TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

蔵の中

1981年、角川春樹事務所、横溝正史原作、桂千穂脚本、高林陽一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

雨の中、亡き妻の墓参りをしていた雑誌「象徴社」の代表、磯貝三四郎(中尾彬)は、さしていた傘に何かが落ちて来たので、確かめてみると、それは木から落ちて来た蛇だったので、驚きのあまり傘を放ると、事務所に逃げ帰る。

事務所に着いた三四郎、事務員の玉枝(亜湖)と二人きりだと思い、昼間から抱きつこうとするが、先ほどから小説を読んでもらいたちという書生さんが待ちかねていると聞き、機嫌が悪くなる。

雑誌「象徴」は評論誌であり、持ち込みの小説等読まないと、かねがね口にしていたからである。

それでも、一応、その書生と面会した三四郎は、相手の美貌に息を飲む。

胸を患っているらしきその書生は、この小説はあなたに読んでもらうべきものだと不思議な言葉を残し帰って行く。

三四郎は、その書生の名前らしき「蕗谷笛二」の署名のある「蔵の中」という原稿を、何気なく読みはじめるのであった。

笛二(山中康仁)は、胸を患っているため蔵の中に隔離されている姉の小雪(松原留美子)と蔵浚えをすると言って、蔵の中に入り浸っていた。

それを、世話係りの婆や(小林加奈枝)は病気がうつるといけないと注意するが、笛二は耳を傾けようとしない。

姉は、鼓を打つからくり人形を見つけだしたらしく、床に置いてある。

小雪は、5つの時、中耳炎を患った事が始まりで、その後、次々と病を重ね、今では口がきけない状態。

笛二とは、一緒に学んだ「読心術」で会話しあう仲だった。

笛二は、今、婆やがおやつとして持って来た夏ミカンを姉に食べさせるが、その途中で、姉は喀血してしまう。

寝かし付けた姉の口から、血の塊を吸い取ってやる笛二。

すでに、自分の余命が永くない事を悟っている小雪は、親が考えている天地療養等したくない、他の土地で死にたくないと笛二に呟くのだった。

そして、いきなり、簪で自らの咽を突こうとする。

必死でそれを止めた笛二は、夜、ロウソクの火を灯しながら、もう本宅へは戻らない、このまま姉とここで暮すと決意するのだった。

翌朝、親が訪ねて来て蔵の扉を叩くが、笛二は相手にしない。

小雪は、絵本に出て来る小桜姫に笛二が似ていると言い出す。
その美貌を誉めているのだ。

笛二は恥ずかしくて否定するが、不機嫌そうな姉の顔を見ると、つい肯定してしまうのだった。

その夜、大汗をかいた姉の着物を、自分用の着物に着替えさせた笛二は、翌朝、その洗濯を婆やに頼むが、婆やは、汗まみれの着物を見て、同じ病気で死んだと言う姪の事を思い出したと言う。

その後、姉の身体を拭いてやる内に、二人は思わず男女の仲になってしまう。

その後、そのバツの悪さをごまかそうと、蔵の中を探索していた笛二は望遠鏡を発見すしたので、それで窓の外を覗いてみると、磯貝三四郎と金貸の後家、お静(吉行和子)との逢い引きの現場を発見する。

二人の会話は、遠目でも、笛二には得意の読心術で手に取るように分かるのだった。

そうした笛二に、小雪はまとわりついて来るので、先ほどのような事をしてはいけないと邪険にすると、小雪はどうせ短い命なのだから、したい事をすると言い出す。

その後、医者の往診も断わった小雪は、ますます意固地になって行くようだった。

一方、すっかり望遠鏡での観察が面白くなった笛二は、お静の家を集中的に覗くようになる。

お静は、一日も早く、三四郎の妻になりたがっているのだったが、妻が亡くなって、まだ49日も過ぎない内に、お前と結婚するなんて、世間体もあり出来る訳がないだろうと、三四郎は突っぱねるのだった。

しかし、新京極のカフェで働いていた時分から、三高に通っていた三四郎を恋いこがれていたお静の執念は凄まじかった。

彼女は、首を締められないとエクスタシーを感じない女であり、毎回通って来る三四郎にせがんでは、自らの首を締めてもらっていた。

そうした二人の愛欲の姿が障子に映し出されているのを、望遠鏡で覗いていた笛二には、あたかも殺人事件の現場を見ているかのような興奮を覚えるのであった。

夢中になった笛二は、またもや、まとわり付いて来た姉を突き飛ばしてしまうが、その時、姉の下敷きになって人形が壊れてしまったのに気づいた笛二は、何とか、姉の機嫌を直してもらおうと謝罪を繰り返す。

