準備をしており、明も又、海洋丸での卒業試験に臨む事になる。

立岩に同行して乗る船は「玄海丸」という船だったので、邦夫は驚く。

実は、叔父が船医として乗る船だと知っていたからだ。
しかし、医務室に挨拶に訪れた邦夫の姿を見た宮沢は、まさか甥がこの船に乗り込んでいたとは知らなかったらしく、何故か狼狽しただけではなく、神戸に着いたら、この船を降りろと忠告するのだった。

しかし、邦夫は、今回は、立岩という実業家の部下として乗っているので降りる事は出来ないし、今や、節子は明と付き合っているとも、叔父に打ち明けるのだった。

その後、甲板上で、銃の練習をしていた立岩の部下たちと、それを見学していた船員たちから勧められる形で、自らもその仲間に加わった叔父の拳銃の腕が確かなのを、邦夫は見逃さなかった。

やがて、船長(雪丘啓介)の所へ、部下の一人が破傷風にかかったと、立岩が報告に来る。

近くに港もないので、無電で近くに船はないかと探っていた所、「サイプラス号」から血清を持っているとの返事を受け、間もなく、その船から、バッグを持った外国人が一人、医務室に乗り込んで来る。

しかし、その外国人が持って来たバッグの中身は、偽ドルだった。

その場にいた立岩は、それを現金と交換していたが、その現場を好奇心から覗いていた船員井崎(花村典克)がいた。

それに気づいた立岩は、井崎を医務室に引きずり込んで殴って気絶させると、大野に事故に見せ掛けて処分しろと命ずるが、担いで、海に捨てに行った大野を甲板上で見かけ、井崎を助けたのは邦夫だった。

彼は、急いで井崎を船員室に運び込むが、それを見た船員たちは、邦夫がやったと勘違いし、部屋の中は一瞬にして気色ばむ。

さらに、呼ばれてやって来た船医の宮沢は、ベッドに寝かされた井崎の姿を見て驚愕する。

何しろ、宮沢本人も、先ほどまで医務室にいて、立岩の犯行の一部始終を見ていて本人だったからである。

その報告を宮沢から聞かされた立岩は、さらに意外な事を宮沢から打ち明けられる。

あの邦夫と言う青年の父親こそ、前の玄海丸の船長だったのだと言う。

エリックは、そんな男を仲間に加えた責任はケンにあり、お前が邦夫の始末をしろと命ずる。

その頃、気づいた井崎から、立岩たちの不正行為を聞かされていた船員たちは、邦夫への誤解を詫びると共に、立岩に抗議するため、部屋に乗り込んで来る。

しかし、そこには、先に抗議に来て、逆に縛られ人質になっていた船長の姿があった。

立岩は、船員代表たちに、ボルネオに無事到着しさえすれば、船長は返してやると条件を出すのだった。

しかし、その条件を飲んだ船員たちが帰った後、立岩はエリックに、香港近くの海で自分達だけ脱出した後、この船は、ケンに仕掛けさせた時限爆弾により、3時には爆発させると打ち明けていた。

その話を、部屋の外で秘かに立ち聞きしていたのは、「エルム」のマダムだった。

夜、船長の見張り番として、他の用心棒たちと交替で見張っていた邦夫は、隙を見て船長を助けようとするが、あらかじめ彼の正体を知っており狸寝入りをしていた他の用心棒たちによって、邦夫も又、イスに縛り付けられてしまうのだった。

ケンと相談したマダムは、邦夫と船長が捕えられている部屋に単身乗り込み、邦夫にキスをする振りをしてこっそりナイフを手渡すのだった。

邦夫がロープを切っている間、マダムは、見張り役の大野と関を、得意の占いに注目させていた。

かくして、自由になった邦夫は、大野と関の銃を奪い、マダムと共に部屋を脱出するのだった。

そして、医務室の叔父を訪ねると、父親を殺した真犯人が誰なのかを問いつめるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

赤木圭一郎主演の海洋サスペンスアクション。

海洋怪奇ものを思わせる謎めいた出だしから始まり、本編の後半で、その同じシーンが繰り返される事によって、冒頭の種明かしが行われると言う凝った構成になっている。

葉山良二が、赤木扮する主人公を助ける友人の役を演じているが、どうも、この葉山良二という俳優の魅力が良く分からない。

「拳銃無頼帖シリーズ」における宍戸錠の役に相当するキャラクターなのだろうが、そのやや肥満した二枚目風の容貌は、はっきり好感が持てる顔でもなければ、かといって悪役顔でもなく、どことなく中途半端な印象しか受けないのだ。

また、本作における南田洋子の存在理由も、今一つはっきりしない。
まあ、何となく、後半、男ばかりになる船の上での描写に、彩りとして加えられたのだろうが、その船に乗り込む動機のようなものが、今一つはっきりしないのが気になる。

その辺が、若干、本作の求心力を弱めている観はあるものの、全体としては、なかなか纏まった娯楽作品になっていると思う。

この当時馴染みだった外国人俳優、チコ・ローランドやマイク・ダニーの姿が懐かしい。

安倍徹の悪役ぶりは、さすがに存在感があって頼もしい限り。

冒頭の船の炎上シーン等は、もちろん、天羽四郎の手になるミニチュア特撮である。