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拳銃無頼帖 抜き射ちの竜

1960年、日活、木戸礼原作、山崎巌脚色、野口博志監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夜の駅構内で、二人の男が銃を持って対峙している。

若い男の方は、自分を陰から狙っていた狙撃者を撃ち、さらに、対峙していた相手の男(山之辺潤一)の右肩を打ち砕くが、自らも身体に異常があるのかその場に倒れ伏すのだった。

とある男からかつぎこまれ、志津病院という個人病院で一ヶ月入院していた「抜き撃ちの竜」こと、剣崎竜二(赤木圭一郎)は、麻薬中毒の治療をしてくれた医者の志津(菅井一郎)から渡された朝刊に載った「宮地組解散」の記事を読んでいた。

1ケ月前の駅の決闘で、竜が肩を打ち砕いた相手が、組長の宮地だったのだ。

そんな病院に、意趣返しのつもりか、ムショ帰りの両刃の源(高品格)が襲撃して来る。
竜は、源のナイフを奪おうと取っ組み合いになるが、そこに現れた一人の男が、銃で源を威嚇する。

その男こそ、麻薬中毒で失神していた竜を、この個人病院に運び込んだ男、コルトの銀(宍戸錠)だった。

銀は、源を追っ払うと、竜を銀座で待っている人の元に連れて行くが、その途中で、竜は、ボクシングジムに立ち寄って、弟分の三島圭吉(沢本忠雄)と会おうとするが、大切な試合で八百長をやっとかで、今は行方知れずになったと聞かされショックを受ける。

銀に、銀座のブティック「ルガー」に連れて行かれた竜は、店内で若い女性とぶつかり、そのバッグを落としてしまうが、中身を拾い上げている内に、一本、口紅を拾い忘れていた事に気づくが、銀に今は渡さず、出合いのきっかけにしろと粋なアドバイスを受ける。

その「ルガー」ではファッションショーの真っ最中、先ほどの若い女性は、そこのショーに出ていたモデルだった。

竜は、銀から、その店内で社長と呼ばれている楊三元(西村晃)に紹介されるが、その楊と同席していた堀田(二本柳寛)という男には昔からの顔なじみだった。
行方不明になった三島圭吉は、その堀田拳の坂口という選手と試合したはずだった。

楊は、竜を二階の自分の事務所に連れて行くと、銃を渡そうとする。
「抜き撃ちの竜」を復活させようとしているのだった。

竜は、もう金輪際、銃は持たないと拒絶するが、巧みな楊の誘導で、結局、人を殺さない事を条件に、楊の下で働く事になる。

その後、「ルガー」の名義人となっているデザイナー真木房江(香月美奈子)に案内され、部屋の外に出た竜は、隣のビルとの間の壁が開く仕掛けを見せられる。

隣は、中華料理店だった。

そこには、手相見が好きなコックの源(藤村有弘)と、銀が待っていた。

小使い銭をもらい、自分の住処として用意されたマンションの515号室に落ち着いた竜。

その頃、麻薬取締局では、銀座の「ルガー」の内偵が進んでおり、店に入ろうとする竜と銀の姿も写真に撮られていた。

部屋でシャワーを浴びていた竜の元に、社長から電話があり、16号室へ行けという指令。

その部屋は、真木房江の部屋だった。

竜の女として用意してあったのだが、彼女に事情を聞くと、1年前まで社長の女だったのだと言う。

最初から、女に興味等なかった竜は部屋を立ち去ろうとするが、人の気配を感じ、ベッドルームのカーテンを開いてみると、そこには何と、三島圭吉がいるではないか!

屋上に連れ出し、八百長をした事情を聞き出そうとするが、圭吉は口を割ろうとしない。
やがて、苦しみだした圭吉の姿を観た竜は、彼が麻薬中毒になっている事を悟るのだった。

房江と共に、圭吉を、馴染みの志津病院まで送ろうと外に出た竜だったが、そこに、堀田の迎えと言う男が現れる。

ナイトクラブで堀田と会った竜は、その場に、先日「ルガー」で出会った若い女生と再会する。
何故か、この店ではホステスをやっているようだった。

堀田は、竜に、多量のヤクを取り引きしている楊の情報を教えろと迫るが、竜は自分は何も知らないと突っぱねる。ボディガード役の両刃の源の投げるナイフにも動じなかった。

自分達が座っていたテーブルの下から何かが落ちたのに気づいた竜は、帰り際、さり気なくそれを拾って持ち帰るが、それは盗聴器だった。

その後、竜は、自分と同じマンションの412号室に住んでいたあの若い女性の部屋に忍び込み、彼女の帰りを待つ。

竜は、「ルガー」で拾った口紅を返すと共に、盗聴器で盗み取った会話のテープを返せと迫る。彼女が仕掛けたと読んでいたからだ。

しかし、みどり(浅丘ルリ子)というその女性は、アルバイトであのクラブでも働いていただけで、盗聴器等知らないと否定するのだった。

「ルガー」の二階に戻った竜は、楊社長から、チャンに同行するよう命じられ、銀と共に、取引先に車で出かける。

その頃、志津病院に入院していた圭吉は、看病していた房江に、楊の事を警察に密告して、この世界から足を洗おうと誘っていた。

目的地に付いたチャンは、ウィスキーに隠してヤクを買って来たらしく、それを車のヘッドライトの後ろに隠せと銀に命ずるが、先ほどから監視していたらしき源たちの姿を察知した竜は、相手の発砲より一瞬早く相手を撃って、背中を見せていた銀を救うのだった。