すると、小雪は、錦絵の中の人物のように、笛二に刺青をしてみたいと言い出し、待ち針で彼の肌を突つき出すが、その異常な行動に思わず拒絶反応を見せた笛二の目の前で、小雪は大量の血を吐くのだった。

一方、お静は、あんなたの奥さんの死に方がおかしかったと、三四郎にネチネチと詰め寄っていた。
毒殺したのではないかと言っているのだ。

むろん、三四郎は相手にしない。

翌日も、洗濯を頼んだ婆やは、衣類に付いた血の痕に気づき、よもやお嬢様は喀血したのでは?…と笛二に問いかけるが、笛二は強く否定するのだった。

しかし、婆やが呟いた「血を吐くようになったら、この病気も永くはない」という言葉を、笛二は胸に刻み込むのだった。

翌日、お静は、自分と一緒になってくれないのなら、貸した840円の金をを即刻返してくれと、相変わらずネチネチと三四郎に詰め寄っていたが、突然、三四郎は、お静の首に手をかけ、そのまま絞め殺してしまう。

そうした二人の様子を、蔵の二階の窓から笛二は望遠鏡で覗き見ていたが、彼の様子から小雪も覗かせてくれとせがむ。

お静絞殺現場を目撃してしまった小雪は、自分もあのように首を締めて殺してくれと、笛二に願い出る。

そこへ響いて来たのは、何者かが蔵の扉をこじ開けそうになる音。
笛二を心配した父親がやって来たらしいのだ。

何とか、それを押しとどめようと焦る笛二だったが、彼も又、咳き込み、血痰を吐いた事に気づく。
姉の病気がうつっていたのだ。

笛二は、血まみれになったその手で、姉の願い通り、彼女の首を締めて殺そうと決意する…。

小説を読み終わった三四郎は、笛二を訪ねて行くが、彼がそこで見たものは…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

一連の映画化された横溝作品の中でも異色な作品で、ミステリー趣味、SM趣味、耽美趣味などを合わせ持った幻想譚。

同じ高林監督の「本陣殺人事件」では、まだ、爽やかな青年風の金田一耕助を演じていた中尾彬だが、この作品では、口ひげを貯え、太った色悪に変貌している。

その後の、彼の色悪イメージの原型が、ここに完成している事に気づかされる。

対する吉行和子も、まだ若々しい。

この二人の大人の演技合戦が、なかなか見物。

「本陣殺人事件」は低予算のATG作品だっただけに、かなりこじんまりとした地味な作品だったが、一応、角川春樹事務所が付いたこの作品は、それに輪をかけたように地味な作品になっている。

派手な殺人とか、アクションと言った「けれん味」は一切ないと言って良い。
あるのは、ひたすら「蔵の中」と「望遠鏡から見えるお静の家の中」での二組の男女関係のみ。

共に、ドロドロ…というか、禁断と言うか…、歪んだ愛欲の世界。

今で言えば、確実に「単館向き作品」であろう。

一見、退屈そうな内容だが、静かで耽美的な空間と、じっくり迫って来るタイプのサスペンスフルな展開は、好きな人にはたまらない世界ではないだろうか。

金田一ものが、どちらかと言えば、万人向けの娯楽作品だとすれば、この作品は、大人や女性限定の作品かも知れない。

小雪を演じている松原留美子はニューハーフであり、声を出さないと言う設定なので、その外見だけを巧く生かされていると思う。

それに対する山中康仁も、若いながら良く健闘している。


 【1000円以上送料無料】蔵の中/松原留美子

 【1000円以上送料無料】蔵の中/松原留美子
価格:4,104円(税込、送料込)

 ★【送料無料】 DVD/邦画/蔵の中/DABA-463

 ★【送料無料】 DVD/邦画/蔵の中/DABA-463
価格:4,104円(税込、送料込)

 【2500円以上送料無料】蔵の中/松原留美子

 【2500円以上送料無料】蔵の中/松原留美子
価格:4,104円(税込、送料込)

【送料無料選択可!】蔵の中 / 邦画

【送料無料選択可!】蔵の中 / 邦画
価格:3,652円(税込、送料別)