TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

鳳城の花嫁

1957年、東映京都、中山文雄脚本、松田定次監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

天下太平の頃の話である。

下総、松平28万石、城主、松平安房守(三島雅夫)の鳳城では、表向き、能の観劇に見せ掛けた、若殿、源太郎(大友柳太朗)の嫁捜しが執り行なわれる事になる。

しかし、当の源太郎は、能舞台が始まっても、自分は、馬に乗っての槍合戦の最中。

家老の嘉門(薄田研二)は、気が気ではなく、源太郎を席に付かせるや、当日、来賓として招いた各藩の姫君たちをあれこれ紹介するが、源太郎は今一つ乗り気でない様子。

結婚は、親の取り決めに従うのが習わしと解く嘉門の言葉を聞く内に、源太郎、嫁選びは孝行の道に繋がる事だと悟り、これからは自分の道を進むと言い出す。

翌朝、その源太郎、江戸へ向うとの置き手紙を残し姿が見えなくなる。

これには、嘉門以下、家臣たちは慌て、すぐさま後を追おうと安房守に指示をあおぐが、これに対し、安房守は、ようやく自分で積極的に読め捜しに行くようになったかと、むしろ奥方と共にほくそ笑む始末。

何せ源太郎には、これまで10年間も嫁をもらえと幾度も勧めながら、ちっとも態度がはっきりせず、やきもきさせられていたからである。

その源太郎も、来年で30才。

本人もさぞかし焦っているのだろうと、安房守は、その追跡を止めさせるのだった。

その頃、源太郎は、独り、歩いて江戸へ向っていた。

その随分立派な身なりで歩いている奇妙な侍の姿を目撃した浪人者、檜垣権九郎(田崎潤)は、興味を起こし、その後をつける事になるが、茶屋で団子を喰ったその侍が、金を払わずに立ち去ろうとした事で、店の主人(杉狂児)ともめ事になるのを見ていた。

どうやら、その侍は、金等持っていないと悪びれる風でもなく、堂々と言っている。

これに対し、がらの悪そうな駕篭かき二人組が因縁を付出したので、権九郎が中に入り、自分が立て替えてやる事にする。

しかし、彼も大した持ち合わせがなく、茶屋の主人は、結果的に、一人分の茶代も取れなかった事に気づくが、もう後の祭り。何しろ、権九郎は、侍の茶代を値切っただけでなく、自分の茶代の方は払わずに去ってしまったからである。

その後、源太郎と同行する事になった権九郎は、本当にそんなに立派な身なりをしているのに金を持っていないのなら、持っている印篭や着物を売って、路銀を作れば良いのではないかと知恵を貸し、自分が古着屋に掛け合って、10両2分の金を手にするが、源太郎には5両2分だけ渡すのだった。

しかし、金の価値等まったく知らない源太郎は、古着に着替えを済ませた後、受取った金の中から、さらに礼金を渡そうとする始末。

すっかり面喰らった権九郎から名を尋ねられた源太郎は、松平(まつひら)源吉ととっさに偽名を名乗って別れるのだった。

舞台は変わって、江戸の猿若座。

最近、旗本と言う身分を利用して江戸で羽振りを利かせている不良グループ赤柄組の一行が、桟敷きの中にいる「羽子板娘」と評判の、呉服問屋井筒屋の姉妹、おきぬ(長谷川裕見子)とおみつ(中原ひとみ)を、何とかものに出来まいかと相談していた。

手下の、猿(ましら)の三次(原建策)に直接呼びに行かせるも、あっさり断わられたので、首領格の長野五郎左衛門(進藤英太郎)より、メンバーの一人秋山(加賀邦夫)の方が面子を潰されたと激怒する。

そんな赤柄組から、仕返しを頼まれた三次は、仲間を集めている最中、たまたま賭場にいた浪人者を用心棒役として紹介される。

その浪人者こそ、源太郎の変わり果てた姿で、彼は、わずか一朱のはした金をもらい、訳も分からず、三次たちの仕事を手伝う事になる。

三次たちは、芝居がはね、駕篭で帰宅途中だった姉妹を待ち伏せ、猿ぐつわを噛ませると、長野の屋敷に連れて行こうとするが、その様子を見ていた源太郎は、か弱い婦女子に手荒な真似をするとは何事かと、その行動に疑問を投げかねる。

その、とぼけた言葉にいらついた三次が、つい源太郎を殴りつけると、ぶたれた源太郎は怒るどころか「これまで本気で殴られた事がなかったのが、本気で殴り合ったらさぞ楽しかろうと思っていた」と妙な事を言い出し、生き生きとした表情で三次一行をなぎ倒しはじめる。

危ない所を助けられた姉妹と、同行していた手代の清吉(片岡栄二郎)は、その不思議な浪人者が住む所もないと聞くと、せっかくだから、護衛を兼ねて自分の店に来てはどうかと勧める。

その夜は一晩泊めてもらい、翌朝、娘を助けられた主人の計らいで、贅沢な朝食を出された源太郎だったが、贅沢には慣れているので、特別な驚きもない。

逆に、その鷹揚な態度に、姉妹の母親(風見章子)の方が戸惑ってしまう有り様だった。

その頃、朝から、得意の歌を歌って上機嫌のおみつが、姉のおきぬに、あの浪人を姉さんは好きなのではないか等と生意気な事を言い、ちょっとした姉妹喧嘩が始まる。

実は、おみつの方にはすでに清吉という恋人がいるので、何かと姉の事を心配しておせっかいをしたがるのだが、それが姉からしてみれば、プライドをいたく傷つけられる行為だったからだ。