その後、銀と竜は、源たちを追い詰め、銀は、相手を殺さない竜とは違い、源の心臓に弾丸を撃ち込むのだった。

その帰り道、誰が密告したのか、パトカーから止められ車内を捜査されたチャンたちの車だったが、竜たちが持っていた拳銃はすでに窓から捨てていたし、チャンが持っていたヤクのような袋は、盆栽用の白砂だったので難を免れる事になる。

しかし、チャンの店「天陽」と「ルガー」が隣同士である事実に気づいた捜査班は、「ルガー」の二階にある陶器の貿易会社と言うのが怪しいと睨み出すのだった。

事務所に戻って来たチャンたちの前で、今回の計画を麻取に通報した密通者がいると言い出した楊。

竜は先日の盗聴器の事を話すが、そのテープは楊が持っていた。
盗聴器を仕掛けていたのは、楊だったのだ。

今回の計画を知っているのは内部の者しかいないはずで、楊はチャンに3日以内に裏切者を探し出せと命ずる。

後日、竜は、みどりの所に行き、盗聴器の疑いをかけた詫びのつもりで金を渡そうとする。

しかし、みどりは金を受取ろうとはせず、誤解が解けたのならそれで良いと許すが、それならと、その金を持って竜とデパートへ出かけ大量のおもちゃを購入すると、孤児院の子供たちに寄附するのだった。

その後、みどりは、竜と港に出向き、自分は孤児院出身である事、昔、麻薬捜査官の兄の友人であった恋人が死んだ事等を打ち明けるのだった。

その竜は、その後、楊に呼出され、堀田を消せと命じられる。

銀と合流し、堀田拳に出向いた竜は、愛人とベッドに入っていた堀田を襲撃するが、殺人をしない事を信条としている竜は、なかなか堀田を殺せない。

それを見た銀は、自ら、堀田、その愛人、拳闘クラブにいた他の目撃者男女まで全員殺してしまうのだった。

その頃、みどりは楊社長に呼出されていた。

みどりの兄こそ、クラブでトランペットを拭いていた石井(草薙幸二郎)だったからだ。

一方、志津病院にいた圭吉と房江は、宝(黒田剛)に襲撃され、房江は連れ去られる。

瀕死の状態でマンションに逃げ込んで来た圭吉の口から、その事を知らされた竜は、病院に駆けつけ、倒れていた瀕死の志津から、襲った宝の名を聞かされるのだった。

その宝に連れ去られた房江の方は、天陽の店内で宝から射殺させそうになるが、自分に殺らせてくれと言い出した銀から、何故かその命を救われていた。

房江から、楊の取引場所が芝浦の岸壁と聞いた竜は、みどり共に兄に通報すると共に、通りかかったトラックを止め、それに乗り込むと現場に急行するのだが、そのトラックには大量の火薬が積まれていた事を知らなかった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

夭折した赤木圭一郎主演の通俗サスペンス。

早撃ちにかけては彼の右に出るものがいないほどの凄腕という主人公に対し、その主人公をライバル視して、自分以外の人間には彼を殺させないと、結果的に、ことあるごとに彼を助ける事になる、こちらも腕利きの拳銃使いに宍戸錠、さらに、このシリーズのレギュラー悪役となる藤村有弘や二本柳寛などが全てこの時点から揃っている。

銃の腕前はすごいが、人殺しはしたがらず、たえず相手の右肩を撃って、銃を二度と持てない身体にするのが信条というのが「抜き撃ちの竜」の特長。

さらに、女にも金にも執着しないと言う淡白ぶり。

ヤクザに雇われて用心棒的な仕事はするが、決して、汚い事はしない一匹狼的な存在を赤木圭一郎が爽やかに演じている。

最初の話である本作では、その主人公が麻薬中毒にかかっていると言うショッキングな描写から始まり、それを完治されて以降、麻薬組織に雇われる形で、最終的には麻薬撲滅の手伝いをするというのがおおまかなストーリーとなる。

ヒロイン役を勤めるのは、若かりし頃の浅丘ルリ子。

このシリーズには、悪役として中国人が必ずと言って良いほど登場するが、この作品では、西村晃と藤村有弘がその役を巧みに演じている。

ナイフ使いの無気味なヤクザに扮している高品格も、若々しく印象的。

劇中、赤木本人が歌う下手な挿入歌が御愛嬌。