そんな中、井筒屋の店先に、夕べの三次が又やって来て、長野様の面子を潰されたのでどうしてくれるんだと因縁を付けていた。

主人は、五両の金を渡して帰そうとするが、三次は、そんなはした金では不満と突き返そうとする。

しかし、そこへ、夕べのあの浪人が顔を見せたから、青菜に塩、三次は尻尾を巻いて逃げ出そうとするが、それを追い掛ける源太郎。

実は、夕べもらった一朱を律儀に返そうとしていたからだった。

その頃、赤柄組の連中と一緒にのんきに花見をしながら、大店である井筒屋から千両箱くらいは脅し取って来れるだろうと高望みしていた長野五郎左衛門は、わずか五両を持ち帰って来た三次を見て激怒する。

一方、三次の強請事件のお陰で、そのまま源太郎が井筒屋に逗留する事になったのを喜んだのは、妹のおみつ。

それとなく、姉のおきぬとの仲を取り持とうとあれこれ言葉をかけるが、源太郎の態度は今一つはっきりしない。

そうしたおみつの無邪気な行為を、庭先で覗いていたのが清吉とおきぬ。

両者とも、おみつと源太郎が、同じ部屋で仲良く会話しているのが気になって仕方ないのだ。

そんな事とも知らず、おみつは、源太郎と姉を物干台で逢い引きさせようと仕掛けるのだが、源太郎は物干台という言葉すら知らない模様。

こうしたおみつの計らいで、何とか、おきぬと源太郎は物干台で落ち合う事になるが、源太郎はムードを作るどころか、いきなり、あなたは蛸が好きか等と突拍子もない事を聞いて来る。

自分は蛸が大の苦手なので、結婚する相手が蛸が好きだと困る等と話が飛ぶので、さすがのおきぬも呆れて、その場から立ち去ってしまうのだった。

その頃、鳳城では、城主、安房守が病床に伏してしまい、このままでは、お家断絶させられる恐れもあると判断した嘉門は、源太郎を連れ帰るべく、江戸に向っていた。

江戸の赤柄組の方では、井筒屋姉妹を手込めにする望みがなかなかかなわない秋山は荒れ狂っていた。

しかし、首領の長野五郎左衛門は騒がず、秘かに、井筒屋に仕返しをする秘策を練っていた。

そんな長野の元に、用心棒として雇ってみてはどうかと、三次が連れて来たのが檜垣権九郎。

長野は、下総の松平28万石の源太郎と言う長男が江戸へ出奔している噂を聞き付け、雇い入れた檜垣をその松平家の家臣と見せ掛け、井筒屋から、源太郎の嫁候補としておきぬが見初められたと、嘘の報告に出向かせる事にする。

その言葉を真に受け、すっかり喜んだ井筒屋は、お目見え目的の「カルタ会」に参加するか否かをおきぬに打診するが、一旦は、そうした一方的な話に拒絶反応を見せたおきぬだったが、廊下で(本物の)源太郎と鉢合わせになり、彼への腹いせの気持ちもあって、急に申し出を受け入れる事にする。

その頃、松平家の江戸屋敷では、嘉門の厳命により、昼夜を問わない源太郎捜索が続いていた。

ある朝、井筒屋の朝食に、あろう事か、源太郎苦手の蛸の煮つけが登場。

しかし、おきぬの手前、源太郎は無理に蛸を口に押し込むのだった。

その夜、久々に、物干台でおきぬと再会した源太郎だったが、その手には、口から出て来た蛸が丸のまま握られており、又してもムードぶち壊しで、接吻直前まで行きながら、怒ったおきぬは去ってしまう。

あまりに自らのふがいなさに落胆した源太郎、思わず、手にしていた蛸を「無礼者!」と投げ捨てるのだった。

やがて、江戸屋敷の嘉門の元に、井筒屋という店に「松平源助」なる浪人ものが逗留していると言う情報がもたらされ、すぐさま、それが源太郎の事だと気づいた嘉門は、全員を井筒屋へ走らせる。

その頃、迎えに来た檜垣権九郎に案内され、長野の屋敷に連れて来られたおきぬとおみつは、初めて自分達が騙されていた事に気づく。

二人をようやく手中にした長野五郎左衛門は、これまでの仕返しを込めて、二人を丸坊主にして秋山に渡す趣向を思い付く。

一方、井筒屋で、清吉から、姉妹は、松平源太郎と言う若様からお呼びがかかって出かけたと聞かされた源太郎は、すぐに赤柄組の策略に引っ掛かったと気づき、その屋敷にかけ参じるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

日本初のカラーシネマスコープ作品。

はっきり言えば、実に他愛無い話で、技術的に映画史に残る作品ではあっても、内容的にはどうと言う事のない凡作。

せっかく美人姉妹と言う設定なのに、一方には最初から相手がいると言う事にしてしまっているので、主人公がどちらを選ぶかと言う恋の行方に対するハラハラ感がない。

昔のハリウッドミュージカル映画などにも良くあったパターンだが、こちらは、特に音楽や踊りで見せると言うタイプの作品ではないだけに、後は、当初から分かり切っている二人の恋の成熟を見守っているだけと言う感じで、今観るとさすがに退屈。

妹役の中原ひとみが歌うシーンで、明らかに別人が歌っている歌に「口パク」をしているのが珍しい。

悪役ではない三島雅夫や薄田研二、逆に、極悪人を演じている加賀邦夫などが、ちょっと見物かも知れない。

最後が、何やら「水戸黄門的」になるのも御愛嬌。